川村渇真の「知性の泉」

浮遊思考記録−1999年01月


●1999年1月3日

技能オリンピックもメディアで大きく取り上げてほしい

 オリンピックといえば、同名のスポーツの祭典を誰もが思い出す。最近では、パラリンピックもテレビで放映されるようになり、知名度が上がってきた。どちらもスポーツで、オリンピックといえばスポーツという意識が定着している。しかし、スポーツ以外にもオリンピックはある。その代表格が「技能オリンピック」だ。
 知らない人のために、簡単に説明しておこう。技能オリンピックとは、溶接、精密機器組立、金型といった、製造業の基本技術を高度に争う世界大会で、一定年齢以下の若い技術者のみを対象としている。先進国だけでなく発展途上国も参加し、各競技での金メダルを目指す。高度成長期の日本は、何人もの金メダリストを輩出した。日本が最初に参加した大会では、参加選手の半数以上が金メダルを獲得し、世界をアッと驚かせた。また、全種目の半分以上の金メダルを取ったこともある。ところが最近では工場の自動化が進んだため、技能者の数が減り、金メダルも少ししか取れなくなっている。逆に最近では、アジアの発展途上国が金メダリストを数多く出している。また、米国などの先進国も力を入れてきて、メダル数を増やしている。
 先進国が再び力を入れ始めたのには、それだけの理由がある。基本技術だからといって、レベルの低い技能ではないのだ。たとえば溶接なら、高い技能を持っていると、新しい金属を接合するといった仕事がこなせる。この種の技能は、人工衛星のような最先端の宇宙機器を作る際に必要で、先端技術の実用化に不可欠なのだ。
 最近の大会では、日本のお家芸と言われている精密機器組立で、ちょっとしたハプニングがあった。日本代表である田上氏が参加し、製作したものを組み立てたら正常に動かなかった。課題として提供された図面を深く分析し、課題内容の間違いを発見して審判団に指摘した。その結果、調整用の部品が支給されて競技を続行できた。完成度の高い作品を製作し、間違いを指摘した同氏は、もちろん金メダルを獲得した。しかも、技能オリンピック史上の最高得点をマークしてである。
 以上の内容は、どこかの局のテレビ番組で見たものだ。そこらへんのドキュメンタリーやスポーツ番組よりも感動した。同時に、他の競技も見たいと思った。日本選手を中心にというのでなく、全部の競技の金メダリストを“技”を見たい。本当にそう思った。
 オリンピックという名前が付かないかも知れないが、この種の世界的な競技はいろいろあるだろう。スポーツだけを集中的に取り上げるのではなく、知的な能力や高い技能を争う分野での世界大会も、もっと積極的に取り上げてほしい。スポーツ中継とは異なる形で取り上げれば、面白い番組に仕上げられると思う。
 そんな大会で良い成績を残した選手は、もっと注目されてもよいのではないだろうか。自分としては、高い技能を持った人が、もっと尊敬される世の中になってもらいたい。その意味で、テレビも新聞も真剣に検討してほしい。

●1999年1月15日

プロ野球選手の年俸が前年比で決まるのは不公平

 12月から年始までのテレビのスポーツニュースでは、プロ野球選手の契約更新をさかんに放映する。見ていて毎年同じように思うのだが、なぜ前年と比較して報酬金額が決められるのだろうか。この方式だと、絶対的な金額を上げるためには、何年も続けて活躍しなければならない。それに、もし活躍しなくても前年が良ければ、下がったとしても絶対金額は高いままだ。もっとも損をするのは新人で、主力選手以上の活躍をしても、低い報酬しかもらえない。たとえば、新人で10勝した投手より、ベテランで1勝しかしない投手のほうが何倍もの報酬を受け取る。また、酷使されたりケガをしたりして、短期間だが非常に活躍した選手は、高い報酬をもらえないままで終わる。どう考えても変だ。
 根本的におかしいのは、実際の成績に関係なく報酬が決まる点。プロ野球のように、活躍の度合いが数字で明確に出やすい仕事の場合、残した結果と連動した金額を決めやすい。成績と連動しない部分を基本報酬として決め、残りの金額は成績と連動する方法が良いだろう。もちろん、守備や走塁だけでなく、後輩の指導なども金額として盛り込む。何年もの貢献を高く評価するなら、それも明示的に金額へ換算すればよい。このようにすれば今よりも何倍も公平になるし、選手のヤル気も違ってくる。複数年契約の場合も、出来高払いなら安心して契約できる。
 これは評価方法の問題である。ハッキリ言ってしまえば、現在の評価方法は“年齢序列”の考えを取り入れた不公平な評価システムでしかない。実際の貢献度とは比例しない点が最悪で、できるだけ早急に改善したほうがよい。サラリーマンの世界じゃないのだから。


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