川村渇真の「知性の泉」

世界の資格名鑑


世界中を見渡すと、いろいろな資格が存在する。各国の実状を反映してか、ユニークな資格が目立つ。最近では、どんな資格があるかで、その国の慣習や文化が分かるという。そこで、世界中の面白い資格を集めてみた。気に入った資格があれば、その国へ行ってチャレンジしてみよう。もしかしたら新しい未来が開けるかも知れないぞ!


●人権無士(じんけんむし:中国)

民主化運動への参加者を弾圧するために用意された資格。民主化に関わる活動を見付けると、裁判などせずに、その場で自由に罰を与えられる。殴る蹴るはもちろん、腕の1本ぐらい切り落としても構わない。戦車の運転資格も持っていると、デモを制圧するとき優先的に運転でき、民主化運動の活動家をひき殺せる。周囲から極度に恐れられているため、どんな店へ入っても、代金を払わすに済ませられるのが大きなメリット。この資格さえ取得すれば、すべてはアナタの思いのまま。

●プロ野球応援指導師(日本)

プロ野球の応援の仕方を指導するための資格。取得すると、見ず知らずの人にでも応援方法を強要できる。プロ野球の試合があるときには、球場のいたるところに出没し、相手構わずビシバシと指導する。「野球なんか観てないで、応援に参加しろ!」が口癖のため、ゆったりと観戦などさせてもらえない。「座ってないで立って応援しろ!」とか「でかい声を出せ。でかい声を!」とか言うので、つかまったら大変だ。この資格ができてから、プロ野球の観戦中に座っている人を見かけなくなった。また、観戦から帰ってくると、声の枯れている人が多くなった。プロ野球の応援も、大変な時代に突入したようだ。

●差別発言助言士(米国)

差別的な発言や行動をしたい人の手助けをする資格。米国では、人種や性に関する差別的な発言をすれば、いろいろな人から非難される。しかし、人種や性の平等をどうしても受け入れられない人もいて、じっと我慢しながら生きている。時代の変化から取り残されたそんな人達を助け、法律に触れないギリギリのところで、人種差別の方法を助言するのが役割。人々の意識や法律の変化を把握し、罪にならない範囲内での差別的発言を教えてくれる。差別が問題となるから出てきた資格であって、差別的発言が自由な国では必要がない。

●規制言い訳士(日本)

先進国の中でも規制の多い日本は、世界中から非難されているにもかかわらず、改善がほとんどみられない。そんな中で活躍しているのが「規制言い訳士」だ。もっともらしい言い訳から、とんでもない理由までを、可能な限り考えて発表する。規制を緩和しないように、徹底的に努力するのが役目。
 この資格試験では、いろいろな特殊能力が試される。たとえば、規制を緩和しなくて済む理由を1万個以上挙げる試験。どんなにショーモナイ理由でも、とにかく数を増やすことだけを考える。項目の数が多いと、相手が調べるのに時間がかかるからだ。試験の採点基準もユニーク。まともな理由のほうが低い点数で、くだらなくても調べるのが難しい理由のほうが高い。また、面接試験では、図々しさと心臓の強さを試される。試験官の厳しい追及でも、まったく動じないことが必要だ。
 この資格さえ取れれば、官僚への道は開けたも同じ。さらには、天下りの優先権も得られる。ただし、日本の省庁でしか通用しない資格で、外国人やマトモな日本人に知られると非常に恥ずかしい。多くの官僚が取得しているため、「無能エリートの資格」とも呼ばれている。

●報復爆破師(中東を中心に何カ国かあり)

自分達が気に入らない外国政府のビルを爆破する専門家の資格。一般には公表されていないが、その国の政府には裏で正式に認められている。派手に爆破して、死者が多いほど高く評価され、高額の報酬が得られる。国内では文句なしのヒーローで、飲み屋で資格証を見せると、何でもタダで飲める。「外国人は人間とみなさない」と考えている国だけにしか、存在し得ない資格。

●不祥事予報士(日本)

不祥事を起こす組織を、予想して公表する権利が得られる資格。大和銀行、住友商事、厚生省、動燃、野村証券、第一勧銀と立て続けに不祥事が発生したので、苦肉の策として作られた資格。資格の取得者は、今後1カ月以内に不祥事を起こす組織を予想し、毎月の月末に発表する。名前を挙げられた組織には、自ら予防するようにと政府から警告が出される。それでも不祥事が発生すると、営業停止や罰金などのペナルティが課せられる。的中した予報士には、罰金の2割が支払われる。一度の的中で1億円以上のお金が得られるため、資格試験に受験者が殺到しているという。

●軟禁師(ミャンマー)

自分たちに都合の悪い人を、軟禁して自由を奪う専門家の資格。あくまで軍事政権(=ミャンマー)の資格であって、国民(=ビルマの人々)とは無関係。この資格を持っていると、軍事政権下の政府では、優先的に採用してもらえる。逆に、国民からは総好かんを食う。軟禁した相手がノーベル平和賞をもらっても、まったく動じないほどツラの皮が厚くなければならない。

●政治家秘書士(日本)

日本特有の政治風土を理解し、何がなんでも政治家を助ける裏方の資格。基本スタンスは、政治家の悪事が見つかったら、必ず自分が責任を取ること。最悪のケースは自殺する必要があり、その確実な方法も試験に出る。当然ながら、日本政治の裏仕事を徹底的に熟知しなければ、資格を取れない。また、上手な言い訳や、責任の取り方をマスターする必要がある。試験には性格診断も含まれ、正義感が強い人や正直者は一発で不合格。資格の取得後も安心できない。仕えている政治家が逮捕されると、資格がなくなるからだ。もし何も喋らずに自殺して政治家を助けると、日本政治家秘書密会から名誉秘書士の勲章と大金が与えられ、家族は一生遊んで暮らせる。

●拉致師(北朝鮮)

外国に行って、嫌がる外国人を拉致する専門職の資格。拉致した人数が多いほど、政府から高く評価される。国内では最高の部類に属する資格で、持っていると映画館や駅ではフリーパス。悲惨な食糧不足でも、美味しい食べ物を食べられる。拉致人数で食事レベルが向上するので、先を争うように拉致しているようだ。

●気象予報士評価士(日本)

テレビに出ている気象予報士の仕事ぶりを評価する資格。気象予測の的中率だけでなく、視聴者に対する愛嬌、ジョークのウケ具合なども評価する。気象予報士がタレント化している現状を考慮して生まれた資格。

●お節介アナウンサー(日本)

駅や球場で自由にアナウンスするための資格。日本のアナウンスの特徴は、「電車が来ますので白線の後ろに下がってください」とか「ファールボールに注意してください」という具合に、当たり前のこと何度も何度も繰り返すこと。こんなお節介なアナウンスが日常化しているので、正式な資格として確立した。この資格を持っていると、もっとお節介な内容をアドリブで喋れる。最近は特にエスカレートして、あきれた発言が目立つ。たとえば、「誤って切符を食べたと言い、無賃乗車するのはやめてください」、「ウンチする前には、ズボンを下げてください」、「満員電車の中で、たき火をしないでください」、「球場のトイレからトレペを持って帰らないでください」など。また、「歩くときは、右足と左足を交互に前へ出してください」と歩き方まで指導してくれる。究極のお節介アナウンスは、どんな人でも相当に無能だと思って喋ること。世話好きの人には最高の資格だ。


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