川村渇真の「知性の泉」

調査技術:より良い情報の取得で適切な判断を助ける


大まかな目的:より良い情報が得られる調べ方を提供する

 たいていの作業では、基礎として知識や情報が必要となる。その全部を知っていれば問題ないが、知らない部分は調査して得るのが一般的だ。そんなときに利用するのが調査技術で、目的に適した情報を上手に得るための方法を提供する。
 何か1つの値のように簡単な情報を調べるだけなら、特別な方法なんて知らなくても困らない。しかし、ある程度まとまった内容を調べる際には、どんな情報を集めたらよいのか、どのように調べたらよいのか、どこで調べたらよいのかなど、考えなければならない点がいくつも出てくる。そうしないと、調べて得た内容の質が高められないからだ。
 また、インターネットなどで情報を探すと、間違った情報や意見がどんどんと集まる。そんな情報の中から、少しでも良い情報を選ぶ必要がある。複数の意見を比べるだけでなく、どちらが正しいのかを評価し、より良い情報を選ぶ方法も、調査技術には含まれる。
 調査する項目によっては、単に情報を入手する方法では得られない内容もある。観察したり、実験したり、アンケートを用いたりして、必要な情報を得るための方法も必要だ。このような調べ方に関しても、手順や注意点を提供する。このような点も含め、質の高い調査を実現するのが調査技術である。

期待される効果:得た情報が良いほど適切な判断が可能になる

 何かを分析したり検討する際には、基礎として様々な知識や情報を利用する。もし、そうした情報が正しくなければ、適切な分析や検討など実現できない。正しい情報を得られてはじめて、分析や検討の質を向上させられる。
 この正しい情報というのが、意外に難しい。データが事実であっても、条件などが適切でなければ、そのままで利用できない。最適な条件から意識的に外し、自分たちに都合の良いデータを得ようとする人も実際にいるからだ。また、加工したデータなら、加工方法が適切でないと、利用目的によっては正しくないデータになる。データに評価を加えてある場合、論理的で総合的な評価をしてなかったり、評価方法が不適切だと、正しい意見とは言えない。これらのように、いろいろな形の不適切データが世の中には存在する。
 良い調査では、こうした中から適切な情報を選び、調査結果として採用する。選ぶ基準は、調査の目的から導き出し、目的から外れないように考慮してある。調査の過程を数段階に分け、そのまま報告書にまとめられるので、第三者による検査も可能だ。これによって、レビュー可能な調査結果に仕上げられる。
 以上のような特徴によって、調査結果を利用した分析や検討の質が向上する。良い情報を使っているのはもちろんだが、何か問題点が発見されたとき、調査結果の中身もレビューできるため、どこが悪いのかを発見しやすい。基礎となる情報の質は、適切な分析や検討に不可欠な要素だけに、この意味は極めて重大だ。
 世の中のほとんどの行為で、いろいろな情報が使われる。悪い判断や意思決定の多くは、適切な決定方法を身に付けてない以前に、良くない情報を使ったために引き起こされている。基礎となる情報が正しいか確認すらしないだけでなく、確認が容易な形で調査結果が提供されてない場合が多い。
 調査技術を習得した人が増えると、こうした状況がかなり改善されるはずだ。社会の様々な場面で適切な判断が行われ、社会の進歩に大きく貢献する。また、ダメな意思決定に泣かされる人が大幅に減るだろう。

