(3)各種ビタミンとミネラルが豊富なこと


 ビタミンとは、栄養素のひとつで、微量ながらも、生物が生きていく上で絶対欠かすことのできない有機化合物です。また、体内では「合成」されないものです。ビタミンは、脂溶性のA、D、E、F、Kと、水溶性のB、C、ナイアシン、葉酸などに分かれています。脂溶性のものに関しては、あとでも述べますが、いずれも過剰症がおこりうることに注意する必要がありますし、水溶性のものに関しては、熱や光に対して弱いものが多いので、調理法や保存法などに気をくばることも必要となってくるでしょう。
 一方、ミネラルとは、栄養となる微量な無機質元素のことです。具体的には、カルシウム、リン、ナトリウム、カリウム、鉄、ヨウ素、マンガン等々があります。リクガメにとって一番たいせつなカルシウム、リンにつきましては前述しましたので、ここではヨウ素についてのみ書きます。

 自然界の植物は、通常与えている市販の野菜よりもビタミンやミネラルを多く含んでいることは周知のとおりです。また、野生のリクガメは、植物についた土を食べることで様々な微量元素を体内に取り込んでいます。飼育下では、このようなビタミンや微量元素を補うためにも、春から秋にかけては出来るだけ多くの雑草を与えるようにするといいでしょう。また、普段与える葉野菜も出来るかぎりバラエティに富んだものにし、栄養が片寄らないようにしたいです。それでも、十分でないと考えられる場合には、市販の総合ビタミン剤を適宜利用するといいです。ただし、ビタミンの中には、与え過ぎると、過剰症をひきおこすものもありますので、過剰にビタミン剤を投与しないようにも気をつけることも大切です。

 以下は、主なビタミン、ミネラルとその不足による症状です。

1)ビタミンA
ビタミンAは”上皮保護ビタミン”とも呼ばれていて、皮膚や粘膜を健康に保つ働きをしています。ビタミンAが欠乏すると、目が腫れたり、皮膚がただれたり角質化したりします。皮膚が剥けたところから細菌が入り二次的な感染症を起こすこともあります。また、膵臓や腎臓の内皮が変質し内蔵機能を低下させます。さらに肺組織を角質化し呼吸機能に障害をきたしたり、鼻孔組織の変質により鼻垂れ症状(RNS)を引き起こしたりもします。
 ビタミンAの供給源としては、βーカロチンを多く含む野菜や果物が理想的です。なぜなら、カロチンは体内でビタミンAに転換されるからです。ビタミンAは、脂溶性のビタミンです。つまり、水には溶けないため、過剰に摂取されたものを尿の中に溶かして体の外に排出することができないわけです。このため、ビタミンAのまま過剰摂取をすると、過剰症を起こしてしまう可能性があります。ビタミンAの過剰症の症状は、角質増殖症や皮膚のただれなどで、不足のときの症状と似ている点が厄介です。その点からも、ビタミンAそのものを含むビタミン剤の過剰投与には十分注意したいです。
 この点、βーカロチンのような二次的な形で摂取していれば、体にとって必要な量だけをビタミンAに転換し、過剰のものはビタミンAに変成されず、そのまま体内に保管されるか、あるいは、排出されますので、過剰症の心配はないわけです。また、緑黄色野菜に多くふくまれるカロチンは、それ自体が免疫細胞を活性化するはたらきをするため、細菌感染などに対する抵抗力もあげてくれます。
 天然のビタミンA(カロチン)供給源は、何と言ってもタンポポの葉です。タンポポには、100g中に14,000i.uものビタミンAが含まれているそうです。さらに、多くの微量元素が含まれています。春から秋にかけては、近くの公園などに咲いているタンポポなどを摘んできて、カメに与えてあげるといいでしょう。市販野菜では、モロヘイアなどに多く含まれています。青ジソにも多く含まれていますが、青ジソは、あまり好んでは食べないようです。

2)ビタミンB
 ビタミンBは、アミノ酸や炭水化物、脂肪などの代謝に必要なビタミンです。その中で、炭水化物をエネルギーに変えるのがビタミンB1、脂肪をエネルギーに変えるのがビタミンB2、アミノ酸やタンパク質の代謝に関与しているのがビタミンB6、脂質、アミノ酸、デオキシリボ核酸などの代謝に関係しているのがビタミンB12などとなっています。
 リクガメがその不足症を起こすことはあまりありませんが、ビタミンB1が不足すると脚気になることはヒトと同じです。症状がすすむと、食欲不振になったり、足に麻痺や痙攣がおこったりします。いずれにしても、バランスよく食事を与えていれば、あまり心配はないでしょう。

3)ビタミンC
 ビタミンCが欠乏すると、口内炎や細菌性の感染症にかかりやすくなりますが、葉野菜をしっかり与えれば、それほど心配はいらないでしょう。

4)ビタミンD3
 カルシウムやリンの吸収に欠かすことの出来ないビタミンです。ビタミンD3が不足すると正常な骨の発育が妨げられ、幼体のカメでは骨、甲羅の軟化や変形といった典型的なクル病の症状が現われます。このビタミンD3は紫外線に当たることで皮膚下に生成されますので、餌として体内に取り入れたビタミンD3を活性化させるには、紫外線の照射が不可欠となるわけです。このためにも、直射日光のもとで適度な日光浴をさせてあげることが大切なのです。これが不可能な場合には、 トゥルーライトなどのフルスペクトルの人工照明 などで代用するといいでしょう。
 ビタミンD3も、脂溶性のビタミンですので、やはり過剰症が起こり得ます。ビタミンD3が過剰になると、骨などの組織内のカルシウムやリンを逆に抽出してしまいます。そのため、やはりクル病とよく似た症状などを起こしてしまいます。ビタミンD3製剤の過剰投与や紫外線へ過度に当てることは、こういった点からも危険ですので、注意が必要でしょう。

 補足ですが、ビタミン剤は冷暗所にきちんと保管して置かないと効力が落ちてしまいます。また、開封後、時間が経ったものも効力は期待できません。
5)ヨード(I)
 ヨード欠乏症は、単純に食事中に含まれるヨードが不足することにより起こる場合と、甲状腺腫誘発物質であるゴイトロゲンを多く含む食品を長い間与え続けることにより起こる場合とがあります。
 ヨード欠乏症の症状としては、無気力になること、さらには甲状腺腫になり喉の下が腫れてくること(甲状腺肥大)、皮下組織に粘液水腫ができることなどが挙げられます。予防には、ヨードを含むビタミン−ミネラル剤を投与するとよいでしょう。また、ゴイトロゲンを多く含む、キャベツ、ブロッコリー、芽キャベツなどに片寄った食事を与えないように注意することも大切です。
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