平泉雑記 巻之四
相原友直著
鎮守府将軍陸奥・出羽追押領藤原清衡、父ハ津亘理権太夫經清、母ハ安倍頼時カ女ナリ、七十代ノ帝 後冷泉院ノ康平四年丑歳ニ生ル、同五年壬寅九月、父經清ニオクレテ後、清原武則ニ養育サラレテ子トナル、又一説ニ、武則カ嫡子荒川太郎武貞カ子トナルトモ云リ、七十三代堀河院 寛治三年己巳廿九歳ノ時、義家朝臣ニ加勢シテ武衡・家衡ヲ征ス、奥州平均ノ後、同六年壬寅三十二歳ノ時、陸奥・出羽ノ目代トナリ、其後奥六郡ヲ領シ、陸奥・出羽押領使トシテ、鎮守府将軍ヲ兼ヌ、同御宇嘉保元年甲戌三十四歳ノ頃、江刺郡豊田舘ヨリ磐井郡平泉ニ移シ居舘ヲ構ヘ、平泉舘ト號シ奥ノ御舘ト稱ス、同御宇長治二年乙酉四十五歳ノ時中尊寺ヲ建立ス、七十四代鳥羽院天仁元年戌子四十八歳ノ時、紺紙金銀泥行交一切經ヲ書寫セシメ、經堂ヲ建立ス、鳥羽院ノ勅願ナリ、即今ニ相傅ル所ノ經並ニ堂是ナリ、同二年己丑金色堂ヲ造立ス、是亦今アル處ノ堂・佛像是ナリ、七十五代 崇徳院天治三年丙午三月二十五日經堂ニ所領骨寺ヲ寄附ス、此歳改元有テ大治元年ナリ、此年七月十七日、行年六十六歳ニシテ卒ス、即屍ヲ金色堂中央ノ佛壇ノ内ニ納ム其屍今ニ在リ、
鎮守府将軍陸奥・出羽押領使藤原基衡ハ、七十七代ノ帝後白河院 保元二年丁丑三月十九日ニ卒ス、屍ヲ金色堂東北ノ隅ノ佛壇ノ内ニ納ム、其屍今ニアリ、
鎮守府将軍陸奥守従五位上藤原秀衡ハ、八十二代 後鳥羽院文治三年丁未十月廿九日ニ卒スルト東鑑ニ出タリ、義經記ニ文治四年十一月廿一日ニ卒スルト云ハ誤ナルヘシ、大系圖ニ死スル歳九十ト云リ、依之考レハ、七十三代 堀河院ノ永長元年丙子ノ歳ニ生レタルニヤ、文治三年迄九十二年ナレハナリ、是亦屍ヲ金色堂西北ノ隅ノ佛壇ノ内二納テ、今ニ在リ、
（「南部叢書」脱漏）「此説ノ如ク秀衡永長元年出生ニシテハ、大治元年清衡卒去ノ時ハ秀衡三十一歳也、尚可考、又清衡十七八歳時、基衡出生シ、又基衡十七歳ノ時秀衡出生スルカ在ナケレハ不引合、義經記ニハ十二月廿一日ト見ユ、尚可考、太平記大全劔巻ノ條下ニ云、文治四年十二月廿二日、九十二歳甍ス、
東鑑云、文治二年四月二十四日、陸奥守秀衡入道請文参著、貢馬貢金等先可沙汰進鎌倉、可令傅進京都由載之云云、是去頃被下御書、
御舘者奥六郡主、予者東海道惣官也、尤可成漁水思也、但隔行程無所于欲通信、又如貢馬・貢金者為國土貢印、争不管領哉、自當年早予可傅進、且所守勅定之趣也、者上所奥御舘云云、
以下ノ文書「○七十三通」古来中尊寺ニ相傅フル處ナリ、傅寫ノ本ヲ以寫カ故ニ亥豕ノ誤アルコト是ヲ計リ難シ、
鳥羽院御願
關山中尊寺金銀泥行交一切經蔵別當職事
僧蓮光所
所領骨寺磐井郡有之、御堂出入料田淡田段、屋敷壹所瀬原ニ有之、燈明料屋敷肆所内北谷・赤岩両所麓有之、瀬原村有之、
毎日御佛供料白米二斗、可入銅鉢貳之、自高御倉可被取請之、
毎月箱拭料上品絹臺疋、白布臺段自御改所可被取請之、
毎日毎御佛事、請僧臺口可請定、
毎年正月修正・二季彼岸懺法・毎月文珠講、彼以骨寺田畑一向可募之故也、是偏聖朝安穏御祈祷、無懈怠可令勤仕、
右件於自在房蓮光者、為金銀泥行交一切經奉行、自八ヶ年内書寫畢、依之、為奉公、且為器量故、御經蔵別當職所定也、就中、令寄進蓮光往古私領骨寺、然間限永代、蓮光相傅、到御經蔵別當並骨寺者、不可在他人妨、仍可令寺家宜承知之状如件、
天治三年丙午三月廿五日 俊 慶判
