東京タワー水族館

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※入館



本日は、日本を代表する超高層建造物「東京タワー」にやってきた。
本当にこんなところに水族館があるのだろうか?とキョロキョロ辺りを不安げに見渡すも
「かき氷あります」「冷やし中華やってます」等の看板が、ミーをますます不安にさせるだけという有り様。

脳髄に電極つけられた実験ザル並に目をグルグルさせながらそこら中を走りまわった結果、
遂にそれらしき入り口を発見。上の看板にも「水族館」とデカデカ書いてある、間違いない! 
…と思いきやこの水族館、どこをどこからどう見ても、ミーの目にはただのおみやげ屋にしか見えなかった。

というわけで、見つけたことでむしろ不安が増大してしまったというか、
入り口付近に置いてある魚のぬいぐるみが無性に最悪の結末を予測させてしまうというか、
この状況を打破する最良の解決策としてはもう普通に東京タワー観光を敢行するくらいしかあるまい、
ぐらい思っていたところで、ようやく奥にあるレジ付近に水族館への入り口(秘密の部屋並に分かりにくい)を発見。
喜々としながらその狭いゲートをくぐった。



そして中に入った途端、いきなりびっくりさせられる羽目に。
いや、事前入手した情報に「その規模は世界一を誇ります」というのがあって、
それを見たミーは「こんなに小っこいとこが?うそつけ!」ぐらい思ってしまっていたのだが、
実物を見てその言葉はあながち嘘ではないということを死ぬほど思い知らされてしまった。
確かに種類・数ともに世界一かも。

秘密はその情報量の圧縮率にあった。ハフマン符号利用のlzh方式なんてまるで問題にならない。
それほど水槽の数及びその配置方式が尋常でないレベルにあった。
幾ら東京のど真ん中にある水族館だからって、その人口過密っぷりまで模倣しなくても… 
と溜め息をつきながら再び周囲を見回したところで、またもや驚嘆させられることとなった。
何とそれら全ての水槽に値札がつけられていたのである。

今までの水族館では、その姿・形・はたまた興味を惹かれるかどうかという、
つまりこちらの主観で魚の価値は決まっていたが、ここはそうではない。
「お金」という明確すぎるレッテルが既に、それもあからさまに貼られているのだ。
その奴隷市場もどうかという魚の価値観を根底から覆すエコノミック方式に、ミーは早くもビビりはじめた。
ちょっと今までの水族館とは一味も二味も違うようだ。



熱帯海水魚エリア



まずは華麗できらびやかな熱帯系のお魚さんを3点連発で紹介してみよう。
左から「タテジマキンチャクダイ」(インド洋、紅海)¥38,000。
何処にでもよくいる熱帯魚風情のくせにやたら高価すぎね?と思いきや、
幼魚と成魚は模様が微妙に異なる出世魚だそうで、幼魚はウズマキと呼ばれ成長に伴い紺と黄色の縞模様になるらしい。
その辺りの生い立ちもこの値段設定に繋がっているのだろうか?

右側は「オトヒメエビ」(インド洋・大平洋)¥3,300。あ、ちょっとリーズナブルだ。
ガラス細工のように弱々しく見えるエビのわりには喧嘩っぱやく、小型の水槽に2匹いれるとケンカして
ハサミが取れたりするそうで、貧弱なくせにその立場を考えていないことこの上ない。



で、こちらは「グリーンバード」(インド洋・大平洋)値段なし。
そのヘンテコなお口でサンゴの中に住む小魚などを補食する熱帯魚。
生後10ヶ月くらいになるとその口先が伸びはじめたりするらしい。
値札がないところから察するに、この魚ひょっとしてかなりのレアものだったりするのだろうか?
やたらと尖った口辺りの個性がプライスアップに貢献しちゃったりとか?

