ケータイ伝7(新人プレイの季節ですッ!)


新人プレイッ!新人プレイッ!新人プレイの季節ですッ!

何故に新人プレイなのか? 規制・制限を骨の髄まで染み込ませる為でありますッ!
では何ゆえ規制、制約、すなわちギアスなのか?
それらから生まれる閉塞感・圧迫感や劣等感こそが、才能を開花させるからでありますっ!

実際のところヤツ等はその辺をまったく理解していませン。
オウムのごとく「私の長所はここだと思います」「私の得意な分野はこれなのでこういうのをやりたいです」
アホか!
自分自身でわかる長所や才能ほど当てにならないものはありませン。
というより、自分自身でその部分に優れていると思ってしまった時点で、そこには才能など一切存在しませン。
かけらもないっ当たりまえェィィィ!もはや断言です。 
そして才能とは、本人も気づかないうちに、他者が引き出しているものなのです。
本人が気づいてしまった時点でそれは既に才能ではなくなるのです。わかるか、そこのロンゲのオス!
そこの化粧臭いメスブタも!

そンなわけで新人プレイなのであります! 
この研修期間を得て貴様等はようやくひよっこのエンジニアとなれるわけでありますっ!
各自がそのことを存分に熟慮し、全員がこの新人プレイを無事にやり遂げられるよう、私は心から期待するッ!

以上、散会ィィィィィ!



量産プレイ>→信頼性0%

そして新人プレイのファースト・ステップはファクトリー量産プレイから始まるわけであります。
まずは量産ラインにて、働くことへの喜びとチームプレイの大切さを学ぶという寸法です。

きっかり100メートルの長さを持つ量産ラインの各位置に、完全固定された100人の新人が並ぶさまは
いつ見ても圧巻であります。そして量産開始を示すサイレンがけたたましく鳴ると同時にそこら中で教官の
怒号が飛び交いはじめるというわけです。

挿入!挿入せよ!” ”速やかに挿入せよ!挿入!挿入!

で、結局のところ男はまだマシというわけです。女性は容赦なく2つブチこまれます。
これぞダイバーシティ・アンテナ!素晴らしく受信感度が良くなるの理屈です。
むしろTYPE1/TYPE2 と2つのスロットを持っているが女子の不幸の始まりです。
ブツは、普段はスティック型タイプを使用しますが、たまに折り畳みタイプのを差し込まれる強者も
いるみたいです。実際むちゃ不機嫌そうだったので、たぶん気持ちよくないンだと思います。

さて、準備がととのったら一斉に作業開始です。
次から次へと部品が流れていくベルトコンベアの前でひたすらケータイをアッセイする新人達。
そンな100人の新人達のケツ後方でピコピコ上下するケータイ・アンテナ。いつ見てもまさに圧巻であります。
作業中に教官がきまぐれで着信かけたりします。で当然のごとくバイブ設定。凄まじくいい話しです。
ピぎぃィィィィ!
5分おきにニワトリのような声をあげて全身をわななかせる新人達。いつ見ても圧巻です最高です。
でたまにアンテナの感度が悪いとか言われて、位置そのものを強制的に奥にずらされたりします、こうズイっとな。
ギィィィ!とかいう叫び声を聞きつつそのシーンを眺めていると「ああ、人間って骨の髄まで動物なんだなあ」
と妙なことに感心したりします。本質を知る、これエンジニアにとってもっとも大事なことです。

で、3日後にはどンなに着信かけても、誰もが感情ゼロの抑揚のない声で、「キャーン」って鳴くだけになります。
この時点で彼等は開発において最も重要な要素の一つである協調性を学びおわり、あまりわがままを言わなくなると
いうわけです。ついでに言葉そのものもあんまし喋らなくなりますが、その方が扱いやすいのでむしろ好都合です。



研究プレイ>→信頼性コンマ%以下

さて、次のステップのテーマは”想像力の促進”です。
今後のケータイ新技術を模索している研究開発部門にて、独創性や創造性を学ぶという寸法です。
でも実際のところ、この部門が何やってるのか、ボクは全然知りません。

確か先月 この部門は”ブルートゥースと携帯電話の融合性確認 及び 娯楽メディアへの応用”とかいう
エンジニアリング・レポートを提出してたような気がしましが、結局のところ何なんでしょうコレ?
今日は特別に、新人プレイ視察がてら見物させてもらうことになりました。
あ、早くも怒号がとンでます。

「おい女!そこの女! ちっ怯えてやがる。ようし連れてこい!」
「イエッサー!」
「ようし速やかにケツ向けろォ!」
ぎぃィィィィ!

結局ブチこまれるというわけです。なんだ、やってる事は工場と同じじゃン。
むしろモノがケータイじゃないだけ、まだマシです。

「おい、着信かけろ!」
「イエッサー!」
ぎぃィィィィ!

ますます一緒です。ただ相当小型のようです。だって完全に中に埋没してしまっているもの。

「おい、ブースター・オン」
「イエッサー!」
………! アぎぃィィィィ!!!!

ものすごい勢いで転がっていってボクの視界から消えました。
主任が手にした小型リモコンのダイヤルをクリクリっとひねっただけで。超低周波? 

