川村渇真の「知性の泉」

とんでもなく素敵なお店があるぞ!


せっかく店を開くからには、できるだけユニークで魅力的な内容に仕上げたいもの。独自性を追求するほど、自分の店を自慢できるからだ。成功した店は、とんでもないほど素敵な魅力を持っている。ここでは、競争相手が追従できないほど凄い店を集めてみた。近くで見付けたら、ぜひとも常連客になろう。


●消費税100%の店

高率の消費税を体験できる店。どの商品にも100%の消費税がかかるため、100円の商品なら200円を払う。もちろん、本当の消費税として受け取っているわけではない。実際の消費税との差額分は、特別なプレイへの代金と明示してある。1つ目のプレイは、歴代の大蔵大臣や官僚の名前と写真付きの人形を用意して、客の自由にさせること。多くの客は、人形に蹴りを入れたり、顔に落書きしたりして、日頃の不満を解消している。飾ってある人形には、名前だけでなく就任期間も明記してあり、現職者も含まれる。2つ目のプレイは、人形として展示してある人に、自由なメッセージを書くこと。書かれたメッセージは、店内だけでなく、インターネット上でも公開する。最大の目玉は、書いたメッセージに加え、落書きされた顔の写真も含めて、書かれた本人にも渡すこと。渡したときの様子も、広く一般に公開する。メッセージの内容だが、多くの人は怒りまくってボロクソに書いている。「消費税を上げる前に、無駄なダムや橋を日本中に造るのを止めろ」とか「不要なもの造って財政赤字を増やすのが、そんなに面白いか」とか「無駄な仕事しかしてない、天下り先の特殊法人をなくせ」とか「取って付けたような、白々しい事業理由や言い訳ばかり言うんじゃない」など、もっともな意見ばかり。これじゃあ、みんなが怒るのも無理はない。

●商品説明が極端に長いデパート

店員による商品の説明が異常なほど長いデパート。オーナーが、最高の持てなしは十分な説明だと考えているので、徹底的に商品の説明を店員にさせている。長い説明をするほど表彰される制度のおかげで、店員は必死で説明を続ける。こんな状況のため、説明にかける時間は尋常ではない。最低でも半日、長い人だと100時間を超す。たいていの客は、延々と続く説明に我慢できなくなって、途中で帰ろうとする。しかし、説明の途中で客に帰られるとクビになるので、店員は「説明し終わる前に帰ったら自殺する」と脅して客を離さない。ナイフを常に持っている店員もいて、自分の首にナイフを当てて脅す。自殺されると困るため、客は我慢して聞き続けるしかない。100時間以上も聞き続けた客の中には、何日も会社へ出勤できずに解雇された人もいたようだ。こんなデパートだが、ここでしか売っていない魅力的な商品も数多くあり、他の店に切り替えることは難しい。常連客になると、店員と目を合わせないように、素早く歩いて立ち止まらず買い物を済ませるという。店員に捕まったら最後なので、必要なものだけ買ってすぐに帰ろう。

●逆立ち食いソバ屋

食べる最中は逆立ちしなければならない、特殊なルールのソバ屋。ソバ好きの主人が、「立ち食いソバ屋を今更やっても、面白くねーなぁ。よーし、逆立ちしながら食べてもらおうかぁ」と始めたもの。逆立ちすると両手がふさがるので、特殊な装置を使ってソバを食べる。また、逆立ち状態だと、食べたソバが戻って口から出やすいので、緊張感を維持しながら食べなければならない。こんなに大変な食べ方だが、逆立ち愛好家には願ってもない店らしく、日本中からお客が来ている。スカートをはいた女性でも安心して食べられるようにと、専用の個室まで用意した。ところが、カウンターで食べると男性客の注目を浴びるため、個室よりもカウンターを利用する女性客のほうが多い。このことが広く知られ、逆立ち愛好家以外の人も、女性客の逆立ち見たさに、数多く食べに来るようになった。注目されたい人は男性客の中にもいて、わざわざスカートをはいて食べに来る。しかし、すね毛と汚いパンツを見た多くの客は完全に引いてしまい、食べ終わる前に店から逃げていく。困った店側では「スカートをはいた男性客はお断り」との看板を掲げて、入店を断り始めた。注目される機会を奪われたと感じた男性客は「男性差別はやめろ。すね毛にも人権を」と抗議しているが、その意見に同調する人はほとんどいないようだ。


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