金清兼判
坂上季隆判
藤原清衡朝臣判
愚按ルニ、天治ハ七十五代ノ帝崇徳院ノ年號三年ハ大治ト改元ス、平泉古来ノ説ニ天治三年七月十七日ニ清衡卒スト、前太平記亘理經清ハ康平五年ニ誅セラル、此時清衡二歳ト云リ、然レハ康平四年ニ生ル、此歳ヨリ大治元年マテ六十六年ナリ、
鳥羽院御願
開山中尊寺御經蔵所領骨寺内籠居「雜」人等事
早於雜人等者、還本住所可成安堵思也、但限骨寺内境、東者鎰懸、南者岩井川、西者山王岩屋、北者峰山堂之末限馬坂、惣於境可限水境也、仍所被仰下、執達如件、
（「文治五年九月十日 親義判」脱）
愚按ルニ、東鑑ニ被下御奉免状ト云ハ、即此書ナリ、親義ハ斉院次官親能ナルヘシ、
陸奥國平泉中尊寺衆徒中寺領山野事、重訴状遺之、背下知状致違亂候間差遣使者之處、代官明資尚以下承引云云招其咎歟、早任先下知「状」可令停止濫妨也者、依仰執達如件、
永仁二年十二月廿五日 陸奥守判
相模守判
臺岐守殿
愚按ルニ、永年ハ九十一代 伏見院ノ年號、二年ハ申午ノ歳ナリ、鎌倉将軍第八久明親王ノ時ニシテ、北條ハ七代目ナリ、臺岐守ハ葛西家ナルヘシ、
補任
中尊寺學頭職、同免田臺町、屋敷臺所、宇津木根村有之、並佛性院同小坊地臺所事
權律師公圓
右職、任行盛律師今月五日返状、可令領掌之、次坊地之事、任頼順慶長元年十月廿四日譲状不可相違、仍補任如件、
正和二年三月七日
別當法印大僧都判
愚按ルニ、慶長ハ九十四代 花園院ノ年號、元年ハ辛亥ナリ、正和モ同御宇、二年ハ癸丑ナリ、慶長元年ヨリ三年後ナリ、従本寺之下知状 （九）
一、金色堂密供僧・同經衆等、長日供養法御讀經等退轉之由有其聞、早々所職相傅次第、云器量勘否、可被注進之矣、
一、同堂經由二口所持族在之云云、所詮有二口相傅所持法否、可否尋注進之焉、
一、白山宮長日大般若並講讀等、再以退轉云云、守舊規可令勤行之間相觸之、不敍用被注進之矣、
一、引募免田之族令疾懈怠寺役送年序云云、可被注申名字之子細同前焉、
一、依怙衆徒等、背寺中制法、雜居里中御祈祷以下寺役等一向不法云云、不漏一人注進同前矣、
一、閣往古場敷令居住里中、或背衆徒一同帳分、以坊趾並諸堂古跡、致種々耕作之由有其聞、委細可注申也矣、
一、稱自分以寺内用木等、任雅意伐取云云、於向後者固可令停止之、若有不拘制法輩者、可被注進交名也、
一、二十﨟以前落堕事、聊有其聞歟、可被注進名字焉、
一、於寺中放飼牛馬之間、併堂社損亡云云、至自今者不可有此義、若令違犯者、不謂親疎、捕牛馬可被注申由、且可被寄寺社修理歟、宜随注進左右也矣、
一、背先規令狭少寺中小路云云、早糺舊跡、引縄可被廣之、於及異儀輩者、可被注申交名焉、
一、未安堵輩在之云云、不残一人可被尋注進也、右條々、為御代官而、乍令在國不加催促、不及注進、共以無沙汰之條、併當寺荒廃之基歟、所詮、且究淵底且存知之分、無偏頗矯飾之旨、載起請之詞、急速可被注進之状如件、
正慶元年十月三日 沙 彌 判
權少僧都判
中尊寺權別當御坊
愚按ルニ、正慶ハ九十六代 光厳院ノ暦號、元年ハ壬壬申ナリ、
平泉中尊寺者、陸奥・出羽両國之申區、堀河・鳥羽二代之勅願也、因茲數代之宰吏歸依年久、諸方之道俗渇仰日新、爰頃年武士及申乙人等寄縡於蝦夷梟賊追伐、或關入敦門致狼籍、或押坊寺領及駈使云云、太以濫吹也、慥可従停止、若有違反之輩者、就注進交名可被決厳科之由、國宣所候也、執達如件、
