川村渇真の「知性の泉」

人生を変える講座&セミナー


今の自分よりも魅力的になって、新しい人生を送りたいと思っている人は多い。また、自分の欠点を直して、楽しい人生に変えたい人も数多くいる。そんな要望に応える講座やセミナーは、あまり知られていないが、かなり増えているようだ。インパクトの大きなものを中心に紹介しよう。


●イスラム原理主義逆体験セミナー

女性の就学や就労を禁止したり、外出時の服装などを大きく制限するといった、女性差別を合法化したがるイスラム原理主義の男性のために用意された、意識改革セミナー。差別される側の立場を経験することで、ひどい主張だとの認識を持ってもらうのが主な目的。セミナー参加者は、一般社会での仕事が禁止され、家庭内の作業を毎日行わなければならない。また、すべての勉強が禁止され、何か疑問に思ったことも資料で調べさせず、分からないままにしておく。もちろん、インターネットなどまったく使わせない。さらに、外出するときは、顔や体を覆い隠す衣装を身に付けさせる。当然ながら、こうしたルールに違反した参加者には、厳しい罰が与えられる。以上のような体験を最低でも1ヶ月続けると、差別される側の不自由さや気持ちを知り、男女平等は一部の文化の特徴ではなく、人間が幸福になるための基本要素だと理解できる。マトモな人間に生まれ変われる体験セミナーとして人気が出てきた。ただし中東地域では、表立って受講すると命が危ないため、目立たない場所でひっそりと実施されている。

●強靱な忍耐力を付けるセミナー

強靱な忍耐力を短期間で身につけるためのセミナー。日本の多くの企業では、頭の良さや仕事の能力よりも、忍耐力を重視している。そんな現実を考慮し、出世街道をばく進できるような忍耐力を身につけさせるのが目的だ。セミナー期間中は、何でもかんでも我慢することを経験させる。とんでもない行為や仕打ちを受けても、とにかく我慢する。通常の生活では経験できないような試練が、いくつもいくつも続けて起こる。寝ているとき顔にウンコされるとか、「アホ、ボケ、カス」といった言葉の入れ墨を身体中に彫られるとか、自分の定期預金を目の前で解約されて、そのお金を皆に使われるとか、大切にしていた写真を全部燃やされるとか、通常なら怒りが爆発することばかり。これらの行為に一言も文句を言わなかったら、強靱な忍耐力と認定される。このセミナーを無事に卒業できれば、旧態依然とした古い体質の日本の企業では、重役まで出世すること間違いなし。仕事をマスターするより先に、セミナーを受講しよう。

●エアロビ笑顔の獲得講座

極度の悲惨な状況に陥っても、笑顔を絶やさない能力が身に付くセミナー。手本にしたのは、どんなに激しい運動でも笑顔を保持し続けるエアロビ競技だ。悲しい顔に見られがちな人のほとんどが、「私もあんな風に笑顔が保てたら、上手に世間を渡れるのに」とエアロビ笑顔に憧れている。厳しい鍛錬で笑顔を獲得する方法なので、試した人の1%しか成功しない。しかし、失敗しても大丈夫。フォローは万全で、もっと画期的な方法で笑顔を実現する。エアロビ笑顔に見えるように顔を整形するのだ。これで、どんなに悲しいときでも笑顔が消えない。ボロボロと涙を流しながらも、顔は笑い続けられる。接待業や営業など笑顔を絶やせない職業の人は、ぜひとも試してみよう。

●苦労顔の獲得講座

世の中には、笑顔でない顔を求める人もいる。軽いヤツだと思われがちな人なら、苦労した顔に変わりたいと願う。そんな要望を実現するのが、この講座だ。どんなに軽い顔でも、人生の年輪を刻んだ苦労顔に変身させる。ただし、獲得するのは非常に大変。付け焼き刃で苦労顔を得ることはできないので、とにかく苦労を積むしかない。これでもかと言うほどの苦労を短期間で経験させる。1日のうち23時間働く日が何日も続いたり、借りてもいない借金を背負って怖いオニーサンに追い回されたり、野良猫と同じ食事や住み処で暮らしたりなど、ドン底の生活を何ヶ月も続ける。その結果、肌は老化し、シワや白髪も増えて、見るからに苦労した人だと分かる姿が得られる。最近では、十代の若者の受講が増えている。最年少は、なんと小学生だ。苦労顔を得た小学2年生が、中年の教師に向かって「アンタよぅ、苦労が足りねえなあ。顔が、まだまだ青いぜ。オレに説教するんだったら、もっと苦労を経験してからにしな!」と言ったとか。小学生にはお勧めできないが、得意先から軽く見られがちな若社長などには最適だ。周囲から一目置かれるように、苦労顔を得よう!