女性に例えるならば、美人とか、可愛いとか、スタイルいいとか、巨乳とか… 
そう、生物は元来生まれながらにして不公平であり、その対象は当然ホモ・サピエンス以外にも当てはまる。
至極当たり前の事でありながらこれを当たり前と容認しないのもまた人間だけであり、
男女がどうの、国家がこうの、宗教がああのと、地球規模の生物レベルで見れば取るに足らぬような
些細な問題をいつも引き起こす。まったくもってして人間とは業の深い生き物である。
そんな当たり前の事でありながら、普段見落としがちな何かをこのエコノミック方式は教えてくれる。


※ウツボ地獄



運良く飼育のお姉さんが餌をやっているシーンに遭遇することが出来た。
どれどれ、どんなラブリーなお魚さん達に餌をやっているのかな?と思いきや、
うわ……と小さく呟かざるを得ない程の男塾ノリなお魚さん達がガツガツと餌ァお食いちぎりになっておられました。
あー心が安らぐったらありゃしねえ、というわけで下記に注目いただきたい。




左は「ブラックスポットモレイ」(大平洋・インド洋)¥140,000。
まあ要は単なるウツボ… の割にはお値段の方が随分と高価、もう海外旅行とか普通に行けちゃうレベルのプライスだ。
故にもうウツボとか呼んじゃいけないかも。うん、ウツボ様だ。発見したらとりあえず地べたに頭を擦りつけとこう。

で、右のは「シロボシテングザメ」(フィリピン・南大平洋)¥18,000。
大人しく丈夫で飼育しやすいらしく23年間飼育した記録もあるそう。
が、幾らおとなしいとはいえ、そこはやっぱりサメである。
餌を黙々とがっついている時の無言の迫力はやはり途方もなく怖い。
ついでに言うなら上記のモレイとの値段差も半端なく怖い。
故にお前は呑気にエサを食ってる場合じゃない、本気で気合をいれないといつ肩をたたかれてもおかしくないぞ?
本来ならば憩いの空間である筈の水族館にて競争社会の悲哀を見るとは、ミー自身、夢にも思わなかった。



ウツボは高級魚であるということが軽々と判明してしまったので、
そのウツボについてもう少し深く掘り下げてみることにする。

というわけで左はノーマルタイプの素「ウツボ」(南日本)¥35,000。
まあ、どこにでもいるありふれたタイプのウツボ君。
岩礁の割れ目に棲息し、時々そこからニョキっとツラを出してダイバーを驚かせることもしばしばあるお茶目さん。

で、右側の「アップで失礼☆」みたいなテイストのは「コケウツボ」(高知県・ガラパゴス)¥90,000。
両あごが湾曲しているせいで口を完全に閉じることが出来ないお間抜けさん。
だけどノーマルより価値がある。これが個性なのか?普通じゃないということなのか?
モード学園並に「こんな時代の普通になるな!」とかそんな感じの主張しちゃってんのか?
→結論:イタいったらありゃしない。実際噛まれてもイタそうだ。
よって自分はものすごく普通でいいやと思った。さ、次だ、次。



※アマゾン地獄

あのグレイシー族の血筋を引く、明らかに異形としかいいようのない魚達を何点か紹介してみよう。



こちらは「オキシドラス」(南米アマゾン・最大1メートル):¥180,000。
ヨロイのようなウロコを持つナマズの一種、まさにジュラシックな魚の代名詞。
それだけにその値段も半端じゃない。ちなみに現地では食用魚だそうだが、正直こんなのを食うヤツの気が知れない。
ちなみに当年とって26才、そろそろ人生の壁に突き当たるお年頃。
でもそれ以前に水槽の壁に突き当たりすぎって話しだよね、ゴメン、ゴメン。



で、こちらは「ロングノーズ・ガー」(北米5大湖・最大2メートル)¥非売魚。
女神転生の魔獣合成機ならぬ魚類合成機があったとして、その中にアヒルとサンマを突っ込んだら
たぶんこんな風になるんじゃないかなー?とか思わされちゃうようなヘンテコ魚。
凍らせたら槍としても使えそうだ。そして神様はもうちょっと考えるべきだろうとも思う。
幾ら何でもいき当りばったりすぎだろコレ。