大蔵權少輔清高奉
建武元年九月六日
衆徒等中（衍文ナラン。源據ニハナシ。）
愚按ルニ、建武ハ 光厳院年號也、後醍醐帝、此年重祚シ玉フト雖トモ不及其禮、元年ハ甲戌ノ歳也、清高ハ結城上野入道道忠カ子息ナルヘシ、太平記ニ道忠カ子大蔵少輔カコトアリ、又伊達ノ霊山舘ハ顯家卿ノ居城ナルコトヲ載ス、里人今ニ於テ國司舘ト云、今清高カ此文ヲ讀テ顯家ノ家業ヲ紹キ、其餘風ノ家臣ニ及フコトヲ知ル、月卿ノ家二生ルヽト雖トモ、其武勇モ亦國司ノ任ニ恥ルコトナシ、
平泉中尊寺一切經蔵領骨寺村之事
右之所者、依近年動亂、雖令知行、世々為無異之間、別當遠卿律師行栄方、彼所者如元相渡申候也、仍如件、
延元三年二月廿八日 若狭守行重判
愚按ルニ、延元ハ前ニ同ク 光厳院ノ年號、三年ハ戊寅也、此歳暦應ト改元ナリ、
平泉中尊寺別當領事
任被仰下之旨、伊達郡内黒澤村・同郡宇都木禰村・同郡北保村、江刺郡内辻脇村・同郡倉澤村、斯波郡乙部村、於彼所々相渡別當代賴禅所、乃渡状如件、
康永三年六月五日 平泰忠判
愚按ルニ、康永ハ九十七代 光明院年號、三年ハ甲申ナリ、
仁木左京太夫義長書判
禁制
睦奥國平泉中尊寺領同國岩井郡骨寺村事、
右於當所軍勢並甲乙人等不可致乱入狼藉、若有違乱之族者、可處重科之状如件、
観應二年正月廿八日
愚按ルニ、観應ハ九十八代 崇光院ノ年號、二年ハ辛卯也、足利尊氏ノ時ナリ、
○本文書、正しくは奥州探題吉良貞家禁制。史料編一の７８参照。
平泉中尊寺所領骨寺村之事
右件於所領者、且大伽藍御事と申、次身之爲祈祷と申、如元相渡申候状如件、
至徳二二年八月八日 前越前守親重判
經藏別當
愚按ルニ、至徳ハ百一代後小松院ノ年號ナリ、二二之字於字書未考得之、康熈字典曰、二二説文籀文四字、集韻関東謂四敷爲二二ト、是ヲ以見ル時ハ二二モ亦四ノ字ナルヘシ、亦牡鹿郡湊東南ニ日輪山多福院アリ、
古石墳アリ、其石面ニ奉爲（ヲンタメ）吉野先帝御菩提也、延元二二年霜月廿四日敬白ト勒セリ、名迹志ニ載之註云、二二字恐分畫四字也ト、後醍醐帝ノ崩御諸説アリト雖トモ延元四年北朝暦應二年八月十六日ヲ以テ正トス、然レハ四ノ字ナルコト無疑、霜月廿四日ト勒セシハ崩御ノ日ヨリ至此日九十九日ナリ、是百箇日ノ御追福ノ爲ニ其臣タル者碑ヲ立タルナルヘシ、又中古ニニノ字ヲ用タルモノ間アリ、我郷ニ鼓ノ許可ノ巻ヲ持傅ヘタル者アリ、看之、永年二二年正月吉日ト記セリ、本邦古来文字ノ音訓ニ忌諱多シ、疑ラクハ四ノ音死ノ音二通スルヲ忌テ爼斯（カク）書ルニヤ、又、古境部連（ヘイノムラシ）石積新字ヲ造シト云ルコトアレハ其字ノ残レルニヤ、又易ノ卦爻ニ倣テ造レルニヤ、又釋氏以ノ字ヲ ト書テ佛經ノ外題ニ蒙ラシムル事ト祖庭辞苑ニ見ヘタリ、又本邦ニテ符呪ノ首ヲ覆ニ ヲ用ルコトアリ、畫ノ相似タルカ故ニニニヲ以四ニ換タルモ計リカタシ、暫ク書之以待識者耳、
（「可被停止別當任符事」脱）
右訴陳之趣、子細雖多、所詮衆徒一両輩、帯文治・建久下知状、寺僧者行領者、數代之間不取別當任符之由、衆徒雖申之、如文永元年下知状者、寺僧相傅師跡之時、為寺務之仁、争不成任符哉、然則寺僧則可相従別當成敗、別當又守先例、不可致新儀之沙汰云云、者不及異儀焉、
愚按ルニ、文治・建久共二八十二代 後鳥羽院ノ年號、文永八十九代 亀山院年號、
院主職事
