川村渇真の「知性の泉」

決定事項を最後に確認する


議論の結果を会議の場で確認する

 たいていの議論は、取り上げたテーマに関して、何らかの結論を得るために実施する。そして、きちんと議論できれば、ある程度の決定事項が生まれる。その内容だが、会議の最終段階で正式に確認しなければならない。
 わざわざ確認するのは、余計なトラブルが後で発生しないように防止するためだ。会議の結論が自分にとって都合悪いと、まだ正式には決まっていないと勝手に解釈し、後から結論を無効にしようとする人も出る。このようなトラブルを避ける意味から、きちんとした手順で確認を求めることが大切である。参加者全員が紳士的であれば、このように形式張った手続きを踏む必要はないのだが、現実にはそうでない人もいるから仕方がない。
 後から文句を言われないためなので、会議の最後に確認する。そのためには、それまで検討した内容を整理し、結論の形で提示しなければならない。結論の内容がハッキリしなければ、確認を求められても答えられない。提示された内容を見てから、それを会議の結論と見なしてよいかどうか判断して了解を出す。全員の了承が得られれば、正式な結論となる。
 このような作業では、“結論の確認”であることを“くどいぐらい明示的に”言わなければならない。そうしないと、結論を決める作業だと理解しない人が出やすい。そうならないように、議長が責任を持って確認すべきである。
 結論を単に整理しただけでは、了解しない人も出てくる。自分にとって都合の悪い結論だと、それまでの議論をぶり返して、最初に戻したがるからだ。そんな行動を防ぐためには、最後の結論だけではなく、それを得るまでの流れも一緒に整理して見せる。議論を堂々巡りさせないためにも、議論の全体像を見せることが大切だ。

確認する内容は必要なものを幅広く

 確認方法だけでなく、確認する内容にも十分な注意を払いたい。たいていの議論では、すっきりとした結論が得られるわけではない。未解決の部分が残ったり、細かな項目がいくつも含まれたり、純粋な結論以外の内容も存在する。これらも結論の一部として確認すべきである。代表的なものを挙げてみよう。
 結論を導くためには、関連する項目の値を前提条件として確定することが多い。明らかに確定できる項目は問題ないが、そうでない項目では、実社会を調査するなどして、現実的な範囲を設定する必要がある。前提条件は結論に大きく関係するため、確認しておきべき内容の1つとなる。
 結論を得るまでの間に検討した内容も、要点だけを抜き出して明示する。前述のように、これを確認に入れることで、議論をぶり返す行為を防止できる。
 議論の最終結果といえる結論には、方法やルールだけでなく、もっと細かな内容があるはずだ。誰が何をいつまでにやるのか、つまり、担当する部署や人、実施日や期日も含める。外部に協力を求めるなら、協力してもらう組織や人も入れる。費用や人数などの制限があるなら、それも一緒に含めなければならない。結論の部分は、できるだけ細かい内容を明らかにして確認する必要がある。
 いつでも理想的な結果が得られるとは限らない。未解決の事項や今後の課題なども、確認すべき項目となる。また、反対意見が最後まで消えないときは、意見の内容を要約して入れるとともに、その意見を出した人も明示する。意見が2つに分かれたときも、両方の意見を併記して、それぞれの賛成者を明らかにする。
 以上の内容を整理すると、最後に確認すべき項目は以下のようになる。

議論の最後に結論として確認すべき内容
1. 結論を導いた前提条件
2. 結論を得るまでに検討した過程の要点
3. 最終的な結論となる方法やルール
 (担当部署や担当者、実施日や期日、協力相手、費用などの制限)
4. 未解決の事項、今後の課題など
5. 反対意見の内容と発言者

これらすべてが一括してOKなら、それで確認作業は終わる。もしダメなら、1項目ずつ確認して、OKの出ない部分を修正し、全員のOKが得られるまで繰り返す。意見がまとまらない部分があっても、2つの意見を併記する方法があるので、OKは何とか出るはずだ。

理想的にはその場で議事録を作る

 結論が得られた会議では、議事録をきちんと作成して記録に残す。それを上司や関係部署に配布すれば、議論は一応の終わりとなる。
 議事録に含めるべき内容は、基本的に、前述の確認すべき項目と同じだ。それに、参加者や開催日といった基本的な項目と、会議の目的など重要項目を加える。これらをきちんと整理して書けば、マトモな議事録に仕上がる。議論の過程も含んでいるため、参加しなかった人が見ても内容を把握できるだろう。
 確認作業を会議の中でやるなら、議事録の作成も会議中に済ませるのが理想だ。確認する内容と議事録の中身はほぼ等しいので、確認する内容をまとめれば、議事録の内容も一緒に出来上がる。確認の作業の一部として、議事録を一緒に作ればよい。
 この方法に慣れてくると、まとめ方をパターン化できるはずだ。それを議事録の書式として規定し、項目を埋めるだけにする。それは結論のまとめの書式と等しいので、まとめる作業も効率的になる。
 結論を明示的に確認するからといって、決定事項を絶対変えないわけではない。きちんとした理由があるなら、会議を再び開いて検討することもできる。その際に重要なのは、再開するだけの正当な理由があるかどうかだ。比較的よく起こるのは、最初に定めた前提条件が崩れる、ケースだ。それが正当な理由と認められるようにと、確認事項の中に前提条件を含めてある。このように、正当な理由だと判断するための材料を、結論の中に入れておくことが大切だ。

 結論の確認という作業は、決めたことに責任を持つための第一歩となる。後で文句を言わずに、議論の場で堂々と意見を主張すべきである。また、決定権を持つ人が出ないのは、その場で結論を出せないので最悪だ。会議の意味をまったく理解していない証拠であり、レベルの低さを公表したに等しい。日本の会議に多いが、絶対にやってはならない。

(1998年7月14日)


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