さて、いよいよド本命を叩きこんでみる。「アリゲーター・ガー」(南米・最大150キロ)¥非売魚。
3メートル近くになるまで成長し、魚どころか水鳥を襲うこともあるというホンモノさんであり、
その生態は未だ謎のベールに包まれている古代魚の中の古代魚。
上記「ロングノーズ・ガー」のようなアヒルと魚の合成くらいならまだ許せたが、
流石にこれは沙汰の外すぎるだろう、明らかにやりすぎだ。
しかもコレ、淡水魚の中では世界規模でトップ5にランキング入りするくらいの勢いで大きく成長する種族らしい。
 
コワい・デカい・ゴッツいと3拍子揃った、まさに魚類界の3冠王とでも言うべきこのワニ君、
実はあの釣りキチ三平にも登場していたりする。
それぞれの個はその個にしかなし得ない役割を必ず一つは持っているという話をどこかで聞いたことがあるが、
それをこのワニ君に当てはめてみるとするならば三平に釣られるという役割はまさにドンピシャ、
適材適所もいいところだと言えるだろう。


ていうかもうやってやんよ、いくら装甲が厚くたって…!.

と思うしかないような、更に輪をかけてやりすぎ系のクレイジー魚さん達をまとめて紹介してみよう。



まずは左側から。「ジャウー」(アマゾン河・最大2メートル)¥非売魚。
まんま「主」といった称号がぴったり似合うようなボブサップ級の巨大ナマズ。
性質は獰猛で口に入るものなら何でも食べようとするが、肉はマズくて食用には向かないらしい、
なんてとんでもない無駄っぷりだ。
満腹にさせておけば大人しいらしいが、こんなのにバクバク飯を食わせたら食わせたで、
その成長度合いの方がやたら気になりそう。というか、もうここまでくると何時食われてもおかしくないやね…
とか思っていたら、かつて実際に腹の中から人骨が出てきたこともあるらしい。
うわ、本当の人食いナマズだった、ヤバすぎる。

で、右はおなじみ「デンキウナギ」さん(アマゾン河・最大180センチ)¥100,000。
最も強力な電気を発する魚類(最高855ボルト)ということで有名だが、
実は食うと案外美味しいということはあまり知られていない。
それにしても10万円とはかなりいいお値段をしているが、それはその発電量をも含めての値段なのだろうか?
ここにいると今までのモノの価値観というものが軽々と根底から覆されそうで、そこはかとなく怖くなってくる。



インパクト強すぎのコレは「パカモン」(ブラジル・最大1メートル)¥50,000。
名前どころかその風貌までもが「馬鹿モン」といった感じである。そもそもにしてからが平べッたすぎ。
キング・ザ・100トンに100回押しつぶされたような、やりすぎ系の中でもトップレベルのやりすぎ感漂うこの魚、
実はレアものという点でもかなり尖っているらしく、その初輸入時期は1992年とこれまた相当新しい。
だけど実際いるのだろうか、こんなのを購入するようなスキモノは? 

ちなみにチャームポイントはそのつぶらで小っちゃな瞳。
つまりは餓狼伝「堤城平」のなれの果て、もしくは祖先か何かであると考えられる。


※お高くとまりやがって。あアンタ、セ…

「値段至上主義」を力技で証明していらっしゃったブランド系魚類達を何点か紹介。



これは「バルバード」(アマゾン河)¥300,000。
太く幅広いヒゲが特徴的なこのナマズ君が、遂にこれまでの最高額を更新。
その額はもはや中堅サラリーマンの手取額と何ら変わらないところまできてしまった。
こんな10得ナイフみたいな形したヤツがこの値段とは…
「人間は外見じゃないよ、中味だよ!」などという虚しい咆哮を続けている連中に、
この確固たる現実を容赦なく見せつけてやりたい。



