川村渇真の「知性の泉」

浮遊思考記録−1999年07月


●1999年7月11日

理想の上司のアンケート結果に思うこと

 7月10日の朝日新聞の記事によると、今春採用された国家公務員1種試験合格者へ対する、理想の上司に関するアンケート結果を、人事院が発表したそうだ。1位はプロ野球の野村監督、2位は権藤監督、3位は長嶋監督、5位は小渕総理だという。似たようなアンケートはいくつもあるようで、長嶋監督が1位だった結果もかすかにだが記憶にある。
 この種のアンケート結果を見ていつも思うのだが、なぜかプロ野球の監督が上位を独占する。とくに長嶋監督が1位だったりすると、どんな点を評価したのだろうかと疑ってしまう。アンケートを受けた人は、真面目に回答しているのだろうか。こんな疑問を解消するためには、挙げた理由も明確にしてほしい。自分以外にも、「あーあ、あのアホなアンケートを、またやってるよ〜」と思っている人が、けっこう多いと思うのだが。
 そもそも、プロ野球の監督ばかりを挙げるのは、なぜだろうか。他の分野の人物をあまり知らないからではないかと推測する。ビジネス分野を少しでも勉強していれば、海外も含めた優秀な経営者の名前が上位に並んでも良いはずだ。最近なら、現代的な経営手法で非常に注目されているGEのウェルチ会長や、鋭い視点で情報産業を突き進むソフトバンクの孫社長などが上位に来てもおかしくない。
 プロ野球監督以外の人物をあまり知らない状況なら、人物を挙げてもらう方法が適さないと考えないのだろうか。具体的な人の名前を挙げる方法を止め、理想の上司に求める条件を細かく調べる方法も重視するとか。「理想の上司」というタイトルを続けるなら、それに適した方法に変えたほうがよい。そうしなければ、アンケート実施者の能力を疑ってしまう。
 逆に、いっそのことアンケートのタイトルを変えて、「上司になってほしいプロ野球監督を選ぶ」にするのはどうだろう。結果はほとんど変わらず、結果に適したタイトルにできる。このまま「理想の上司」などと言い続けて、「おいおい、うそだろー」と突っ込まれる心配もない。
 もっとも不思議なのは、このように突っ込みたくなるような内容でも、いつも無条件に紹介し続けるマスメディアの存在だ。アンケート結果が出るたびに紹介し、何も考えずに垂れ流し続けている。「このアンケートって、紹介する価値があるのか?」などと疑問に思わないのだろうか。また、「こんなアンケート結果なら、方法を変えなきゃなあ」と考え、紹介しながら突っ込みを入れようとは思わないのだろうか。非常に不思議だ。
 アンケートの主催者も、その結果をただ垂れ流すマスメディアも、頭をほとんど使っていないとしか思えない。前からやってるという単純な理由で続け、誰かにビシッと言われるまで改善できないのだろうか。こんな低レベルな状況が変わらずに続くなんて、あまりにも情けない。

●1999年7月19日

欠陥システムである和暦を救う究極の方法

 和暦といえば、日付を表現するシステムとしては根本的な欠陥を持つので、論理的で科学的に思考する人からはバカにされ続けている。そんな現状を改善しようと、何とか救済する方法を考えていたら、あるとき妙案を思い付いた。結構良いアイデアなので、ここで紹介しよう。
 本来なら和暦の基本ルールを変えずに改善すべきだが、そのルール自体が欠陥の原因なので、根本的に無理な話。というわけで、和暦を使っているという最低限の感覚を残しながら、国際標準である西暦と上手に融合できる方法を求めてみた。
 救済に用いる和暦の新ルールは、非常にシンプルだ。西暦2001年1月1日から元号を「二千(にせん)」に変え、天皇の生死に関係なく固定して使い続けるというもの。こうすると、西暦2001年は「二千元年」に、西暦2002年が「二千2年」に、西暦2003年が「二千3年」になる。口で喋る限りは西暦と同じ年数に聞こえるため、西暦と変換する手間も不要だ。切り替えタイミングも抜群なので、何と西暦2999年まで効果が続く。さすがに西暦2999年になったら、世の中が相当に変わっていて、和暦をうんぬんする人もいなくなるだろう。
 和暦を使いたい人は、年数を「2012年」ではなく「二千12年」と書けばよい。これで和暦を使っているという最低限の面目が保てる。和暦使用のデメリットがほとんど消えるにも関わらず、和暦使用の意思表示が可能という、画期的な方法なのだ。
 いろいろな組織がこれから国際化するので、西暦の使用は避けられず、和暦との混用は面倒なだけ。しかし、改良版和暦を用いると、西暦と変換する必要がないため、和暦による迷惑が最小限になる。このメリットは非常に大きい。
 改良版和暦の唯一の弱点は、開始時期が西暦2001年1月1日に限られること。この日しかチャンスがないだけに、やるなら早目に検討しなければならない。関係者の皆さん、いかがだろうか?
 和暦を強く支持しているのは、非論理的をモットーとする人たちが中心なので、論理的な思考が通じにくく、以上のような内容だと納得しない可能性が高い。「欠陥システムでなくなるんだよ」と説得しても、おそらく通じないだろう。せっかくのチャンスなので、そんな人の声は無視して、世間に迷惑をかけない和暦に変身してほしい。


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