PAUL GILBERT.


<2005年6月29日: 渋谷クワトロ>

そういうランキングがあるかどうかはさておき、とにかく日本でしか売れてなさそうランキング
にインギと並んで堂々第1位かつ、これまたインギと並んでとにかく信者がイタそうランキング
貫禄の第1位(全部僕の勝手なイメージ)になる可能性が天文学的に高すぎると思われるところの、
元MR-BIGのスーパーギタリスト、ポール・ギルバートさんのライブを見に渋谷はクワトロまで
行ってまいりました。実は2年前にも見たこともあり、正直今回はスルーもありかなと思っていた
のですが、ザック/ジューダス/ディオときたここ最近のコテコテ・ヘヴィローテを顧みるにつけ、
この辺りで一服の清涼剤代わりにライト系の何かが欲しいところだなとは思っていたわけで、
そういう意味でならHM系をうたっていながらポップ極まるソロ作連発しまくって周囲から賛否
両論パンチくらってるポールさんの音こそ、その役目に相応しいのではないかと思いまして、結局
今回も行っちゃいました。

ま、確かにポールのソロにおける音楽性は、メロ重視なぶん音軽めリフ弱め。
H×Hのバラ辺りに言わせるなら、何発食らっても

 

みたいな。
気持ちいいけどひびかない的その音質は、初夏を迎えるに至った今の季節にこそぴったりなのでは
ないかと、そう思った次第…なんだけど、爽やかさと真逆をいく超絶隣人的ベラボーさを合わせ持つ
彼のソロプレイの事を頭の中でお留守にさせちゃおうもんなら、たちまち



てなことにもなりかねないので油断は禁物なのです。

で、ライブ出だしの方に関して言うならば、"Space Ship One"の間奏部分でフリスクレベル
のプチ痺れるやつを一発もらった以外は、まあ想定の範囲内。そのノリに関してもあからさまな
ヘドバンなどまるで皆無の、みんな仲良く楽しく横ノリしましょってなピース溢れる雰囲気で、
こちらも僕の期待した通り。

だけどレーサーXの超絶インスト曲やられた時にゃ、流石にクラっときました。
特に"Scarified"。ギターウォーズ・リハ時にたまたま聴いていたジョン・ポール・ジョーンズ
とスティーヴ・ハケットをもはやキモいレベルで死ぬほど唖然とさせたというその左腕の指の
動きたるや、やってる方も見てる方も思わず身悶えしちゃうほどのレベル。
他にも"Viking Kong"におけるそのメロディ性豊かな旋律が段階的なテンションアップを経て
次々と連鎖していく様や、それまでのヘヴィテンポからいきなり転調に変じてスパークする
"Technical Difficulties"の叙情ソロなど、聴いてるだけで脳からドーパミンどばどばの指先
が勝手にピキピキ動き出すような展開にもうよろめきまくり、この時点で相当幸せ状態に。

中盤にやったカヴァー3曲の中の一つ、ビートルズのアレにもちょっぴりジワっときたり。
と言うのも、本当今更すぎるけどここ最近改めて聴いたりその詞眺めたりしてたら、実はこいつら
ポップ的に凄いンじゃなくてむしろパンク的に凄いんじゃないかと、今までその平和的イメージが
持つ先入観に目ェ眩まされてきたけど実はその本質は白とか光とかじゃなくて限りなく黒とか闇に
近いんじゃなかろうかと、自分の中で散々こねくりまわしてたらすっかりジョンとジョージが好きに
なっていたというあたかも晩年を迎えた老人が母親の胎内に想いをはせるような音楽的超回帰現象
を体現している最中での"Something"だったわけで、そら多少なりとも体の奥底から得体の知れない
何かがジワっとダダ洩れてきても致し方ないンじゃないかという。