そして今度はエイが同最高額を叩きだした。
ポルカドット・スティングレイ」(アマゾン河・最大1メートル)¥300,000。
ますますもってその値段付けの基準が分からない。こんな風貌しといて食ったらやたら美味いとか?
加えてまんまワンピースの生地になりそうなその模様は、もはや人をコバカにしているとしか思えない。
実際どう考えても尻尾ひっ掴んでフライパンよろしくブン回し、大嫌いな奴の顔面ひっぱたくぐらいの用途しか思いつかない。
けど30万、どうにも納得いかない。



同水槽にほぼ同種族がいたので比較用に取り上げてみた。「オレンジスポット・スティングレイ」¥90,000。
ほとんど同じ体長・同じ外見なのに、上記のポルカドットさんとの値段差は歴然。
グラディウスのモアイ辺りがポコポコ吐き出しそうなリングみたいな模様がプライスダウンに繋がっているとでも言うのだろうか?
ここに至っていよいよモノの価値という奴が分からなくなってきた。


※ここらで少し癒し系を.

ここらできらびやか系を出して、これまでのホラー臭をさりげなく相殺してみる試み。



このやたらと綺麗な魚は「コバルト・ターコイズ・ディスカス」値段なし。
鑑賞魚として人気の高いディスカス系の中でも全身が青になることを目指して改良を進められてきた品種であり、
もともとはドイツで作出されたが、現在では世界中でこの品種を元に更なる品種改良がなされているそう。
稚魚は親魚の体表から分泌されるディスカスミルクと呼ばれるものを餌として成長するらしいが、
この辺りの成長過程はあまり人間と変わらない。生けとし生きるもの様々なれど、その原点は変わらないということか。



で、これは「シルバーアロワナ」(アマゾン河・最大1メートル)¥90,000。
とんでもなく高価と言われているアロワナ系の中で最も安く、かつ丈夫で飼いやすいのがコレらしい。
古代魚と言われている魚の中でも代表的な種であり、卵を口中フ化させるという面白い特徴を持っている。
時々勢いよくジャンプして水槽から飛び出してしまうこともあるほど元気の良い魚らしいが、
その辺り、流石はあの「はじめの一歩」の東京キャラ「木村」のドラゴンフイッシュ・ブローの原型になっただけあるなと。

ちなみに下アゴについているヒゲは感覚器だそう。
猫ヒゲをハサミで切断した途端、電柱とかにゴンゴンぶつかりだすのと同理論で、
このヒゲを抜いたりしたら、いきなり水槽壁にドコドコぶつかりはじめたりするのだろうか?



※アフリカン・インパクト.

未知なる要素を秘めまくっている、魅惑の大陸アフリカに住むお魚さん達を紹介。まずは肩慣らしから。



こちらは「エンドリケリ・コンギクス」(ザイール)¥110,000。
冠のエンドリケリはサラマンダーの意を指すそうで、
その愛嬌のある顔と迫力ある動きで人気を博しているポリプテルスの一種。
いわゆる古代魚の代名詞であるポリプテルス系の中では一番デカくなる種だそうだが、
そんな由緒正しき魚であるわりにはアナゴっぽくて食ったら美味そうぐらいの印象しか思い浮かばなかった。



そしてこちらは「アフリカン・ビッグマウス・キャット」(コンゴ)98,000。
扁平な頭と大きな口が特徴のアフリカを代表する大ナマズ。そのヌーっとした目が怖すぎる。
「ジャウー」程ではないにせよ、コイツも食ったら美味そうどころか、逆にこっちが食われそうだ。
結論として、やはりアフリカはとてつもなく怖い場所であるということを再認識するに至る。
伊達にエボラの発祥地なわけじゃない。



さらに輪をかけてとんでもない系を2連発で。
左側より「スーパー・ロングノーズ」(コンゴ・最大40センチ)¥120,000。
確かコレと同種族のエレファント・ノーズという魚を「品川水族館」みて見かけたことがあったが、
コイツはそれに輪をかけてより鼻が長い。もはやエレファントを超えて完全にマンモスマン級。
その長い鼻を砂地にめりこませて悶絶していたが、そりゃそんだけ長ければ扱いにも困るだろうに。
やっぱし長ければいいってもんじゃないよなー?(と呟きつつ、一人股間を凝視)

