混沌の廃墟にて -277-

前ニ項

1999-06-18 (最終更新: 1999-06-18)

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WWWで検索したい時に便利なのが検索ページである。

皆さんはどの検索ページを使っているだろうか。 私がよく使うのはInfoseek Japanだった。 いや、今もよく使っているのだが、サービスの名称が現在は「インフォシーク」になってしまったのである。 まあ「Infoseek Japan」とか「インフォシーク」で検索したいという状況は滅多にないので構わないのだが。

なお、それまではgooをよく使っていたのだが、一時のトラブル騒ぎの時にInfoseek Japanに乗り換えてそのまま、という感じである。 その後、持ちなおしているらしいのだが、一旦変わってしまった習慣は、なかなか元に戻らないようだ。

ま、それはさておき、サービス名称の変更といえば、NIFTY-ServeからNIFTYSERVEだとか、niftyserve.or.jpからnifty.ne.jpだとか、ニフティサーブは結構安易にサービス名称を変えるようだ。 これは一体どのような影響を及ぼしているだろうか。 検索してもヒットしない、という状況がすぐに思い付くはずだが、実際はどうなのだろう。インフォシークやgoo等で検索すれば分かるはずだ。

早速「NIFTY-Serve」で検索してみた。 なお、キーは"NIFTY-Serve"のように、ダブルクォートで囲んで与えた。 インフォシークだと40,099ヒット、gooだと27119ヒットである(1999-06-18現在)。 ところが、"NIFTY SERVE" で検索しても同じ数だけヒットしてしまうのだ。つまり、どちらでも検索できるようになっている? (*1)

そこで、AltaVista-Jで検索してみる。今度はNIFTY-Serveは9586ヒット。 NIFTY SERVEだと10577ヒット。AltaVistaは厳密に分けて検索してくれたようだ。 ということは、まだWebにあるページの半分はNIFTY-Serveという記述ということが分かる。 しかし、なぜインフォシークだと同じ数に?

ちなみに、次のようなこともわかる。 数値はインフォシーク、goo、AltaVista-Jの順のヒット数だ。(*2)

インフォシークgooAltaVista-J
6507NIFTY-Serve会員規約
411422ニフティサーブ会員規約
2425ニフティ会員規約

面白いのは「NIFTY-Serve会員規約」でgooがノーヒットであることと、「ニフティ会員規約」のインフォシークの24ヒット。 実際にヒットした24のページを調べてみたが、ざっと見た感じでは、「ニフティ会員規約」という表現はどこにも出てこない。インフォシークは一体何を探したのだろうか? どうも勝手に「ニフティ」と「会員規約」に分断して、AND検索しているようである。

ニフティは単にサービス名称の変更だと甘く考えたのかもしれないが、ヘタをすればヒットして欲しいページがヒットしない、というとんでもない結果になる。 単にヒットしないというだけなら、ニフティサーブが不利という程度の話で済むかもしれないが、メールアドレスの変更はそれどころではないかもしれない。

というわけで、niftyserve.or.jpがnifty.ne.jpに移行した(という表現は実は正確ではないが、今回はあえて無視する)ということは、どの程度の影響があるだろうか? 現状では、メールの受け取りに関しては、niftyserve.or.jp宛てでもちゃんと届く。これが将来は届かなくなるという噂がある。 昔、ネームアドレスが始まるという時に、ニフティはインタビューに対してniftyserve.or.jpでも届くようにするから心配ない、というコメントをしていたのだが、いつまで通用するか心配である。

とにかく、niftyserve.or.jpとnifty.ne.jpを実際に検索してみると、次のようになった。同じく3つのサーチエンジンのヒット数。

インフォシークgooAltaVista-J
3455062726945niftyserve.or.jp
41477107955101055nifty.ne.jp

 gooやAltaVista-Jの結果からは、かなり状況は厳しいと考えてよさそうだが、差の開きが気になる。特に、インフォシークの345。これは少なすぎる。 しかも、6月初めに調査した時には、2万ヒット程度あったのだ。 18日に再度サーチしたらこの数である。一体どうなっているのだろうか?