右如文永元年下知者、任先例寺僧之中撰器之仁可補之云云、而補監僧公禅之由、衆徒令申之處、公禅為淨行器量之仁雜掌申之、者公禅為監僧否尋究之後、可有左右、次同院主領分瀬原村河原宿事、為胸臆論之間、為院主分否、同尋究可有左右、次別當割取同院主分田畠之由、衆徒令申之間、於行付之座尋問之處、雜掌不論申歟、然者如元可返付于院主焉、
○文永九年六月廿三日付「関東下知状」の第一項と第十四項抜。史料編一－２９参照。
札 朱印
一、此所土民・百姓等、如前々可有付候、尤年貢諸役如年来（「南部叢書」脱漏）「可相慟候、如何ニ機遣仕間敷候、但亂後之間、年来」之年貢より可免許事、
一、百姓横合非分之儀、何方よりも申懸（朱補）「族」候者、則めやすニ而可申上候、速可相證事、
一、百姓作子、當作毛付次第定置候、若百姓逃失候ハヽ何者ニ而も百姓可有付事、仍所定如件、
天正十九年七月五日
○本文書は、正しくは伊達政宗判物。史料編一－１２８参照。
定
一、軍勢於味方地、亂妨狼藉之輩、可為誅伐事、
一、封地下人・百姓、非分之儀、不可申懸事、
一、陣所火出すやから、其者を溺捕可出之、自然於逐電者、其主人曲事たるへき事、
一、薪・ぬか・わらさうし以下（朱補）「亭」主に相理可取之事、
一、路次筋において、為下傅馬・人足等申懸やから曲事たるへき事、
右條々、於違亂之輩者、忽可處厳科者也、
天正十九年七月七日 （豊臣）秀次書判
愚按ルニ、奥州九戸左近将監政實ト云者、逆意ニ依テ天正十九年六月、秀吉公ノ下知トシテ九戸征伐、大将蒲生氏郷、惣大将三好中納言秀次公、其外諸軍勢下向アリ、同年九月政實誅戮セラレ諸軍勢凱陣ナリ、秀次公ハ奥筋之御仕置残ナク仰付ラレ、平泉一覧有テ後、出羽最上ニ出テ上京シ玉フ、右定ハ此時ノ掟ヲ中尊寺ニ納置タルナルヘシ、
中尊寺門前百姓等悉令還追住、耕作可仕候、聊不可有非分之義候、自然傅馬・人足等之事、申懸族雖有之、一切不可有承引者也、
八月十七日 浅野弾（長吉）正判
按ルニ、此書年號ヲ不記、察ルニ天正十九年秋、九戸陣ノ時ノコトナルヘシ、アル書云、秀吉一統之初、浅野長政居京職、後為執事之一員、専掌政務矣、
○但し、本文書は天正十八年の八月ならん。史料編一－１１９参照。
一、唐入ニ付御在陣中、侍・中間・小者・あらし子・人夫以下に至るまて、かけおち（缺落）つかまつる輩於有之者、其身の事ハ不及申、一類并相抱置在所可被加御成敗、（但脱）雖為身告しらするに於てハ、其者一人可被成御赦免、たとひ使として罷歸候とも、其主人慥なる塁付於無之者可為罪科事、
一、人足飯米之事、惣別雖為御掟、猶以給人其念を入可下行事、
一、遠國より御供仕候輩ハ、軍役それぞれに御ゆるしなされ候間、来十月ハ替り之義可被仰付候條、上下共ニ可成其意得事、
一、後陣へめしつれ候百姓之田畑之事、其郷中として作毛仕可遣之、若到荒置者、其郷中可被成御成敗旨之事、
附、為郷中も作毛不成仕會於有之者、兼而奉行江可相理事、
一、後陣へめしつれ候若黨・小者にとりかへの者、去年の配當半分之通りかし可遺候、此旨於相背ハとり候者ハ不及申、主人共為曲言事、
右之條々、於違背之輩者、可被處厳科者也、
天正廿年正月 日 （豊臣秀吉）御朱印
愚按ニ、秀吉公朝鮮陣御掟、中尊寺に納置タルナルヘシ、
礼
一、毎日中尊寺神事相違有之間敷事、
一、すり仕者於有之ハ、とらひ仙臺江可為相登候、
右條々、此旨堅可存者也、
寛永四年卯月十日 茂庭（良綱）周防守書判
