混沌の廃墟にて -256-

抹殺された歴史

1996-09-04 (最終更新: 1996-09-17)

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 NIFTY-Serveの公称フォーラム数は7月末で566。これだけあれば、かなり独特な フォーラムも多数ある。その中に、結構好みなのだが会議室だけ見ても何がした いのかよく分からない(失礼)、FNETというフォーラムがある。

 ちょっと前にかなり関心を持った発言があった。

シスオペはフォーラムの管理者・独裁者でユーザからの成り上がりで はありますが、ニフティ社からの回し者という側面もあります。

(NIFTY-Serve FNET MES(8)、●ネット活用・こんな情報はどこに?....01
00327、SDI00625 福島 誠「RE:SysOp, SubSys とは?」より引用)

 結構長い間SYSOPを続けているが、回し者という側面があるというのは知らなか った。さては最近はそうなっているのかもしれない。それにしても、回し者とい う表現がそもそも凄すぎる。“スパイ”というレトロな表現は、ソ連崩壊、東西 ドイツ統一という歴史的事件の後、東西の緊張が弱まって、最近はあまり流行ら なくなったようだが、「回し者」というのは要するにスパイのことで、敵の中に 混じって情報を盗む人のことである。(*1)

 こう書いた本人がまさか「自分だけ違う」と主張するとは思えないから、FSHIMIN でSYSOPをなさっている福島さんは、成り上がりでありかつニフティからの回し者 ということになる(多分何かのレトリックだとは思うけど)。私もSYSOPになってか らいつの間にか8年も経ってしまったが、NIFTY-Serveにそんな凄いSYSOPがいると は知らなかった。NIFTY-Serve恐るべし、といったところか。

 では、仮にSYSOPに“ニフティからの回し者”という側面があるとした場合、一 体誰を敵と想定するのだろうか? フォーラムがフォーラム管理者と利用者だけか ら構成されている以上は、会員を敵と想定する他に解釈の余地がなさそうだ。で、 NIFTY-ServeのSYSOPが全員ニフティの回し者だと思われたりしては話がややこし くなりそうだし、少なくともFPROGがニフティの回し者にされるのは不本意なので、 とりあえず「FPROGでは会員の皆さんを敵だと思ったことはない」とフォローして おいたのだが、後になって考えてみると、もしかするとそれって特殊? NIFTY- ServeのSYSOPの多くは、実はニフティの回し者なのだろうか? で、一体何の目的 で何をスパイするのか全然分からないわけだが、FSHIMINの場合はそれなりのこと があるのだろう。実際、福島さんは次のようにも書いているのである。

トラブルなどで胃が痛くなったり、朝の5時に目がさめてフォーラムにつな いでみて何事もなくて安心してまた眠るなどの毎日が続くことになります。

(同発言より引用)

 これもまた…とっても恐ろしい話だ。

 私はそんな経験は一度もない。もっとも、本業の方なら、朝の5時までかかって も目標完成できない、ということはたまにあったが(これも恐い話だ)…とにかく、 こう書いている位だから、福島さんは実際このような毎日が続いているのだと思 う。一般論として、そういう毎日が続くと体を壊してしまうのではないか。心配 である。

 で、NIFTY-ServeのSYSOPが全員そうだと思われたら面倒なわけで、FPROGもSYSOP が毎朝5時に目がさめると思われたら事実とあまりにもかけ離れているから「FPROG ではそういうことはない」という趣旨のフォローもしてみたのだが、よく考えて みると、もしかするとNIFTY-ServeのSYSOPの多くはトラブルで胃が痛くなったり、 朝の5時に目がさめてフォーラムをアクセスして何事もなくて安心して…という生 活を送っているのかもしれない。また、それがSYSOPとして当然の責務なのかもし れない。これが現実だとすると大ショックだ。私は大甘ちゃん星人だったのか。

 ちなみに、私の場合、どちらかというとフォーラムにアクセスしている時はス トレスが発散できて快適である。別にどなり散らしたり好き勝手して「あ〜、す っきりした」というのではない。体に合ったことをしている、という感じがする。 全く問題ないかというと、最近ちょっと中毒的になっているのが、毎日発言しな いと落ち着かないという現象である。SYSOPに毎日発言する義務はないのだが、 「最後の一葉」のように、発言しないとプッツリと切れてしまうような緊迫感が あるのだ。23時頃になって、その日まだ発言していないと、心拍数が上昇して血 圧が上がり…という程でもないが、やはり落ち着かない。