で、右側のは「ドロイ」¥250,000。要は肺魚。
その種族のお約束通り、肺呼吸が必要な魚で、たまに水面から顔を出して空気を吸わないと
魚の癖におぼれてしまうという、魚類の中でも屈指の間抜け度を誇るお魚さん。
そしてこれはアルビノ種なので値段は更に×3。
その外見があからさまにキモすぎる魚ではあるが、まあ見方によってはヌボーとした間抜け面が
可愛くみえなくもないのではないだろうか。



さて、アフリカ編のラストは美しい系で締めてみよう。「アーリー」(マラウイ湖):値段なし。
アフリカン・シクリッドの代表種で、成長するとその身がメタリックブルーに輝く実に美しいお魚さん。
シャープな体型で水槽の中をところ狭しと素早く動き回っているその様は遠くから観察していると、
あたかもその水槽自体が宝石箱であるかのような錯覚を覚えるほど。
が、よくよく近付いて観察してみたら、ものすごく貪欲にエサを食いちぎったり、
仲間割れをおこして互いにド突きあいをしたりしていた。
いかんせん綺麗な華には棘が付きものということか。



※もはやなにがなんだか….

あからさまにインパクトのありすぎな、いかにもな非売品系の大物を連発でいってみよう。



これは「バガリウス」(インド・最大1メートル)。
東南アジアに広く分布する大型ナマズ、通称アジアの怪ナマズ。てか、もう見た目からしてエレキングっぽい。
成長は遅く温和と言われているが、これと同種族である「ジャイアント・バガリウス」なる巨大ナマズは
「世界最強淡水魚スレ」にも名を列ねる程のとてつもない大ナマズとして有名であり、幾ら温和だからと言ったって、
その迫力ある顔面で水槽の壁をゴンゴンやられた日にゃ、肝も冷えてくるというものだ。




でもってこちらのは「コブラ・スネークヘッド」(インドネシア・最大80センチ)。
いよいよもってして終末感漂いまくりだ。
色彩に特長こそないがその偏平な頭部といい、やたらめったら固そうなウロコといい、
もはやデボン紀の鎧魚と変わらないレベル。
実際4億年以前の海にはコイツを10倍デッカくしたような常軌を逸するフォルムの魚達がゴロゴロ存在していたらしい。
海洋ロマンをこよなく愛するこの身としては、せめて一匹ぐらいは生き残ってくれていることを切に願うのみである。


※色による支配

人間のみならず、魚類の中にもカラーの違いによる人種差別は存在するらしい。
それをよく示す「アナバス」系統の種族が並んで展示されていたので、ダブルで紹介。



次頁左側が「ゴールデン・グーラミィ」(インドネシア・最大80センチ)¥100,000。
ゴールデンというわりにはやけに桃色だが、まあ些細な問題なのでスルーしておく(アルビノくさいし)。
こいつは気性が荒いグーラミィの中でも比較的性格が穏和で、発情期以外はほとんど争いごとをしないナイスガイ。
そのズングリとした見かけどおり、水槽内を泳ぐというよりも、むしろ腐乱死体のごとくプカプカと漂っておられた。

そして右側は「オスフロネームス・グーラミィ」(インドネシア・最大80センチ)¥200,000。
色が桃色から黒に変わっただけで突然値段が2倍になりやがるときたもんだ、実に不思議でしょうがない。
コイツは通称「ベタ」と呼ばれているそうで、その気性は極めて荒く、雄同士で混泳させるとどちらかが
死ぬまで戦い続けるという、まるで闘犬を彷佛とさせるような(闘魚?)魚らしい。

片や気は優しくて呑気もの、片や粗忽かつ乱暴者。
しかしその価値は後者の方が2倍という、あたかもこの大都会東京の生存競走の縮図を
あらわしているかのような結果に対し、ミーはただ頭を垂れ、つま先を眺めるのみである。


※色による支配・G級編.

