エンゼルスに移るマツイ・ヒデキ に期待すること

大リーガーマツイ・ヒデキが、ヤンキースを離れ、エンゼルスに移ることになった。大リーグ1の名門ヤンキースを離れるのは、マツイにとって、正直なところ残念かもしれない。

しかしロサンゼルスに本拠地を置くエンゼルスは、今年もアメリカンリーグの覇権を廻り、最後までヤンキースとワールドチャンピオンを争った強力なチームだ。そして何よりも大リーグでも屈指の名監督マイク・ソーシアのいるチームだ。おそらく、ソーシア監督は、この最後の戦いでのマツイの勝負強さを眼の辺りにして、ヤンキースと折り合いの悪くなったマツイを獲得するという最終判断をしたのであろう。

エンゼルスソーシアの眼から見れば、今年のエンゼルスとヤンキースの対戦で、自分の四番打者ゲレーロは、不振を極めた。肝心のチャンスでも、再三三振をするなどした。そのゲレーロが今年FAの権利を行使するということもあり、エンゼルスにとっては、新たな四番打者を獲得しなければならない事情もあった。

エンゼルスとマツイとの契約の中には、外野を守ること、全試合に出場すること、四番の座を約束とも伝わっている。だがマツイに対する高い評価にも関わらず、その契約額は、ヤンキース時代の半分にも満たない650万ドルという低いものだ。これはマツイが、年俸額よりも、プレーヤーとして、打って、守って、走る、という自身のベースボール哲学を優先した結果とみるべきだろう。謙虚なマツイらしい良い決断だったと見る。

ともかく、マツイの現在の打撃技術から見れば、今年大リーグ挑戦7年目で初めて、ボールの芯の下を正確に叩いて、ボールを運ぶホームラン打者の打撃技術を体得した年だったと思う。

昨年までのマツイは、自分を中距離打者などと過小評価してきた嫌いがある。それはマツイの長所であり欠点でもある「謙虚」な生き様から来ていると同時に、A・ロッドのようなスーパースターに交じって自身の存在感を示すためのマツイなりの生き残り戦略があったとみる。その結果、日本ではホームラン打者だった自らを中距離打者と決め込んでボールの芯を叩いて、ホームランよりもヒット狙いの打撃を心がけていたのだろう。私からみれば、それはマツイの自己過小評価である。

しかし今年は、A・ロッドがケガで欠場する中、長打を期待されるDHで四番の大役を担ってのスタートだった。そこでマツイは自身の七年間の打撃スタイルを、変貌させる状況に追い込まれていたのである。だが、シーズン当初、芳しい成績は残せなかった。結果が出始めたのは、夏頃からだった。この頃から、マツイのフォームは、見違えるようにタメが出来、体重をしっかりと左に足に残し、ボールの下っ面を振り抜く、ホームラン打者特有のものになっていた。その為、軽いスイングでも、楽々スタンド入りすることも多くなった。追い込まれた中で、マツイは結果を出したのである。

来年、紅いヘルメットで、活躍するホームランバッターマツイの活躍を楽しみにしたい。特に、ヤンキース戦を考えただけでワクワクする。(09年12月17日記)


2009.12.17 佐藤弘弥

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