●絶対結婚するぞセミナー

どうしても結婚したい人の望みをかなえるセミナー。ほとんどの結婚相談所は、お互いが気に入った場合だけに結婚できるが、このセミナーは違う。自分が希望する相手と絶対に結婚できる方法を教えてくれるとともに、きちんとフォローしてくれる。もちろん、お金は億単位で必要だ。何種類かのメニューがあり、最初に希望を尋ねる。相手の弱みを探し出して脅迫するとか、大量の札束を山積みにしながら結婚を申し込むとか、尋常ではない方法が目白押し。最悪の場合には全部を試し、何とか結婚にこぎ着ける。結婚後のメンテナンス・サービスも、オプションとして用意してある。需要が一番多いのは、結婚相手から命を守ること。この種の結婚方法だと、円満な生活というわけにはいかないようだ。絶対に結婚したい相手がいて、まったく相手にされていないなら、試してみる価値はあるかも。

●英語攻撃脱出セミナー

外国人に英語で話しかけられたとき、何とか切り抜ける方法を教えるセミナー。日本でも外国人が増え、英語で話しかけられる機会が多くなっている。けれども、英語を喋れる日本人は少なく、話しかけられてショック死する人が続出した。国会でも大問題として取り上げられ、英語を話せない人のためのセミナーに補助金が出されることに決まって、数多くのセミナーが生まれた。本セミナーの最大の特徴は、根性や度胸のない人でも、何とか生き延びられる方法を教える点だ。何種類もの対処方法があり、自分に適した方法を選ぶ。代表的なのは、外国人にオシリを見せる方法で、異常なまでの人気がある。最初は恥ずかしいが、ショック死するよりはましだと考えるためか、すぐに慣れて出来るようになる。上級者の中には、オシリに「NO」という入れ墨を彫っている者までいる。また、体を振るわせて発作が起きたように見せる方法も、効果があるらしい。最後の手段として、死んだ振りをする方法も教えている。気のせいか、最近の六本木では、オシリを見せたり死んだ振りをする日本人が多くなったようだ。何度も英会話の学習にチャレンジしたものの、いつも途中で挫折してしまった人に、最適なセミナーといえる。なお、主催者側では「ショック死する前にセミナーを受けよう」と訴えている。

●納豆克服講座

納豆がどうしても嫌いな人を、納豆好きに変えるための講座。関東人と結婚したり関東へ転勤になった関西人や、日本に来た外国人などを対象としている。1週間の合宿によって、正真正銘の納豆好きへと生まれ変わらせてくれる。当然ながら、合宿の食事は、すべて納豆を材料としたもので、腹が減って仕方なく食べてしまう。講座の目玉は、食事ではなく、納豆に親しみが持てるような各種イベントだ。見ず知らずの人どうしで行う“納豆の口移しリレー”は、口と口とがネバネバの糸で結ばれ、何ともいえないミョーな人間関係を生む。合宿中に毎日行う納豆洗顔や納豆洗髪では、体中が納豆だらけになって、粘り強い精神を形成する。このように工夫したカリキュラムにより、多くの人が、納豆なしでは生きられない体へと変身できる。卒業イベントの10時間の納豆風呂では、参加者全員が裸になって、納豆との一体感を満喫する。ある参加者は「極楽、極楽、超極楽。身も心も納豆と一緒。このままずーっと、納豆の中で生きていきたい」と感想を述べていた。合宿の最後には、誰もが納豆好きになって家へ帰る。ただし、あまりにも楽しすぎる講座のためか、納豆風呂が習慣になって、家族と別居する例が多いらしい。それを指摘された主催者側では、「他の家族も講座に参加して、納豆風呂好きになれば問題は解決する」と表明している。今まで以上に納豆を好きになるとの評判が広まり、最近では、納豆の好きな関東人の参加者も多いそうだ。

