妹よ(新・機動戦記)


でもって正月って結構やることないのな。
結局、帰結するところは、いつもの性的衝動行為。

エディ・ヴァン・ヘイレン並のライトハンド奏法(いつもより振動2倍増し)から
ジェフ・ワトソンよろしく両手を使用してのタコ足タッピング(リモコン操作できないのでツラい)、
はたまたザック・ワイルド級の超弩弓ペンタトニック奏法(力まかせにやるのでイタいよイタいよ)まで
ありとあらゆるプレイをやり尽くしてオイラもう赤玉もでねえよとかそンな感じになってるところへ一本の電話。

(カチャリ)「はいサカイですが」
「明日実家で新年会やるので全員集合だって。伝えたからなバックレたらマジ燃やすぞテメエ」ガチャン!

ツーーツーーツーー

血のつながった可愛い妹からの3ヶ月ぶりの電話がコレもんですわ。
ボクはいつも思うのです。血の絆ほど面倒かつ呪われしものはないと。
その日は1日中憂鬱になったあげく、夕方には寝てしまったという…


てなわけで1年ぶりくらいに実家に戻るわけです。
ガキ共に金をバラまいたあげく、ひたすら親戚共の非モテなぶり攻撃を受けなければいけないという呪われし1日。
ってかプレイ・フィーとしてこっちが金を貰いたいくらいですマジで。

でもね。一つだけいいこともあるのです。
サカイ家の長でもあり今年90才の誕生日を迎えるグランド・パパ、略してグランパからすべてのサカイ家の
人間がお年玉をもらえるという良き日でもあるのです。わ〜拍手拍手。
まあ今年55にもなるマイ・パパンにお年玉をあげるグランパの図という、その地獄絵もどうかと思うのですが、
入っている額が半端じゃないので誰も文句をいいません、マネー・イズ・パワー。
親ガモの後をひょこたんひょこたん歩くカルガモよろしくみんな珍妙な面しつつもこぼれる笑いを抑えきれず、
バイクで自動車に突っ込んで顔面神経痛くらったビートたけしみたいな間抜け面で、お年玉をゲットだぜ。
マイ・シスターも「わ〜、いつもありがとうおじい様☆」とかいいながらこまっしゃくれて一礼。
な〜にがお・じ・い・さ・ま・☆でしょうか。実の兄貴のことは一度も「おにいさま」と呼称してくれなかったくせに。
でもコレに関しては確かにボクも悪い。小学生時代に兄貴から「今日から俺様のことはケンシロウと呼べ」などと
いきなり無茶な要求突きつけられて仕方なくつきあってやるも、たまに素でお兄ちゃん?とか呼んじゃッただけで
北斗残悔拳!という叫びとともに頭の両脇をグリングリンやられたり、ほわたたたたたたたたたたた!と容赦なく顔面を
突かれまくったりしてたら、そら「おにいさま」とか呼べなくわるわな。
実際ボク自身、妹からの呼び名で記憶しているものとして
「兄貴」「兄ちゃん」「ケンシロウ様」「ベジータ様」「ダークシュナイダー様」以外の何かを思いだすことができません。
このあたりが人としてどこか間違ってるとか言われる由縁でしょうか?全然どうでもいいけどな。

そンでもってグランパは自身の大役は終わったとばかりに「ふふふ風呂はまだかね」とかやりはじめるわけです。
ところがこのじじい、一見ボケてるように見えて仕事の電話となるや、突然人が違ったようにシャキシャキしたり
するので案外と油断なりません。ってか90なんだからいい加減引退しろよじじい。
ちなみにボクは未だにこのじじいが何をやって生計をたてているのか知りませんが、小学生時代に偶然聞いてしまった
「まだその2トン沈めてねえのか、はやくしねえと値が下がるだろ!てめえが代わりに沈むか、ああ!」という
会話が恐ろしすぎて、それ以来この疑問を解きあかそうとする気力を失ったまま、今に至っています。
知らぬが仏、何時の時代も共通のキーワード。そして生き残る秘訣は10%の才能と20%の努力に30%の臆病さ、
残る40%は全部運のみで構成されているというわけです。結局世の中、運頼みなンだよみんな!(と強く拳を突き上げる)

