川村渇真の「知性の泉」

未来に登場する変種パソコン


現代のテクノロジーは、多くの人の想像を超える勢いで進歩している。とくに著しいのがパソコンの世界だ。遠い将来には、性能の向上や小型化が進むだけでなく、驚くほど奇妙な形の製品が登場するだろう。それによって、我々の生活も楽しく愉快なものとなるはずだ。未来に登場するパソコンの詳しい機能と利用方法を、大胆に予測してみた。


●体に埋め込むパソコン

 手帳型パソコンでさえ、重くて持ち歩きたくない。そう思う人は多い。こんな不満を一気に解消する、画期的な製品が登場する。体に埋め込むパソコンだ。形は薄型で半透明、腕に埋め込むのが標準的な使い方。半透明の下に筋肉や血管が見えて少々グロテスクだが、「自分の健康状態がよく分かる」とすこぶる好評だ。世界最初のマシンは日本企業から発売され、名称は“埋めチャン(うめちゃん)”となるだろう。腕に埋め込めば、いつでも使えてとっても便利。腕捲くりして操作するなんて、ちょっと格好悪いけど、みんながしているので気にしない。
 欠点は、埋め込みに手術が必要なこと。少なくとも1週間は入院する。もちろん拒絶反応もあり、そうなったら再手術して取り替えるしかない。何度も拒絶反応が出て、「オレに合ったパソコンはねえのかよぅ」と悩む奴まで現れる始末。両腕にマシンを埋め込み、ネットワークで接続する人もいる。もちろん接続ケーブルも体に埋め込む。「通信すると体に電気が流れてゾクゾクするぜぇ」が流行るはずだ。
 この時代のパソコンは、病院で購入するのが当たり前。専用の受付があり、「すいませーん。パソコン買いたいんですけど」と軽いノリで訪ねる。看護婦姿の説明員に何機種か見せてもらい、好みのマシンを選ぶ。ここで「パソコンより看護婦さんがほし〜い」などと言ってはいけない。メスが飛んできてケガするだけだ。医者は「お客さん。あとでメモリー増設すると、また手術しなきゃいけないんで、最初から多めに増設したほうがいいっすよ」とアドバイスしてくれる。すっごく親切だ。
 パソコン購入イコール手術なので、体調を崩すと手術ができずに困る。「体の調子が悪いんで、旧機種を使い続けるしかないか。とほほ」なんてことがないように、「パソコン買うんで、体力つけるかぁ」が、この時代の常識となる。新機種の購入には、お金よりも健康が大事なのだ。“パソコン購入のための健康ジム”といった怪しげなものまで大繁盛してしまうから恐ろしい。
 多くの会社では、パソコン埋め込み休暇なるものが登場する。「嬉しいな〜。明日からパソ埋め休暇だよ〜ん」と明るい声で表明し、ワクワクしながら病院へ行く。新型のパソコンを埋め込むために、毎年毎年手術する人も多い。一番困るのは、パソコンが故障したとき。修理するのにも手術が必要だからだ。医者には「修理するより買い換えたほうがいいっすよ」と言われる。せこく修理すると、また故障して入院する羽目になるからだ。会社の上司からは「なにーっ、パソコンの故障で入院してるってぇ。今月になって3度目じゃねえか。ったくもう、使えねえ奴だなぁ。クビだ。クビ!」と解雇されたりする。これも、この時代ならではの出来事だ。
 古いパソコンを、捨てないで体の別な場所へ埋め込む人もいる。「お腹にはもう5台もあるから、今度は背中に移そうかな」などと、手術のときに要望を出す。古くからのユーザーは、歴代のパソコンを体じゅうに残していて、パソコン史の生き字引として重宝がられる。体に埋め込んであるため、「10年前のパソコンはね...」と動作させながら説明できるのが魅力だ。「おじちゃーん、古いパソコン見せて、見せて〜」と子供達が集まり、デジタル時代の人気者になれる時代が来るかも。さらにエスカレートすれば、多くのパソコンを体に埋め込んでいるほど、より高いステータスが得られる可能性もある。自分が使った歴代のパソコンをいつも持ち歩けるなんて、何とも言えず良い時代ではないか。待ち遠しい人、多いだろうな〜。


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