足摺海底館

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※入館、そこに至る道

位置的にはほぼ日本の先端にあると言えなくもない南国・四国の、更に先っぽにある土佐清水は
足摺岬という、まさに先ッぽづくしの場所にその水族館はあった。



レスト竜串なるドライブインの看板の下に「足摺海底館入口」の看板があるところから察するに
東京タワー水族館と同じく、館内付属型のミニ水族館なのかなと思いきや、眼前に広がるはただただ
おみやげ品の山ばかり。



さんざ探し回った末、裏口を出たところにて、ようやくこのような看板を発見。
おみやげ屋であるところのレスト竜串と肝心の水族館本館とはほぼ関連性がないにも関わらず、
看板にデカデカと「足摺海底館入口」と銘打ち、何も知らない観光客共をおみやげ地獄へ引きずりこもうとする
その商魂たくましさには感動すら覚える。それにしても400メートルもあるとは。
とりあえず向かおうかといざ歩き出したところで、
「館内にお手洗いはございません」の文字が
凄まじく気になりはじめる。ついでにこれの意味するところと「400m」との関連性を考察し始めた結果、
その頻尿と頻糞っぷりにかけてはかなりのものがあると自負してやまない我が身の明日をイマジンして
途方もなく帰りたくなる。

レスト竜串にとって返して思う存分下用を済ませ、さあ、いざ臨まんと遠目に実物を確認した途端、
腹かかえて爆笑する羽目になる。なんだこりゃ。
いきなりこんなもん見せられるほうの身にもなってほしい。
マジ笑い死にするかと思った。




間近に見て更に爆笑。その色使いといい外観といいまさに秘密基地そのもの。
こんなにも少年マインドに溢れてる水族館、見たことない。
入り口前にてニタニタと満面の笑みをたたえているミーを、さぞかし周囲は不審に思ったことであろう。


※海底、そこに至る道

入館を無事済ましていざ魅惑の海底へ、と相成ったわけだが、
もちろんその道のりにエレベータなどという文明の利器の存在は確認できず。



結局のところ、もっとも原始的にしてかつ一番お手軽な移動手段である二足歩行を
使用して下へ下へと向かっていくことになるわけだが、その道程にあってところどころに
配してある目安看板の存在は、ゴールへの距離を明確に示し、海底へ向かう旅人の精神的
不安を事前に取り払ってくれる役目を果していた。

「あと海底まで31段(7m)です」
「あと海底まで16段(4m)です」

正直なくてもいいと思った。


※野生の証明



メインホールである底部壁面のそこらには、ファンタジックなお魚さんの絵とともに
丸い覗き窓が設置されており、ホールに降り立った老若男女の皆様は我先にとその窓に
お貼り付きになっておられた。

ここで壁際に記載されている海底展望台のスペックを今一度確認してみよう。

 水深7メートル、直径10メートル、展望窓16個
 〜螺旋階段をおりると、そこは南海の海の底〜
 サンゴ礁に群がり、乱舞する色とりどりの魚達。
 南海の海底の神秘とパノラマが楽しめます。


うむ、なかなかに興をそそる文面である。
そして数刻後、生来より競争というものに皆目向いていないようであるミーが、限られた窓数が
生み出す強制フルーツバスケットに破れ、我が視界を塞ぐ団体御一行様がお飽きになるまで、
そこらを所在なさげにウロウロしつつ暇を持て余す羽目になったことは言うまでもない。

15分後、ようやく鑑賞可能なポジションをキープ。
やっとのことで手に入れたこの場所、もう誰にも明け渡すもんかよ!とばかり、トランペットの
欲しい黒人少年ばりの吸着力で窓にぺっとり貼りつく。
そんなミーの眼前をよぎったのはニザダイの仲間っぽいが、名前が分からない。なんだろうか?