調査技術の概要:目的に適した調査項目や調査方法を導き出す

 実際にどんな項目を調べるかや、どこを調べればよいかなどは、調査対象の分野によって異なる。しかし、それを求める方法や考慮点は共通で使える。この部分こそ、調査技術の本体だ。
 どんな調査でも、必ず目的がある。その目的を無視して調査すれば、得られた調査結果が使いものにならず、価値のない調査に終わってしまいやすい。たとえば、新しい開発手法を調査する場合を考えてみよう。調査の目的は、それが実際に使えるかどうか判断することだとする。しかし、目的を知らずに調査すると、開発手法の特徴を調べるだけになりやすい。
 逆に、調査目的を知っていれば、開発手法の特徴に加えて、実用度を判定できるような調査項目を事前に洗い出すはずだ。実際に使われた件数、そのうちの成功数と失敗数、使用後の満足度、再び使いたいと思った数、成功例および失敗例でどんな対象に使ったか、そのまま使っているかアレンジしているか、などが挙がる。全部を調べられなくても、ある程度の情報が得られ、大まかな実用度ぐらいは出せる。
 このように、調査目的に合わせて調査項目などを決めるのが、質の高い調査では不可欠だ。実際には、調査目的から調査項目を導き出すわけではない。調査目的からは調査結論を導き出し、調査結論を得るための調査項目と調査方法を求める。調査結論というのは、調査によって得る最終的な結論で、上記の例では開発手法の実用度が該当する。こうした形で、調査内容や行為をいくつかに分解し、より多くの人が正しくできるように工夫したものが、調査技術の中身だ。
 まずは、調査結果に含まれる代表的な内容を挙げてみよう。調査の質を維持ために絶対に欠かせない項目には、「必須」と付けてある。

調査結果に含まれる代表的な内容
・調査目的:調査結果を利用する主な目的(必須)
・調査項目:調査結論を得るのに欠かせない項目と必要理由(必須)
・調査方法:調査項目ごとで、調査項目結果を得るための方法(必須)
・調査範囲:調査項目ごとに、調査に用いた方法と調べた範囲
・調査項目結果:調べて得られた調査項目ごとの中身と信頼度(必須)
・調査項目結果補足:課題として残った問題点など
・調査結論:調査項目結果から導き出された結論とその検討過程
     (本来は必須だが、調査を他人に依頼するとき不要のことも)
・採用情報一覧:調査結果に採用した情報の概要と情報源
・却下情報一覧:正しくないと評価された情報の概要と却下理由
・解説資料:調査対象に関わる難しい技術などを説明する資料

 この中で意外に重要なのが調査範囲だ。期待した調査結論が得れなかったとき、調査が適切だったか判断する材料として役立つ。全体を見ると分かるが、こうした内容を含んでいるため、調査の内容や作業が細かく分解でき、レビュー可能な調査内容に仕上げられる。
 上記の代表的な内容を説明するために、少し変わった例として浮気調査を取り上げよう。調査目的は、対象人物の浮気の有無を明らかにすることだが、そのためには浮気という行為の定義を決めなければならない。肉体関係があるとか、いくつかの条件を定める。調査結論は浮気の有無になるものの、単純に「ある」と「なし」では済まされない。「ある」の方は証拠を見付ければ明らかだが、「なし」の方は証拠を提示できない。また、完全に「ある」か「なし」ではなく、その間の疑わしい状態もあり得る。途中を複数の段階に分けて定義し、それを調査結論の形式とする。また、「ある」の場合には、浮気相手の情報も調査結論とその形式に含める。
 浮気調査で難しいのは、証拠が見付からない場合だ。費用を考えると永遠に尾行し続けることは無理なので、最初は決められた期間に限定し、その間に何も証拠が出なければ「ほとんどないに近い」という調査結論にする(「絶対にない」とは言えないので)。もし疑う要素が出たら、調査期間を延長するかどうか考える。最初に設定する期間だが、浮気調査の経験が多ければ、どの程度の期間を尾行したら証拠がつかめるのか、大まかな目安を持っているだろう。それを参考にして決めればよい。
 調査項目およびその形式は、尾行によって得られる情報となる。尾行の結果を調査項目結果や調査項目結果補足としてまとめ、調査結論を出すための基礎データとして利用する。このように浮気調査であっても、調査技術を適用することは可能だ。

 調査結果に含まれる内容を求めるための手順も、調査作業の流れとして規定する。ある程度まで本格的な作業工程が必要なので、それを基準に教育内容を設計する。本格的な流れを知ったうえで、上手に簡素化すれば、調査の質を確保できると考えてのことだ。具体的な調査作業の流れは以下のとおり。