 FPROGといえば、最近、電子会議「ROM墓場からの声」が、変だが。とあるfjの 投稿によると、1週間に200発言もするのは変な人、だそうな。だとしたら、毎週 500発言するというのは超変である。(*2)

 しかし驚くことはない。この電子会議自体がそもそも変なのだ。だから、それ で正しいのである。実際にこれだけ発言してみると、結構爽快である。マラソン を走りきったような感覚なのかもしれない。


 「成り上がり」という表現も辛辣なものだが、まあ、かなりすねた見方をすれ ばそういう表現もあるだろう。“成り上がり”の意味は「急に高い地位や財産を 得た人」(新選国語辞典)だから、「SYSOPは成り上がり」というからには、結果的 に地位が高いか財産を得ていなければならない。

 これがまたわからない。

 どうして、胃が痛くなったり、朝の5時に目がさめるような思いまでして、SYSOP を続けるのか。辞めると食っていけないというプロの人とか、自虐趣味で「それ がまたいいのだ」とかいう場合は別にすれば、さっさと辞めればいいのである。

 つまり、辞めないのは、それなりのメリットがあるはずだと考えてみる。自称 「成り上がり」の人の場合は、SYSOPであることによって、高い地位や財産を得て いるのだと推測できる。しかし、財産というのは分かりやすい基準だが、必ずSYSOP が金になると言うのは大間違いだ。その証拠に、私を見なさい(^^)。ってのは冗 談みたいに見えるかもしれないが、いずれにしても、長続きするSYSOPは希なので ある。調べるとすぐ検証できる。SDI003xxというIDを持つ同期のSYSOPは、今は殆 どいない。財産が得られるようなものなら、この人達は何故辞めたのか、という 疑問が沸いてくる。

 もちろん、ごく一部の特殊なフォーラムは別世界かもしれないが、SYSOPは皆金 持ちという噂は「プログラマーはみんな億万長者」と同類の伝説に過ぎないのだ と断言してもいい。

 地位というのがまたよく分からないのだが、私の場合、アスキーネットとか、 今は終了してしまった銀河通信とか、そのあたりのイメージが強いので、どちら かというとSYSOPというのは雑用係的なイメージがあった。アスキーネットのsigop というのはネット中でも希有の存在だと思う。何のためにいるのだかよく分から ないのである。しかも、何をしているのか殆ど分からないのである。たまに、番 号詰めの時に連絡役をするというのは知っているが…。

 番号詰めというのは奇妙な話だが、アスキーネットというのは、投稿内容が増 えるとどんどん増えるだけいくらでも増えるという便利なシステムである。 NIFTY-Serveのように、会議室が20個までしか作れないとか、999発言を超えたら 古いものから勝手に消えてしまうとか、そういうことはない。放置しておけば、 いつまでも情報が残っている。これで万歳といううまい話はないわけで、放置で きないので消すぞ、というのが希に運営側から指示される。この時、どのノート は残して、どれを消す、というのを決め、運営側に知らせる、というのがsigop の役割…らしい。

 どっちかというとfjに雰囲気が似ている。正式な管理者はいないが、実質的に 仕切っていて、異質な新人がやって来ると意図や是非はともかくとして結果的に 罵倒して追い出してしまうというあたりが。良く表現すれば、会員による自由の 実現。

 そこに比べると、NIFTY-ServeのSYSOPというのは“偉い人”であり、新入会員 などは恐ろしくて口もきけないと思っている人もいるらしい。何か違うんじゃな いかと思わなくもないのだが、これまた私が特殊なのであって、実は他の大多数 のSYSOPは偉い人なのかもしれない。NIFTY-Serveも変わったのだろうか。


SMSINFOは、廃止されてフォーラムに変身するそうだが、例の発言削除事件はデー タライブラリに残らないらしい。(*3)

 ところで「データライブラリ」という表現だが、最近ニフティが掲示している 文章には「データライブラリー」という表記の方が多い。これについてニフティ に問い合わせてみたら、将来はシステムの表示しているメニューのメッセージも 含めて「データライブラリー」に統一するとのことだった。現在はシステムの表 示は「データライブラリ」で統一されており、ニフティの掲示する文章は「リー」 と「リ」が混在、という状況なので、私の文章では「データライブラリ」で統一 しているわけだが、メニューのメッセージが変更になったらプログラムを確認し なければ。しかし、昔「ニフティー」と書いていたのを「ニフティ」に改めたニ フティが、「ライブラリ」は「ライブラリー」にする、というのは方針がよく分 からないが、とりあえず方針はどうでもよくて、どちらかに統一されていればこ ちらの対応も決められるのである。