こちらの左はたぶん「コロダイ」の幼魚、右は南国の代表魚「オヤビッチャー」。
それにしてもだ、
紋別オホーツクタワーに赴いたときもさんざ実感したが、「飼育」という保護環境下にない
野生の魚を生で見るのは、想像以上に楽しすぎる。ぶっちゃけ素で口から「ヒョー」と声がもれるぐらい楽しい。

右側ではかっぷくのいいマダム二人組が「あっタコ!そっちにタコ行った!」「え?本当?あっ!あっ!」
などと人目もはばからず騒ぎ立てていた。どうやら野生には、それに属する全てのものを根源へと戻す力が
働くようである。



そしてこちらの左は「
タカノハテダイ」、でもって右は「ニザダイ」。
正直双方ともに水族館的には駄魚の類の筈なのだが、それでも野生魚だというだけでその価値は跳ね上がる。


※レッツ・ミー・エンターテイン・ユー



時の経過とともにクルクルと色合いを変える万華鏡のごとき景色に見入ること約15分、
海面の方からロープづてにてカゴのような物体がスルスルと下降してきたかと思いきや、
そのカゴめがけて四方八方から魚達が殺到し始め、食いつくわ、噛みちぎるわと、ほんの
数刻でその海域は惨々たる有様に。そして5分後、それまでここにあったユートピアは右写真のごとき
コキュートスへと変わり果ててしまっていた。

後で聞いたところによると、この展望タワー近くに魚達を居着かせる為、定期的に行っている
餌付けだそうだが、その喰い散らかしっぷりの凄惨さたるや、いかにその外見が美しくあろうとも
しょせん魚類なんてものは
浅ましきえエラ付きに過ぎないのだという事実をまざまざと思い知らせてくれるに
充分足りるほどだった。


しかし、まあ、これもショーの一つと割り切ってしまえば、なかなかに楽しいものである。
よくよく観察してみれば、ドサクサにまぎれて「あれ?これ餌じゃないの?」と言わんばかりな
スッとぼけ面しつつ別の魚の尾びれに食いついている豪のものがいたり、それにより下半身が
ほぼ消失しかけているにもかかわらずなおも餌を追わんとする漢のものがいたりで、自然の中にて
生き抜くことの厳しさを妙に実感させられたり。


※そこにある憩い



海中展望台に至る階段とは逆側の上方に延びる階段を昇ってみれば、そこには「海上展望室」なる
ゆったりとした休憩スペースがあった。眼前に広がる大平洋を一望しつつ、岬に向こうに沈みかけてる
陽を眺めて、ほんのりセンチな気分になったりする。そんなに悪くない気分だ。
そして30秒後、背後にて「お母さん、トイレは何処ー」と叫ぶ子供の声を聞きながら、こうも思うのだった。
やっぱし
「館内にお手洗いはございません」は駄目だろ。



※総合

紋別オホーツクタワー」と同じく純粋な水族館とは云い難いが、同じような高揚感を、
野趣溢れる趣きといった形で味わせてくれる素晴らしい施設だと思う。多少、交通の便が悪いのが難ではあるが、
もし近くまで足を伸ばす機会があったなら、多少無理をしてでも訪れておくべきである。
5キロと離れていないところに「
足摺海洋館」なるちゃんとした水族館があるのもポイント高し。
この「足摺海底館」と併せて、野性味溢れるスペクタクル美と整然統一された環境美の両方を
楽しんでみてはいかがだろうか。

ファミリー ★★★☆☆ 年齢の方、多し
カップル度 ★★☆☆☆ 2割程度?
わびさび ★★★☆☆ 周辺の景色と相まって
学術度 ★☆☆☆☆ 考えるにあらず、感じるが全て故に皆無
お得感 ★★☆☆☆ 不もなく可もなく
建物装飾 ★★★★★ 噴飯もの
水槽装飾 ★★★☆☆ 内壁のペイントがファンタジー
総合調和 ★★★★★ メントスにコーラばり
憩い場所 ★★★☆☆ 叙情と哀愁
磯コーナー
ペンギン度
レア度 ☆☆☆☆☆ 判定不能
総合 ★★★★☆ あくまで私的視点より


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