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相原友直小伝

 

平泉旧蹟志  「仙台叢書」巻一

相原 友直著

 

 

 

磐井は、予が先祖膽澤郡内の采地に併せて、宅地を國君より賜はりし郡にして、先人の故郷なり、村は平泉に隣りて赤荻と号す、故に予幼年の頃より、彼地に遊ぶ事あまた度なりし、予山水の癖有りて、あまねく勝地佳境を尋遊ぶ、嘗て平泉達谷の遺蹟を訪ふの日、其地の記を索るにこれを得る事なし、是に於て、古史旧跡記等に散見せしを集て、平泉実記を著し、又僧徒村老の口碑に求め、世父先人の譚話にもとづきて、此一冊を草稿せり、実記は昔の盛衰を述べ、此書は荒廃の今を交へ著す、憶ふに余が固陋(ころう)なる博く群籍にもとむるの力なく、且つ僻地書典に乏しければ、、多くの事を考へもらして誤も亦多かるべし、唯昔の迹の残れる百分の一ツをも、しるしとどめて、後の予に志を同ふする人の一覧に供ふるの微志なり、又事繁くして二書に漏せし事、怪異にして児童の談話に、ことならざるをも捨てるに忍びず、別に五冊となし、平泉雑記と名づけて家僮に授く、是二書を集んとして、捜り索めたる草稿にして、別に力を用ゐたるにはあらず、これ等を見ん人は杜撰(ずさん)の笑をなすべけれど、それをもかへり見ざるは、是亦癖の致すこと所なればなり、嗚呼後の今を見んこと、亦今の昔を見るが如しと、悲しめる古の昔を見るが如しと、悲しめる古の人のことはに感ぜざらめや、

宝暦十年三月穀旦

相原 友直書


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最終更新日 1999.9.17 Hsato