そんなこんなで、いよいよおなじみの非モテなぶり攻撃(やあ結婚はまだかね・やあ相変わらず駄目かね・やあ以下略)
がはじまる時間帯かなと思いきや… おや? 今年は少し様子が違うようですよ?
妹が腹から産み出したピコピコ動く出来損ないアイボみたいな物体が皆様の注目の的なおかげで、ボクみたいな生ける
汚物に費やす時間など皆様お持ちになっていないようですよ。結論としてボクは完全シカト状態の憂き目にあう羽目に。
う〜む、まあ助かったと言えば確かにそうなんですが、どこかしら寂しい感じもするナァなどという実に複雑なボクの
心理状態をますます鬱にさせたのはマイ・パパンの筆舌につくしがたい駄目っぷりでした。
ボクの横っ面をカチンカチンに凍ったタイやメカジキでひっぱたくほど怖かったあのパパンがドータのドータに向かって
アーバババ&たかいたか〜いの連続コンボ。どこのバカですか。よく目にする光景ですが自らの肉親が行うソレ系行為を
見るのが、ここまで凹みを伴うものだとは思いもしませんでしたよ。

そンな感じで実に複雑なペコンペコン具合をかもしだしているボクの横で、今度はママンと妹の旦那(義弟か?)が
死ぬほど頭の悪い会話をしはじめました。

 「で、***さん、最近、事務所(音楽系の会社)の方はどうなの?」
 「いや、アレなんスよ、まだ一杯一杯で…」
 「へえええ〜、それはみんな… ホラなんて言ったけ?ヒップホッピー?とかそういうのなの?(私も勉強してるのよ風に)」
 「あ……(訂正の説明を考えつつ途中であきらめた感じ)ああ、そんな感じです」

嘘をつけ嘘を!みたいな突っ込み以前に、おばさんが無理してそっち系の会話に混ざろうとするその努力は認めるにしても
聞いてるコッチが恥ずかしすぎて死ぬしかないというこの空気はどうにかならないものでしょうか?
母がヒップホッピーとか抜かした瞬間、義弟がコッチの方をチラッと見てトランペット欲しい黒人の子供並の目ェしながら
「ホッピーは酒だろ!」とか三村ばりに突っ込んでくれよオーラをこちらに送っていたような気もしますが容赦なくシカト。
犠牲者はお前だけで充分だ。ところがこの地獄会話がこれだけでは終わってくれないわけですわ。

「へ〜みんなヒップホッピーなんだ〜。じゃあさじゃあさ、次に契約するバンドはバラード系とかどう?」

この会話に対して当然のごとく私・妹を含め親戚のガキども全員ドロドロに溶けはじめるわけですが、よりにもよってここで
義弟が「ああ平井堅とか?」みたいな、まるで空気を読んでない返しをした為、ますます場はグダグダとなることに。
マジ殺意すら覚えました。そしてこんな時に限って深く感じる兄弟の絆。無意識化でのナチュラル・アイ・コンタクト。
交わされた思念は「もう埋めるしかねえか?」「いや燃やすしかないでしょ」だったと言います。いっそボクを!(殺せ)

受けたダメージがあまりにもでかすぎたが故、アマテラスよろしく2階の部屋に閉じこもろうとしたその時、妹がボクに
寄ってきてこう言い放ちました 「お兄ちゃんパソコン詳しかったよね?ちょっと見てほしいものがあって…」
そしておもむろにノート・パソコンを取り出しはじめるマイ・シスター。
ちなみにコイツがボクのことを兄貴と呼ばずお兄ちゃんと呼ぶ時は必ず裏に何らかの思惟があるといっても過言ではありません。
警戒しつつ話しを聞いているうちに、全身から血を吹き出して死ぬかと思うようなビッグ・ワードが妹の口から飛び出しました。

