川村渇真の「知性の泉」

教育内容の設計例で能力教科の中身を知る


代表的な能力教科の中身を説明する

 価値の高い教育では、評価技術や議論技術といった現代社会で必要な能力教科を、一番重視している点が最大の特徴だ(それ以外にもあるが、能力教科が一番の目玉)。その能力教科だが、現在の学校では高等教育でさえほとんど教えていない。そのため、どんな内容なのか想像できない人が多いだろう。また、まったく想像できないと、本当に教えられるのか疑問に持つ人もいるだろう。
 そこで、代表的な能力教科がどんな内容なのか、順番に説明することにした。どんな教育内容に仕上がるのかイメージを持ってもらうことが大切なので、実際の教育内容に近い形でまとめる。具体的には、以下の説明形式を採用した。

能力教科の設計例の説明形式
・教科の大まかな目的
・習得によって期待される効果(個人および社会)
・体系化して整理した教育内容の構成
・学習順に段階分けされた教育内容
・主な段階ごとで、習得すれば身に付く能力
・教育内容の大まかな説明(最初の方の段階を中心に)
・教科独自の教材や教育方法の例(ある場合のみ)
・補足:他の能力教科との関連(習得順序など)

 このうち「期待される効果」だが、個人に対しては、どんなことができるようになるのかを明らかにする。社会に対しては、習得した人が増えることで、どんな点が改善できるかを示す。このように、どの能力教科でも、個人と社会の両方に何らかのメリットを与える。
 教育内容の中身は、まず体系化して整理しなければならない。その上で、学びやすいように学習順序を考え、数十個の段階に分ける。さらに、段階の主な区切りごとに、習得すれば身に付く能力を明らかにする。こうすれば、どこまで学習すると何が身に付くのか、明確に示せる。なお、全体での段階数が多いので、段階の後半を省略するかもしれない。構成と段階タイトルだけでは伝わらない部分もあるため、大まかな説明を文章で加える。
 教科独自の教材や教育方法がある場合は、その解説も入れる。最後に、他の能力教科との関連を示し、その教科の位置付けを明らかにする。これが共通した説明形式だ。

教育内容の中身は設計して求める

 提示する教育内容の方だが、他のページで何度も繰り返しているように、キチンと設計しなければならない。通常は、目的から先に定めて、最終的な学習段階まで求める。教科の設計で考慮すべき点だが、整理すると以下のようになる。別なページで詳しく解説しているので、ここでの説明は省略しよう。

能力教科の教育内容を設計する際の考慮点
・期待される個人的および社会的効果を重視する
  ・教科の習得で期待される効果を明確にする
  ・実際に役立つ形の能力を習得させる
  ・例外やトラブル対処なども可能な限り含める
・実際の習得度をできるだけ高める
  ・初歩の初歩から始めて、段階的に習得が進む形に
  ・習得できる能力を明示して、学習意欲を高める
  ・習得した能力を実際に利用し、能力向上の実感を味わってもらう
  ・実際の例を山ほど用意し、そうする理由を丁寧に説明する
  ・実例には悪い例も含め、悪い理由と改善方法を解説する
・教える側と学ぶ側を迷わせない形でまとめる
  ・教科の修得目的や得られる能力を明らかにする
  ・習得順序や教育内容を論理的かつ体系的に構成する
  ・習得順序など、他の能力教科との関連も示す

 すべての能力教科で、以上のような点を考慮しながら、教科の中身を設計する。設計の過程は長いので省略し、設計した結果である教科の中身だけを紹介する。それでも意図は十分に伝わるはずなので、問題ないと思う。
 どんな能力教科を取り上げるかは、本コーナーの扉ページを見てほしい。ざっと挙げただけでも30以上の教科になってしまった。どれも重要なものばかりで、外すことはできない。数が多い分だけ整理するのに時間がかかるので、全部を説明し終わるのはかなり先になるだろう。

能力教科の中身を知れば、既存教育との根本的な違いが分かる

 能力教科の設計例を数多く知れば、これらが実際に教育できると理解できるはずだ。また、全員の習得は無理にしても、真剣に学んだ人の半数以上が基礎部分なら習得可能だと分かる。能力教科の教育は、夢物語ではなく、現実に可能な内容である。まず最初に、その点を理解してほしい。
 能力教科の特徴は、本当に重要な能力を直接扱うので、対象となる能力をキチンと習得できる点である。その意味は、能力教科の中身を知ることで分かるし、既存教育との根本的な違いが明確になる。既存の教育がほとんど教えてなくて、より重要な能力だからだ。この違いは非常に大きい。
 能力教科の中身を知ったら、向上心の強い社会人なら、いますぐにでも本気で習得したいと思うだろう。また、子供を持つ親なら、既存の教育内容の代わりに、学ばせたいと考えるだろう。同様に、本サイトを読んだ生徒(または学生)も、既存の教育内容の代わりに勉強したいと思うだろう。
 しかし、まだ全体像を設計しただけなので、具体的な教材などは作っていない。それがないと、多くの人に教えるのは難しい(もちろん、教育内容の中身は頭の中にあるので、少人数が相手なら自分が教えることは可能だが、今は別なことに時間を使うべきだと考えている)。教科書を作るだけでなく、山ほどの例を示すことも重要なので、教材作り全体ではかなりの時間がかかってしまう。教科ごとに優秀なスタッフが何人もいないと、短時間では作れない。当たり前だが、製作の費用も安くはない(中身の製作に人件費がかかるという意味で、配布はインターネットが使えるので安す済ませられる)。残念だが、今の段階では、能力教科の重要度や可能性を理解してもらうことしかできない。
 それは別として、能力教科の中身を明らかにすることは、価値の高い教育の内容を理解してもらうために必須であり、実現に向けての一番の近道だと思う。

(2000年12月4日)


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