[MySelf]


6月6日

結局のところ4月から数えて通算6回目くらいの有給を取って週末を3連休にしてまで
なんとかこのクドすぎる風邪を治癒させようとした筈が、麻雀というこの世で最も至上な
遊戯の魅惑に心うばわれたその結果、風邪ウィルス君の勢力をますます増強させてしまう
顛末となり朝方帰りの電車の中で例のケヒョヒョ発作(ケフカ病と名付けました)を炸裂
させた挙句、その席側に座っていたほぼ全員を半強制的に起立させるというカッパーフィルド
ばりのマジックをまったくみず知らずの他人に披露するにまで至ってしまった虫のサカイです、
皆さんお元気ですか?僕はいよいよマジュニア出産の気分です。お母さんになるってこういう
こと?わー私の赤ちゃんスライムみたいー(胃液と鼻水が混ざりあってゲル状になった吐瀉物
を見つめながら)結局、土・日とベッドでうんうん唸りつつエマ5巻における「もう本当に…
なんっであんな事…」のシーンを頭の中で延々と反復させてたら僕の週末は完膚なきまで終了
と相成っていました、こんなバカな。我々はやり直しを… やり直しを要求する…!(人生の)
とりあえず今はフタコイオルタナがあるだけで生きていけます。自信をもってそう言える日々、
たぶん幸せってこういうことなんだぜ、きっと。


6月8日

<実際10秒あれば余裕すぎる>

エレベーターって、不思議な空間だと思いませんか?
たくさんで乗ってると別になんともないのに、見知らぬ人と二人きりとかになっちゃうと、
こう、途端に気まずくなっちゃうあの空気とかが特に。
で、沈黙に耐え切れなくなって、思わず咳払いとかしちゃったりね。
空気が緩和されるどころか、むしろますます気まずくなっちゃうし。
あれはどこのどいつがやりだしたんだろうね、気まずいときの咳払い。
明らかに間違った対処方法であることを皆がもっと認識すべきだよね。
と同時に気まずさの解消方法も新たに考える必要あるね。

例えば笑う。 気持ち悪いね。
例えば踊る。 普通に怖いね。
例えば話す。 軽々と無視だね。

なるほど、どうして咳払いなのか、じゃなくて、咳払いしかすることが他にないんだね。
または目をつぶる、もしくは携帯をいじりだす。ま、せいぜいがそんなとこだろうね。
そら、ストレスもたまるって話だよね、エレベーター。

そいや子供の頃、僕がいつも苛められてた当時のガキ大将みたいな奴と、たまたま二人で
エレベーターに乗り合わせちゃった時のこと、動きだした途端、何の脈絡もなしにいきなり
パンチされて1Fから8Fに着くまでの間、延々とボコられてたこととかあったっけなあ。
で、当然泣いたら「やったー」って。「6Fで泣かしたぞー」って。明日は4Fに挑戦とか?
それ以来、僕がそのマンションのエレベーターを使うことは二度となかったといいます。
なんの話してたっけ?そうだ、とにかくエレベーターは二人だと圧迫されるって話だった。

その反動かどうかは分からないけど、一人で乗ってると妙に開放的になるよねエレベーター。
僕のデスクのあるフロアは20Fだから、1Fから1人旅、なんて時はもう有頂天。
到着までの約10秒間、この個室の中で何ができますか大会、とか普通にやりだしちゃう。

例えば笑う。 グッド笑顔!
例えば踊る。 ナイスステップ!
例えば話す。 ステキトーク!

ほら、2人と1人じゃこんなに違うよエレベーター。すごく楽しいエレベーター。
他にもシャドー、腹筋、スクワットに10秒チャージと何でもやりたい放題だ。

ところがそのプレイの最中にいきなり扉が開いて、秘書室のあの憧れのお姉さんが
乗りこんできちゃうってな寸法なわけだな、これが。

「あっ、なっ何を…!」
「かっ」(壁に手をついての垂直腕立てふせ実行中でした!とかいえません)
「か?」
「…か、壁に両手をついて両足を広げろ!」
「え、えぎ?」
「壁に両手をついて両足を広げろ!」
「あっ、乱暴はやめて」
「今すぐ壁に両手をついて両足を広げろ!」
「は、はい!はい!」
「10秒チャージ、イン・サート!」
「はぐっ!」
「いきがるな!」
「い、いきがってません!」
「心を開かなければエヴァは動かないわ」
「う動かなくていいです!」
「そうはいかないぞー」
「結局動くのかよ、はぎゅ!」
「よし、上へまいりまーすって言え」
「う、上へ、上へまいりまーす」
「まいらない、僕はまだまいらないぞー」
「う、上へー上へー」
「あっ、まいりました」
「早いなー」

