川村渇真の「知性の泉」

世の中が見えてくる本音発言集


どんな業界でも、建て前で言っている内容が、本音とは大きく違うもの。だからこそ、本音を知りたい人は多い。というわけで、各分野で活躍中(?)の人から聞いた本音を、ドーンと公開しよう。「おい、おい」と言いたくなるあきれた本音(×印)から、かなり納得できる本音(○印)まで、いろいろな発言が集まってきた。それぞれの言葉を読むと、その業界の体質や構造が見えてくる。これでアナタも業界通になれる...かな?


●非論理主義史観者:南京大虐殺をなかったことにしたいだけ(×)

「南京大虐殺があったって言われると、ホントに腹立つよなー。そんなこと、わざわざ話題にしなくても、いーじゃねーかよー。知らんぷりしてりゃ、いーだろ。日本は過去に悪いことを何もしなかったってことにしておこうぜ」。
「本当にあったかどうかなんて、どうでもいーじゃねーか。オレだってよぉ、あっただろうって思ってるさ。でもよぉ、なかったことにしときたいわけよー。オレたちにとっては、事実なんてどーでもいーの。ウソでも何万回も言い続ければ、信じる人が出てくるわけ。だから言い続けてるんだよー。そこんとこ、分かってくれよー」。
「真っ先に変えてほしいのは、学校の歴史の教科書だな。『南京大虐殺があったなんて大ウソ。あったって言ってる奴はアホ。日本人は特別。あとはカス』って書いてほしいよなー。それも表紙に。そうなったら感激だよー」。
「一番頭に来るのは、証拠を持ち出す奴だよなぁ。そんなことしたら、虐殺があったってバレるじゃねーか。せっかくオレたちが否定しているのに、邪魔すんじゃねーよ。証拠を持ち出すなんて、ズルいよなぁ、ホントに。何考えてんだよー」。
「あんまり頭に来るからよぉ、証拠の中から弱点を見付けて、攻撃してるんだよー。重箱の隅みたいな点ばかり攻撃してるって? 仕方ねーじゃねーか。それ以外に方法がねーんだから。とにかく、証拠を持ち出すのはやめてくれよなー」。
「外国に行って主張しないのかって? そんなの絶対にイヤだね。だってよー、外国人は理屈で説明しねーと納得しねーだろー。そんなの無理に決まってるじゃんか。ウソだとバレたら、袋叩きにあうかもしれねーし。日本の中だから、ウソでも堂々と主張できるってわけ。それに、日本人だけ信じてくれればいーんだよー」。
「今の学校教育には、少し感謝してるなぁ。暗記ばっかりやらせるせいで、論理的に考えられない人が多いからよー。おかげで、若者を中心に、オレたちの主張を信じる人が増えてきたし。ありがてーこった。あと100年もしたらよー、ホントのことなんかどうでもよくなって、南京大虐殺なんて信じない人ばっかりになるぜー。いやー、楽しみだなー。がっはっは」。

●銀行員の妻:バブル崩壊で夫の態度が豹変(△)

「私の夫は銀行員で、仕事上での態度が家庭でも出てしまうタイプなんです。だから、家庭での態度を見ると、仕事ぶりが分かるんです」。
「バブルの頃は、とっても明るくて、優しい夫でした。きっと仕事でも、お金を借りてもらうために、お客さんに優しい態度で接していたと思います。何もかもが順調で、本当に幸せな時期でした」。
「でも、バブルが崩壊してから、家庭はボロボロです。優しかった夫の態度が、豹変しました。だんだんとガラが悪くなったんです。最近では、ヤーサンも顔負けの態度に変わってしまい、怖くて近づけません。きっと仕事で、資金を回収するために、怖いことしてるんだと思います」。
「あるとき、私が言うことをきかないと、部屋に閉じこめて出してくれませんでした。おそらく、支払ってくれない借り手にも、同様のことをしてたんだと思います。本当に恐ろしかったです」。
「それ以外にも怖いことが続いたんで、もう今は一緒に住んでいません。銀行員は、もうこりごりです。私にも将来がありますし、近いうちに離婚して、今度はカタギの商売の人を見付けます。幸せになりたいですから、やっぱりカタギの人が一番です」。