「ゲハハハァ。どうだ!小型携帯電話とバイブの融合は。これが量産の暁には連邦など一瞬で・・・」

すっごく疑問に思ったことがあるので聞いてみました。

「えと、どうやって取るンですか?」

「?????おお!おお!ゲハハハハ!その問題があったか!ゲハハハ!」
「見ろよひいひい言いながら跳びはねてやがるぜガハハ!そンなことやったってとれやしねえよガハハ!」
「ここでマックス・チャレンジチャ〜ンス!振動最強いったれやオラ!」
「ギ……イイイイィィィィィィィィィィ!!!!!!

全身をプルプルゆわせながらピクついてる彼女を背に、ブルートゥース型リモコンで半径100メートル以内から
自由自在にコントロールどうのこうのしかもバイブレーション可変16段どうのこうのと、ひたすら技術的蘊蓄を
たれる彼を見て、技術バカにだけはなりたくないなあ、とボクは心底思いました。

で、三日後に新入社員リスト見たら彼女の名前はありませンでした。すごくいい話しだと思いました。



開発プレイ>→信頼性100%

さて、いよいよ最終ステップです。チームプレイにおける協調性とモノツクリにおける創造性を学んだあとの
最終仕上げは、実際の製品開発部門で行われます。そしてここからがボクの出番です。

ボクのチームの今年の配属は女子1人。
正直オトコの方が”育てる”という観点からすると全然ラクなので少し残念です。
ん?何故かって。
ハード依りの組込系ソフト開発現場における女子対男子の比率は、まだまだ圧倒的にオスが多い男社会であり、
このような環境下では、女子は男の2倍 仕事が出来ないと目立てない為、そういう風に育てるのがしんどいのです。
でも新人プレイはわりかし好きなのでビシバシやる。ビシバシやるよ!

で、いきなし仕様書だけポンと渡して、「この通りに動くようにしてね」 以上で説明終了。
そして彼女はアギアギ言いながらプログラムを組みはじめるというわけです。

「バグりんぐ1つでハンコ1」

なんのことかわからない彼女はキョロキョロと周辺を見回し、我が名を銘打ったハンコ印を
ボクの後輩の額に発見した時にようやくその言葉の本質を理解するわけです。と同時に青ざめる。

「………!! 先輩?先輩?それなンですか!それなンですか!」
ハンコだよ!
当たり前のことを聞けば逆ギレされるが社会のルールです、早速 彼女はひとつ利口になりました。

そして、そっこうで彼女はカマしてくれるというわけです。
これも当然至極、あたり前の流れです。バグのないソフトなンざこの世に存在しねえもんなあキーヒヒヒ。

「ん〜〜〜これはバグだねえ。ハ〜イ額だ〜してっ」
「先輩?先輩?わ…私これでも女の子です女の子なんですっ?」
「……オイ」
「ウッス」
「先輩?先輩!?ははは離してェ離してェェェ!わわたしっやめて化粧が!化粧が!」

1分後、額をしっかと押さえつつも半泣きモードの彼女。
恨みがましそうにこっちをチラっチラッと見るところがチャームポイントと見ました、5点。
そして、このハンコは午後21時を過ぎるまで決してとってはいけないというわけです。
だってそれがルールだもの!社会人としての!人としての!
でもくじけちゃ駄目だっお楽しみはここからだから!(そうさお楽しみはこれからさっ)


バグを出さないまでも、アルゴリズムとして明らかに冗長性のある無駄なプログラミングをした場合、
瞑想の時間とあいなります。

コレの上で ↓



「痛いっ!痛い!」
「痛いのは体が悪いからです、体のどこが一番悪いかというとキミの場合アタマです。だから痛いのです」
「痛いっ痛いよッ!」
「その足ツボ・ボードは頭良くなると痛くなくなる。わかるねこの理屈?」
「いいいいいがっ!」
「いがでもグリでもなく。そして改善点を延べよ、この部分の改善点を延べよ」
「そそそそこの処理はいたたいッたい!先輩ゆるしてェ…!」
「許さない!許せない!だって頭が悪いから!だって頭が悪いから!だって頭が悪いから!だって頭が悪いからァ!」
「御免なさいもうしませえええええン気をつける!ぎをづげるがらっ…!」
「絶対に絶対に絶対に!絶対にィィィ!絶対にィィィィ!ゆゥゥるゥゥさァァなァァァいィィィィィィ!」
ひいいいいい!!!!! やあああああああああああああ!!!!!!