調査作業の流れ(やや本格版)
・調査目的を明確にする
・(必要なら)対象分野の全体像を簡単に調べる
・目的に合った調査結論の形式を定める
・調査結論に必要な調査項目と形式を求める
  ・(必要なら)調査結論の導き出し方も求める
・調査項目ごとの情報の詳しさを大まかに決める
・調査項目ごとに情報源の候補を複数挙げる
  ・(必要なら)調査項目ごとの調べ方も決める
・有望な情報源から順に調べて、具体的な情報を得る
・得た複数の情報を比べながら、正しさを評価する
・評価結果をもとに、採用する情報を選ぶ
・採用情報から調査項目結果を作る
・(必要なら)調査項目結果から調査結論を導き出す
・以上の内容を整理し、間違いがないか検査する
・(問題点が見付かったら)その部分の情報を追加で得る
・追加情報を組み入れて内容を整理し、再び検査する
(問題点がなくなるまで、情報追加と検査を繰り返す)

 簡単に説明すると、「調査目的→調査結論の形式→調査項目と形式→調査項目ごとの情報源→得られた情報→得られた情報の評価結果→採用された情報→調査項目結果→調査結論」という流れで、それぞれの内容を求めながら進む。かなり細かく分かれているので、隣との関係が正しいかを検査しやすい。その分だけ、作業ミスが発生しづらいというわけだ。

教育内容の構成:実質3段階に分けて調査技術を習得させる

 調査技術の教育では、調査に必要な能力を、大きく3段階に分けて設計してみた。最初の段階では、調査の基本を理解させる。次の段階では、もっと本格的な調査方法を教える。上記の調査内容の全項目を含む形で、実際の作り方を手順まで含めて習得させる。第3段階では、少し特殊な調べ方を紹介し、幅広い調査ができる能力を与える。
 実際の設計例では、もう1つの段階を最後に加えた。調査での応用と注意点を並べ、調査の質を高められるように配慮してのことだ。以上の設計例を整理すると、以下のようになる。

体系化した調査技術の教育内容の設計例
・調査の基本
  ・調査の基本的な考え方
  ・調査結果に含むべき最低限の内容
  ・調査作業の基本的な流れ
  ・個々の情報を得る様々な手段
・調査の本格的な作業
  ・調査結果に含むべき本格的な内容
  ・調査作業の本格的な流れ
  ・調査目的と調査結論の形式を定める
    (調査結論の導き出し方も含めて)
  ・調査項目とその詳しさを決定する
  ・情報源から実際の情報を得て記録する
  ・得られた情報を評価し、採用する情報を決める
  ・調査内容全体が適切か検査する
  ・調査結果を報告書にまとめる
  ・調査を依頼する側の手順と注意点
・特殊な調べ方を用いる場合
  ・特殊な調べ方が必要となる状況
  ・この種の調べ方に共通する適切な記録方法
  ・観察による調べ方
  ・実験による調べ方
  ・アンケートによる調べ方
・調査での応用や注意点など
  ・簡単な調査での省略方法
  ・人間相手に調査する場合のポイント
  ・調査結果の質を向上させる注意点
  ・判定が難しい場合の情報評価方法
  ・調査に利用しやすい資料の作り方

 3段階目の特殊な調べ方としては、観察、実験、アンケートの3つを取り上げた。他に、測定による調べ方もあるが、実験による調べ方とかなり似ているので、一緒に扱うことにした。これらは、調査項目の調査方法として利用し、必要な調査項目だけで用いる。この3つを使えるようになれば、資料を読んで情報を得るだけで済まない調査が可能な能力が身に付く。ちなみに、浮気調査で対象人物の行動を追うのは、観察による調べ方の一例である。