そういう夢がさ、広がってこないかい、エレベーター。
もちろん上のは僕の妄想だけどね。壁に手をついての前の下りまでは今日実際
起こった実話だったってことを一言付け加えておくよ、ってかエレベーターの中で
くらいリラックスして何が悪い!バカ!アホ!屈辱!顔から火!もう会社やめるるるー!


6月13日

<黒人>

に、やられました。そりゃもう、こっぴどく。

だって電車のったらいきなり上半身全裸でドアに向かってシャドーやってんだもの。
笑うって。無理だって。人間としての素直な感情をありのままに表現しただけだって。
むしろ、感情表現が下手くそと言われる日本人にあって愚直なまでストレートに今の
気持ちを吐露できたことに対して自分で自分を誉めてあげたい気分で一杯だったって。

だけどツレの友人とともにクスってやっちゃったその3分後、誉められるどころか
マジ地獄みた。少しずつにじり寄られて車両の端っこに追い詰められた上、その無言の
プレッシャーに気圧されて、そこにたった一つだけ空いていたシルバーシートに半強制的
に座らされた。30秒後、その席の並びには誰もいなくなった。それまで頑なまでに直立
不動を守り通していた友人も「スワンナイノ!」の一言とともにあっさり席につかされた。
なに敵の注文にずっぽしハマってんだよとか思う間もなく、二人揃って上方からこれ以上
ないというくらいきっちり見下ろされた。うわ、むっちゃ見てる、むちゃくちゃ見てるよ。
この時点で既に泣きそうだった。そんな自分を誤魔化す為、ものっすご不自然な素ツラで
ひたすら携帯メール打つフリとかして何とかその場をやりすごそうと究極の無関心装ってた
ところへ至極あっさりガブられた。わーん、あんなに必死こいて「ああああああああ」とか
打ってたのに、今の僕の感情をも表現したダブルミーニングとしての意も込めていたのにー

「ナア、オカシイ?」

おかしいよ、上半身スッパであまつさえシャドーってどういう了見だよ、お前の国の
価値観はともかくここは日本なんだから少しはそれにあわせる努力しろよこのボケが、
とは口が裂けても言えなかった。早くコンゴ辺りへ帰れよ、とももちろん返せなかった。
あまりに月並みで申し訳ないんだけど本当フツーに「へっ?」って口から漏れただけだった。

「ヘ、ジャネーンダヨ! オカシイ、キイテンダヨ!」
「ナア、オカシイ?」

むしろ気がおかしくなりかけた。加えて遠くもなりかけた。そのたくましい上腕二頭筋に
可愛がられてる自分の未来を予想して更に泣きそうになった。ほろ酔いでいい気分のまま
帰宅したかっただけなのに平然とこんな目にあっちゃう自身の業が憎くて仕方なくなった。

が、捨てる神あれば拾う神あり。もはや絶体絶命かと思われたその時、ツレが見事に機転を
利かせてくれた。「あっ五反田!」っていきなり叫んで、相手の気をずらした上で即降車。
脇目もふらず4、5車両分の距離をダッシュしてドアが閉まりかけたその瞬間、再び乗車。
助かった、僕らは助かったんだ! ハーハー息つきつつこの未曾有の危機を無事回避できた
ことへの喜びをともに分かちあい、心地よい安堵感に全身を委ねていたその時、ツレの顔が
ものの見事に真っ青に染まったのを見て、も、もしやと後ろを振り向いたが最後、ギチギチの
車内をものともせずこちらへ向かって猛然と突進してくる黒人の姿をそこに確認し、僕は確実
に心臓の弁を飛ばしかけた。この時、何故か筒井康隆の「走る取的」を思いだした。


