SCORPIONS.


2007年10月31日: 渋谷AX>

元々予定は組まれてなかったものの、「せっかく近くの香港まで来たことだし、もし会場
空いてるならいっちょやってみるかー」的な気まぐれテンションでもって急遽実現の運びと
なった3年ぶりの来日公演。途中「日程的にやっぱキツくね?」みたいな雰囲気になった
らしきバンド側から中止アナウンスが出されたり、でも招聘元のクリエィティブマンはその
事実をまるで知らなかったりと色々危ぶまれた公演だっただけに、まずはメンバーが無事
出てきてくれたことに対して胸を撫で下ろしつつ、物販なしな上に東京公演オンリーという
この無茶極まりない本ライブを実現させてくれたクリマンさんにも感謝を捧げたり。

で、スコーピオンズといえばまずはクラウスなわけですが、トレードマークでありハゲ隠しとも
言われるお馴染みのハンチング帽を目深に被りつつ、スティックを客席にバンバン投げこみながら
そこらをピョコタン走り回るその姿からは、老いてますます盛んといった言葉を地で表すような
エネルギーが迸っていましたね。いやいや以前と変わらぬ「ノートルダムのせむし男」っぷりに
まずは一安心と。
 でもって本日最大のお目当てだったルドルフ兄ィの調子も、前来日時にも増して絶好調。
お馴染みのカニ歩きから始まってステージ左右を唐突ダッシュ、ドラム台から意味なくジャンプ、
はたまたピートタウンゼントばりのウィンドミルからギターを神輿にみたててのワッショイ三昧と、
愛嬌側の軸へ全開に傾いたはっちゃけパフォーマンスでもって僕等を終始楽しませてくれていました。
常に満面の笑顔ってところも最高なんですよね、兄ィは。
 そんなコミカル部門担当のルドルフ兄ィに足りない「クール分」を補って余りある活躍を
見せていたのは無論リードギタリストのマティアス。渋さの滲みでているその外見に加え、
派手さはないけどツボをしっかり抑えたいぶし銀プレイの数々でもって、元グルーピー崩れの
小マダム達をキャーキャー言わせてましたね。ギターの不調からか一部しっくりとこない場面も
あったりしたけど、そこは兄ィがうまくカバーしてたし。

要するにスコーピオンズは、どこをきってもやっぱりスコーピオンズだったということです。
それぞれの違った個性が生み出すステージングの多様性と、いかように転んでも楽しめちゃう
抜群の安定感、そりゃ独ナンバーワンの地位を未だに維持し続けているロックバンドだけのことは
ありますわ。


全体的な見所としては
 ・フロント4人が揃い踏んでのフォメーションとそれが醸し出す古き良きメタル臭に思わず
  アガりまくった"Coast To Coast"。
 ・「Tokyo Tapes」の頃からの日本公演におけるお約束"荒城の月"に続いて、昔から定評の
  あるメロディラインの美しさを存分に味わせてくれた新旧バラード3連発。
 ・"Make It Real"に"I'm Leaving You"という80年代黄金期からのレア曲2連発による
  ダイハードな一部マニア達の熱狂
 ・"Wind Of Change"にてクラウスが披露したビリージョエルばりの口笛とその味わい深さ。
辺りが挙げられるかなと。

「Crazy World」に代表される後期特徴である「中速のヘヴィリフを活かしたメロ作り」を
踏襲するここ最近の楽曲、"Love'Em Or Leave'Em"や"Deep And Dark"がすっかりセットに
定着したり、同系統の新曲"321"がしっかり受け入れられている辺りにも蠍団の着実なる進化を
感じたり。これを見る限り「Eye To Eye」の頃の迷走は一体何だったんだろうという。
 また前来日時とは比べ物にならないほど引き締まった体をしていたコタックと、同じく
ミレニアム以降の新加入組であるパウエルの二人によるベース&ドラムソロが予想以上の盛り上がり
を見せていたことも、その辺りの進化を如実に示していた一幕じゃないかと。
"Smoke On The Water"や"Enter Sandman"のイントロをおふざけで流したり、ドラム上で
ビールを一気飲みしてクジラみたいに潮を吹いたりなそのパフォーマンスからは確かにこれまでの
蠍団には見られなかった「新しい風」を感じました。

ちなみに個人的ハイライトは、暗転したステージ上にてサイレンがひたすら鳴り響く中、
ルドルフが"Black Out"のカミソリリフを弾きながら全力で駆けこんできたところかなと。
このシーンにおける兄ィのカッコ良さたるや、もう、ね…!(身悶え)
「リズム」「リード」という異なるギターパートのシンクロが最高のカタルシスを生んだ
"Hurricane"によるアガりっぷり、その熱狂の渦をゆっくりと包みこむように冷ましていった
"When The Smoke Is Going Down"の残響とそれが残した余韻にも、一貫して素晴らしい
ヴァイブが通じていましたね。

唯一の不満としては、"Wind Of Change"のシンガロング時に携帯カメラで写真撮ったり、
こともあろうにその直後いきなり携帯で話し始めたりと、我が感動にとことん冷や水をかけて
くれたクソ外人カップルの存在だけがね。それ以外はほぼ完璧といってもいいぐらいの内容だった
だけに、そのことだけが返す返すも残念。くそー今度みかけたら… 側にはいかない!(弱気)


<今日の一枚>

 「Face the Heat」 / SCORPIONS

もし、蠍団のオススメ作品は?と聞かれたなら、ウリ在籍時の初期なら「VIRGIN KILLER」、
マティアス加入後の中期で「LOVE AT FIRST STING」と即答するところですが、じゃ90年代以降の
後期においては?と言われたならちょっと詰まってしまうのもまた事実、というわけでそのテーマに対し、
少し真剣に考えてみた結果、出た答えがこれです。湿度200%のバラード美という旧来からの長所は
そのままに「CRAZY WORLD」の成功を経て中速ヘヴィリフの活かし方をより熟成させた1993年リリース
の12枚目、この「FACE THE HEAT 」こそがミーにとっての後期ナンバーワンなんじゃないかなと。
もし買うなら「CRAZY WORLD」とのセットになっている「Face the Heat/Crazy World」がオススメ。



<セット・リスト>

01:Hour 1
02:Bad Boys Running Wild
03:Love'Em Or Leave'Em
04:The Zoo
05:Deep And Dark
06:Coast To Coast
07:荒城の月
08:Send Me An Angel
09:Holiday
10:Humanity
11:Make It Real
12:I'm Leaving You
13:Tease Me, Please Me
14:321
15:Kottak Attack(B&Ds Solo)
16:Blackout
17:Big City Nights
18:Dynamite

19:Still Loving You
20:Wind Of Change
21:Rock You Like a Hurricane

22:When The Smoke Is Going Down


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