リクガメと生活するにあたってどのような環境を用意してあげたらよいのでしょうか? 彼らの生息地に自然環境が近い海外での飼育環境と日本における飼育環境は異なります。 特に日本の都会で生活している人にとっては、すべての飼育者が200坪の庭を持った家に生活している訳ではありません。むしろ、私どものように猫の額ほどの賃貸住宅などでリクガメと生活する人の方が多いように思います。ここでは、そんな人にとってこそ必要だと思われる情報を提供して行きたく思います。
幸運にも広い庭を持っているという方は、その庭をリクガメさんにぜひ提供してあげて下さい。本来の生息地を考えますと、彼らが自然界においてどれだけの活動範囲を持っているか、定かではありませんが、かなり広い活動範囲であると思われます。おそらく数キロメートル四方と考えられますから、ぜひぜひ許されるだけ広くカメさんに提供してあげて下さい。
1998年の年末に我が家もカメさんの屋外飼育環境を求めて、引越してしまいました。
屋外飼育環境の1例として、我が家の例の図面や写真をアップしておきます。
まず囲いを作成する必要があります。これは、カメさんの脱出と外敵からの保護の意味があります。特にホルスフィールドリクガメを飼育する場合は注意が必要です。彼らは穴を掘るのが得意です。自然界においては、夜間は地中に数フィートの長さの穴を掘って寝ます。そのため地面から上だけに気を使っても、穴堀りが大好きな彼らにとって、脱出は容易です。またもし上部の囲いを金網で作成するとしたら、リクガメはかなり器用に手足をかけて登るため、ある程度登った所から落下してひっくりかえってしまう可能性があり、危険ですので、地上20センチメートル程の高さまでは、ブロックを積むなどの考慮が必要でしょう。その上部に関してはそれほど気を使う必要はありませんが、犬に噛まれるといった事故が、海外では多いという報告もありますし、日本においては、むしろ近所の子供がついついいたずらをするといった
ケースの方が可能性が高いと思いますので、適度な高さがあった方がよいと思います。
地中に関しては、少なくとも1メートルは、何らかのものを埋め込んでおくことをお薦めします。穴を掘って脱出するケースはホルスフィールド程ではないにしても他のリクガメにも考慮する必要があります。
成長したリクガメでは、それほど気にする必要はありませんが、幼体のリクガメを屋外で飼育する際に注意すべき事は、カラスなどの鳥です。あっさりとさらわれてしまったり、つつかれて大けがをしてしまうことなどないように、注意が必要です。わが家ではバルコニーの上部一面に寒冷叉をかけたり、日差しの強い夏場には、スダレを屋根のように上部に設置したりしています。
囲いの中には、適度な起伏を設けて、いろいろ遊べるようにしてあげて下さい。生息地の環境を調べて、近い環境を提供するようにしてあげましょう。彼らは大変デリケートな生き物ですから、精神的な環境作りは、屋外、屋内を問わず、必要です。
また、囲いの中に水場を設けておくのは良いことです。彼らの首が充分上に出る程度の浅いものである必要がありますし、容易に出られる構造でなければなりません。わが家のギリシャは、夏場には、よくこの水入れに浸かって涼をとったり、水を飲んだりしています。また、もし可能であれば、水道につないだホースから少量の水を流しておけば、その水を飲むようにもなります。
また、日陰になる場所はかならず設置することが大切です。体温調節を自分でできるようにしてあげることが大切で、これは上記の鳥などに対するシェルターの役目もしてくれます。
夜間に寝るためのシェルターを設置する必要があります。これは犬小屋を改良してもよいですが夜間、乾燥した場所を提供するために、地盤面から幾分離した床面を持つシェルターがお薦めです。もちろん彼らが自分で出入りできるように階段なりスロープを設置してあげる必要があります。このシェルターは雨風を防ぐ役割もしますので、必ず設置するようにしましょう。
少し注意が必要な他のこととしては、ツツジなどのような込み入った下部の植え込みは、避ける方が良いという事です。中に潜り込んでしまうと、見つけるのも困難ですし、はさまって動けない状態になってしまうと危険でもあるからです。
さらに、屋外飼育にすると、ややもすると個々の個体に対しての管理がおろそかになりがちですので、注意しましょう。季節によっては、R.N.Sなどの症状が出やすいため、早期発見が遅れると、とりかえしのつかない事態になってしまうこともありえるからです。
バルコニーなどでの飼育についても同様ですが、2階以上の階の場合は、落下に対して、特に気を使って下さい。また、バルコニーなどのように、床がモルタルやコンクリートの場合には夏場など、かなり高温になりますので、必ず日陰を用意してあげましょう。最高最低温度計などを設置し、床面での最高温度がどんなに高くても40℃以上にならないように注意しましょう。
市販の干し草などを床に敷いておくのもよい方法です。
また、手すりが高いバルコニーや広さがあまりないバルコニーでは、風通しが悪くなりがちですので、電動のファンなどで空気を動かす必要があるバルコニーもあることを頭に置いておいて下さい。また、よくバルコニーには空調機の室外機が設置されているので、うっかり夏場にバルコニーにカメさんがいるにもかかわらずエアコンを入れてしまったりするのは、危険です。
空調機の室外機は、そこで熱交換がなされるので、大変高温の風をバルコニーに充満させます。
これは大変危険ですので、あえてここに書きました。