按ルニ、茂庭周防守（良綱）延元ハ黄門正宗卿ノ家臣也、
平泉領之事
一、貳貫四百三拾九文 院主坊
一、壹貫六百九拾壹文 西谷坊
一、壹貫九百六拾八文 竹下坊
右於磐井郡中尊寺村、都合六貫九拾八文之所寄附之訖、目録在別紙、讀經・掃除・勤行等不可有怠慢者也、仍如件、
寛永廿一甲申八月十四日 （伊達忠宗）御黒印
平泉坊中
陸奥國平泉關山中尊寺者、従往古佛法紹隆之勝地、台宗弘通之淨砌也、雖然本寺未相定之間、請屬東叡山直末、因茲今般被召可御門下訖、者自今以降不背本寺之下知、佛事勤行等不可有怠慢旨、依輪王寺宮一品法親王之仰執達如件、
寛文五年十二月五日 （實俊）往心院判
中尊寺 （諶泰）圓覚院判
奥州平泉關山法度條々
一、可抽天下泰平・國主清寧之丹祈事、
一、三季講演并旦夕之勤行、不可致懈怠事、
一、講演・神事者於山王・白山神前可相勤之、祈祷者經蔵、佛事者於行動可執行事、
一、寺々自佛前至道迄、無油断可致掃除事、
一、結徒黨繼連署、公事沙汰仕間敷事、
右之條々、堅可相守之旨、依輪王寺一品法親王之仰執達如件、
延寶四年九月廿四日 （行海）見明院判
（舜盛）観理院判
中尊寺衆徒中
一筆申入候、其山之義遠境故、一宗之法式衰微之事共可有之候間、漸々近所之天台宗江被致稽古、可被相勤候、将又此度（勇仙）金色院清僧罷成候由、珍重候、各も末々者清僧成被申候ハヽ、可為宗旨之本意候、恐々謹言、
（延寶四年）九月廿四日 （行海）見明院判
（舜盛）観理院判
中尊寺光堂別當 金色院
經蔵別當 大長壽院
惣衆徒中
（「南部叢書」による）「愚按ズルニ、右書不記年號日月前書ニ同キヲ以看ルトキハ、延寶四年ナルコト無疑、」
一、當州刺史大膳太夫時行両寺巡禮之時、為佛餉燈油之料所、毛越寺者柏崎七ヶ村、中尊寺者瀬原・黒澤・白濱三ヶ村被為寄附云云、
一、鳥羽院御願所平泉毛越寺圓隆寺六口供僧三十六町、口別六町六口、柏崎之内、右之地頭四方田右衛門尉景綱父子四十餘年令押領、彼六供近年訴申之刻、被改押領被附供僧畢、
奉行雑賀彌次郎
一、毛越寺往振古之寺領三迫三拾三郷之内、大荒木村神社寄進状寫、
敬寄進
八幡宮御神田 御こく田ため 松木貳段
五頭天王御神田 御こく田ため 壹段ひはため
壹段ひはため
合四段者
右神は人の敬によつて位をまし、人ハ神の惠ミによつて徳、（をます脱カ）花山院内大臣大僧都御坊代（藤原師賢ノコトカ）として成淸寄進したてまつる、子々孫々にいたるまて、このむねをまもりて知行あるへき状如件、
建武二年十二月二日
若狭中務兼藤原成淸
平泉毛越寺權別當
（「南部叢書」に依る）「愚按ズルニ建武ハ九十六代 光嚴院ノ年號ナリ、後醍醐帝此年重祚シ玉フト云、再按ズルニ、前巻二ニ理リ挙ル如ク毛越寺ニ古文書数通在之ト云トモ未タ不見之、又傅寫ノ本ヲ求尋ントスレドモ他ニ無之、故ニ不挙之残思スルノミ、
隆藏寺 柳本坊大乗院
千手院常本坊 寂浄坊感神院
池上坊明禅院 覚城坊白王院
鳥谷崎坊金剛院 連饒坊慈光院
千饒坊壽命院 山饒坊普賢院
圓藏坊壽徳院 善正坊正善院
千光坊薬王院 櫻岡坊寶積院
梅本坊覚性院 圓光坊光圓院
寶全坊福昌院 連乗坊連乗院
承仕法師鏡全 同圓明
右中尊寺十八區承仕一人、毛越寺十八區承仕二人、今ニ於テ残レル處ナリ、
別 當一山の首長 金色院本號竹下坊
小前澤坊法泉院 北本坊薬樹王院
別所坊大徳院 東谷坊地蔵院
永根坊瑠璃光院 観泉坊積善院