段階分けされた教育内容:段階的に習得可能な形で設計

 前述のように、4段階に分けた教育内容をもとにして、教育しやすく細分化した例を設計してみた。4段階の区切りだけでなく、各段階内の項目の並びまで同じにしてある。
 最初の「調査の基本」段階では、まず調査の基本的な考え方(AA)を理解させる。調査に目的があり、それに適した形で調査の内容を作り進むことをだ。さらに、調査目的から調査結論までの流れを最後に検査し、調査の質を高めることも含める。
 続けて、調査結果に含むべき最低限の内容(AB)を示す。それぞれの項目でどんな内容を書くかを教える。次は、最低限の内容を作るための作業の流れ(AC)で、調査が失敗しにくくするために必要なものだ。その後に、実際の情報を得るための代表的な4つの方法(AD)を学ばせる。
 第1段階の最後に、ここまでの学習内容をまとめて練習して(AE)、実際にできるようになってもらう。この段階では、調査の手順や基本事項を理解するのが主な目的なので、教材や練習に用いる資料は、簡単なものに限定する。読んですぐ分かるのはもちろん、書いてある内容がすべて正しいという前提で練習する。

調査技術教育の段階分けの設計例(1/4:調査の基本)
AA:調査の基本的な考え方
  ・AA01:調査には目的がある
  ・AA02:目的に適した調査結論の形式が大切
  ・AA03:調査結論を導き出すために情報を得る
  ・AA04:得られた情報の中から正しいものを選ぶ
  ・AA05:選択した情報から調査結論を導き出す
  ・AA06:調査目的から調査結論までの流れを検査する
AB:調査結果に含むべき最低限の内容
  ・AB01:調査目的
  ・AB02:調査結論と形式
  ・AB03:調査項目と形式
  ・AB04:調査項目ごとの調査方法
  ・AB05:調査項目ごとに現実的な調査範囲
AC:調査作業の基本的な流れ
  ・AC01:工程:調査目的を明らかにする
  ・AC02:工程:調査結論の形式を定める
  ・AC03:工程:調査結論に必要な調査項目を導き出す
  ・AC04:工程:調査項目ごとに調査方法を求める
  ・AC05:工程:調査項目ごとに実際の情報を得る
  ・AC06:工程:得られた情報から調査項目結果を作る
  ・AC07:工程:調査結果から調査結論を導き出す
AD:個々の情報を得る様々な手段
  ・AD01:紙の資料から読み取る
  ・AD02:ネット経由で検索する
  ・AD03:誰かに尋ねて教えてもらう
  ・AD04:自分で実際に試して作り出す
AE:簡単な調査作業の練習
  ・AExx:(ACと同じ内容なので省略)
  ・AExx:(上記練習でやらなかったADxxをすべて含める)

 第2段階の「調査の本格的な作業」では、かなり本格的な調査内容と調査手順を取り上げる。最初は本格的な調査結果に含まれる中身を知り(BA)、どんな内容を明らかにすればよいのか理解してもらう。次は、本格的な調査作業の流れ(BB)で、調査の質を高めるための作業手順を大まかに教える。
 手順の中で重要な作業は、抜き出して個別に学んでもらう。作業手順と合わせて並べてあり、調査目的と調査結論の形式の作り方(BC)、調査項目とその詳しさを決定(BD)、情報源から実際の情報を得て記録(BE)と続く。得られた情報を評価して採用情報を決める作業(BF)は、独立した方が理解しやすいので、1つのブロックとして分けてある。続けて、作成した調査内容が適切かどうか内容全体を検査する方法(BG)と、調査報告書の作り方(BH)を教える。後は、ここまでの内容をまとめて練習し(BI)、実際にできる能力を身に付けさせる。
 調査を依頼する能力(BJ)も重要なので、調査技術の中心部分を学んだ後に入れる。これも練習して(BK)、実際にできるようになってもらう。