それではここらでこの水族館におけるプライス、ベスト3を発表してみよう。



では、まず3位から。「イエロー・アロワナ」(人工改良種・最大80センチ)¥1,000,000。
ブルーとレッドのハイブリッド種として人工的に改良された種族。
そのヒレの黄色具合が実に美しいアロワナではあるが、レッドの偽者として売られた時期もあり、
「アジア・アロワナ」の中ではあまり人気がない種だそう…
にしてもこの値段か〜 既に中堅サラリーマンのボーナス2回分のお値段。
この東京タワー奴隷市場のインフレ狂騒曲もいよいよ来るべきところまで来てしまったという感じだ。



続けて同着で3位。「ゴールデン・アロワナ」(東南アジア・最大60センチ)¥1,000,000。
文字通り金色になるアロワナ。黄金に輝く彩色は素晴らしく、東南アジアでは富を招く魚として大切にされているそうだが、
実際こんなのが川で泳いでいたらビックリするどころか、むしろキモくないか?その色彩感覚の不自然さたるや、
またぞろどこかの悪徳業者が上流に工業廃水でも垂れ流したんじゃないかと本気で心配になってくるほどだ。



で、お待ちかねのナンバー1はこの魚。
スーパーレッド・アロワナ」(インドネシア)¥2,500,000。
その紅色に輝く体で水槽の中を威風堂々泳ぎ回るその姿は、まさにアロワナ界の王様。
幸運を運んでくる魚として世界中の華僑が買い漁ったそうで、そのせいかどうかは知らないが、
その値段は本気でとんでもないことになっていた。
もはや新卒派遣OLの年収手取りレベルとほぼ同等、インフレにも程がある。

ということで上位を全て「アジア・アロワナ」種が独占する結果となってしまった。
熱帯魚マニア羨望の的とも言えるこれらの種の最たる魅力は、なんと言っても見るものを圧倒する
大きさ・美しさ・迫力があるのに加えて、やたらと寿命が長いこと(水槽内では20年・自然界では50年)や、
ゆっくり年月をかけて体色を変化させていくのでその様を長く楽しめること、などだろう。

今では高級観賞魚の代名詞となったこの手の種も、かつては気性が荒く飼いにくいとの理由で
あまり人気がなかったそうだが、成長するとともに素晴らしい発色をすることが判明した途端、
赤や金色に変わるその様を幸運の魚と信じた中国系の愛好家達によって飼育が流行し、
やがてそれはこの種の乱獲へと繋がっていった。
そして今ではアジアアロアナは絶滅の怖れがある野生動物としてワシントン条約で保護対象魚となり、
1987年には日本への輸入も禁止、現在では養殖魚のみ輸入可となり、購入するのにも登録が必要な
超々高級魚となってしまったというわけである。 …なるほど?とんでもなく値段が高いわけだ。



※何気ない優しさこそが.



暗幕を施してある水槽があったので何だ?と近寄ってみたら、上記のような貼り紙を発見。
これを見てどことなく優しい気分になるミー。
そっかー、命を育んでいるんだね? 新しい生命を今まさにこの世に誕生させんと頑張っているんだね?
状況は了解した、極めて静粛かつ慎重に鑑賞を遂行しようとそっと水槽に近付く。
頭の中で「このー木なんの木きになる木ー♪」のテーマを口ずさみながら、そっとその暗幕の隙間から中を覗きこんで…



…見た瞬間、ホゲっとなった。「ヘテロスピラ」(メキシコ)¥10,000。
とても今から新しい生命を育むとは思えないその荒涼っぷり、コイツの目は完全に死んでいる。
一体全体、お前のその魚のような目はなんのつもりなのだ!と問いつめようとして、
よくよく考えたらまんま魚なのでそれはそれで仕方のないことに気づいて少しやきもき。

それにしてもゾルディック家の番犬ミケかコイツかというぐらい、この目からは底知れない闇の恐怖を感じてしまう。
一体どのような人生を送ってきたらこのような目になるのだろうか? 
どうか永遠に知らなくて済みますようにと願いつつ、ミーはその場を後にした。