JISの用語だと表記は「ライブラリ」なので、ちと違和感がないわけでもないが。


FKANSAIも、特設運営会議室の内容はデータライブラリに残さないということだ。 この会議室は特に運営問題に関して重要な情報が満載されているので、もったい ないことだと思う。トラブルは起きるものである。その時に、過去の経験は大き くモノを言う。経験したことがなくても、事例を知っていれば、ある程度は役に 立つ。事例も知らなければ自力の判断しかない。最もリスキーである。

 例えば、FKANSAIの臨時会議室では、同フォーラムの別会議室が999発言でスト ップになってしまった時のことが書かれていた。999発言になる前に、フォーラム の設定を変更しておけば、古い発言からexpireされる仕様の会議室に変身する。 その設定をしないと、999発言になった所で打止めになってしまう。

 問題の会議室は999発言になった所で書き込めない状態になったまま、しばらく の間放置されており、それに対して「SYSOPの対応が遅い」という批判があったの である。ここまでなら「すみません」で済む話だ。(済まないかもしれないが)

 ところが、ちょっと私も驚いたのだが、これに関してFKANSAIのSYSOPさんが直 接コメントを付けているのである。まず、999までの会議室仕様になっていること に気付かなかったというのだ。実は私も999発言で打止めの状態の会議室を放置し てしまったことがあるので、「気付かなかった」という点についてはあえて文句 は言わない。そういうことはあるのだ。

 ところが、一言多かった。会議室が999発言で終了するかどうかは、見ただけで は判断できない、というようなことを書いたのである。もろに蛇足である。なぜ なら、NIFTY-Serveでは一瞥しただけで会議室タイプが判断できることが明らかな のである。すなわち、999発言で終了する会議室の発言番号は「999」のように3桁 で表示され、65,000発言まで可能な会議室は、「00999」のように5桁で表示され る仕様になっている。昨日や今日NIFTY-Serveに入会した人ならともかく、いくら 何でもSYSOPがこれを知らないというのはおかしすぎる。実際、即座に「見れば分 かる」という突っ込みが入っていたが、反論はできなかったようだ。そりゃそう である。

 どうしてSYSOPがこういう信じられないことを書いたのだろうか、謎は尽きない のだが、それはさておき、とりあえずこの会議のログが残っていれば「会議室が 999発言の仕様になっていたら、早いうちに拡張を検討しておくのがよい」とか、 「会議室のタイプは発言番号の桁数で区別できる」とか、そのようないくつかの ノウハウが残ったわけである。会議室は既に消滅していて、このようなノウハウ は各自のログの中にしかないわけだ。

 そして、誰かが一度やった失敗は、必ず他の誰かがまたやってしまう。歴史は 繰り返すのである。それでいいというのなら別に構わないが。


 「日本残酷物語」という本がある。平凡社ライブラリーというシリーズで、文 庫本サイズなので手軽にどこでも読めて便利だが、内容はちょっと濃い。

 この本には徳川時代から近代にかけての現実にあった残酷な話が網羅されてい る。その中には、政治的な意図の下で行われたものもある。「百姓は生かさず殺 さず」という有名な言葉があるが、実際何があったのか、ということはあまり学 校では習わなかったと思う。その理由の一つとして、悪政は表向きの歴史資料か らは抹消されているということがいえる。

 悪いことをしたら証拠を残しておく手はない。隠滅するのがベストである。と いうわけで、特に権力者が行った悪政は歴史に残りにくい。善政ならもちろん歴 史書に書いておけばよいのであって、もしかするとなかったことまで残そうとす る人もいただろう。

 過去の歴史が残らないことが引き起こす最も大きな問題は、惨禍が繰り返すと いうことに尽きる。新たなる歴史の主人公達が過去の失敗を参考にできないので ある。ネットでこれが一番よく現れているのはnetnewsだと思う。flameに体する まずい反応、という同じことが何度も繰り返されているように見えるのだ。これ は、netnewsの場合、expireという習慣があることが影響しているのだと思う。過 去の記事を参考にすることは、不可能でないにしろ、結構面倒なのである。それ に、もし本気で過去の記事を読もうとしたら、その場合は、いつまでたっても過 去の記事から脱却できないほどの分量がある。