調査技術教育の段階分けの設計例(2/4:調査の本格的な作業)
BA:調査結果に含むべき本格的な内容
  ・BA01:調査目的
  ・BA02:調査結論と形式
  ・BA03:調査項目と形式、調査結論を導く検討過程
  ・BA04:調査項目ごとの調査方法
  ・BA05:調査項目ごとに現実的な調査範囲
  ・BA06:調べて得られた調査項目ごとの調査項目結果
  ・BA07:調査項目結果の不足点などを示す調査項目結果補足
  ・BA08:正しいと評価された採用情報一覧
  ・BA09:正しくないと評価された却下情報一覧
  ・BA10:調査対象に関わる難しい技術などを説明する解説資料
BB:調査作業の本格的な流れ
  ・BB01:調査の質を上げるためには流れと記録が重要
  ・BB02:工程:調査目的を明らかにする
  ・BB03:工程:必要に応じて、対象分野の概要を知る
  ・BB04:工程:調査結論の形式を定める
  ・BB05:工程:調査結論に必要な調査項目と形式を導き出す
  ・BB06:工程:調査項目ごとの情報の詳しさを大まかに決める
  ・BB07:工程:調査項目ごとに情報源と調査方法を求める
  ・BB08:工程:有望な情報源から順に調べ、実際の情報を得る
  ・BB09:工程:得た情報を比べながら正しさを評価する
  ・BB10:工程:評価結果で採用情報を選び、一覧表に整理する
  ・BB11:工程:採用した情報から調査項目結果を作る
  ・BB12:工程:調査項目結果から調査結論を導き出す
  ・BB13:工程:ここまでの内容を整理し、全体を検査する
  ・BB14:工程:問題点が見付かったら、該当箇所を再び調べる
  ・BB15:工程:追加情報を加えて、全体を整え直す
BC:調査目的と調査結論の形式を定める
  ・BC01:調査目的が満たすべき条件と代表例
  ・BC02:本当の調査目的を見極める方法
  ・BC03:調査結論が満たすべき条件と代表例
  ・BC04:調査結論のいろいろな形式
  ・BC05:調査目的から調査結論を導き出す方法
  ・BC06:調査目的と調査結論の記述方法
BD:調査項目とその詳しさを決定する
  ・BD01:調査結論を得るのに必要な要素を洗い出す
  ・BD02:要素を整理統合して調査項目に仕上げる
  ・BD03:調査項目ごとの形式を決める
  ・BD04:調査項目から調査結論を求める方法を明確化する
  ・BD05:調査項目ごとで調査結論に必要な詳しさを求める
  ・BD06:調査項目ごとに最適な調べ方を決める
  ・BD07:複数の調査項目で調べ方を比べ、可能なら作業を統合
  ・BD08:調査項目に関わる内容の記述方法
BE:情報源から実際の情報を得て記録する
  ・BE01:調査項目ごとに、情報源を複数挙げる
  ・BE02:情報源から得られる情報を予測して評価する
  ・BE03:評価の高い情報源から順に、実際の情報を得る
  ・BE04:得た情報を読み取って、調査項目結果を作る
  ・BE05:得られた情報自体の整理方法
  ・BE06:情報源、その評価、調査項目結果の記述方法
  ・BE07:調査範囲の記述方法
BF:得られた情報を評価し、採用する情報を決める
  ・BF01:個々の情報ごとに全体の流れや構成を評価する
  ・BF02:得られた情報の事実と意見を切り分ける
  ・BF03:事実と意見を整理できる記述方法
  ・BF04:事実が正しいか評価する
  ・BF05:意見が適切かを評価する
  ・BF06:判定が難しい場合の対処方法
  ・BF07:採用情報の整理および記録方法
  ・BF08:却下情報の整理および記録方法
BG:調査内容全体が適切か検査する
  ・BG01:全体の流れを整理して検査できる記録方法
  ・BG02:調査目的と調査結論の関係検査
  ・BG03:調査結論と調査項目の関係検査
  ・BG04:調査項目ごとの調査方法の妥当性検査
  ・BG05:調査項目結果が調査項目形式を満たすかの検査
  ・BG06:採用情報と却下情報の妥当性検査
  ・BG07:検査に不合格した場合の追加調査
  ・BG08:追加調査で得た情報の加え方
BH:調査結果を報告書にまとめる
  ・BH01:調査結果の報告書で注意すべき点
  ・BH02:報告書での追加する項目と形式
  ・BH03:調査結果の中で絶対に欠かせない項目
  ・BH04:調査結果の報告書に適した書類形式
  ・BH05:工程:報告書に必要な詳しさを最初に決める
  ・BH06:工程:詳しさに適した必要項目を選ぶ
  ・BH07:工程:選んだ項目を順番に記述する
  ・BH08:工程:必要な資料などを追加する
BI:少し難しい調査作業の練習
  ・BIxx:(BKと同じ内容なので省略)
  ・BIxx:(BHの報告書作成も含める)
BJ:調査を依頼する側の手順と注意点
  ・BJ01:依頼引受技術の基本を理解する
  ・BJ02:工程:調査目的を明らかにする
  ・BJ03:工程:調査結論の形式を定める
  ・BJ04:工程:可能なら調査項目と形式を導き出す
  ・BJ05:工程:使えそうな資料を整理する
  ・BJ06:工程:依頼相手から受け取る内容の形式を規定する
  ・BJ07:工程:依頼条件を定め、必要な資料を揃えて依頼する
  ・BJ08:工程:調査結果を受け取り、内容が適切か評価する
  ・BJ09:工程:必要に応じて、調査のやり直しを依頼する
BK:少し難しい調査依頼の練習
  ・BKxx:(BJと同じ内容なので省略)

