JEFF BECK.


<2005年7月2日: 東京国際フォーラム>

「ロック・ギタリストには2種類いる。ジェフ・ベックとそれ以外だ」 〜ポール・ロジャース〜

クラプトン、ペイジと並ぶギター三神の1人、またはキースの上をいく永遠の悪ガキ小僧、
もしくは謎の動物愛好家(犬や猫を50匹以上飼ってた時期もあるらしい)、はたして
その正体は?というわけで孤高のギターマエストロ:ジェフ・ベックさんのライブを見に、
有楽町は国際フォーラムまで行ってまいりました。

でも、何せ業界一の気まぐれ屋で知られる彼のこと。
つい先だっても、ロッド・スチュワート、ロン・ウッドとの黄金メンツで伝説の
第1期ジェフベックグループを再結成しようという話が持ち上がり、リハを繰り返して
皆のモチベーションもアップ、さあいよいよ本番!となったところでお得意の投げっぱなし
ジャーマン「やっぱやめた」をものの見事に炸裂させ、皆を唖然とさせたという事件が
あったくらいだそうで、その自己中っぷりに関しては相当の逸話を持つあのロッドをして、
「まったくみんなの時間を無駄にしてくれたよ、あんなやつとはつきあいきれない」
と言わしめるほどのつわもの。ライブを見にいく以前にそもそもライブやってくれるのかな
という至極基本的 かつ行われて当然しかるべきことが、シェンカーやガンズと同じくらいの
レベルで不安になるくらい、筋金入りの我がまま道を61歳のその歳になるまでひたすら
貫いてきた漢だけに、会場着いても、開幕のベルが鳴っても、その御姿が実際にステージ上
に現れるまではずっとドキドキしてました。(違う意味で大興奮)

しかしまあ、いざライブが始まってしまえばそんな心配もどこへやら。
「俺が一番気を付けているのは、テクニックのエキスパートにならない事だ。皆を退屈に
させるだけだから」という彼自身の言葉を証明するかのごとき、聴いている者の胸の内を
ほろ苦く焦がす、技術と情感の同居したそのプレイはもう抜群。
特に"哀しみの恋人達"におけるアーミング&ハーモニクスの連携プレイ、属に言う泣きの
ギターの切なさ全開な哀愁度といったら、マジで女は全てもらい泣き、男は全員こらえ泣き
しちゃうくらいのレベル。

そういう意味での盛り上がりどころをあげるならば、僕的には「Guitar-Shop」からの二連発、
"Behind The Vail"で見せたもの悲しさ満点のリフと、続く"Two Rivers"での哀愁を誘うメロ、
特に音と音の間というか、引っ張りというか焦らしというか、そこら辺のテクがもう抜群すぎ。
今後の人生において、もしホモサピエンスのメスの陰核にバイブを当てる機会が生じたなら、
その折には是非ともこの「間」を有効的かつ積極的に応用していきたいと思わしめる程の
素晴らしさでした。

で、そのあまりの気持ちよさからか、ふと気づけば完璧に安眠の世界へと誘われていた僕を
再び覚醒させてくれたのは、なんと脇役の筈のヴィニー・カリウタさん叩きだす怒涛のドラム
だったというわけでありまして、ヘビメタ系にはまずいないと思われるその逆グリップから
放たれる手数の多さと、本来ならそれと相反する筈のストロークの力強さといったら、もう、
とにかく只事じゃないの一言。
それでいて「ん?僕全然余裕だよ?」的なその笑顔はまったく絶やすことがないってんだから
この人、本当に超人かも。いわゆるコージー・パウエルやスコット・トラヴィスなどの有名どころ
とはまた違った異質な凄さを感じました。そんな超絶ドラムとジェフ渾身の早弾きが絡みまくった
前半ラストの"Scatterbrain"はまさに全体を通して最大の見せ場だったと思います、なんか
これですっかり目が覚めたし。

第2部に関しても、勇壮なリズムの中を刻むドラマティックなギターリフが抜群に印象的な
70年代ベックの象徴歌"Beck's Bolero"に、僕が今まで聴いたギター系インストの中でなら
確実に生涯ベスト5に入るだろうと思われる寂寥感溢れる珠玉のナンバー、"Diamond Dust"、
ギター職人の名を確立させるに至った至高の名盤「Wired」からテンションマックスの技巧ナンバー
"Led Boots"・"Blue Wind"を惜しげもなく披露したかと思えば、強烈な主張を放つ哀愁ソロが
評判を呼んだロック史屈指のバラード"People Get Ready"をとどめに炸裂させるなど、とにかく
見せ場満載。20年以上前の曲ばかりだというのに全然古臭く聴こえないところも地味ながら凄い、
しかもほぼ全ての曲がその場指示による準即興演奏。ジェフベックの凄さを表す表現のひとつに
「インプロヴァイズの極み」という言葉があるそうですが、確かにライブと言うよりは皆で普通に
ジャムってるような印象を強く受けました。

更に言うなら、演奏時の嬉しそうな笑い顔とか数少ないMCの折の見せる照れくさそうな表情とか、
その辺りの振る舞いが僕的にはかなりツボで、その少年のような表情の中に彼の生き方そのものが
表われているようで、還暦を越えてなおこういう表情ができるオッサンってな、やっぱ素敵だなあ
ってとことん思わされた2時間でしたね。


<今日の一枚>

 BLOW BY BLOW / Jeff Beck

ジェフ・ベックのソロ作の中では、相当地味な部類に入る後期の"FLASH"が何故か個人的には
一番好きなのですが、やっぱりベックらしいギターが前面に出ている代表的な一枚といったら、
中期の「BLOW BY BLOW」だと思うのです。ギターとキーボードがおりなす息詰まるコラボ合戦
が抜群のスリル感を与えてくれる"Scatterbrain"、"哀しみの恋人達"中盤ソロにおける動と
静の使い分けとそこから感じる「間」の美学、叙情ソロの一つの完成形、"Diamond Dust"など、
ベック特有のギター色が万遍なく詰まっているのに加えて曲調豊か、大人なムードかと思えば一転
して悪ガキマインド全開、そんな彼の気まぐれさをもよく表現しているアルバムだとも思うので、
ベック入門には最適です。


<今日の無駄T>



#デザイン自体は今までのひっどいのに比べれば、遥かにマシなレベルだとは思うけど、
 生地が悪いせいかすぐクシャってなる。アイロン持ってないのでやっぱり着れません。




<セット・リスト>

01:Earthquake
02:You Never Know
03:Cause We Have Ended As Lovers
04:Rollin’And Tumblin’
05:Morning Dew
06:Behind The Vail
07:Two Rivers
08:Star Cycle
09:Big Block
10:Scatterbrain
11:Beck's Bolero
12:Nadia
13:Angel
14:Led Boots
15:Diamond Dust
16:Hey Joe
17:Manic Depression
18:Good Bye Pork Pie Hat
19:Brush With The Blues
20:Blue Wind

21:People Get Ready
22:Over The Rainbow

23:Going Down


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