 失敗や間違いをメモしておく、というのは厳しいことかもしれないが、プログ ラミングの世界ではかなり役に立つ秘伝帳を作ることにもなる。もしかしたらそ ういうホームページがあるかもしれない。誰か御存じの方がいたら紹介してくだ さい。


 福島さんというのは私とよほど考え方が異なるというか、あるいは発想が全然 違うらしい。まさにその証拠のようなことがごく最近あった。FSHIMINでの話であ る。フォーラム運営に関連しそうな、ある発言をお書きになった。それに対して。

ここをみているシスオペは多いようですが、特に反論も出ていないところを 見ると、「ニフティとの契約で認められているシスオペの権力には#134 のようなことも含まれている」ということについては異論がないのではない かと思います。

(NIFTY-Serve FSHIMIN MES(19)、こんなFSHIMINにしたいっ! (4)【運営】
151、SDI00625 福島 誠「RE:信任投票の件」より引用)

 とのことである。

 実は、この時私(つまり、そこを見ているSYSOPですね)は異論があったのだが、 わざわざ書く気が全然しなかったので、そのまま傍観していたのだ。

 「反論がなければ合意」という言葉はfjで伝説となっているが、NIFTY-Serveで 同様の発言は珍しい。まさかFSHIMINで同様の主張を見るとは思わなかった。

 ちなみに、上の発言を見てなお、「そんなことはない」と書く気力すらなかっ た。だから、コメントも付けていない。最近ちょっと疲れているのと、やはり気 分が乗るか乗らないか、というのは重要だということ。

 さて、考え方が異なると書いたのは、状況の判断についてである。上に引用し た箇所だけでは分かりにくいのだが、「特に反論が出ていない」のはその通りだ が、では賛成意見が圧倒的多数かというと、それ程でもなかったのだ。私の場合 だと、もし何か書いて特に反論も出ていないという場合は、まず「何かとんでも ない変なことを書いてしまったのだろうか」と不安になるものだ。つまり、今回 のFSHIMINの状況のように、反論を持っている人が全然書く気にもならない、とい う状況になったのではないかと心配してしまうのである。これが悲観的なのか福 島さんが楽観的なのかよく分からないが、かなり考え方が異なっていることだけ は確かだろう。

 心配といっても、朝の5時に目が覚める程ではない。うーむ、ちと変だな、と思 う程度である。だいたい連載記事に大ボケの誤記を書いている程度の私であるか ら、実力は分かっている訳だし、失敗した証拠を隠滅する程のパワーもない。現 にぼろぼろとあちこちにボロが残っている。補修して回るのが大変だったりする が、ま、とりあえず気楽に、というのも一つの手だ。多分。

 幸いなことに、最近私が書いたことには大抵反論とか別の視点からの意見が出 てくるようで、それはそれで面白いと思う。反論が出なくなったらFPROGの終わり かもしれない。


補足

(*1) 「回し者」の意味に悪い意味があるかどうか、敵が必要かどうか、という点につい てFPROGで議論になった。スラングとしては必ずしも敵の存在が必要ではない、と いう意見がある。VOP参照。

(*2) 1996年8月頃の状態。9月現在、一日あたり100〜200発言/日程度と安定している。

(*3) ある会員の発言をSYSOPが強制削除した。これに対して抗議があり、SYSOPは非を 認めて謝罪し、削除の処理を撤回した。ただし、システムの都合により、削除し た発言を復活させることはできない。

その後、この会員に対してSMSの常連と思われる一会員から発言があった。これは 内容に問題があるとしてSYSOPが強制削除した。この措置については会員から非難 もなく、むしろ当然という声が多かったし、撤回もされていない。

ただちに該当の一会員への批判が多数寄せられたが、当会員は一切無視して、質 問には全く回答せず、他の場所でこの会議室に対して批判する内容の発言をして おり、また、FMSの常連と思われる会員から、この会員を擁護すると解釈できるよ うな発言があったため、事態は一層錯綜した。


        COMPUTING AT CHAOS RUINS -256-
        1996-09-04, NIFTY-Serve FPROG mes(6)-152
        FPROG SYSOP / SDI00344   フィンローダ
        (C) Phinloda 1996