しながわ水族館

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入館



入館前… ひょっとしたら一番楽しい瞬間かも知れない。
これから巡りあえるであろうステキなお魚さん達のことを考えるだけで、自然と胸の動悸も速くなり、
それにあわせて歩く速度も増していくというものだ。
そんな良テンションで嬉々としながら目的地へ向かっていたら、後ろからやってきたチャリンコにもろ足を踏まれる。
しかも平然とスルー…だと? うむ、入館前の楽しい一時をすっかり台なしにされてしまった。
どうにか心の体勢を立て直そうとその場にしばしとどまり大きく深呼吸をついたところで、目に飛び込んできた風景が右の写真。

平和の象徴をあらわす看板「世界一家人類兄弟」の横にデカデカと「平和島競輪場」。
平和とか兄弟とかいうピースワードと、それともっとも対極にあると思われる固有詞が半径30メートル以内に
同居するこの偽善ワールドを前に、心の芯どころか骨の髄まですっかり冷えきってしまったところで、
とんでもなく帰りたい気分になったことは言うまでもない。




どこかもやもやした気分を抱えつつも、なんとか水族館入り口に到着。
あ、なんかパッと見た目、結構綺麗かつコジャレた感じだ。
ふーんなかなか頑張ってんじゃないの?と感心しつつ、ふと右を見たらそこには巨大マンションが。
風情もへったくれもあったもんじゃない。これだから都市隣接型水族館って奴は… あまりに妙味ってもんがなさすぎる。
もう入館前から文句ブーブーである、はやくも先が思いやられる。



で、入ったら入ったで、いきなしコレモンですわ。人人人人人人人人人人人人人人人人… ギャワー
この状況を即刻打破しうる唯一かつ随一の手段である床上への脱糞衝動に無闇やたらとかられるも、
人としての理性及び尊厳と生物としての剥き出しの本能を量りにかけた結果、それは断念しておいた。
自分の勇気のなさ加減に絶望を禁じえない今日この頃だ。


館内散策、そしてそこにある恐怖

まあ、文句ばかり言ってもしょうがない、せっかく来たんだし、
と半ば強引に気持ちを切り替え、むりやり鑑賞モードに。




入り口近くは「東京湾に注ぐ川」というコーナになっていて、
滝の落ちる渓流から上流・中流・下流までをそれぞれ忠実に再現した水槽が設置されていた。
その中を泳ぐ主戦力は「マス」「ヤマメ」「イワナ」「ウグイ」「コイ」など。
なんでこんな一山15円のモヤシばり駄魚をこの人ごみのなかで必死こいて鑑賞しなければならないのだろうか?
もう自分で自分が分からない。が、この状況下にあってはこの投げやりテンションも致し方なしといったところか。
何故ならこうして写真を撮っている今現在も、そこら中を我が物顔で闊歩しておられるガキ様達に邪魔者扱いの
早くそこどけオーラを出されまくりだからである畜生。
実際本気で蹴ってくるガキ1名、子孫末代までたたろうと密かに誓う。

そんなことを考えつつ継続鑑賞してたら自分自身が祟られちゃうという憂き目にあう羽目に。
まあ、とにかく次の写真を見てみてほしい。



え?水槽内側部分に何者かの手? 実際問題としてマジ怖である。どうにかならないもんだろうかコレ?
(実際には水槽のガラスに子供の手が映りこんでいるだけと思われ)


今日の見どころ



人垣地獄に辟易しつつ、この水族館の最大の売りである「トンネル水槽」を鑑賞。
確かに見映えはきいているのだが、あまりにも人が群れすぎていて、
これじゃどっちが観察してるんだかされてるんだかさっぱり、といった感あり。

そんなミーの心境を見透かすかのように「海ガメ」君がスーっと寄ってきて
私のことを舐めるように眺め回したあげく、奥の方にフェードアウトしていった。
か‥亀にすら!亀にすら!(タマゴ産むとき泣くくせに)




