「草食系男子」ではなく 日本全体「草食系社会」では!?

最近のハヤリ言葉に「草食系男子」というものがある。

これはガツガツ男らしい男が、相対的にいなくなって、男性が中性化したことをいう言葉と解してもいいのだろうか。これを日本の若い男たちが、自らの男性を主張せず、男女同権の時代の象徴として肯定的に見る見方があるが、私はどうも違和感を憶える。

「草食」に対し「肉食」という言葉を対置すれば、肉食のライオンに対して、草食とは、そのライオンなどに喰われる牛や馬などを指す言葉となる。

考えてみれば、この「草食系男子」という言葉は、昨今の若い日本男子を表したニュアンス持つ言葉というよりも、日本社会全体を覆っている社会の風潮なり、傾向というものを指す言葉のようでもある。どうも、私には、特に「草食系」という「男子」につく修飾語が、自己主張もあまりなく、学生運動も皆無で、何事につけ、世情に流される現在の日本社会や日本人そのものを象徴する言葉のようにも聞こえてくるのである。

かつて1960年代から70年代にかけて「モーレツ」という言葉したことがあった。その頃の日本人は、戦後の復興期を象徴するように、モーレツに働き、ガツガツ食べ、過激な学生運動にも参加し、一方ではロマンチックな恋愛もそこそこ、それなりに子作りをしていた。まさに肉食型の社会だった。

ところが今は、良し悪しの区別は別にして、日本全体が知らない間に去勢されたようになって、草食動物の社会となった感がある。だから私は、ますます、この「草食系男子」というハヤリ言葉を、「草食系社会ニッポン」と置きかえてみたくなるのだ・・・。
(09年12月18日記) 

2009.12.18 佐藤弘弥

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