「ココ、ゴタンダ、ナイヨ!」

あっ本当だ、恵比須ですね。

「オマエ、バカジャーン! ゴタンダ、ナイジャーン!」

(背中バンバン叩かれつつ) は、はい、すみません。

「ヨクナイヨ! ソレ、ゼッタイヨクナイヨ!」

はい、よくありません。

「ノミイクカ!ノミ!」

い、いきません。


まるで、ハートマン軍曹に罵られる、パパの精液がシーツのシミになりママの割れ目に残った
カスのごとき扱い。痴漢されてんのに怖くて声出せない女の子の気分とかすごく良く分かった。
あまりの怖さにボコじゃなくてノミなら、いっそそれでもいいかぐらい思った。
ついでに上半身スッパかつグッドリッジもどうかというムキムキさんにこれ以上大声で威嚇され
続けるぐらいならいっそ死んだ方がマシだくらい思ってきちゃった僕はここでもう一度勝負に出た。

「あっ五反田!」 再び降車して早足で改札の方向へ。

「アッ、ココデオリルノ!」
「グウゼンジャーン、ボクモイッショ!」

今度はぴったしはりつかれた。ムキムキ、そこまでバカじゃなかった。 

”死んだぞオメー”を頭の中で連呼しつつ、改札直前でいきなり切り返してホームへ再び舞い戻り、
こんなに一生懸命走ったのは初めてだぐらいの勢いでとにかくその場を全力疾走、そこへタイミング
良くはいってきた電車に飛び乗って、車両中央付近にてひたすら息ひそめること約15秒。
そこからドアが閉まるまでの時間がとにかく長くてもうひたすら念じた、早くー早くー!って。
アメリカ出張いった折ちょっとした油断から黒人にラチられてバックから仕上げられちゃった先輩の
その行為に及ばれる三秒前の菊門さんのような気分で、閉まれー閉まれーって。

無事ドアが閉まった後、動き出した車内の窓から改めて駅名を見てみたら、そこは「五反田」だった。
なんだよ、あの黒人、本当に「五反田」が降りる駅だったんじゃん。

結局のところ、あの黒人は「笑った」ことに対して怒ったのだろうか、
それとも「五反田」を間違えたことに対して怒ったのだろうか? 
今となってはもはや確認すべくもないが、そのポイントがいまいちあやふやすぎて、
こちらとしてはどうにも気持ちが悪い。


ただ、はっきりしていることが一つだけ。僕は当分の間、「五反田」駅を使えなくなった。
ちなみに、僕のアパートの最寄り駅は、「五反田」である。


月27日

<洗剤力>

あのさ、いきなりこんなこと言うのもなんだけどさ。
洗剤、そう洗剤だよ、あれって買ってきてまず開けるといきなりそこに薄い膜
みたいなもんが張ってあって、それ破らないと、お目当ての洗剤粉が出せない
ような作りになってるじゃん?しかもその膜、かなり力を込めないと破けないわで、
たかだか洗剤使いたいだけなのに、いきなりそこに高い壁があるわけじゃん。

なんだろね、あれ。まず明らかにいらないでしょ、あの膜。
普通に考えたら、もっとこう、なんていうの? 洗剤入った箱の口なんて、
ケログだかゲログだか知らないけど食べ物の癖に嘔吐かよみたいな本末転倒な
名前してる、あの朝飯代わりに牛乳かけて食べるスナック菓子を出す口みたい
なので十分こと足りるはずでしょ、そのほうがもっとこう、お手軽にパッパッ
みたいな感じで確実に使いやすいと思うでしょ?

なのに膜。なぜに膜?意味わかんねーよ、そりゃあれ破ったらいきなり洗剤が
赤く染まるとかそういう演出されたりしてんなら、そら僕だってあの膜破るの
にやぶさかではないけれどさ?やぶさかどころかまんざらでもないけれどさ?
もうアタック 大人買いしーの、ニマニマしつつ次から次へと、ちぎっては開け、
投げては開け、押さえつけて開け、お腹の上にのせて開け、時には優しく開け、
時には麻縄で縛って開けたりとかしちゃうけどさ? 

でもないじゃん、そういうのゼロじゃん。故にいらないじゃん、あの膜。
皆もそう思わない? 特に破った瞬間、つい手をすべらしちゃった時とか。
洗剤まみれになった洗濯機の中を見て、すごくそう思ったの巻。


[MySelf Next]