●グレ子を更正さたい親のセミナー

グレた子供を更正させる方法を、親に教えるセミナー。親がグレると子供がマトモになるという、統計的に証明済みの事実をもとにしている。そのため、親に対して、激しいグレ方を徹底的に教え込む。グレた親としての子供への接し方も、伝授してくれる内容の1つだ。たとえば、子供が小遣いを要求したら「小遣いがほしいだとぉ。自分で稼ぎな」と答えるとか、腹が減ったと文句を言ったら「生活費を入れねヤツには、メシを食わせねえんだよ」と言うとか、どんな状況にも対応できるように指導する。もし親がグレ用の衣装を持っていない場合は、長期の貸し出しサービスもある。この方法で親が1年ほどグレ続けると、たいていの子供は親に見切りを付けて、マトモに戻るらしい。ただし、親が会社をクビになるとか、近所や親戚から総スカンを食うといった、大きな副作用が伴う。主催者側が隠している統計的に証明済みの事実として、子供の更正率は高いものの、一度グレた親は直らないことが挙げられる。自分を犠牲にしてでも、子供だけはマトモに戻したい親にとって、最適なセミナーといえるだろう。

●教祖養成講座

カルト教団の教祖になるための講座で、マインド・コントロールの方法など、信者をだますための多彩なノウハウが習得できる。以前は、超能力者養成講座と名乗っていたが、こちらのほうが儲かるので、途中から看板を変えた。最初の訓練内容は、足を組んでのジャンプだ。ほんの少しでも飛び跳ねられると、空中浮揚だとだますための写真を、専属カメラマンに撮影してもらえる。また、専属の美容師には、教祖の風貌を得るためのアドバイスが受けられる。この講座でもっとも力を入れているのが、お布施を増やすノウハウだ。上手に脅しながら出家させ、全財産をむしり取るテクニックが、カンペキにマスターできる。人員の不足しがちな最初の半年は、サクラの信者を低額で派遣するオプションもある。最悪のケースも考慮し、ウソがバレそうになったときの言い訳や、悪事が発覚したときのシラの切り方なども教えてもらえる。「目が見えないから、悪いことはできません」といった白々しいものではなく、もっとまともな言い訳をだ。この講座を途中で挫折した人物が、カルト教団を起こして大きくはしたが、最後には逮捕されてしまったという。

●和解金取得ニュービジネス講座

「低資金でもバンバン儲かる」のキャッチフレーズで登場した、ニュービジネスの講座。「教祖養成」の上級コースとして位置づけられ、カルト教団の資金の確保術として、教祖たちの間で人気が高い。カルト教団さえ持っていれば、方法は簡単だ。ターゲットとなる村や町を決め、その中の土地を取得して、大勢で移り住む。薬品を用いて変な臭いを発するなど、近所に大きな迷惑をかけ続けると、立ち退きを求める住民運動に発展する。そしたら弁護士を登場させ、高額の和解金をふっかける。たいていの村や町では、歯がゆく思うものの、しぶしぶながら満額を払ってくれる。もし優秀な弁護士が見つからない場合は、だまし取った和解金の一定割合を支払う条件で、和解金専門の弁護士を派遣してくれるオプションもある。この講座のウリは、短時間で和解金を得るために必要な、悪賢い迷惑のかけ方だという。すべて修行という形を取っているので、マインド・コントロールされた全信者が徹底的に実施し、すごい効果がすぐに得られるという。各住民の玄関前でオシッコやウンコをする「ウン呼ぶ排出修行」や、夜中に大声でお経を読み続ける「お経、絶叫、悪魔払い修行」、玄関や窓を何時間も叩き続ける「用事もないのに、こんちには修行」、何十人もの信者が基幹道路上に仰向けで寝そべって並び、村の交通の邪魔をする「私をひき殺さないで修行」など、住民が困って逃げ出したくなるものばかり揃えてある。一般の人には難しいが、悪いことをしても全く動じない神経さえあれば、最適な儲け方法だろう。