次はド迫力系2ショットをダブルで。
どれがどれだかはハッキリしないが、たぶん「カスリハタ」と「クエ」の組み合わせの筈。
全長1メートルを悠々と超えるその巨体を静かに揺らしながら水底にて憩うその姿はまさに圧巻という他なし。
ちなみに「クエ」という名前は和名で、関東では「モロコ」、九州では「アラ」と呼ばれているそう。
鍋にするとメチャうまいということでも有名らしい。


哀愁の磯コーナー



「ふれあい水槽」という名のおなじみ磯コーナーにて、注意書きを発見。

 「
ヒトデなどに直接触れて観察できます。やさしく接してあげてください」 

なるほど?このように小さくてか弱い生き物達にも力強い生命の息吹きが宿っていることを悟ると同時に、
そういったもの達にこそ優しく接してあげなければいけない、ということを体で学べるコーナーなのであるな。
やー、何度見てもハートフルなテイストを感じさせるなァと感心しきりだったのも束の間。

一斉にのびる手、手、手。鷲掴まれてもみくちゃにされるヒトデ君、水面に叩きつけられるイソギンチャクさん。
人数が多いだけにその蹂躙ぶりもマジ半端ない。
そんなインフェルノな光景をニコニコと見守る親御さん達、中には嫌がる子供の手を無理矢理つかんで
強引にヒトデと一次接触させようとする猛者の姿も。

「ホラ触ってみなさい?」「こ、怖いよう」「いいからさわってみなさい」「やだおう、気持ち悪いよう」
「触りなさいって言ってるでしょ、そんなだからアンタは理科が駄目なのよ!」「ギアー!」

スパルタカスなマザーが跳梁跋扈で阿鼻叫喚。
ここまで人は獣になれるものなのか?これを地獄と言わずして何を地獄と言うのか?
故に我等ホモサピエンスは滅びるべきだと実感。もちろんミーが大往生したあとに限り、であるが。


レッツ・ミー・エンターテイン・ユー.

「音を出す魚達」というコーナーを発見。
海に棲む生物たちが、ヒレや歯、浮袋に触覚などを使って音を発する様子を紹介している模様。
水槽内部のギミックが極めてサイエンスちっくな感じで、ヴィジュアル的には非常に目立っていた。



そこに珍しくもなんともない「イセエビ」君がめちゃくちゃ立派にディスプレイされているのを見て逆に驚く。
説明によると「イセエビは第2触覚がよく発達し、その根元の内側に発振器を持っています」、ふーん。
てか、どこをどっから見ても普通の伊勢海老だ。食ったら美味しそう以外の感想は特になし。
ただ水槽越しに見える背面モニターの用途は若干気になる。
これ何なのだ?と思った瞬間、イセエビ君の紹介ビデオがいきなり流れ出した。
や、確かに努力というか工夫は買う、買うんだが、費用対効果がまるで見合ってない気がする上、
イセエビ君にとっては相当いい迷惑じゃないだろうかコレ?

人間サイドからみても空振り気味なうえに、伊勢海老からしてみれば単なる拷問以外の何物でもないこの仕打ちに、
ミーはただただ涙を禁じえない。 「ギー!ギー!」 ああ、イセエビ君も泣いている。(ビデオのタイトル通りだ)



で、これは上記と同コンセプトの別水槽。
マツサカウオ」というらしいが、この魚は初見である。む、レア度たかいかも知んない。
(後日追記:掲示板にて情報提供アリ。実はありふれた魚らしい。なんだ駄魚か)

光を出すバクテリアを体内に寄生させ、それを発光源として小魚を誘き寄せ捕食するという、なかなかに寄生獣ライクな魚。
説明によると「
浮き袋の内壁に付着する発音筋と呼ばれる筋肉が収縮して浮き袋に振動を起こし、音をだしています
だそうだが、いや、全然聞こえない。
そして当然のごとく、音を出すことを期待して見ているガキ供に水槽をバンバン叩かれるというわけだ。
電気ウナギの憂鬱にも通じる何かがここにある。そして今日もショーエンターテイメントの裏側は悲哀に満ちている。


