ケータイ伝8(伝説のテスター)
 

最近は携帯電話の基本機能も随分とグレードアップしてまして、JAVAとかムービーとかはもう当たり前、
下手なデジカメより性能のいいカメラやストリーミング対応機能などもついて、もはや小型PCと言っても
過言ではないくらいの機能が搭載されるようになってきました。
当然 現場の開発体制も様変わりしはじめてまして、最前線はますます阿鼻叫喚&修羅場乱場になっているかと思いきや、
実は前より楽になってたり。 アギっ?

その理由は、あまりにもあんまりな開発規模に自社エンジニア・オンリーでの独自開発を各社が諦めて、
いわゆるソフト専門受注会社に機能別でまるごと放り投げ始めたからなんですね、何にも考えずに。
で、今までプログラム書きまくってた社員が今どうなっているかと言えば、ソフトハウスの可哀想な働きアリ連中に向かって
「ん?できたー?できたー?」って白痴みてえに繰り返すくらいが関の山、ますますブロイラー化が進行したところへ持ってきて
唯一の見せ場だった筈の技術力すら失いつつあるのが現状でして、もう皆が皆スーパーパラサイト一直線。
腸の中で気持ちよくのたくってるサナダムシ君と限りなく同義といった感じで、もし会社つぶれたらみんな一斉に尻から
プシャーって排出されて便器の中で仲良くおっ死ぬしかないという状況になりつつあります。

じゃあ代わりに誰が死んでるの?と言いますと、当然そのあおりを直にくらっているソフトハウスのエンジニア連中でして、
徹夜→椅子寝り→トイレ朝シャンの3段コンボをあますことなく使いこなしまくったあげく、身も心もボロボロになって
フェードアウト(現世から)していくというのが今ではお決まりのコースになっていまして。

まあ、とりあえず安くつくれて製品が出りゃ別にいっかー、つうのが社畜の中の社畜たる我々の思想だったんですが、
昨今の開発規模増大のあおりをうけて、それにかける人数がますます半端じゃなくなってきてまして、1機能毎にまとめて
20人契約とかいうのはもう当たり前、もともとエンジニア系外注さんに払っているマネーがべらぼうなところに持ってきて
そんなことを各機能別にやってりゃそら金なくなるっつうの。
そんなわけでマジ一発はずしたら、それだけで親会社とともにソコにぶら下がっているソフトハウス2・3個まとめて
宇宙の彼方に吹っ飛ぶしかないくらいの事情になりつつありまして。

まあ、モノが無事に出来りゃ何の問題もないンですが、エンジニア屋さんつうのは使ってみなけりゃ当たりはずれが
まったく分からない職業でもありまして、面接のときにおこがましくも恐れおおくももったいなくも素晴らしすぎるほどの
知識をガツガツと自慢げに披露しておいて、実際に現場ジョインして一緒にやりはじめた瞬間に「すいませんボクSEなんで
紙ベースでの設計しかやったことないんですけどー コード実際に組んだことあんましないんですよ」とかのたまわれた日にゃ、
そら本気で富士の樹海に首だけだして埋めたくもなるってもんですわ。(で頭上にガムテでカラス固定)
また昨今の不景気がこの現状にますます拍車をかけるわけです。
もともと寡黙だったエンジニア・イメージなんて今や何処吹く風。悪徳金融もびっくりなあの手この手でどこの馬の骨だか
糞だか分からない連中が「私はびっくりするくらいスゴイです」的アッピールを繰り返して、実際使ってみたらあまりにも
使えなくて本当にびっくりしてしまうくらいのオモシロ現象がそこら中でおきているというわけでして。

まあこういう連中は一言「じゃあ…さよなら」で切っちゃえばそれで済むんですが(それでも痛い損失だけどな)
以前「そんな‥そんな寂しいこと言うなよ!」「別れ際にさよならなんて言うなよ!」ってシンジ君よろしく切り返されたときは、
ノリとギャグでホントにそのまんま使い続けちゃいましたエヘヘーってそれは例外中の例外でして、普通はバッサリいくんですが、
こういうときに一番困るのが”ただで使っていいよ”ってソフトハウス側が派遣してくる人材でして。
コレほとんどが新人でして、まあ向こうとしては現場経験つめて研修代わりに丁度いいだろうし、こっちとしても猫の手も
借りたいくらいですんで当然ありがたく使わせていただくわけですが、何よりもタダですからよくよく考えたら「切る」って
ことがあまりできないというか。「ごめんなさいタダでもいりません」とか言えねえしな流石に。いくら何でも。

で、こういう方々には開発現場の中で精神的にもっとも過酷と言われるテスター作業をやって頂くわけですが
(あらかじめ決められた試験項目を何千回ベースで繰り返して、機能もれ・バグがないかを確認する神様のごとき人)、
このテスターっつう作業は確かにぜんぜん経験なくても努まる代わりに死ぬほどセンスが求められる仕事でもありまして、
ここの人材の出来いかんによってはバグが見つからないまんま市場に流れて1ヶ月後にウン億円回収とかいうスッゲー
楽しいことに繋がりかねないほど、重要なポジションを担っているジョブでもありまして。

とここまでが前置き。あー長かった。つまりはアレだ。いつだったかは忘れたけど、そういう女の子(結構かわいい)に
ログ取りテストの仕事を頼んだときの出来事と思いねえ。




「ってなわけでデータ通信中に着信きたときのバグ再現ログを取ってもらいたいわけッスよ。オッケーですか?」

「分かりましタァ」

「じゃあお願い」


**** 15分後 ****

「トリマシタァ1万行」

「…悪ィこれ必要な情報が最初っから出てないわ、ココのこのタスクのログが欲しいンで、も一回頼んます」

「わかりましタァ」


**** 30分後 ****

「トリマシタァ2万行」

「(見るなり)悪ィコレ必要な情報でてないわ。ココのこのタスクのログがほしいんで、このビットたててコレをこうしてこう。
 わかった? てなわけでログをもう1回頼むわ」

「え〜〜〜〜(泣きそう)」

「(ミーが泣きたい)お願い!お願い!」


**** 45分後 ****

「トリマシタァ3万行」

「(見るなり)コレ!情報!ない!ここ!この!タスク!ログ!ほしい!このビット!たてて!コレ!こう!こう!こう!」

「わかりましタァ」


**** 60分後 ****

「トリマシタァ4万行」

「(見るなり) …ふ〜〜〜ん」

「エヘヘっ」



#頭にきすぎたのを通り越して面白くなってきちゃったんで逆に使い続けちゃいました。
 こうなったら完璧に相手の勝ち、こっちの負けですね。
 とりあえず今でも私が確信していることが一つ。 あいつ絶対に単3で動いてたね間違いない。


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