●官僚:公共事業は建設業界への福利厚生(×)

「もっとも嫌いな言葉は『採算性』とか『有用性』だな。いつから、そんな点を問題にするようになったんだ? 昔は良かったよなぁ。好き勝手やっても文句を言われなくて。そもそも、ここは日本だぞぉ、他の先進国とは違うんだ。公共事業ってのは、建設業界への福利厚生みたいなものなの。『採算性』とか『有用性』を問題にしちゃあいけないよ。それが日本のルールなの。暗黙の了解ってやつがあったでしょう、今までは。それでいいじゃない」。
「そりゃあ、公共事業を始めるときには、目的や効果を書くよ。でも、それって建て前を取り繕うだけのものだって、みんな知ってるじゃない。知ってるけど文句を言わないのが、日本のルールだったのに、勝手に変えないでよー。誰も文句を言わないって前提があるから、白々しい理由やいい加減な算出で計画書を作ってるんじゃないか。ずるいよなー、後から文句言うなんて。内容がテキトーだってことは、作った本人が一番良く知っているよ。役に立つのが目的じゃなく、建設業界、とくに地方の建設業界への福利厚生が目的なの。それを満たしていれば、十分じゃないかぁ。そこんとこ理解してよー」。
「見積もりの金額が、いつも低いのはなぜだって? そんなの当たり前じゃない。最初の金額が低いほど、認可されやすいもの。一度始まってしまえば、あとはこっちのもんさ。後で2倍や3倍に金額が増えても、途中で止めるわけにいかないから好きに使えるわけ。まあ、見積もりがいい加減で甘いから、たいていは少ない金額になるんだ。もちろん、見積もりよりも少ない金額で終わる事業もあるよ。でも余ったら問題になるから、何かしら追加の工事をして、全部使っちゃうんだ。というわけだから、最終的には余ることが絶対にないね。それに、もとは税金だし。普通の企業だったら絶対にできない話だろうけど」。
「これから、どーなるんだろーね。心配だよー。いつもテキトーな内容でしか計画書を作ってこなかったから、実力なんてほとんどないし。今から勉強しろって言われてもねぇ。ある程度トシを取ると勉強の効率は落ちてるし、若い連中と同じスタートラインに立つなんて不利だもんなあ。ここは頑張って、今の体制を維持するように努力するしかないな。さあ今日も、行政改革の推進を邪魔するかぁ」。

●パソコン説明書の作成者:悪いのは操作が難しいパソコンのほう(○)