「…でさあ、このソフトなんだけどさあ。私もホームページとか言うのつくろうかと思って色々やってるんだけどさあ」

ホームページという言葉から連想される家族ばれプレッシャーに耐えきれず、ボクの全身の細胞という細胞が沸騰しはじめます。
グツグツグツグツグツグツグツグツグツグツ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬマジで死ぬ

「で、お兄ちゃんソフトのこととか詳しそうじゃん? この使い方なんだけど…」

おお、バレじゃなかったよ!神様ありがとう!仏様ありがとう!活けとし生きるものよありがとう!
そして森から小人が出てきてボクの頭のまわりをクルクル回ったあげく大合唱をしはじめるというわけですアライヴ!
こうなったら余裕です。その辺りのソフト使用法に詳しいことを容赦なく見せつけて兄貴威厳度アップなのです。
やっぱり恐怖で人を縛るのはいくないよ! 魅力と人望と荒縄さえあれば人はついてくるものなのさ!

「で。お前どんなホームページつくってんの?」
「え〜〜や〜だあ!(珍しくこの物言いは可愛かった)、まだ旦那にしか見せてないしさあ!」
「ふ〜ん、見せたくないんだ」(みな経験があることだと思いますが初心者は自分のページを人に見せたくて仕方ありません)
「う‥‥ん‥‥恥ずかしいしさあ‥‥」
「見せたくないんだ」(初心者は自分のページを人に見せたくて仕方ありません)
「恥ずかしいしさあ」
「見せたく…」(初心者は自分のページを人に見せたくて仕方)
見せてえよ!見ろよ!

逆ギレと照れで人を殴るのはサカイ家の血のようです。とりあえず眼鏡曲がった くそ。

というわけで見ることに。
それはまだローカル・ハードディスクの中にのみ存在するちっぽけなホームページでしたが、そこそこの体裁は整っていました。
ん?内容? ん〜〜ホラ皆よくやりがちなイタいやつだよ、旦那とのショットとか子供の写真とか内容のない戯言とかさあ。
あ〜あと自分の写真が多いですね。よくありがちな勘違い系ネットアイドル・サイトの出来損ないみたいなもんだなこりゃ。
とすると致命的な欠陥が1点、このサイトには存在することになります、言うべきか言わないべきか… ん〜〜〜

「ねえねえ、どうかなあ」
「ん〜〜〜〜〜」
「ねえねえ、どうかなあ」
「なあ…」
「うん!何でも言って!なんでも!」
「写真さあ……」
「うん!うん!うん!」
「バナナは?」
「…………………… え?」
バナナくわえた写真は?

ボクのこの安易なセリフがどういう事態をまねいたかは皆様の御想像におまかせするとして、とりあえず妹が
上目づかいにチンポくわえるのを連想させるような写真を自サイトに載っけるほどはっちゃけた性格でなかったことに
安心しつつも、自己アピール能力がいくばくか欠如している件に関して、今後の行く先に少しの不安を感じたりもするのでした。

そしてこの情報を得るための代償となった自らの体と家族内における威厳度の喪失を省みつつ、最後に実家で飼っている
ワンちゃんだけにでも優しくしてもらおうと、彼女(メス)の元にボクはすりよるのでした、
ああボクの気持ちを分かってくれるのはワンちゃんだけだなあ、スリスリしよスリスリ。君の頬とボクの頬をこうやってスリス…

ワギャ!ワギャン!ワギャン!ワギャン!(ガブ)

その日の午後23時頃、鼻のところにくっきりと赤いアザをつけた男が山の手線内でシクシクと泣いていたといいます。
そしてボクはボクをこの世に遣わした生命の源たるこの大地を呪うしかないというわけですよ!砕けろ地球!弾けとべ太陽!


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