 第3段階の「特殊な調べ方を用いる場合」では、特殊な調べ方を取り上げて、いろいろな調査ができる能力を身に付けさせる。まず最初に、特殊な調べ方が必要となる状況(CA)を解説する。次に、この種の調べ方に共通する適切な記録方法(CB)を教える。この2つは、いろいろな調べ方を上手に利用するための能力なので、取り上げた3つ以外の調べ方を使うときに役立つ。
 続けて、観察による調べ方(CC)、実験による調べ方(CD)、アンケートによる調べ方(CE)の3つを取り上げる。どれも作業手順を決め、失敗しにくいように考慮してある。また、最後に練習を入れて、実際にできるようになってもらう。

調査技術教育の段階分けの設計例(3/4:特殊な調べ方を用いる場合)
CA:特殊な調べ方が必要となる状況
  ・CA01:単に調べただけでは調査項目結果が得られない状況
  ・CA02:調査項目結果を得るのに必要な詳細項目を洗い出す
  ・CA03:調査項目結果を得るのに適した調べ方を選ぶ
  ・CA04:選んだ調べ方が正しいか、事前に確認する方法
CB:この種の調べ方に共通する適切な記録方法
  ・CB01:細かな手順や条件まで記録することが大切
  ・CB02:多数の項目の記述は、階層箇条書き形式で整理する
  ・CB03:できるだけ数値で記録して、正確さを向上させる
  ・CB04:途中で気付いた点を何でも細かく記録する
  ・CB05:正確に記述するための注意点
  ・CB06:まとまった内容を整理して記述する方法
CC:観察による調べ方
  ・CC01:観察による調べ方の特徴と適する状況
  ・CC02:工程:調査項目結果を得るのに必要な観察項目を求める
  ・CC03:工程:観察項目結果から調査項目結果の求め方を決める
  ・CC04:工程:観察項目結果を得るための観察方法を決める
  ・CC05:工程:調査項目に最適な観察の実施条件を求める
  ・CC06:工程:観察項目結果の適切な記録方法を決める
  ・CC07:工程:観察対象を実際に観察して記録する
  ・CC08:工程:観察項目結果が問題ないか評価する
  ・CC09:工程:観察項目結果から調査項目結果を求める
  ・CC10:観察による調べ方での注意点
  ・CC11:観察による調べ方の練習
CD:実験による調べ方
  ・CD01:実験による調べ方の特徴と適する状況
  ・CD02:工程:調査項目結果を得るのに必要な実験項目を求める
  ・CD03:工程:実験項目結果から調査項目結果の求め方を決める
  ・CD04:工程:実験項目結果を得るための実験方法を決める
  ・CD05:工程:調査項目に最適な実験の条件を求める
  ・CD06:工程:実験項目結果の適切な記録方法を決める
  ・CD07:工程:細かく観察しながら実験して結果を記録する
  ・CD08:工程:実験項目結果が問題ないか評価する
  ・CD09:工程:実験項目結果から調査項目結果を求める
  ・CD10:実験による調べ方での注意点
  ・CD11:実験による調べ方の練習
CE:アンケートによる調べ方
  ・CE01:アンケートによる調べ方の特徴と適する状況
  ・CE02:工程:調査項目結果を得るのに必要なアンケート項目を求める
  ・CE03:工程:アンケート項目結果から調査項目結果の求め方を決める
  ・CE04:工程:アンケート項目結果を得るための質問方法を決める
  ・CE05:工程:調査項目に最適なアンケートの実施条件を求める
  ・CE06:工程:質問方法と実施条件からアンケート用紙を作成する
  ・CE07:工程:項目結果の適切な記録方法を決める
  ・CE08:工程:決められた対象にアンケートを実施する
  ・CE09:工程:アンケート結果が問題ないか評価する
  ・CE10:工程:アンケート結果から調査項目結果を求める
  ・CE11:アンケートによる調べ方での注意点
  ・CE12:アンケートによる調べ方の練習