中野坊願成就院 池邊坊金剛院
大林坊眞珠院 西谷坊大長壽院
上西谷坊釋尊院 観智坊観音院
南谷坊常住院 歓喜坊利生院
吉祥坊圓教院 櫻本坊圓乗院
承仕法師行善
秀衡城趾名取郡吉田村ニ在リ、高楯城ト云、東南ニ秀衡丘ト云所アリ、上ニ高館熊野權現アリ、又一説ニ賴朝東征ノ時次軍ノ地ナリト云、
伊達稙宗君往年伊達ニ住玉フ時、葛西・大崎ト屡合戦シ玉ヒテ、刈田・柴田・伊具・亘理・宮城・黒川・深谷・松山等幕下ニ屬ス、其頃家臣福田駿河ヲシテ此城ヲ守ラシム、
泰衡ガ假館刈田郡中目村ニアリ、古池アリ、今ニ於テ泰衡池ト云、後ニ結城七郎朝光コゝニ居レリ、
黒岩口ハ栗原郡三迫庄岩ヶ崎村ニアリ、東鑑ニ文治五年ノ秋泰衡家臣ヲシテ鎌倉勢ヲ防ガシムル處ナリ、郷人コレヲ黒岩舘ト云、中古富澤日向ト云ル者居之、
膽澤郡ニ一ノ野ト云所アリ、出羽仙北ヘノ海道ナリ、東鑑二泰衡軍勢ヲ一ノ野邊ニ置テ鎌倉勢ヲ防カシムルト云、此所ナルヘシ、又西岩井ニモ一ノ野ト云處アリ、栗原迫ニ近シ、
津久毛橋ハ栗原郡三迫莊平形村ニアリ、橋ノ西二平形、東ハ岩ヶ崎ナリ、今ハ江蒲藻（ツクモ）橋ト書ス、文治ノ役ニ梶原平次景高此橋ニテ歌ヲ詠シコト、東鑑第九二出、
陸奥ノ勢ハ御方ニ津久毛橋渡シテ掛ン泰衡カ頸
郷俗ノ説ニ、頼朝奥入ノ時江蒲藻ヲ集メテ此川ヲ埋メテ諸軍勢ヲ渡セシ故ニカク名ツケシト云ハ僻コトナルヘシ、東鑑ニ云、二品經松山道致津久毛橋給云云、是ヲ以テ頼朝ノ此地ニ来ラサル前ヨリノ名ナルコトヲ知ルヘシ、此邊舊跡多シ、橋ノ北二江蒲藻山信樂寺ノ古趾アリ、此地ヲ泰衡カ戦場ト云ヘト、東鑑ヲ以考ルニ、泰衡カ家臣等カ戦シ地ナルヘシ、○十三壇、連架橋（ツキハシ）ノ北廿四五間ヲ隔ツ處ニ古舘ノ跡アリ、上ニ壇十三アリ、北ヨリ南ニ連リ並ブ、其故詳ナラス、或人曰、此地ハ昔ノ戦場ニシテ戦死ノ者ヲウツミシ墓也、○不寝壇、岩ヶ崎ニアリ、信樂寺跡ノ北ニ古壇アリ、泰衡営陣ノ時士卒守夜ノ處ナリ、里人鼠（ネツミ）壇ト云謬ナリ、
秀衡箭立杉ハ名取郡笠嶋村道祖神社ノ西ノ川内澤ニアリ、昔秀衡上京ノ時此處ヲ過ケルカ、路ノ傍ノ杉ニ箭ヲ射テ首途（カドデ）ヲ賀ス、従者モ亦各是ヲ射タリ、明暦中迄其杉尚存セリ、圍一丈二尺アリ、其頃郷人商舶ヲ造ントコレヲ伐ケルニ杉鳴動シテ仆ル、板トナスニ鏃（ヤシリ）多クアリ、舶ニ造リテ海上ニ浮フルニ忽破レタリ、
愚按ルニ、義経記ニハ秀衡ハ一生上京セサリシト云イブカシ、樹二矢ヲ射立ルコトハ昔ノ風俗ナリ、神社ノ古キ樹木ニ今ニ鏃ノ残リタル者所々ニアリ、頼朝東征ノ時、高水寺ノ鎮守走湯權現ニ奉ルトテ社邊ノ槻木（ツキキ）ニ矢ヲ射立シコトアリ、是ヲ郷人頼朝矢立槻ト云、其樹今ハ枯テ根ノミ残レリ、別二植繼ノ木アリ、此事東鑑二見ヘタリ、又曽我物語ニ矢立杉ノコトアリ、又足柄ニ矢立杉アリ、武道ヲ祈ル者、此杉ニ矢ヲ射立テ手向ト歌書ニ出タリ、
柴田郡沼邊村韮神山西南三十餘町ニ千塚アリ、古墳累々タリ、是頼朝東征ノ時戦士ノ士卒ヲウツミシ處也、其數多ヲ以千塚ト云リ、今ハ半田トナル、
鬼切部ハ昔頼時・貞任等ト藤原登任（ノリトウ）・平繁成合戦セシ地ナルコト前太平記ニ看ヘタリ、
