川村渇真の「知性の泉」

太平洋戦争時代から受け継がれた言葉


太平洋戦争時代の日本軍といえば、論理的な思考能力のカケラもない指揮官や参謀たちの集まりで、多くの兵士や民間人が命を失う大きな原因でもあった。根性や精神力ばかり重視し、まともな作戦など立てられなかった。それらを意味するいくつかの用語が、今日まで語り継がれている。「指揮官がアホだと、兵士は悲惨」という表現がピッタリの内容ばかりで、アホさ加減を改めて知ることになる。こんな指揮官ばかりが出世した日本軍って、どんな組織だったの?


●大東亜恐怖圏(だいとうあきょうふけん)

建て前で「大東亜共栄圏」と称していたものの、本当の名前。虐殺や重労働などによって、現地の人々に恐怖を与えることから、この名前が採用された。もちろん建て前では、「列強の支配から解放する」とか、もっともらしいウソを並べ立てている。しかし、誰も信じておらず、本当の意図は見え見え。「建て前さえ取り繕えば、どんなに白々しくても済まされる」と思いがちな日本の特性は、今も健在で、役所を中心に数多く見付けられる。

●悪体の誤持(あくたいのごじ)

人間の幸福からはほど遠い極悪体制を、必死で維持しようとする考え方。一部のアホが「国体の護持」と呼んで推進していたが、日本国内だけでなく近隣アジア諸国にも多大なる迷惑をかけた体制だけに、説得力はほとんどない。マトモな人からは誤った行動に見えるので、現在では「誤持」の言葉が使われている。

●不気味が代(ぶきみがよ)

「大東亜恐怖圏」や「悪体の誤持」などに象徴される、国民を幸福にしない国家作りを望む歌。歌詞の内容は、民主主義や人権尊重からほど遠く、国民にとって不気味な社会を願ったもの。こんな歌にもかかわらず、国歌として使い続けたり、学校で強制的に歌わせたり、毎日流す放送局があったりと、時代錯誤的な現象が現実に起こっている。この状況が改善される見込みはゼロなので、マトモな現代人は無視するしかなさそうだ。どうしても歌わなければならない悲惨な状況に追い込まれたら、最初の「ぶ」を思いっきり強く発音して抵抗しよう。

●脅し改名(おどしかいめい)

建て前で「創氏改名」と呼んでいた政策の“正確な”名前。その内容とは、支配している植民地で、武力による脅しを用い、氏名を日本名に無理矢理変えさせること。人間としての尊厳を踏みにじる悪行だが、従わないと殺されるので、渋々ながら受け入れた人が多い。こんなことが平気でできるのは、人種差別主義者しかいない。

●連烏合艦隊(れん“うごう”かんたい)

日本海軍が持っていた「連合艦隊」の“実質的な”名前。この艦隊では、レーダーなどの科学技術の能力を軽視し、防御の強化を怠った。また、航空機時代へ移行したのが明らかにもかかわらず、時代錯誤の巨大戦艦主義を貫いた。さらには、資源などを輸送する船舶の護衛をほとんどせず、本土のいろいろな生産能力を低下させ、自軍の兵力増強にも悪影響を与えた。これらの結果、実質的には、やられるのをただ待つばかりの「烏合の集」の艦隊になってしまい(代表例はマリアナ沖海戦)、この名前で呼ばれるように変わった。

●白痴兵突撃(“はくち”へいとつげき)

日本陸軍がもっとも得意とした戦法で、最初は「白兵突撃」と呼んでいた。銃剣を持ち、敵めがけて何も考えずに突撃する。相手が機関銃で撃ちまくってきても、構わず“とにかく”前進する。ガダルカナルの戦闘では、突撃した兵士に大量の死者が出て失敗したにもかかわらず、同じ戦法を3度も繰り返した。外からは、兵士がまるで“白痴”状態に見えることから、この名前に変わった。司令官の頭の中に脳味噌が入っていないのではと思える行動で、常識ではとうてい考えられない。

●大和騙し(やまとだまし)

「日本人の精神力は特別」とか「日本人には屈強の精神力がある」などと言い続け、論理的でマトモな思考をさせないための洗脳の総称。最初の名称は「大和魂」だったが、内容が明らかになって以来、こう呼ばれるように変わった。指揮官の多くは、「精神力は無尽蔵にあるので、いくらでも増やせ、武器や戦力の差を補える」とか「気合いで敵をやっつけろ」と指導した。「白痴兵突撃」のように、よく考えたら誰もやらない戦法を実行するには、こんなアホ思想を植え付けることが必要だったのかも知れない。

●意味不明令(いみふめいれい)

「意味不明」と「命令」の合成語で「意味不明な命令」のこと。日本軍の司令官が出す命令の多くを指す。やたら大げさな形容詞を用い、具体的な内容が分からない命令がほとんど。たとえば、「天佑神助により、一挙××付近の敵を、撃滅せんとす」といったもので、どのように行動したらよいかを示していない。頭を使わない「白痴兵突撃」ばかり行い、凝った戦術など不要な司令官だから出る言葉ともいえる。

●大阿呆ん営(だい“あほ”んえい)

最初は「大本営」と呼ばれていた組織で、極度に大アホ(おおあほ)な司令官や参謀ばかり集まったので、この名前に変わった。「白痴兵突撃」が得意で、「意味不明令」を連発し、多くの兵士の命を奪った。史上最低の指令組織として、歴史に大きな汚点を残している。

●大阿呆ん営発病(だいあほんえいはつびょう)

大アホの集まりである大阿呆ん営が、ウソばかり発表する行為のこと。良い戦果ばかり報告するわりには、本土の爆撃が始まるなど、つじつまの合わないことが多い。論理的な分析力のある人はその点に気づき、ほとんどの発表がウソだと判断した。そのため、ラジオでの発表を聞くたびに「あーあ、また始まったよ。大阿呆ん営のウソつき病が」と言うようになり、発表の呼び名もこう変えた。


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