屋内でリクガメを飼育する場合には、温度、湿度、光、などを、人工的にコントロールする必要があるため、それなりの設備を整える必要があります。まず、大抵の場合、ショップで購入するのは、幼体だと思います。小さいうちはそれほど大規模な設備を用意しなくても、環境を整えることが可能です。
私たちがお薦めするのは、植物用に販売されている温室です。アルミのフレームで組まれている枠にガラスがはめ込まれているタイプがよいと思います。熱帯魚用の水槽は空気の循環が悪く、カメさんが、外に出たいときに自分で出ることができませんし、様々な世話をするのに常に上部から行うことになるため、カメさんの精神的な面を考えるとあまり好ましくありません。
床材にはメインテナンスが楽であり、かつ彼らの精神的にもあまり違和感がわかない素材を用意しましょう。あまりふかふかとした干し草などを敷き詰めてしまうと、歩きにくいため良くありません。彼らはその中で排泄もしますから、取り換えが楽なもであることがポイントです。 私たちのおすすめは、ウッドサンドです。ペットショップで入手することができます。これは木の粉を小さいチップ状に固めたもので、水分などをうまく吸収してくれます。また、汚れたら可燃ゴミとしてそっくりゴミ袋にあけて捨てることができます。リクガメが食べてしまっても有害ではありません。土を入れるのは湿気の問題と、メインテナンスの問題上あまりおすすめできません。砂場を用意するのであれば、別に用意してあげたほうが好ましいでしょう。
ウッドサンドの下に遠赤外線フィルムヒーターを敷き、保温を補助します。これもペットショップで入手できます。電子サーモ(水槽用のものがペットショップで売られています。)をヒーターに取り付けて、温度が25度を切るとスイッチが入るようにセットしましょう。電子サーモを取り付けたとしても、最終的な温度管理は、温度計を使って自分の目で行う習慣をつけるべきです。私たちはデジタル式の最高最低温度計を使っています。センサーはあくまでもカメさんの活動する高さに設置することを忘れないようにしましょう。
照明も大切な要素です。光のページで詳しく書きますが、カメさんの甲羅から、40センチ程上部にトゥルーライトを取り付けましょう。光の成分が太陽光に近い照明器具です。さらにカメさんが暖まって、日光浴をするためのホットスポットを作るため、40〜60W程度のレフ球を設置します。 最近はバスキングライトといった名称で専用の電球も売られています。ホットスポットは、28〜35度程度の温度になるように、電球の高さを調整して下さい。40度を越えるようにはしないで下さい。
湿度計も一つはそろえておきたいものです。40〜60%の湿度になるように、心掛けます。 季節によって、乾燥のしすぎや多湿になるため、除湿器や加湿器で調整しています。
これだけ準備できれば、器具的にはしばらくは大丈夫です。さて、カメさんの環境を整えるには、それぞれの器具を有効につかいましょう。生活のペースを少しでも屋外にというより、もともとの生息地に近くするため、照明器具などの点灯時間には、気を付けて下さい。あまりランダムにならないように朝付けて、夜は消すようにしましょう。私たちはタイマーによって点灯時間を制御するようにしています。またせっかく温室を設置したのであれば、ガラスの扉を適度に開けて、空気の流通も考慮して下さい。温室内の温度は夜間は昼間より少し下げて、変化を与えてあげるようにします。また、昼間でも温室内の場所場所によって温度の差ができるように扉を調節します。彼らが、その時その時で温度を選択できる環境が好ましい訳です。
シェルターは必ず用意してあげましょう。彼らは狭い、囲まれた場所が安心できるようです。ホルスフィールドリクガメのように自然界では、穴を掘って中で寝るといった種もありますから、適当な大きさのシェルターが必要です。ダンボール箱でも、木で作ってもよいと思います。私たちは、植木鉢を半分に切ったものを使いました。また、ホルスフィールドリクガメには、スリッパをシェルターにして提供しました。ガリガリとひっかきますが、少しでも変形させられるということが、彼らの精神 的には良いようです。 屋内飼育であっても、狭い中に彼らを閉じ込めておくのはけっしてよいことではありません。昼間世話をできるのであれば、ぜひ温室から外に出してあげて下さい。彼らは好奇心旺盛にウロウロします。そして部屋のどこかで寝てしまったら、そっと温室のシェルターに戻してあげて下さい。 少し慣れてくると、階段などを設置しておくと自分で出入りするようになります。
少し成長してくると狭い温室での飼育はむずかしくなります。彼らはとてもデリケートですから、ストレスがたまって、病気になってしまったりもするのです。犬でもずっと狭い犬小屋に繋いでおくのは、かわいそうです。できれば、部屋を1室提供するぐらいの気持ちを持って飼育して下さい。 わが家では、まったくの放し飼いです。基本的には温室での飼育と変わりません。ただ温室を家中に広げたといった感じです。部屋ごとに床の段差があればカメさん用のスロープなり階段を設置して、自由に行き来できる工夫をします。ホットスポットは幾つか場所を決めて設置しておくと、自分で場所を学習しますから、必要な時にそこにやってくるようになります。屋内飼育の良い点は、彼らがとても身近な存在になることです。またそれぞれ気に入った場所を持つようになりますから、放し飼いにしていても、彼らがどこにいるのか把握するのはそれほどむずかしくはありません。
飼育環境の画像のページを参照して下さい。