 第4段階の「調査での応用や注意点など」では、調査技術の向上に関わる様々なことを取り上げる。簡単な調査に適した省略方法(DA)では、本格的な調査技術を生かしながら、簡単な調査を効率的に行うコツを教える。人間相手に調査する場合のポイント(DB)は、誰かに尋ねて情報を得るための技術だ。質問回答技術を利用し、調査用の質問に適した質問文の作り方などを解説する。他に、調査結果の質を向上させる注意点(DC)、判定が難しい場合の情報評価方法(DD)も加えてある。
 オマケとして、調査に利用しやすい資料の作り方(DE)も簡単に紹介する。こうした点を満たした資料が増えれば、調査がやりやすくなるだけでなく、社会の様々な行為の質も向上するはずだ。

調査技術教育の段階分けの設計例(4/4:調査での応用や注意点など)
DA:簡単な調査に適した省略方法
  ・DA01:簡単な調査でも必須な内容
  ・DA02:簡単な調査に適した記録方法
  ・DA03:後から必要に応じて詳しく追記する方法
  ・DA04:追記が必要な箇所の見付け方
  ・DA05:後から確認可能な形での資料の記録方法
  ・DA06:簡単な調査での報告内容と報告方法
DB:人間相手に調査する場合のポイント
  ・DB01:質問回答技術の基本を知る
  ・DB02:工程:尋ねたい項目を事前に整理する
  ・DB03:工程:質問項目ごとに期待される回答形式を求める
  ・DB04:工程:質問項目ごとに適切な質問文を作成する
  ・DB05:工程:調査目的や情報利用範囲を相手に説明する
  ・DB06:工程:用意した質問文を投げかけ、回答内容を得る
  ・DB07:工程:回答内容を回答形式に照らし合わせて評価する
  ・DB08:工程:必要に応じて質問を追加し、不足する情報を得る
  ・DB09:工程:回答内容を整理して、調査項目結果を作る
  ・DB10:記録が残る質問回答方法を可能な限り利用する
DC:調査結果の質を向上させる注意点
  ・DC01:調査内容の全体像が見える形で整理し、要所要所で検査する
  ・DC02:調査目的から調査結論までの流れで論理性を高く保つ
  ・DC03:調査項目結果から調査結論の求め方を厳密に規定する
  ・DC04:調査項目結果に使う情報の正しさを慎重に確認する
  ・DC05:判定結果の不安な情報は、妥協せずに詳しく調べる
  ・DC06:最後まで残った問題点などを、正確に説明する
  ・DC07:情報源を明示し、別な人が調べて確認できる形に
DD:判定が難しい場合の情報評価方法
  ・DD01:評価した判定結果の種類と意味
  ・DD02:ウソやダメ情報の特徴と代表例を知る
  ・DD03:おおもとの情報までたどって正しいか確認する
  ・DD04:データ作成や集計方法を調べ、意味があるか判定する
  ・DD05:内容全体で論理的か確認する
  ・DD06:総合的に検討しているかの度合いを判定する
  ・DD07:根拠をキチンと示しているか確かめる
  ・DD08:細かな部分まで、信頼できる専門家の意見と比べる
DF:調査に利用しやすい資料の作り方
  ・DF01:事実と意見が区別しやすい形で書く
  ・DF02:含まれるデータの詳しい条件を明記する
  ・DF03:データを加工したときは元データも付ける
  ・DF04:他の情報源などは詳しく正確に載せておく
  ・DF05:評価などが含まれるなら、過程を論理的に解説する
  ・DF06:内容全体の要点や構成が容易に見れる形でまとめる

