★ギリシャリクガメ「吉祥天すみれ」の産卵記
96年1月より、わが家で育てていたギリシャリクガメの吉祥天すみれが、先日、初めての産卵をしました。これは、飼い主にとっても、初めての経験となった産卵の前後の記録です。
●99年3月18日
ここ数日、初夏のような陽気が続いていた。
3月18日も、風は強いものの、午前中から気温も高く、庭の日向に置いてある温度計は、早々に30℃を突破していた。
ギリシャリクガメのすみれは、ここ2、3日、富に落ち着きがなくなっていた。
まだ気候が安定していないので、天気の悪い日や夜間は、屋内にいるのだが、2畳ほどの自分の囲いから、しきりに出たがるのだ。朝晩問わず、ウロウロ歩き回り、囲いのボードをカリカリやり続けていた。平生は、あまり動かず、じっとしていることの多い、すみれにしては、明らかに「普通ではない」ようすだった。
思えば、ここ何週間か、すみれは、食が細くなっていた。それ以上に、排便が減っていた。完全にしなくなるわけではなかったが、わが家の爆食王すみれは、出す方もそれは立派で、「展覧会があったら、出品したいよぉ。」と夫婦で冗談を言い合うくらい、日頃のは立派なのだ。それが、週に1回くらい、しかも、小ぶりの排便となっていた。食べないのだから、当然と言えば、当然かもしれない。
食べる方も、全く食べなくなるわけではなかった。むしろ、平均的なリクガメよりちょっと少ないくらい、という程度だ。ただ、日頃が爆食王なだけに、食が落ちた感は否めない。また、葉野菜より、水分の多いキュウリ、トマト、イチゴなどを好むようになった。以前は、葉野菜が大好きな子であったのに。身体が水分を欲しているのだろうと、水入れを囲いに入れてあげたが、そこから飲む姿は見かけることができなかった。
わが家では、月に1回、カメたちの体重測定を行なっているが、甲長21cm、体重2kgで、成長も頭打ちになっているすみれの体重が、2ケ月前から、一ケ月に60gずつ増えていた。食べないにしては、増え方が大きい。(グラフ参照)
昨年末に現在の住居に引っ越してきたのだが、前のマンションの狭いバルコニーとちがい、ここには都内にしては比較的広い庭がついていた。この庭があったから引っ越したようなものだ。
2月後半から、春めいてきたため、お天気のよい日には、カメさんたち(現在総勢10頭)を庭で遊ばせているのだ。
以前は、屋外へ出しても、ごはんを食べるとき以外は、じっとして動かないすみれだったが、最近は、庭中をよく探索するようになっていた。
前日の3月17日は、風が強すぎたため、カメたちを庭に出すのを断念した。
その前の3月16日にお散歩をさせたときには、興味深い行動をとった。
すみれは、庭のとある「角」を気に入っていた。
北の隅なのだが、障害物がないため、南からの陽が当たって、ポカポカしている場所だ。庭へ出すと、まずそこへ行って日光浴などをしていることが多かった。しかし、16日にお散歩をさせたとき、その「角」は、別のカメさんに陣取られていたのだ。身体が大きいわりに、気が弱いのか、他の個体を嫌い、避けることが多いすみれは、「角」を諦め、しぶしぶ、南側の「植え込み」の方へ向かった。
「植え込み」の中でも、繰り返し、地面の臭いを嗅いで回っていた。
しかし、どうしても、「植え込み」の中はお気に召さないらしく、少し時間が経つと、そろりと、植え込みから出てきて、自分のお気に入りの「角」へ向かうのだ。そして、途中で、まだ誰かが「角」にいることに気付くと、きびすを返して、植え込みに舞い戻るのだ。
こんなことを、数回、繰り返していた。
が、16日には、結局、最後まで「角」に行くことができなかった。
私にとって、今回がはじめて経験する、飼ってるカメの産卵だった。
うすうす予感はしていたものの、その瞬間まで、すみれが産卵するというのは、どこか現実味を欠いた出来事のように思われた。そもそも、私たち夫婦は、すみれがメスだということにも、まだ確信が持てていない状態だったのだ。
もし、抱卵だと確信していれば、もう少し、相応の対応をしていただろう。
少なくとも、すみれは他の個体から隔離して、外に出してあげていただろう。お気に入りの「角」も、すみれ以外は立入禁止としたはずだ。
結果的に、16日に、すみれは、どうやら産卵場所と決めていた「角」に行くことができず、卵を抱えたまま夜を迎えた。そして、夜中じゅう、囲いの仕切り板をひっかき続けた。
そして、これは、17日いっぱいと、18日のお散歩タイムまで、続いた。
3月18日朝10時、ようやく庭に陽が差し込んできた。
すみれのお気に入りの「角」に、真っ先に陽が入る。
おまたせ!とばかりに、すみれを庭に出してあげると、脇目もふらず、一目散に「角」へ向かった。1、2往復しながら、辺りの地面を嗅いでから、あとは、もう迷うことなく、せっせと地面を掘り始めた。はじめの数掻きは、前足で、あとは後ろ足で、、ただただひたすら掘った。
ここへ来てはじめて、私は産卵することを確信した。
足の裏を、じょうずにスコップのように使い、、、みるみるうちに穴が掘られていった。
途中、小休止を交えながら、それでも、5センチ、10センチと、穴は深くなった。この部分は、いずれカメさんの野菜畑にしようという企みがあったため、しばらく前に培養土や腐葉土を盛ったばかりだった。定期的に水まきもしていたので、意図したわけではないが、適度の硬さだったのかもしれない。
ちょうどリンゴ一個分の穴が掘れると、中に卵を産み落とした。
しばらく、じっとしていたと思ったら、おもむろに、産め戻し作業にかかった。
後ろ足で、比較的、さっさっさっと産め戻してしまった。
安産だったのだろうか?
庭へ散歩に出してから、1時間40分で、すべて終了してしまったのだ。
とにかく思ってた以上に、短時間の産卵であった。
しかし産卵場所を離れるとき、すみれの後ろ足が、ふらついていた。やはり、相当、体力を使う仕事だったのだろう。
喉でも乾いているのではないかと、そっと水入れを差し出してみたが、とくに飲みたそうな様子はなかった。甲羅を触ったら、とても暖かくなっていた。かなり日差しの強い場所を選んだのがわかる。
すみれを屋内に収容し、早速、卵を掘り出した。
卵は2つあった。
一つは、すみれが自分で蹴とばしたらしく、ツメが入ったような穴が開いており、ヒビも入っていた。慌ててたのかな?
卵は二つとも、まだ表面が濡れていて、ほんのりピンクがかっていた。表面には、うっすらと血がついていた。出血してしまったようだ。
2つとも、表面の泥をティッシュで軽くふき取り、重さを測ってから、孵化器に据えた。
重さは22.5gと、23.5gだった。ギリシャの標準よりは、少しだけ重いようだ。
交尾をあまり確認していないので、望みは薄いのだが、、。
屋内に戻ったすみれは、置かれた場所から1ミリも動かないまま、2、3時間を過した。
置かれたごはんにも、目もくれなかった。
が、やがて、もそもそとホットスポットの下へ移動し、身体を温めはじめた。しばらくして、再度、ごはんを置くと、今度は、今までの少食を埋めるかのような爆食をはじめた。
よかった、よかった。これで飼い主も一安心である。
幼体の頃から育ててきたカメさんが、無事に産卵をしてくれるまで成長してくれたというのは、飼い主にとって、感慨深いものがありますね。