だけど他のカヴァー2曲に関しちゃ正直疑問符。
いくらなんでもパット・トラヴァースは渋すぎだし、マドンナのヘビネタ調は明らかに失敗。
このおかげで中盤少しダレたかも。それに加えて曲間にやたら入れてたカンペ見ながらのMCが
明らかに全体の流れを殺してしまっていて僕的にはかなり不評。や、あえて日本語でアピった
そのサービス精神も分からんではないけど、それにしたって若干クドすぎたかな、と。

そのせいか、ポールが「ジェフさん、ワイルドなゴリラみたいにドラムをぶっ壊して!」と
煽り入れつつはじめた新譜からの"Jackhammer"に関しても、なかなかにいい曲なんだけど
その前までの流れがもたついてたせいか、皆がアガってくるのに多少時間がかかってたような。
そういう意味じゃライブってなF1マシンに似てるかも。1回火ィ入ってエンジンさえかかって
しまえばその回転数はどこまでも上がっていくけど、一旦停まってしまえば再び立ち上がるまでに
多少の時間を要すというか。ま、その後の"Boku No Atama"でポールと一緒に僕の頭はトマトで
出来てるだのトマトの方がナスより好きだのと合唱してたらノリはすっかり元に戻っていたわけ
ですけど。

ちなみに一番の痺れどころは、曲間MC完全カットで、"Bliss"の超絶ソロから、飛び跳ねたくなる
ようなビート感が秀逸の"Individually…"を経て、とにかくサビがノリいい"Suicide Lover"へと
繋げた流れ。これ、これですよ、我々がポールに求めているのは、とにかくスピーディでノリよくて
聴いてるだけで出来もしないギターを弾きたくなっちゃうようなこの流れ。

加えてアンコールで演った"Sixties Mind"のおなじみアルペジオ攻撃も相変わらずのため息もん
だったし、本家EL&Pがキーボードで弾いているパートを全部ギターで通しちゃった本編最後の
"Karn Evil No.9"も相当ヤバかったし、というわけで、その音楽性ゆえ若干軽めではあったけれど、
もともとそういうの期待して行ったんだし、所々のポイントではヘヴィにガツンとやってくれたし、
Mr BIGの曲もあまりやらなかったし(正直あんま好きくない)で、総合的に考えても安心感・安定感
ともに十分納得のライブ内容でありました。


<今日の一枚>

 SUPERHEROES / RACER X

ポップ・ヘヴィの両面性をあわせ持つポールがメタル分不足で欲求不満になった時のみ、
普段内面に封じ込めているそのメタル魂を爆発させて猛然とはっちゃけまくるメタル専用
プロジェクト、レーサーXの最高傑作。ただでさえ超絶テクを持つポールのギターが手加減
なしの全開レベルで火を噴く上に、その楽曲構成もとにかくハードにラウドでスピーディ、
それに加えて各パートを担当する他メンバーの実力も折り紙付きとあっちゃ外れなわけが
ない、特にタイトル曲"Superheroes"のブットビ具合はマジ失禁もんのレベル、いうわけで
メタル野郎は必聴の一枚。音質レベルが悪いのだけが残念。


<今日の無駄T>



#前面ポール肖像デカロゴ入りの裏面は無地という、ただでさえ着れない設定な上に、
 無駄Tが唯一誇るべきそのはっちゃけぶりもゼロという、本当に無駄以外の何者でも
 ない恐怖の逆Wインパクトがそこに。



<セット・リスト>

01:Space Ship One
02:I Like Rock
03:Potato Head
04:I'm Not Afraid of The Police
05:Scarified
06:Every Hot Girl Is a Rockstar
07:Viking Kong
08:Something(The Beatles)
09:Heat In The Street(Pat Travers)
10:Open Your Heart(Madonna)
11:Jackhammer 〜Drum Solo〜
12:Boku No Atama
13:Interaction
14:Technical Difficulties
15:Sunshine of Your Love 〜The Number of the Beast
16:It's All Too Much(The Beatles)
17:Bliss
18:Individually Twisted
19:Suicide Lover
20:Karn Evil No.9

21:Play Guitar
22:Down To Mexico

23:Little Dreamer(Van Halen)
24:Green-Tinted Sixties Mind
25:SVT


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