愚按ルニ、鬼切部ハ今ノ栗原郡鬼首ノコトナランカ、功ノ字ヲ誤リ寫シ切ノ字ト為タルニヤ、イブカシ、同書二和賀郡ヲ知賀トシ、本拾芥抄誤也、東鑑ニハ加賀トナシ、武家評林ニ贅柵（ニエノサク）ヲ熱柵トシ、舟迫ヲ舟泊トスルノ類、挙テ計フヘカラス、鬼首ハ往昔鬼ノ首ヲウツミタル故ニ村名トスルト云ル、郷説ナリ、此岩井郡ニ鬼死骸村アリ、気仙郡ニ越鬼来村アリ、今越喜来ト書、此所ノ海濱ニ鬼ノ舊跡多シ、奥州観音ノアル處、多クハ田村ノ舊蹟ニシテ鬼ノ事實アリ、實ハ蝦夷ニシテ其容貌人ト異ニ、暴虐ニシテ世人ヲ悩スニ依テ鬼ト呼来レルニヤ、日本武尊、田道十七代仁徳帝ノ朝以来鎮狄按察使歴代鎮東補任考見観迹聞考志、等ノ舊跡モ多カルヘシ、今其傅ヘヲ失ス、誰カ是ヲ不惜ヤ、
秀吉公天正十八年七月十四日小田原御進發アリ、先陣ハ松坂少將氏郷蒲生飛騨守、ナリ、同十九日野州宇都宮ニ着セ玉フ、此時徳川家ノ臣本多中務大輔忠勝ヲ召シ、鎧一領ヲ忠勝ノ前二置ク、秀吉ノ玉ハク、是則古ノ佐藤忠信カ冑也トテ奥州ヨリ獻スル處ナリ、然レドモ當時是ヲ着スヘキ者ヲ撰ムニ忠勝ヨリ外アルヘカラス、ト其勇敢ヲ大ニ稱美ナサレ、彼冑ヲ恩賜アリケレハ、忠勝面目ヲ施シ拜戴シテ退キ、永ク子孫ニ傅ヘテ家ノ寶トソセラレケルト本朝三國志巻三十五二出、
鎌倉實記云、義經ノ首東鑑ニ文治五年六月十三日腰越ニ至ルト書ルハ傅寫ノ誤ナルヘシ、四月晦日ニ討タル者六月マテ延引スヘキニアラスト、友直按ルニ、是ハ實記ノ作者東鑑ノ全編ヲ不讀ノ誤リナリ、東鑑ニ奥州泰衡カ飛脚五月廿二日申刻鎌倉ニ参著シテ去月晦日豫州ヲ誅ス、其頸ハ追テ進スヘシト言上ス、鎌倉ニハ其頃鶴岡ノ塔建立有テ六月九日ハ其供養ナリケレハ、義經ノ首無左右鎌倉ニ持参スヘカラズ、途中ニ逗留スヘシトテ、六月七日飛脚ヲ奥州二下サル、依之ワサト延引シテ六月十三日腰越浦ニ至テ此旨を鎌倉二言上スト云ヘリ、又鎌倉實記ニ云ルハ、義經ノ首ト名付テ鎌倉殿實検ニイレシハ義經ノ身替ニ立シ杉目行信カ首ナリト云リ、
愚按ルニ、首實検ニ頼朝ヨリ腰越ヘツカハサレシハ和田義盛ト梶原景時ナリ、若其首ニ疑アラハ景時豈其儘ニテ打過ンヤ、景時性質奸侫ニシテ讒言ヲ以恆トス、況ヤ義經ヤ遺恨アル人ナルヲヤ、實記ノ説信スルニ不足故二野史ノ妄説ヲ不採シテ正史ニ従フ、
鎌倉志云、鶴岡八幡宮ノ護摩堂ノ五大尊ハ運慶カ作ナリ、大威徳ノ乗タル牛ノ足膝ヲカヽメタリ、相傅フ、義經ヲ調伏ノ時膝ヲ折タリト也、
鎌倉實記ニ、南部戸頭武國ト云者アリ、是建久以前ノコトナリ、然ルニ建久以前奥州ノ北方ヲ指テ南部ト稱スヘキ證據無シ、是詐（イツハリ）ノ説也、今南部ト稱スル由来ヲ考ルニ、文治五年頼朝卿東征ノ時甲斐ノ國南部莊ノ住人新羅三郎義光ノ末葉南部三郎三郎光行ニ勧賞トシテ糠部（ヌカノベ）數郡ヲ賜テ領知セシム、東鑑巻九ニハ南部次郎光行ト出、同十五巻ニハ三郎ト出、三郎ノ説ヲ以テ正トスヘシ、光行ハ文治五年糠部數郡ヲ領シ、建久二年辛亥ノ十二月甲斐ヨリ入部アリ、其後數代ヲ經テ天正年中ニ秀吉公小田原征伐以後、光行ノ子孫南部大膳大夫信直ノ時、陸奥ノ北方十郡ヲ領知ス、其総名ヲ南部ト稱セシムハ此時ヨリノコトナルヘシ、文治・建久ノ頃ハ一人ノ領知アラサルカ故ナリ、
鎌倉志云、永福寺舊跡、土籠（ツチノロフ）ノ北方ナリ、昔二階堂ノ跡ナリ、里俗山堂トモ、（「南部叢書」脱漏）「光リ堂トモ」云フ、田ノ中二磁石今尚存ス、俗二四ツ石・姥石ナト云アリ、東鑑ニ、文治五年十二月九日永福寺ノ事始也、奥州二於テ泰衡管領ノ精舎ヲ御覧セシメ、當寺ノ華構ヲ企ラル、彼梵閣等並宇之中二階堂アリ、大長寿院ト號ス、専ラコレヲ摸セラルヽニ依テ、別シテ二階堂ト號ス、建久三年十一月廿日営作己ニ其功ヲ終フ、御臺所（北所政子）御参トアリ、其外池ヲ掘、阿彌陀堂・薬師堂・三重塔・御願寺等建立ノコトアリ云云、
