川村渇真の「知性の泉」

名作になれなかった映画やドラマたち


人気のある有名な映画やドラマに似せて作り、一発当てようとする作品が後を絶たない。そのほとんどは見る価値のないものばかりだが、タイトルだけは一人前なので、だまされて見る人が多いという。そんな失敗をしないようにと、代表的なダメ作品を集めてみた。ここで紹介した作品だけは、映画館やテレビで放映しても無視したほうがよさそうだ。


●不払いの林檎たち(ふばらいのりんごたち)

日本経済のバブル崩壊後に起こった、銀行と借り手企業の醜い争い。物語は、バブル全盛期から始まる。どの銀行もやたらと貸したがり、銀行員の中には、相手に包丁を突きつけて無理矢理に借金させていた。そんな行員は貸出金額の記録を作り、銀行内で表彰までされるほど。また借り手の多くはリゾート開発に資金をつぎ込み、甘い夢を思い浮かべていた。しかし、バブルが崩壊すると、状況は一変。多額の不良債権だけが残り、返せる当てはなくなった。貸した銀行員は「返してくれ」と言うが、借り手の社長は「無理矢理に貸したアンタが悪い」と開き直るだけ。切れた銀行員は再び包丁を持ち出して脅すが、借りた社長はその包丁を取り上げ、林檎の皮をむいて無視するばかり。最後には銀行の頭取が登場し、社長と醜いののしり合いを展開する。二人の発言内容があまりにも低レベルで、見ているだけで腹が立つ作品のため、払い戻しを要求する人が多かった。

●ハゲ武者

影武者として雇われた、殿様と顔はそっくりだが、頭のハゲだけ異なる侍が主人公の時代劇。兜を付けている状態では殿様と区別できず、普段は暇なので、周囲の侍をだまして混乱させて楽しむ。ただし、イタズラを続けるとまずいので、最後に兜を脱いでハゲを見せ、「ごめんね〜」と愛想よく笑ってごまかしていた。そのうち、本物の殿様が命令しても信用せずに、家来の誰もが殿様の言うことを聞かなくなった。しまいには、本物の殿様に向かって「またイタズラしやがって」と頭をたたく家来も出る始末。その家来は、切腹して自害する羽目になった。こんな状況に怒った殿様は、ハゲ武者を城から追い出した。しかし、殿様になりすませるので、城へ簡単に入って来てしまう。最後の手段として、殿様はハゲ武者の処刑を命じた。ところが、家来がハゲ武者にだまされて、本物の殿様を処刑してしまった。こんな感じの流れだが、表現が下手なので何が起こっているか分かりにくく、内容を誰も理解できなかった。公開してすぐに消えていった、訳の分からない作品。

●北斗の便(ほくとのべん)

拳法の達人が主人公のアニメで、特異な技で相手の気力を失わせるのが目玉。主人公の達人は、対戦相手に拳を打ち込んだ後で、「お前は既にウンコしている」と言う。すると、相手はその場で腹を下し、下半身が臭いウンコだらけになる。そのまま泣きながら「汚い技を使いやがって〜。くそ〜」と文句を言うが、主人公の達人は「汚くて臭いのはお前だろーが」と言い返し、さっさと立ち去ってしまう。物語としては、このシーンが延々と繰り返されるだけ。これを公開した劇場では、臨場感を高めるために、何とウンコの臭いも特殊な機械で再生させた。主人公の達人が技を披露するたびに凄い臭いが出て、観客はそれをかぎながら見続けなければならなかった。多くの人には、劇場での臭いだけが印象に残っている。内容的にもただ汚いだけで、ゲロ袋なしでは見れない情けない作品だった。

●タワーリング・インポナルノ

タワーのように立派なイチモツを持つ男がいた。イチモツでトラックを引っ張るとか、イチモツでマグロを一本釣りするとか、イチモツの上に10人の子供を乗せたとかで、世界中の人気を博していた。しかし、愛する女性のふとした一言から自信を失い、インポになってしまう。かなり危ない性的リハビリまで試すが、まったく回復せずに、ずっと悩み続ける。しかし、偶然の出来事から目覚め、タワーのようなイチモツも回復して、幸福な生活を取り戻す。イチモツの映像表現で話題になったが、それ以外には何の魅力もないと太鼓判を押された。涙と赤面なくしては見れない恥ずかしい作品。

●バカくさ物語

金持ちの家に生まれた4人姉妹が、世間をなめた行動で騒ぎを引き起こす物語。小さい頃から甘やかされて育ったため、何か気に入らないことがあると、かったるそうに「あーあ、バカくさ〜」と言い、他人の言うことをきかない。姉妹はいろいろな所へ出かけて行くが、必ず「あーあ、バカくさ〜」と言って途中で帰ってくる。全体をとおして、こんな場面ばかり。当然、姉妹のセリフの半分以上が「あーあ、バカくさ〜」となり、観客は途中で飽きてしまう。最後まで観る人はほとんどおらず、たいていが「あーあ、バカくさ〜」と言いながら上映途中で出ていってしまった。

