川村渇真の「知性の泉」

浮遊思考記録−1999年04月


●1999年4月19日

株価などの予測値の掲載は、各人の過去の評価と一緒に

 株価や為替レートの将来の値を予測する記事が、雑誌などに掲載される。それを読んで毎回思うことがある。書いている人の以前の予測がどれだけ当たったのか、過去の実績を知りたいと。それが分からなければ、どの程度まで信用して良いのか判断できないからだ。強気の予測をする人などと筆者の紹介が書いてあっても、まったく参考にはならない。
 スポーツの世界では、過去に取得したタイトルに加え、打率や防御率といった実績の数値を見て、どの程度の実力かを判断する。球団が契約する場合も、試合で起用する場合も、それまでの実績の数値で判断される。きちんと評価したいので、ごく当たり前の方法であろう。
 ところが、株価や為替レートの予測では実績の数値を用いていない。これらの値は、数値化しやすいものの1つだというのに。たとえば、次のような方法が考えられる。1ヶ月ごとといった決まった周期で、1年後、半年後、3ヶ月後の値を予測してもらう。具体的には、毎月1日に予測数値を発表してもらい、記録しておく。その記録と実際の値を比較すれば、予測の的中度が数値化できる。非常に簡単だ。
 ただし、どのような形で数値化するかは、少し工夫が必要だろう。過去は近い値を予測していたが最近は外れ気味だとか、当たりと外れのバラツキが大きいとか、3ヶ月後の予測は近いが1年後は苦手だとか、人によって特徴が異なるためだ。それを上手に見せられるように、数値化しなければならない。1つだけの数値では特徴を表現しきれないので、複数の数値が必要となる。ここで少し検討してみよう。
 まず、3ヶ月後の予測は近いが1年後は苦手といった特徴だが、これだけは考慮しなくてよい。3ヶ月後の予測をしたときに掲載する実績評価数値は、過去に行った3ヶ月後の予測実績だけで評価すればよいからだ。的中度の変化に関しては、1年ごとに区切って3年分ぐらい数値化する方法を用いる。3ヶ月後から1年後までの予測を毎月1日に発表する方法なので、どの期間の予測も1年分で12個得られる。実際の値との差を計算し、12個分を合計すればよい。こうするだけで、1年単位で3年分の的中度ができあがる。バラツキも数値化したいなら、ん12個での標準偏差を求めるだけだ。これも1年単位で3年分の数値になる。もちろん、統計学の理論を用いれば、もっと適切な値が設計可能だろう。その辺は、専門家に相談すればよい。
 こうした数値を求めると、予測が当たったかどうかが明らかになる。いくら偉そうな能書きを書いても、的中度が悪ければ信用されない。読者は的中度を見て判断するので、的中度の高い人しか書かせてもらえなくなるだろう。
 的中度を数値化できると、もっと面白い方法が実現可能だ。有名な専門家だけに予想させるのではなく、一般の人も予測に参加させよう。専用のウェブページを用意して、一般の人にも予測値を登録してもらう。何万人もの人が参加すると、専門家よりも的中度の高い人が出てくるだろう。次からは、その人に予測記事を書いてもらえばよい。こうなると、有名な専門家だからといってウカウカしていられないので、的中度が上がるように努力をするだろう。また、一般の人から優秀な予測者を発掘できるメリットもある。どちらの面でも、非常に面白い仕組みだ。
 雑誌に予測を掲載するのは構わないが、掲載した以上は、予測の評価も後できちんと載せるのが筋ではないだろうか。また、予測だけの掲載だと読者が判断できないので、過去の予測実績を一緒に掲載すべきだ。いろいろな予測記事を掲載するのは結構だが、読者がきちんと評価して読めるように、もっと頭を使って工夫してほしい。単なる“垂れ流し”記事は、もうそろそろやめてもらいたい。


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