光について


リクガメの飼育において、注意すべき事の1つに光に関することがあります。まず、本来の生息地を見てみると、少なくとも年間の日照時間が2500時間を下回る地域には、地中海リクガメは生息していません。 年間2500時間の日照時間が、自然界において、彼らの生存可能かどうかの1つの目安になります。彼らが生息する地中海地域の年間の平均日照時間は2500〜3500時間で、東京の年間平均日照時間がおよそ1800時間であるのと比較すると、非常に長いことがわかります。屋外で飼育する場合は、調整がむずかしいかもしれませんが、屋内飼育と併用する場合は、照明時間の参照とすることができます。一日の日照時間のめやすとしては、春と秋は12時間程度とし、夏はそれより長く、冬は短くするといいしょう。

日光はフルスペクトルの光ですから、紫外線から赤外線まで広い波長の光を含んでいますが、屋内では話が違います。たとえ、屋根、壁、床が、すべて透明なガラスで造られた家であっても、屋外とは異なる環境です。一般的に透明板ガラスでも、300ナノメートル以下の紫外線を殆ど反射してしまいます。熱線反射ガラスなどでは、さらにいろいろな波長の光を反射してしまいます。特に高層のマンションなどですと、対風圧による計算によって算出された厚さのガラスを開口部に使用しますから、低層の住宅で使用されるガラスより厚いガラスがつかわれます。厚さが厚くなると、もちろん光の透過率は減少しますから、太陽光とはどんどん離れていきます。20階建てのマンションの最上階のサンルームで、天井、壁がほとんど大面積のガラスの部屋でリクガメを飼育しているから、光に対して問題ないかというと、けっしてそんなことはありません。ガラス1枚の面積が大きければ、それだけ厚いガラスを使用しますから。


リクガメにとって重要な光の要素としては、色温度と紫外線、赤外線があげられます。色温度というのは、簡単に言うなら光の色です。太陽光(自然光)は5000〜6500ケルビンという色温度です。ちなみに一般の家庭用の蛍光灯は4500ケルビン程です。これは、緑〜黄色に重点を置いた色温度設定です。よく、蛍光灯のもとで写真を撮ると、緑がかった色になってしまったという経験があると思います。これが太陽光とのずれを示している分かりやすい例です。この色温度は、生物の、(もちろん人間を含めて)精神面に影響を与えます。リクガメにとって太陽光に近い色温度の光は大切です。人工照明器具の選定においての大きなポイントとなります。
赤外線は、熱と関係が深いのはよく知られています。波長が長い光です。さらに長い波長の赤外線は、遠赤外線と呼ばれますが、体を内部から暖める効果が注目されています。
紫外線はリクガメを始めとして、多くの爬虫類にとって大切な波長の光です。彼らは紫外線により体内でビタミンD3を合成します。ビタミンD3が不足すると、運動機能の低下や湾曲した脊柱となったりするくる病になる可能性があります。また、肺炎になりやすいなどの傾向もあります。ビタミンD3は、カルシフェロールとも呼ばれており、活性化されてカルシウムの吸収をよくします。リクガメは甲羅の成長に、もちろんカルシウムが必要ですが、ビタミンD3の不足によって骨へのカルシウムの沈着が悪くなり、様々な症状が出てきます。爬虫類がビタミンD3を合成するのに必要な紫外線の波長は、200〜320ナノメートルと言われています。よって、ガラス越しの光では、ほとんどこのリクガメが必要な波長の紫外線は反射されてしまっています。300〜320ナノメートルの間の波長の紫外線は、わずかに反射されず、ガラスの中に入りますが、透過するのはそのうちのさらに数パーセントにすぎません。


このような光の要素を考えてみますと、屋内飼育をしていても、必ず太陽の光にあててあげる事が重要です。ガラス窓は開けて、直接太陽光をあててあげる必要があります。しかし、1日7時間あまりの間1年中そうもできない環境の場合には人工的にそのような光にリクガメを当ててあげる必要があることになります。
私たちが、まず必要な器具としてあげるものはフルスペクトルランプと呼ばれる照明器具です。現在では、

トゥルーライト(DURO-TEST社)
レプチサン5.0UVB (ZOO MED社)
レプルックス FL20SWREP (日本動物薬品株式会社)

などという照明器具が入手しやすいフルスペクトルランプです。これらの照明器具は色温度が5500ケルビン程度に設定されていて、自然光に近い色温度です。また、290〜380ナノメートルの波長の紫外線も出しているので、有効な照明器具です。
紫外線だけに限って言えば、ブラックライトや他の器具もありますが、紫外線は当て過ぎると、皮膚病の原因になりますし、目などの粘膜組織に有害であるため、かなり気をつけた使用をしないと危険です。
ただしフルスペクトルランプに欠けているのは熱源としての機能です。リクガメは自分の体温を上げるのに日光浴をしますが、そのために暖まれる場所(ホットスポット)を提供する必要があります。餌さを食べるにしても、活動するにしても、体が冷えている状態では、活発にはなりません。何か行動を起こすのに必要な体温度になるまで体を暖める必要がある訳です。
これに役立つのは白熱電球です。レフ球などのように下部に有効に照射するものがおすすめです。40〜150Wといろいろありますが、ホットスポット自体の温度が28〜35度程度になるようにそれぞれの電球の取付高さを調整する必要があります。
いずれもペットショップで入手可能です。