平泉ハ此郷ノ惣名ナリ、今中尊寺村・平泉村ト二ツニ分ツヲ以テ里人毛越寺ノミヲ平泉トナシテ、平泉ノ號中尊寺ニ不預ト思ヘルハアヤマリ也、
今俗間ニ平泉ノ圖アリ、秀衡ノ時寫セル圖ナリト云、予コレヲ寫取テ熟覧スルニ、秀衡ノ時ヲ圖スルニアラス、後世里人ノ語リ傳ヘヲ以テ好事ノ者作レル者也、如何シテ是ヲ知トナラハ、東鑑ニ、中尊寺ニ堂塔四十餘字・禅房三百餘字ト云、毛越寺ニ堂塔四十餘字・禅房五百餘字ト云リ、然ルニ其圖ニ堂社ノ今ノ世ニ残レル者ト、其跡ノ間々云傳ヘタル者ノミヲ圖シテ東鑑ノ数ニ不合、禅房モ今兩寺合シテ三十六區残レルノミヲ圖ス、又諸士ノ宅地（ヤシキ）並ニ市井（マチマチ）ヲモ圖スルト雖トモ、諸士ノ名ヲ不著、町々ノ名ヲモ不記、堂塔ノアリタル處モ違イアリ、是以後世ノ人ノ「（「南部叢書」ニ脱漏）手ニイツルコトヲ知ル、若堂塔寺院古昔ノ数ニ合シ、諸士ノ宅ニ其人ノ名ヲ」記スル者アラハ我コレヲ信用セン、寛保二年壬戌ノ歳、神成ノ畫工後素カ圖スル者アリ、古跡ノ今ニ尊スルヲ挙テ里老ノ傳ヘヲシルシ、疑シキヲ闕キ微（シルシ）トスヘキニ從フ、予採之而不用彼矣、
金華山辨才天堂アリ、別當ヲ大金寺ト云、寺ニ義經潜行ノ時ノ笈アリ、今世ノ製ニ異ナリ、又秀衡寄附ノ大般若經アリ、
江刺郡片岡村岩谷堂ニ岩屋戸山多門寺アリ、寺ニ鈴木三郎重家ガ笈アリ、
気仙郡唐丹村（トウニ）山伏大学院ニ亀井六郎重淸カ笈ト云ルアリ、又亀井カ墓（ツカ）ト云ルアリ、イブカシ、
膽澤郡上葉場村稲荷山心月寺ニ亀井六郎重淸カ笈アリ、義經守ノ舎利鎌倉ノ明月院ノ寺寶ナリ、鎌倉志云、舎利一粒金塔ニ入源義經守リノ舎利古河御所ヨリコレヲ納ム、金文紗ノ直垂ノ袖ニ包テ有シヲ、袖ハ古河ニ残ト云、栗原郡三迫荘沼倉村彌陀堂ニ義經ノ馬具アリシ、今ハ隻鎧（カタアフミ）ノミノコレリ、又辨慶カ笈アリ、
信夫郡マルヤマ瑠璃光山醫王寺ニ義經ノ笈アリ、扉内ニ十大弟子ノ像アリ、義經ノ自畫ナリト云、
神社考云、駿河國補陀落山久能寺有源義經之笛、號薄墨寄進此寺、嘉禄年中回禄、笛亦焼失、
山城國鞍馬山ニ義經ノ太刀・鎧等アリ、
信長記ニ、信長卿永禄十一年十月攝州芥川城ニ陣ヲ居ヘラレシ時、幕下ニ屬セシ近國之面々異國本朝ノ珍寶ヲ取々ニ捧ケシ内ニ、古源義經一ノ谷鐵皆ヶ峯ヲ落シ々時カケラレタル鎧トテ捧タル人モ有ケリト云リ、
愚按ルニ、寺院・堂社構什寶物妖僧贋巫偽設而托名惑人貪銭物也、蓋不鮮少矣、看之者可辨其眞偽也、
日本事跡考云、美濃國青野原牛若東行時富賈吉次同往、賊首長範聚徒数十人、謀于野夜入吉次宿、欲盗其装、牛若抜剣斬之、死者既十餘人、長範異之自把炬火、右手提長刀直入、牛若挑長範雖竭（ツクスト）力牛若軽捷、長範腕痿棄長刀遂殪（タヲル）、吉次大喜倶赴（ニヒニク）奥州、牛若源義經之童名也、
盛衰記四拾一巻義經ハイガノ條ニ云、源九郎判官義經ハ色白フシテ成短（セイヒク）シ、容貌優美ニシテ身體勇也ト云々
○義經容貌のこと巻五の「辨慶筆跡」の後にあり。今便宜「南部叢書」に據る。
平家物語巻八征夷将軍院宣之篇ニ云、院宣ノ御使ハ左史生中原泰定ナリ、賴朝其日ハ布衣ニ衣烏帽子也、顔大キニシテ勢短シ、容貌優美ニシテ言語分明ナリト云々、 」
巻之四 了
最終更新日 2000.3.17 Hsato
2000.6.3