動物園もびっくりです。

こんなことを3週間も繰りかえしているうちに、技術力・理解力・体力は凄まじい勢いで成長していきます。
そしてハンコや瞑想のお仕置きごときでは、まったく動じることのない強い強い心も手にいれることができる
という仕組みです。そしてここまで成長したところで新人プレイは次の段階へと進むわけです。



ガリガリ削る>→信頼性90%

少々のことではビクともしなくなった彼女を待ち受ける次の関門は人間詰め将棋です。
人間鉛筆削りとも言います。
これ実行するのはわりと簡単。でもすごく根気がいる作業。

基本的に、エンジニアリングには性格が描写されます。
コードの組み方からドキュメントの書き方、アルゴリズムの改編、チェックインに至るまでの確認作業etcetc。
それら全ての作業において性格は顕著に露呈します。
そこでミスを犯した原因をとことン説明させたのち、その本質的要因を本人の性格部分に無理矢理リンクさせて、
そこから一部の隙もないくらいの自己批判を徹底的に行わせます。そして論理的矛盾点から予測される逃避理論を
一つ一つつぶしていくのです。でこの作業をひたすら根気よく続けていくとどうなるか?
フラグとしてとらえるなら笑うとか泣くとか怒るとかの喜怒哀楽表現がいっぱいいっぱいの合図。
で最後には詰みます。人間詰むとどうなるか知ってますか。リスになります

泣くでも笑うでも怒るでもなく無言でひたすら全身貧乏ゆすり。
しきりに髪をなでたり服をいじったり鉛筆回したり立ったり座ったりモジモジっ!モジモジっ!

「あ〜詰んだ詰んだ」
「わりと速かったスね先輩。三時間かかりませんでしたよ」
「仕上がり具合としてはいまいちっぽくねえ?」
「このあとトイレで泣いたりとかしてたら詰めが甘いってことでやり直しですよ先輩」

で、自分をどうしたらいいか分からなくなってる彼女を放置してサクッと帰る。

次の日に歩道橋の上であぎいいいいいいい!とか叫んでたら完全に詰んだの証拠。
これを3回も繰り返せば、彼女はものの見事に仕上がってしまうというわけです。

分かりますか?分かりますか?我々は人望や恐怖で人を縛るような卑怯な真似を好まない!
むしろ狂気で縛りますノーリスペクト&ノーフューチャー!分かる?分かるかこのフィール!貴様なんぞにやらせるかあ!
我々は尊敬も人望も賞賛も感動も望まない!ただひたすら結果と成功のみを渇望しィィ追い求めるゥゥゥゥ!

そンなかんじ、わかるでしょ。
そして彼女は人間詰め将棋が死ぬ程キライになるというわけです。
むしろコレやられるぐらいなら、ハンコとか瞑想とか自ら求めてきます。

「せせせ先輩っ先輩っ ココにココにココに! おして!おして!おして!
「せせせ先輩っ先輩っ ソコにソコにソコに! のりたい!のりたい!のりたい!

涙がでます。いやマジで。

でも君はミスをする。少しも理解してないンだねちっとも反省してないンだね全然ヘコんでないンだね…
許せないッ!

ギィ! ぺぺぺ…ぺこんぺこんぺこん」

「?????」

「ペコンペコンペコン!」

「???・・・・・何?」

「へ、ヘコんでます、ヘコんでるの。だから削るのは許してお願い削るのだけは!」

「・・・・・・ン?」

「いい音だすからっ!いい音だすからっ!ねっ!ペペ、ぺこんぺこんぺこんペコん!!」

ン〜〜?んン?

「ヒィ!ごめんなさいごめんなさいペコンペコン!頭イタい頭イタいよペコンペコンっ!」

必死も必死で頭ポカポカたたいてペコペコ言ってるその姿がちょっとかわいかったので許してやりました。
ボクも人の子、鬼でない。


仕上げ>→信頼性90%

で、この試練をのりこえると、新人達はもはや「マジスカー」しか言わなくなります。

「これやっといて、明日までに」
「マジスカー」

「これ直しといて、明日までに」
「マジスカー」

「いますぐ来い」
「マジスカー」

「そこでオナニーしろ、いますぐ」
「マジスカー」

即・実・行!
拒否の姿勢ゼロなとこが最高です。


今日もトラブリング発生。いつものように深夜2時コール。「来いや」以上。

「マジスカー」
「(しばし電話の向こうから女の怒鳴り声が)」

あの真っ最中だったみたいです。やけくそで無理矢理おわらしたのがすぐに分かりました
で、きっかり1時間後に到着した彼の前髪には、明らかにライターで燃やされた形跡があるというわけです。

当然ボクらガッツポーズ。威嚇も忘れないよカハーー!


こンなことを繰り返しているうちに新人達は本質を理解するというわけです。
何が一番大事なのかってことを。つまり仕事という作業の中には何一つとして大事なものなンてないって事を。
むしろその先にある何かを見つけてからが始まりなんだってことを。
惰性とか責任とか重圧とか比較とかお金とか評価とか誇りとか自己実現とか…
そうじゃないンだっ!そういうことじゃないンだっ!!そういった鎖に繋がれつつもそういうことじゃないンだっ!!

おれたちは目的があればヤルのさ、それは本能。
競いあい、はげましあい、そして、より速く!もっと速く!
連徹明けのピンクの像32ビットの大行進が見えてきたら、おれたちゃいつだってノーフューチャ&ハイテンション!
秒速10キャラクターのブラインド・ステップでキーボードに打鍵音を叩きつけるンだっ!!



#そンでもって今年はまだ1人しか壊してないというわけです。
 さあ!皆も一緒になってレッツ・エンジョイ!新人プレイっ!


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