毛越寺の夕暮れ時は閑かだ。いったん門をくぐると、俗なる景色は視界から消え、人は浄土の住人となる。特に冬の毛越寺の黄昏時、池中に立つ立石が雪に埋も
れる姿を見ていると、菩薩がそこに立っていて、ひたすら祈っているように思えてくる。人はみな、己の人生を歩く菩薩である。と考えれば、この立石は私自身
ということになる。
人はみな菩薩なりけりおのがじ
し雪に埋もるゝ立石を見る
毛越寺には、冬恒例の常行堂三昧供が毎年行われる。狭い常行堂に僧侶がこもり、凍てつく狭い堂内を読経し歩きご本尊阿弥陀如来の功徳をいただく修行をす
る。三昧供が成就(結願)した夜、堂内では深夜まで祝いの祭りが執り行われる。あの延年の舞もこの時奉納される。これが「
二十日夜祭」であ
る。