 以上のような教育内容であれば、調査技術を段階的に習得できる。観察やアンケートによる調べ方も加えてあるため、いろいろな調査ができるようになるはずだ。

教材や教育方法:特徴の異なる調査例を数多く用意する

 調査技術の教材は、世の中にあるものをそのまま流用するわけにいかない。世間に出回っている資料の多くは、間違いが含まれていたり、記述が不正確だったり、まとめ方が下手だったりするからだ。こうした資料を利用して構わないのは、調査技術をある程度まで身に付けた後である。
 仕方がないので、教育の第1段階と第2段階では、細部まで十分に考慮した資料を作成し、それを教材として用いる。その段階で習得する内容に合わせる形で作り、余分な迷いを不要にしなければならない。こうした教材を作って、学習がスムーズに進むように配慮する。
 こうした専用教材は、作るのがかなり大変だ。しかし、いったん作ってしまえば、余計な要素が含まれない分だけ、教育の効果が向上する。現実の社会にあるような資料は、その学習が終わって理解した後で試せばよい。試す機会は、いくらでもあるだろう。
 調査で何を調べるかは、調査目的や調査対象によって大きく異なる。そのため、一般的な調査方法を知っただけでは、幅広く調査できるようにはなりにくい。そうした点を補うために、様々な調査目的や調査対象の調査例を用意する。すべてに本格的な報告書を付け、そのように作った理由を解説した資料まで加えれば、非常に有益な資料となる。解説まで読むと、作業手順の各段階でどのようにすればよいのか、ハッキリと分かるはずだ。こうしたサンプルを数多く揃えて、誰もが見れるようにしておく。ある程度まで調査技術を習得した後で見れば、後は自分で能力を高められるだろう。

他の教科との関連:最低限必要なのは作文技術

 調査技術でも、調査結果を報告書の形で作成したり、途中の結果を記録する必要がある。そのため、作文技術の習得が必須となる。長い文章を書く機会はそれほど多くないので、自分の考えている内容を短い文章で表現する程度の能力が求められる。
 教育内容の設計例でも登場したとおり、人間相手の調査では質問回答技術を、誰かに調査を依頼するときは依頼引受技術を、習得しておいた方がよい。ただし、こうした行為を本格的に行う(難しい内容で行う)のでない限り、それぞれの技術で高いレベルは求められない。しかし、基本レベルの習得は必要だ。調査技術の前でも後でも構わないから、一緒に学ぶべき学習内容に組み込んだ方がよい。
 調査する内容によっては、得た情報の評価が難しい場合もある。こうしたときに役立つのが評価技術で、質の高い調査には欠かせない。調査技術を習得した後で構わないから、評価技術を本格的に学習するとよいだろう。

(2001年9月11日)


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