知能教育:現在の教育の問題点や疑問点 |
多くの人は、学校の勉強に真面目に取り組めば、頭が良くなると思っているかも知れない。ところが実際は、現在の学校の勉強をやりすぎると、逆に頭が悪くなる。信じられないと言う人が多いかも知れないので、少し詳しく説明しよう。
日本の学校の勉強は、知識を記憶することが中心だ。本来なら考えることが中心の数学まで、暗記する教科にしてしまった。教師が説明した内容を暗記するように、頑張って努力する。答えを求めるときに何を考えればよいのか知りたいと、生徒が強く望んだとしても、教えてくれる教師は皆無に近い。
授業のやり方も、頭を使わないように工夫(?)されている。教師の説明を聞くことが中心で、黒板に書いた内容を自分のノートに転記する。教師からときどき問題が出され、答えられる生徒が手を挙げて、指名された人が解答する。テーマを与えられてディスカッションしたり、正解のない問題を与えられることはほとんどない。
授業以外でも、似たようなものだ。たとえば、教室などの清掃。掃除の時期、頻度、担当する人数など、教師が与えたルールどおりに決めて実施する。実は、このようなテーマも、生徒に考えさせる機会として利用できる。最小限の手間で最大の効果を得られるように、頻度や実施時間や人数を生徒自身に決めさせるのだ。単にルールを決めるだけでなく、掃除の質が向上するように考えさせる。「良い掃除とは何か」といった問題は、正解がないだけに面白く、身近で良いテーマといえる。
以上は学校の話だが、塾でも大差はない。有名な塾になると講師はユニークだが、教える内容が受験勉強の範囲内であり、入学試験の合格が最大の目的なので、受験問題を解くことが目的となる。ここでも、頭の上手な使い方を教えることはほとんどない。
記憶中心の勉強は、小学校から高校まで通うとして、合計で12年間も続く。しかも、小学校からという大切な時期である。これだけ長い期間で記憶中心の勉強をしたら、深く考えない癖が付いて当たり前だ。これは重要な点で、結果として思考する能力が低下する。
現在の学校の傾向も大きな問題だ。掃除などの活動も含めて、生徒が受け身になるような体制になっている。教師の側からルールを与えられ、その善し悪しに関係なく、とにかく従うことを求められる。進学に必要な内申書という首根っこを押さえられているので、あからさまに反論することもできない。そんな状態が若いうちから何年も続くと、反論などしない人間に変わっていく。それでは、疑問点を自分で解決する癖や力が身に付かない。
学校の勉強が出来るのだから、頭が良いのではと勘違いする人が多くいる。これは大きな間違いだ。学校の勉強は、正解のある問題が中心で、暗記すれば何とかなる。極端な言い方をすれば、頭を使わなくても解ける問題なのだ。ところが現実の世界には、正解のない問題が多くあり、正解のある問題よりも格段に難しい。これを解けることが重要で、頭が良いと評価する。面白いのは、正解のある問題の解く訓練を長く続けると、正解のない問題を解く能力が低下する点だ。疑問を持ったり創造することを押さえるために、頭の回転が悪くなるのが原因だと思われる。
長期間の学校の勉強で低下するのは、思考力だけではない。新しいものを創り出すのに必要な創造力とか、壁にぶつかったときに打破する解決能力なども、どんどんと悪くなる。バカに向かって前進するわけだ。暗記中心の勉強は、長くやりすぎないことが大切だ。
学校の教育内容が悪いからと文句を言っても、改善される見込みはほとんどない。また、代わりとなる選択枝も見あたらない。もし代わりがあったとしても、学校を完全に無視することは難しい。日本の社会では、学歴を非常に重視するため、あまりにも学歴がないと、仕事のチャンスすらもらえない可能性が高いからだ。
もう1つ、非常に困ったことがある。希望する学問を大学で勉強するためには、試験を受けて合格しなければならない。それには、高校までの学校の勉強が求められるので、時間の無駄だと分かっていても、試験のために勉強しなければならない。対象となる学習範囲が広く、片手間で済まないので、かなりの時間も必要だ。しかも、暗記が中心となるため、頭を悪くする原因となる。本当に困ったものだ。
この問題への対処は非常に非常に難しい。親が現状を理解し、現実的な対応をするしかない。まず最初に決めるのは、大学に行くかどうかだ。そのために見極めるべきなのが、学校の勉強に関する子供の能力。片手間で勉強してもある程度の点が取れるなら、入学できる限界まで手を抜いて、残りを思考能力の向上に割り当てる。もっとも理想的なケースだ。必死に頑張っても大学が無理なら、学問以外の道を目指すと決断する。そうなれば、学校の勉強など無視しても構わない。もっとも難しいのは、頑張って勉強すれば目的の大学に入れる場合だ。頑張って勉強することは、バカに近づくことを意味する。1つの現実的な方法として、小学校の段階では学校の勉強を重視せず、中学校から段階的に比率を高める手がある。成功の保証はないが、とりあえずベストな方法だ。
学校の勉強を重視しないと決断したら、頭を悪くする要因を取り除くことが大切。学校の勉強に深入りさせないように、「学校の勉強をやりすぎるとバカになるから、適当に手を抜いて、もっと違うことをやりなさい」などと、子供に何度も繰り返す。そのうえで、適切なテーマを親が与えることだ。正解のない問題を中心に、親と一緒に考える。世の中を見渡せば、テーマは山ほどある。何事にも疑問を持たせ、解決方法を考えるような癖を付けさせる。考え方や視点の向上に役立つ本を与えるのも効果がある。それを続ければ、バカに向かうことを防げるし、本人の基礎能力の範囲内で頭が良くなる。本当なら、マトモな勉強方法を教えてもらえる場所を紹介したいところだが、生徒向けのものは知らないので紹介できない。非常に残念だ。
以上のように学校の勉強はダメだが、現状の学校にでも別な役割がある。友達を作る場所だ。そうと割り切り、子供が行きたくない場合を除いて行かせよう。子供にも「学校は友達を作る場所だから」と言っておく。生徒をバカに向かわせる学校教育と、学歴重視の世の中が続く限り、学校を半分無視しながら上手に付き合うのが現実的のようだ。改善される見込みがほとんどないだけに、対処方法を真剣に検討したほうがよい。
(1997年12月21日)
現在の学校の勉強をしすぎるとバカになる |