#001

『元ネタ探し』を超えてゆけ!


 ちょっと「#001 骨太の方針」の続きっぽい話になりますが、最近読んだ、ある一文が、このWEBを始めようと思ったキッカケの一つとして影響してます。それは、『特撮ニュータイプ No.001』 (角川書店/ '01.11)の中の、氷川竜介氏のコラム『ふしぎの海のナディアに見る特撮魂』の一節。'90にNHKで放映されたアニメ『ふしぎの海のナディア』のメカニック描写や画面構成の中に見られる、特撮… 特に東宝特撮映画からの影響・引用について、スチールを含めて解説している文章です。この中の一節に、以下のようなクダリがあります。
 
 経緯やスタッフの出自をくだくだしく書いているのには、理由がある。『ナディア』が世界のインターネットをさわがせているのと同じように、この記事は一つ間違えると単なる「パロディ元ネタ探し」に受けとめられる可能性が高いからである。もちろん話の性質上、コラムで事例は挙げさせていただいたが、言いたいことは、元ネタ探しではない。
 なぜなら、ありがちな解説で、「◎◎の○○のシーンは、△△が元ネタ」と述べて終わりにすることには、疑問を抱いているからである。こう言い切ってしまったとたん、なんとなく判った気がする……が、そこには大きな罠というか、危険性を感じるのである。すっと判ったようなその気分が、◎◎という作品の全容も、○○のシーンが見せてくれたすごさも、そして何より肝心なそれぞれの関連性、継承性といった部分を、すべて矮小なものとして丸め込んでいってしまう。それが、最近のジャンル化、細分化して棚分けばかりが進んでいる傾向と無縁ではないように感じるのである。<『特撮ニュータイプ No.001』 p.130-131(角川書店/ '01.11)>
 
 ……こういう文でした。ここだけ取り出すと、ちょっと分かりにくいかもしれませんが。
 つまり、氷川氏のこの文に激しく共感しつつ、「音楽」というフィールドに話を置き換えてみて、これは自分的にも自戒とせなイカんなぁ〜 …と感じ入ったわけですね。ナゼかと言うと、私の書き込みの特性として、劇伴倶楽部さんのココとかを筆頭に、実に「元ネタ探し」系の話が多いんですよね(笑)

 私は、アニメ・特撮ファンが高じて主題歌や劇伴にまでツッコむようになった……というよりは、一般のポピュラーミュージックのファンから、範囲拡張して主題歌や劇伴の世界に踏み入って開眼したという逆ベクトルのタイプなので、自然に主題歌・劇伴の向こうに、その引用元のフィールドであるポピュラーミュージックの世界が透けて見えてしまうんですよ。なので、「このリズムは、この当時流行ってた○○の影響が強い」とか「この進行は△△の曲に似てる」とか「この歌手は昔は◎◎というバンドに居て、こんな感じの曲を唱ってた」とか、そういう類の書き込みが、どしても多くなります。ただ、これまでは他の方の掲示板に、ちょっと一言マメ知識……みたいな感じで、あまり深い話までできないことが多かったので、場合によっては、「△△が元ネタと述べて終わり」になってしまっていて、中には、(゚Д゚) < ウザー とか思った人もいたかも……なんて考えてゾっとしたりして。

 でもね、私自身、決して、シタリ顔で「△△が元ネタと述べて終わり」にして、一人ご満悦……なんてツモリでそういう話をしてたワケじゃないんですよ。ええ、決して(笑) そういう音楽的な付帯情報や、一般音楽との接点の話をすることで、「主題歌・劇伴ってのは音楽的にも結構イカしてるんだぜ! みんなが好きなこの歌は、コッチの角度から見てもスゴいんだぜ! 劇伴レコードを、作品に付随する「キャラクター商品」みたいな感じにしとくのは、ものスゲーもったいないんだぜ〜!」 ……というようなことを訴えたかったわけです。主題歌・劇伴の音楽的な意味や価値を再確認・再評価したい…… こういう野望と使命を胸に秘め、俺の体が俺の体が燃えているなどと言ったりしたとしても、それは決して過言ではないのです(←?) 「Soundtrack Pub」を始めた理由も、私個人としては、そういうキモチがあったからこそ、だったりします。

 氷川氏は、まとめの部分で、こんな話もされてます。  
 というわけで、ナディアをきっかけに、そこに受け継がれてる「特撮魂」にも思いをはせたり、原典にあたってみたり、逆に知っている特撮作品をきっかけにナディアや庵野監督作品、ガイナックス作品を見てみようと思ったり、アニメにも興味を覚えたり、そんなことが続いていく中で、フュージョン効果が生まれて、新たな感動に出会って欲しいなぁ、なんぞと思う次第である。<『特撮ニュータイプ No.001』 p.133(角川書店/ '01.11)>
 
 そうそう。まさしくコレですよ。いいこと言うなぁ(T_T) 主題歌や劇伴を入口として、未知なる音楽の外海に漕ぎだして、新たな感動に出会う……私の発言をそういうキッカケに使って欲しいなぁと切に願ってるわけですよ! そのための元ネタ……っつか「音楽的ツナガリ」の話なんですよ! 主題歌や劇伴のすごい近いところにある音楽なのに、「アニメ特撮に関係ないから、ワシ知らん」では、もったいなさ過ぎだってばさ! 自分で世界を拡げていく好奇心を持って、主題歌・劇伴のリスナーとして、みんなで成長していかなイカんのよ! いつまでも「M-26は、第15話の○○のシーンで1回だけ使われてます。オ、オレ知ってんだァ (C)ジムシー」なんて話ばっかりしてたんじゃ、劇伴界のあしたはどっちだ!? …風なことをもし万が一、言ったりしたとしても、それもまた決して過言ではないのです(←?)

 ……というわけで、この自分のWEBという場を得て、誰はばかることなく、今後も存分に、主題歌・劇伴と一般音楽との「音楽的ツナガリ」の話をして行きたいと思ってますが、それは決して「元ネタ探し」が本意ではないんだよ〜 音楽的な価値を噛みしめ、みんなで共有したいからなんだよ〜  という考えをこのようにマトメましたところで、以上、このWEBを始めるに際しての決意表明……に見せかけた、ものすごい長い言い訳でした(笑)

 ただ、本人が思っていても、見る側がそう受け取らないことだってあります。もし、シタリ顔で一人ご満悦 ……ってニオイがしたら、遠慮なく横っツラをヒッぱたいて下さいね。

※ 文章の引用に関しては、氷川竜介氏ご本人の許諾を頂いております。 

(2002/02/18) 


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