グレイシーの血筋



「世界の大河から」というコーナーにて、アマゾン魚の代表格であるところの「ピラルク」を発見。
下に引っ付いているのは「セルフィンキャット」。
しかしまあいつ見てもこいつらから受ける「ド迫力」のフィーリングは気絶もんのヤバさだ。
同じ力技系の「クエ」や「ハタ」などのユーモラスなフィールとは明らかに一線を画すその怖さを見るにつけ、
到底同じ魚類だとは思えない何かを常に感じてしまう。


そして自分探しの旅へ

レアものを集めた「珍しい魚たち」というコーナーから、特にインパクトが強かったものを紹介。



左はオーストラリア大陸東岸とニュージランド西岸に挟まれた海域「タスマン海」に棲む「オールドワイフ」という魚。
この辺りの海域に棲む魚の色と形状は非常に独特な種が多く、モルジブと並んでダイバー憧れの海になっているとか。
この魚もヒラヒラしていてゼブラちっくで素直に綺麗、非常に華麗で、つまりは突っ込みどころナシだった。
が、その名前だけはどうもいただけない。オールドワイフ=年老いた妻、ってなんだ、そのいい加減なネーミング?
と思って調べたら「捕獲された際に歯をギシギシ鳴らす様が老婆のようであることに由来する」からだそうで、
前言撤回、突っ込みどころ満載。つくづく親は子供の名前をもっと熟慮するべきであると「悟」という名前を持ちながら
未だに悟りの断片すら掴めないミーは、ただただ小さく頷くのだった。

で、右は南米北部に生息する「ヨツメウオ」。
その名前が示すとおり目が4つある変わり種さんかと思いきや目は実際には2つ。
ただその目は中心で分かれ、水陸両方を同時に見れる構造になっているとか。
上下×2のフォース・アイをフル活用し、水面から出ている目で昆虫などを見つけると飛び上がって捕食、
水面下の目では水中にいる小動物をみつけて食べるらしい。
むう、上下2つもの入力デバイスから合成される映像とその処理にかかる負荷とはいかほどのものなのだろうか?
頭が混乱しないだろうか?なにか妙なことが気になりはじめる。



またまたおかしな奴がいた、「エレファント・ノーズ」だって。
そのズゴーンと突き出した鼻っ柱が実に特徴的なファニーガイ、アフリカ中央部に分布。
その長い口?を使って泥の中の虫とかを掘り出して食べるそう。
またレーダーの役目として尾部より電気も発するらしい。なかなかにサイバーで面白カッコいいかも。

で、右のは「シロボシアカモエビ」。足の先が白いことから「ホワイトソックス」とも呼ばれるそう。
魚の体表や口の中の寄生虫をクリーニングしてくれるナイスガイでもある。
つまりアレか、魚類いわく「お口の恋人」か。
とりあえず魚社会にだってそのくらいの猥雑ドリームがあってもいいと思う。


本日の801



こちらは「ニセゴイシウツボ」と「ドクウツボ」。
その毒々しい体色の肉体を互いにガッチリとクラッチして思う存分801まくっていた。
悪魔と妖怪の配合とでも言うべきか、おどろおどろしいにも程がある。

それにしても「ニセゴイシ」とは変なネーミングであるなと思いきや、「ゴイシウツボ」という本家さんがちゃんといるらしい。
それのニセモノだからニセゴイシ?これまた随分ぞんざいな名付け方である。
ニセゴイシウツボよ、聞くがいい。お前は確実に愛されていない。

「ドクウツボ」さんの方はその名の通り体内に「シガテラ」という毒を持ついわゆる危険魚。
これをくらうと温度感覚に異常をきたして熱いものを冷たいと思うようになっちゃうらしいので要注意だそう。
綺麗な花には毒があるとはよく言うけど、醜いものにも毒があるってか? 


まだ見えぬ何かにある何か



ここ、しながわ水族館は都内で唯一「イルカショー」を見られる貴重な場所でもあるらしい。
(2006年以降、エプソン品川アクアスタジアム設立により都内唯一ではなくなりました) 

ショー開始を知らせるサイレンが鳴ったのですかさずイルカ君プールへと向かったらここでも人、人、人、人の山。
またまた人づくしである。喚声が前の方から聞こえるところから察するになんか盛り上がっているっぽいが、
それをミーが見ることは決して叶わず、ただただストレスだけが溜まるのみ。
まだ見えぬ何かに何かを求めて呆然とその場に立ち尽くす羽目となった、虚しい…


そこにある憩い.