※戦慄の磯コーナー



上部に円筒形の穴ボコが空いている水槽を発見、どうやら室内における簡易的な磯コーナーを実現している模様。
うむ、なかなか良いではないか、どれどれここはミーめも一つ…
そう呟きつつ餌をやろうとするもその「絶対に手を入れないで下さい!!」と異常なまでに
赤々しく書いてある文字列末尾のエクスクラメーションマーク連打がほんの少しだけ気になり、
ふと視線を水槽内に向けてみれば…




うん、そこにはまごうことなき「ピラニア」な皆様がおすまし顔しつつ、
獲物が来るのを今か今かと待ち受けておられた。ふーん、そうきたか。
ダチョウ倶楽部の上島並みに「殺す気か!」と叫んでもいい場面だが、
ミー的にはブラック・ジョークが利いていて大変よろしいとも思う。
ちょっとお洒落な「簡易型指詰め機」として893な皆様に愛用していただくとかいいんじゃないかな?かな? 
指どころか腕までガイコツ化してしまうところが唯一の欠点だが、そこはホラ、男を売る職業だもの、致し方なし。
いっそのこと後に残った骨を有効活用すべく限界まで尖らして「無限の住人」の尸良さんみたいにドスにするとか?


※唐突にやってくる憩い.

ありとあらゆる意味でコーラの原液なんざ目じゃないくらい、尋常ならざる濃縮度を持った空間だった… 
無事に全ての鑑賞を終え、安堵しながら出口の方に歩を進め始めたところで、
突如そのベクトルへと向かう運動エネルギーの慣性モーメント全てを強制キャンセルされる羽目となった。



何故か唐突に日本庭園? 
お約束の「カコーン!」こそ標準装備でなかったものの、その池には鯉どころか亀まで泳いでいるうえに、
バックを彩る灯籠や草木などのわびさび系オブジェも完璧にセットアップ完了済み、
加えて近くには御丁寧にも「おーいお茶」が完備されている自動販売機まであった。



途方もない数の水槽、ありとあらゆる種類の魚、それら全ての魚に関する詳細データとプライス。
これら全ての様々な情報を延々と与えられ続けた最後の最後にて、ここまで完璧な憩い空間をいきなり
見せられた日にはもはや憩わざるを得ない、容赦なく憩わさせていただく、それはもう完膚なきまでに、
というくらい、この「池と灯籠と鯉」という三味一体要素が織りなす侘び錆びボンバブルの破壊力には絶大なものがあった。

言わばこの空間は、我ら永遠のストレンジャーに対する設計者の気配りが具現化したものと言えるだろう。



■総合.

魚の数・その種類は今までの水族館の中でも最強レベル、
だがその敷地面積の狭さも今までの中でダントツレベルという2つの相反するパラメータを同時に合わせ持つ、
非常に危うい天秤バランス上で存在している極めて希有な水族館と言えるだろう。
そのアンバランスさは確かに面白いっちゃ面白い。加えて言うならこれだけじっくりと魚を接写できる水族館も珍しい。
故に珍しい魚を1人っきりでじっくりと観察したい方には超お勧め。
ただエンターテイメント的要素が完膚なきまでに排除されている水族館でもあるので、
カップル・もしくはファミリーの方が楽しむことは極めて困難だと思われる。

ファミリー ★☆☆☆☆ ホモ・サピエンス:ゼロ
カップル度 ★☆☆☆☆ 故にカップルもゼロ
わびさび ★★★★☆ 憩い場所のそれはかなりのもの
学術度 ★★☆☆☆ 数で勝負か?
お得感 ★★★☆☆ 標準レベル
建物装飾 ★☆☆☆☆ 正直皆無
水槽装飾 ★☆☆☆☆ 確実に虚無
総合調和 ★★★☆☆ 全てが謎
憩い場所 ★★★★★ パない
磯コーナー ★★★☆☆ ブラックジョーク強め
ペンギン度
レア度 ★★★★★ おそらく最強
総合 ★★★★☆ あくまで私的視点より


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