単純なトラブルとして、原文が間違っているために検索でヒットしない、という場合が実際にある。変換ミスやtypoが原因である。 例えばインフォシークで検索すると、「キャノン販売」は939ヒット、「キヤノン販売」は3330ヒットした(1999-06-17現在)。

もちろん、会社名としては「キヤノン」が正しい。 ところが、本文中には「キャノン」となっている場合もある。検索ページはどう処理するのがよいだろうか。 「キャノン」というキーを指定したのに、わざわざ「キヤノン」もマッチさせる検索ページがある。 「キャノン」には別の意味もあるわけで、それを考えれば余計なお世話なのだが。

とりあえず、キヤノンのトップページには検索機能がある。 ここで「キャノン」を検索したら25ページがヒットする、というのはシナリオ通りなのだろうか? サーチエンジン、結構奥が深そうである。


もう一つ面白い事例を紹介しよう。

現在有効なニフティサーブ会員規約は、1997-07-01に更新された内容である。 具体的にどんなものか、ニフティサーブ会員の皆さんは既にご存知だろう。 それ以外の皆さんにも紹介したいのだが、ニフティサーブのページはトップ以外のリンクを禁止しているので:-)、残念ながら紹介できない。(*3) しかし、検索ページで「ニフティサーブ会員規約」を探せば、簡単に出てくる。 手間がかかるのがイヤという方には、 こういうページ もある。

ニフティサーブにおいて、SYSOPにフォーラム参加者の除名権があるのか?

この問題、いくつものフォーラムで話題になったらしいが、プログラマーズフォーラムでも話題になった。 ニフティサーブ会員規約には直接それを規定した条がないというのがポイントだ。 この問題の解釈は保留するとして、とりあえず、ニフティサーブ会員規約で特にフォーラムに関する規定といえば、第31条である。

1.会員はフォーラムまたはステーション(以下包括してフォーラムといいます)に参加しようとする場合、当該フォーラムの取りまとめ役であるシステムオペレーター(以下 SYSOPといいます)の定める入会手続を経るものとします。 入会手続に審査を伴う場合もあり、審査の結果、当該フォーラムへの入会を拒否されることもあります。

(ニフティサーブ会員規約 97年7月1日)

 このようになっている。 従って、入会拒否という措置は規約上問題ないのだが、この条文があるために、 「一旦審査をパスして入会した後に、強制退会させる権利があるのか?」 という議論が炸裂する余地がさらに生まれてしまったように思う。

え? 入会手続きなんか経た記憶がない? それはおかしいですね、会員規約に「経るものとします」と書いてあるでしょ。 これが変更になったという話は聞いていませんが。ま、それはこだわりませんが。(*4)

さて、この後、2.〜5.までが規定なのだが。

2.会員は、フォーラムでの発言等一切の行為について、当該 SYSOPの指示に従う他、当該フォーラム内の規則(以下ローカルルールといいます)がある場合はこれを遵守するものとします。

3.会員がフォーラムに登録した発言等は、 SYSOPの判断により当該会員に事前に通知することなく、当該フォーラム内において、題名の変更、複写、移動等が行われる場合があります。

4.会員がフォーラムに登録した発言等の内容が、第15条、第16条、第17条または当該ローカルルールに定める禁止事項に該当しあるいはその他の理由で不適当とSYSOP が判断する場合、当該会員に事前に通知することなく当該発言等を削除することがあります。

 このあたりはいい。問題は次なのだ。

5.前ニ項の規定は第12条に定める会員の自己責任の原則を否定するものではなく、前項の規定の解釈・運用に当たっては、自己責任の原則が尊重されるものとします。

ご覧の通り。 1.から4.まで百万回読んでも、イ項もロ項もハ項も見当たらない…というのはまあいいとして、肝心の「前ニ項」はどこにありますか? (*5)


いや、そこで爆笑している人も、真っ青になっている人も、落ち付いてくれたまへ。何とまだそれは本題ではないからである。

本題に入る前に「前ニ項」という表現についてさらに考察しておく。 「前2項」と書けばこんな間違いは起こらないと思うのだが、それはやや安直である。 「前2項」と書いたら「2.」だけを指すという解釈の可能性への道が開けるからである。

では、本当はこの「前ニ項」という表現、一体何と書きたかったのだろうか?