●ゴルゴ・サイテー

国際的に有名な超A級スナイパーが、暗殺の腕が急に落ちてジタバタする物語。世界ナンバーワンの腕を見込んで、昔と同じように難しい依頼が来る。ところが、腕が急に落ちたので、どんなに頑張っても失敗ばかり。仕事の依頼主に原因を追求されると、「許してチョンマゲ」や「そんなバナナ」といったオヤジギャグを連発し、何とか誤魔化そうとする。しかし、依頼主にはまったくウケずに、かえってシラケさせる。最後には、腕が落ちたことが世界中にバレて、サイテーのスナイパーとのレッテルが定着してしまう。圧巻は30分間のオヤジギャグ連発のシーンで、観客まで完全にシラケてしまい、映画の途中なのに帰ってしまう人が多かった。ほとんど観客は、この30分間が耐えられなかったようだ。

●星の金隠し

大人気だったテレビドラマ「星の金貨」をもとに、変化球ネタでウケを狙い企画された作品。ストーリーや出演者は「星の金貨」とまったく同じだが、男優の全員が全裸で出演する点だけが違う。全裸だと男性の大事な部分が見えて放映できないので、そこだけ星形のマークを重ねて見えないようにした。つまり「星の金隠し」だ。男優のアソコに部分に興味のある女性ファンには話題になったが、録画したビデオをスロー再生しても見えなかったので、最後には誰にも相手にされなくなった。アイデア自体が根本的にダメだったようだ。

●おしんこ

悲惨な人生を力強く生きた「おしん」の娘の物語。おしんの子供なので「おしんこ」と名前を付けたため、悲しい人生が始まった。幼稚園時代は、「おしんこ」に似た「おしっこ」とあだ名を付けられた。その呼び名が中学まで続き、トイレに閉じ込められるなどのイジメを受けた。社会人になっても、食事や宴会の場で物笑いのネタにされたため、本人の性格がどんどんと暗くなっていった。最終的に誰も信じられなくなり、ラストシーンでは、漬け物石を黙々と磨き続けていた。最初から最後まで悲惨な話題ばかりで、感動的な部分がまったくなかったため、ショーモナイ作品としてだけ記憶に残っている。

●見た?肛門

天下の副将軍を辞めた人物が、諸国をまわる旅に出る話。オシリに彫った“三つ葉葵”の家紋の入れ墨を見せながら、悪者を退治して歩く。最後にオシリの家紋を見せるが、一緒に肛門も見えるところから、「見た?肛門」との噂が広がった。そのうち、行く先々で「おねげえです。天下の肛門を見せてください」と土下座して頼まれるようになり、最初は渋々見せていた本人も、だんだんと快感に変わってしまう。しだいに頼まれもしないのに見せるようになり、人生を踏み外していく。最後には、お供の助さんと格さんにまで見放され、悲しい末路へと進む。肛門のクローズアップをラストシーンに採用したため、ゲロを吐く人が続出して、大迷惑を受けた映画館が上映を禁止したという、不名誉な記録を持つ。

●金をかける少女

未来からやってきた少年と出会い、人生を変えた少女の話。未来から来たことを知ると、少年の弱みを見付けて脅し始めた。少女の要求は、競馬や競輪の結果を未来から持ってこさせること。それを見れば絶対に当たるので、有り金をかけまくり、万馬券を何回も当てた。少女は大金を手にするごとに、どんどんと人格が変わっていった。世の中すべて金しだいと思った少女は、金を使ってわがままし放題で、世界中に大迷惑をかける。かわいそうな少年が少しだけ涙を誘ったが、金の亡者に変身した少女の姿があまりにも醜くて、二度と見たくない作品のトップに選ばれた。

●東山の金さん銀さん

北町奉行の金さんと、南町奉行の銀さんが、難事件を解決する物語。金さんも銀さんもかなりの高齢で、若い頃にグレて入れ墨をした過去を持つ。数々の怪事件に挑み、二人に関係のないところで次々と解決していく。情けないのは、金さんも銀さんも年寄りすぎて、何を言っているのか聞き取れず、ストーリーがまったく見えてこない点。立ち回りのシーンも、金さんと銀さんがあまりにも弱々しく、腰砕け状態で迫力がない。一人切るごとに1分以上も休む有り様だ。悪役の半数以上は、いつまで待っても切ってくれないので、関係ない場所で「うお〜」などと大声をあげ、切られていないのに倒れていた。町奉行の年齢設定に相当の無理があり、企画段階での大失敗と評価されている。


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