「最近さあ、パソコンの使用説明書が分かりにくいって、みんなが言ってるよね〜。あれって、本当に頭に来るよー。オレ達だけのせいじゃないのに。もちろん、説明が上手かって言われたら、それほど自信ないけど...。でも、もっとお金をかければ、もう少し分かりやすく作れることだけは保障できるな、うん。すごく分かりやすく説明しようとしたら、ページ数がいくらあったって足りないよ。初心者にでも分かるようにするなら、単行本にして100冊分は必要だろーな。そんな費用、誰が出してくれるの? 値切るばっかりで、出さないくせに。それなのに分かりやすく書けなんて、虫が良すぎるよ。ソフトの使い方を説明した単行本、俗に言うマニュアル本って、うらやましいよねー。特定の読者層だけにターゲットを絞れるし、全部の機能を説明する必要なんてないんだから。オレ達もそんな条件で書いてみたいよー。あーあ、本当にうらやましい」。
「おっと、もっと大事なことがあった。ソフトだって、使いにくいのが多いんだよ。それを簡単に説明しろってほうが、もともと無理なわけ。使用説明書を改善するより、ソフトの使い勝手を改善するほうが先だね。でも、雑誌がそれを言うと、スポンサーを攻撃することになって、広告取れないもんね。使用説明書を攻撃しておけば、無難なんだろうね〜。その使用説明書を書いてるほうにとっちゃ、イヤになるよ〜。ウィンドウズ95だって、誰もが使えるなんて大宣伝したけど、あんなの真っ赤なウソ。まだマックのほうが使いやすいよね。でも、パソコンなんて、どの機種でも、まだまだ難しいんだから。向かない人が手を出しちゃダメ。例のフィーバーにだまされて買ったものの使えない人、けっこういるみたいだね。ホコリかぶってるマシンが多いのも、うなずけるよ〜」。
「本当は、ユーザー側の能力にも関係するよね。Gコード使わずにビデオの録画予約ができない人って、結構いるでしょ。でも、パソコンと比べてさぁ、すーごく簡単だよね。パソコンのソフトのほうが、むちゃくちゃに機能が多いし複雑なんだよ。ビデオの録画予約もできないのにさぁ、パソコンのソフトが使えると思う? 絶対に、絶対に、絶対に無理。メーカーには、『こんな人はパソコンが使えません』ってリストを作ってほしいね。その一番最初の条件に『Gコード抜きでビデオの録画予約ができない』を入れるといいよ。まあ、メーカーにとっては、使えるかどうかでなく買うかどうかだけが問題なんだから、そんなことするはずなかぁ。永久に改善しないね、この業界は」。

●新聞記者:オレ達は郵便屋さんなの(×)

「あのねぇ、新聞記者をジャーナリストだと思うの、止めてくんないかなあ。オレ達さあ、自分でも、ジャーナリストだなんて思ってないんだから。警察とか企業で発表された資料をだよ、新聞社の事務所に運んでいるだけなの。まあ言ってみれば、資料を配達する宅急便とか郵便屋さんみたいなもんさ。『記者クラブ』ってものがあって、誰も抜け駆けなんかせずに、みんな仲良く資料を運ぶだけなの。それが主な仕事ってわけ」。
「ジャーナリストだと思う人があまりにも多いんで、服装を変えようかって話が出てるんだ。スーツを止めて、宅急便か郵便配達の制服と似たデザインでさあ。もちろん帽子もかぶって。そうしたら、ジャーナリストだと間違える人も減るかなー。一部の記者だけは本物のジャーナリストだから、その人だけはスーツ着てもらって、オレ達『記者クラブ』所属とは、きちんと区別できるようにするんだぁ。これって良いアイデアだよね。警察や企業へ行ったときも『受け取りに来ました〜』なんて明るく言ってさあ。うーん、早くそうしたいなー。新聞記者の現状、分かってくれたかなぁ」。
「じゃ、新聞はジャーナリズムじゃないって。そう、そう。実は、そうなのよー。なーんだ、分かってくれたじゃないのぉ。新聞は、ただの新聞。うまく説明できないけどさぁ、まあ、発表された資料を載っけてるだけ。公開情報の一覧表みたいなもんさ。そう思ったら、文句も出ないでしょう。あー、よかった、よかった」。
「えっ、郵便屋さんにならないのかって? やだよー、絶対に。あの人達は、ちゃんと仕事して大変だけど、オレ達はラクして給料もらえるんだもの。そりゃあ、マトモに仕事すればキツイけど、それは一部の人だけ。あとの大勢はテキトーにやってるから、とってもラクなの。こんな割のいい仕事は、めったにないんだ。実状がバレてないから、まだ世間体もいいし。当分はやめられないね」。
「あっ、ずっと購読してよ〜。とくにスポーツ欄とテレビ欄が役に立つんだから。オレはさあ、会社の上司に言ってるわけ。見栄をはらずに、スポーツ欄とテレビ欄を増ページして、他のページを減らそうって。そうしたほうが、読者は喜ぶもんね。おっと、もう巡回の時間になっちゃったよ。また警察へ受け取りに行かなくちゃ。今後とも新聞をよろしくね」。


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