●水不足でも快楽生活セミナー

悲惨と言われる水不足のときに、楽しく生活できるノウハウを教えてくれるセミナー。キャッチフレーズは「逆転の発想で、水不足を楽しもう」だ。一般的に水不足は、人々に悲惨な生活を強いる。何日も風呂に入れないとか、洗濯できないので何日も同じ服を着るとか、髪を洗えないので女性でも丸ボウズになるとか、通常では考えられない生活が待っている。セミナーでは、状況を変えられないのだから、気持ちを切り替えて楽しく生きようと教えている。もっとも強調しているのは、悪い状況を自慢し合うことだ。たとえば、何日も風呂に入れないのだから、体の臭いをかぎ合って喜んだらどうかと考える。ある人が「オレはなぁ、2週間も風呂に入ってないんだぞぉ。とくになあ、脇の下が自慢なんだ。ほーら、臭いをかいでみろよ」と言えば、臭いをかいだ人は「すげぇ、くせぇ。う、う、うらやましいなぁ」と答える。こんな会話が当たり前になると、水不足の生活も急に楽しく感じられるから不思議だ。同じように、「ずーっと風呂に入ってないから、髪の毛がバリバリしてるんだ。へへーん、いいだろー」と自慢できる。また「この食器は1カ月以上も洗ってないから、食事が一段と美味しいよ。ほーら、食べてごらん」と楽しめる。だんだんとエスカレートすれば、ウンコしてもオシリを拭かないとか、ワクワクするような生活が待っている。主催者側によると、普通の生活をしている人には近づきがたいが、その環境に慣れた人にとっては、天国のような世界なのだという。合宿方式のセミナーもあり、水不足の快楽生活を気軽に体験できる。普通の生活に我慢できない人は、積極的に参加してみよう。

●タバコを必ず止めさせてみせますセミナー

どうしてもタバコを止めれない人のための禁煙セミナー。「他の方法は生ぬるすぎる」と言うだけあって、過激な方法で禁煙を実現させる。参加者には「タバコを吸うと、たいへんなことになりますよ」と言うだけで、特別なことは何もやらせない。そのかわり、参加者がタバコを吸おうとすると、恐いオニーサンが何人も出てきて、タバコを取り上げながら本人を殴る。オニーサンは「今度タバコを吸ったらな、腕の1本ぐらいじゃ、すまねえぞ」と脅す。それでも、たいていの参加者は、我慢できずに再びタバコを吸おうとする。すると、待ってましたとばかりにオニーサンが出てきて、何度も殴る。3日も経過すれば、たいていの参加者はタバコに手を出さなくなる。アフターフォローも充実していて、セミナーを終えたあとでも、恐いオニーサンは現れる。自宅だろうが職場だろうか、どんな場所にでもオニーサンは出てくる。運の悪い参加者の中には、仕事場でタバコを吸おうとして、恐いオニーサンが現れて殴られ、会社をクビになったという。また「頼むから止めてくれ。もうセミナーは終わったんだろう」と泣き叫んでも、オニーサンは「いやあ、終わっちゃいねえ。アンタがタバコを吸わなくなるまで続くんだよ。セミナーの名前を覚えているかい。オレ達は、ウソつきと言われたくねーんだよ」と取り合ってくれない。こんな生活が何日も続くと、タバコを見ただけで体に震えがきて、必ずタバコを吸わなくなる。結果として、禁煙達成率100%を誇っているという。近頃では、タバコを吸っているので出世できないと、悩んでいる人も多い。数多くの禁煙方法を失敗したけれど、どうしても止めたい人は、真っ先に試してみるとよいだろう。

●酒を必ず止めさせてみせますセミナー

タバコを止めるセミナーが好評だったので、禁酒編も始まった。禁煙セミナーと同様に、オニーサンを使おうと考えたが、オニーサン側にも悩みがあった。あまりにも殴りすぎて、手が痛いのだそうだ。仕方なく別な方法を採用することにした。選ばれたのは、焼き印を押す方法だ。焼き印の内容には、「アホ」や「ボケ」や「どんくさ」などの言葉が用いられる。セミナー参加者が酒を飲もうとすると、オニーサンが出てきて酒を取り上げ、参加者の体に焼き印を押す。顔に「アホ」や「ボケ」などの文字が残ると、人前に出るのが恥ずかしく、大きな効果が期待できるという。このセミナーもアフターフォローが充実していて、セミナーを終えた後でも焼き印を押しにくる。これだけ徹底的にやってくれるので、絶対に酒を止められるという。何十箇所もの焼き印を押された参加者の一人は、会社中で物笑いのタネにされ、最後には会社をクビになった。しかし、新しいタイプのピエロとして大成功し、今では喜んでいるそうだ。主催者側では、唯一の欠点を正直に公表している。焼き印を押すときにはジューと音がし、参加者は「ぐえええぇ」などと悲鳴を上げる。この快感が病みつきになって、焼き印ほしさに、わざと酒を飲む人がいるという。フォロー担当者は「焼き印を目当てに酒を飲む人がいて、禁酒100%を達成できずに困っています。しかたがないので、毎日こちらから焼き印を押しに行く条件で、酒を止めてもらうように交渉中です。しくしく」と嘆いていた。病みつきにならない自信があって、酒を止めたい人は、絶対にお勧めできるセミナーだ。


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