お次は「どう…なんスかねえ?」といった感が否めないマヌー度高めアイテムを2連発でどうぞ。
水族館にてカニ道楽の看板や、カボチャを被せた水槽を見せられても「うーんちょっと」といった感じで
ヘナヘナと脱力するより他になし。その唯一の存在意義を語るとするならば、水族館側の熱の入れように
反比例してこれらコーナーがあまりにも閑散としすぎている為、待ち合わせ場所及び休憩コーナーとして
大いに利用されていることなどがあげられよう。
「じゃあ30分後にカニの前で」 「あのヘンなカボチャの前でねー」
一生懸命コレを作成した職員さん達も、まさかこういう使われ方をされているとは夢にも思うまい。


※リアルという名のファンタジー.



「シャーク・ホール」というコーナーにて、モノホンの「サメ」さんが展示されているのを見つけて、
近付いてきたところを水槽越しに接写。怖い、怖すぎる。加えて威厳もありすぎる。
圧倒的な存在力を見せつけながら円筒系水槽の中をゆらゆらと。これぞサメ、まごうことなきジョーズ。

よくよく考えたらコイツ等はいわゆる古生代と言われる3億年前からその特徴あるフォルムをほとんど変えず、
ひたすら海の王者として君臨し続けてきたのである。
その超存在と比べたら、たかだか1万年程度の歴史しか持たぬ我らヒューマンなどまさに生ゴミも同然。
だが進化の勝利は我々のものだった、あくまでも今のところは。もしかしたら1万年後は逆転しているかも知れない。
故に我々は生態系の頂点地位に甘んじることなく日々己を磨かねばならぬ、ということか。うむ、綺麗にまとまった。

で、右側の写真は「ミツクリザメ」の剥製。以下に説明文を抜粋。

 
ミツクリザメとは深海に住む鮫です。
 突きだした吻とエイリアンの様に出し入れ自由な口、グニャグニャな体等、おもしろい特徴を持っています。
 日本で初めてその存在が確認されて以来、何十体か捕獲されていますがほとんどその生態は知られていません。
 1mを越す個体はほとんど捕獲されず、又生きている姿も希にしか見られません。

極めて貴重かつ神秘的な魚のようだが、
傍目から見ると正直なところ「何?兵器?」とかそんなテイストがプンプンである。
サメ特有の特異な形状もここまで来るともはやUMAの領域、ドラクエ辺りにシャーク・ソードとかいう
ネーミングの単なる武器として登場していても何ら不自然はないほど。つまりはカッコ良すぎだ。
そのカリスマ性にほんの少しの後ろ髪をひかれつつ、ミーはこの水族館を後にした。



総合.

人口密集している都市圏における水族館の可能性は充分示してくれていると思う。
交通の利便性も高いし、近接の水上レストランもそこそこ洒落ているので、
お気軽なデートスポットとして利用するも良し、ファミリーの絆の気づきの場として活用するも良し。
が、常にロンリーなオンリー野郎は決して近付かぬが吉だろう。

ファミリー ★★★★★ ひたすらに人尽くし
カップル度 ★★★★★ マキシマム
わびさび ★☆☆☆☆ ほぼ皆無
学術度 ★★★☆☆ かなりのもの
お得感 ★★☆☆☆ ちょっと割高
建物装飾 ★★★☆☆ コジャレ系
水槽装飾 ★★★☆☆ 程々にゴージャス
総合調和 ★★★☆☆ 全てが「中庸」に見える
憩い場所 ★★☆☆☆ 捻り気味
磯コーナー ★★★★☆ 阿鼻叫喚
ペンギン度 ★☆☆☆☆ 地味め
レア度 ★★★★☆ かなり高め
総合 ★★★☆☆ あくまで私的視点と個人的意見から


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