[MySelf]


12月24日

<「常に二人を想定しておけ」>

あーなんだろ。
言い訳とやらをしたいわけでは断じてないのだけれども、でもとりあえず主張だけはして
おかないと、自分の中の大事な何かが本当にプツって切れちゃうような気がしてならなくて…

はい、というわけで、うんこもらしました。

丁度日付が変わりそうな頃合かな。
帰り方向が一緒の友人とともに小田急線乗ってたんですけど、ホント前置きゼロでいきなり
キュルキュルきだしちゃって、うん。
いやね、俺9年ほど前に盲腸こじらせて腹膜炎やっちゃってるわけですよ。
そのせいで腸が人よりちょっぴり短いのね。イヤこれを漏らした言い訳にしようとは全ッ然、
ホントこれっぽっちも考えちゃいないんスけど、でもホラ、普通は前置きくらいあるもんじゃ
ないスか。今から行くけどそっちの都合はどーだい?的な小腸さんの微蠕動とかがさ?
そういったもんナシにいきなりゴゴゴて。今時「来ちゃった…!」は空気読めてなさすぎだろと。

しかもその「来ちゃった…!」な勢いがどう考えても普通じゃないの。
ちょっと段階をスっ飛ばしちゃったけどいいでしょ?的なお約束の照れ笑いとかまるでなし。
マジ出会って即セックスしたら何故か部屋に住み着きだしたフィリピン人ばりの甲斐甲斐しさ、
もしくは中に入れた途端、部屋という部屋の火災報知機を取り外し始めたあの伝説のブスばりの
超時短テンションなんですよ。いや確かに俺は人より腸が短いけどね、そのパートをそこまで
短くされてもねー、というかころす気満々すぎるでしょコイツ。

でもってそれらに輪をかけてKYなのが横にいる友人ね。
こっちはもはや親指をズボン越しに菊へねじこまざるをえないほど切羽詰まってる状態だって
いうのに、なんか呑気に忘年会の話とかしちゃってるの。年を忘れるどころか、今こっちは人と
しての矜持を忘れる境界線ギリっギリのとこにいるっていうのに、何を能天気に忘年会かと。
腸が長いとそんな傲慢な行為も許されちゃうの?このバカに俺の頭の中が今どうなってんのか
マジみせてやりてェ〜って心底思いましたよ。

そんなこんなでとにかくもうムリすぎる状態だったもんで、停まるや否や慌てて電車を飛び出た
わけですよ。ええ正直勝算はありました。新宿発の小田急線急行が最初に停まる駅、ここ代々木
上原は他の主要駅と比べて人の出入りが少なくまたトイレ個室も2個とふんだんにあることから、
今対象車両における乗降者集団に一歩先んじることさえ出来れば十分に勝つる可能性はあると。
勿論万が一の時のショックを和らげるため、しっかり想定もしてました。
だから満員だったのはまだいいわけですよ。お、そう来たかと。でもそれは想定内ですよと。
そう誇らしげに胸をはりつつホモサピエンスの一成体としての尊厳を立派に守り通せた筈でした。
でも並んじゃってんの。しかも二人。完全に叫びかけた、腸が短いからかー!

そこから先は葛藤の雨あられ、過去の英雄達のその姿が脳内をよぎりまくるわけですよ。
もう8年以上前になるのかな、大崎駅近くの小汚いゲーセン。やおら小便器の方に背を向けて
ズボンをおろすや否や気合一閃、ビッグバンからその場を立ち去るまでの所要時間は僅か30秒
だったと言われる伝説のクソサラリーマン野郎。
それから忘れもしない…幕張で行われた某ライブイベント中、やおら洗面台の上に飛び乗った
かと思いきやものっそい無表情なのに顔面汗だくという矛盾フェイスでひねり出し始めた神話の
クソメタラー野郎。…そんな超クソ野郎共の仲間入りをこの俺も遂に果たしてしまうのかと。
「はいはい腸みじかいですよ。もうそれでいいでしょ?」的な投げやり感とともに、とうとう
一線を越えてしまう時が来たのかと。
だけどそのベクトルは踏み留まった。泳ぐ視線で開きかかった掃除用具箱の中のバケツをジーっと
凝視しはじめた自身の行動に驚嘆しすぎて、その時ハっと気づきました。一時の気の迷いで馬鹿な
考えをおこしたらきっと後で後悔するに違いないと。あ、犯罪者になっちゃう側とならない側の
境目はここなのかと妙なところで気づきを得たりも。

そこまで腹がすわった時点で既になすべきことは分かっていました。
周囲にできるだけ迷惑をかけぬよう、そして誰にもバレず速やかに後始末を行うことができるよう、
死期を悟った象のごとくそっとその場を離れ、人気の少ないトイレ脇の壁に寄りかかってそこで一息。
焦りや動揺は既になく、それが漏れぬようズボンの裾を靴下の中へとねじこみながらむしろ静かな
気持ちでそれを受け止める瞬間を待ちました。意識レベルでムリムリと膨らんでいく臀部肛門付近の
違和感を悪びれもせず、ただ黙ってあるがまま受け止めました。そのときの一言は「うむ…!」だったと
いいます。「うンコむリー」感で埋め尽くされた全細胞の無念さが破瓜とともに漏れ出た当然の帰結、
との解釈はもちろん後付けです。

はい、というわけで、40にもなって早々うんこもらしました。腸が短くてサーセンね。

なによりも全ての処理が終わった後、外に出たら既に終電がなかったことが本当に堪えました。


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