推測してみたい。 ただし、これはあくまでも個人的な推測であり、ニフティサーブ会員は規約通り「前ニ項」と幻覚にちがった厳格に解釈し、承認しなければならない。べし。という感じを忘れないでいただきたいのだが…。

私見としては、まず「前四項」と書きたかったのではないかと思った。 だって、1.から4.までで四項だし。1.と2.を除外するのが不自然だと思ったのだ。 しかし、SYSOPの指示には一切従ったうえで、その行動は会員が責任を負えというのは、考えてみると、かなり無茶苦茶な話である。 そう考えると、やはり3.と4.だけを指したかったのでは、という解釈も捨て難い。

また、細かいことだが、5.がいきなり「前ニ項の規定」と始まるにもかかわらず、その途中で「前項の規定」となっているのも見逃せない。 仮に「前二項」の誤記だとしたら、3.と4.のことになる。「前項」といえば4.のことだ。 3.はどこに行きましたか? どこにも行ってない。 つまり、3.は自己責任じゃなくてSYSOPが責任取れってことなのだと思う。奥が深い規約だ。 やはり、会員規約を熟読するのは難しいようだ。

もちろん、規約の表現が「前項」のような相対アドレスではなく「3項および4項」という絶対アドレスの表現なら、何の混乱もなかったと思うわけだが。


やっと本題に入る。ご存知の通り、WWWは広い。 もしかしたら、「ニ項」というキーで検索したら…と思ったのだ。これが数十ヒットするのである。 もちろん、間違いなく「ニ項」という意味で使っているページもあるはずだが、そうでもない場合もあるのだ。 特に光っているのが、DoCoMo Nagano Loungeの中にあるFAIDanceの規約ページ。

Nagan FAI会員規約

この中の、第6章 サービスの所をご覧あれ。URLは次の通りである。

http://www.nagano.nttdocomo.co.jp/pass/kiyaku/kiyaku6.htm

「前ニ項」という言葉があるじゃないか。 ふむ、世間では「前ニ項」という表現が通用するようだ。しかし、この規約、どこかで見たような気がしないか? しない? ならばいいのだが…。

私の知る限りでは、「前ニ項」という“該当個所以前のどこを探しても見つからない”項を必要とするような規約は、ニフティサーブ会員規約とこの規約、あと一つしかない。 え、まだあるの? あるのであります。

TERRANO-ML

偶然とは恐ろしいものだ。


(注)

(*1) NIFTY-Serveというキーを与えた場合、「-」は区切り記号とみなし、NIFTYとServeという二つの単語で検索するのではないか。 その場合、アルファベットの大文字と小文字を区別しなければ、NIFTY SERVEで検索したときと同じ結果になるかもしれない。

(*2) 検索には以下のページを利用した。
インフォシーク
goo
AltaVista-J: 日本語で検索が行えます

(*3) ニフティサーブのトップページからたどれば、ニフティサーブへのリンクは必ずトップページに行うようにという「お願い」がある。「お願いであって禁止ではない」という説もあるようだが、禁止ではないとどこにも書いてない以上はリンク禁止と解釈するのが当然無難である。

(*4) 最近は自動入会という処理によって、アクセスした途端に入会完了という扱いのフォーラムが多い。

(*5) 2の漢字の「二」と書くべき所を、うっかり片仮名の「ニ」にしてしまったらしい。 もしかすると、コピーして他規約に使われた時に判別できるように、意図的に片仮名の「ニ」を使ったのかもしれないが、だとしたら相当したたかである。なお、このページに出てくる殆どの「前ニ項」という表現は片仮名の「ニ」であることにご注意。


        COMPUTING AT CHAOS RUINS -277-
        1999-06-18 NIFTY SERVE FPROGORG mes(6)-272
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