混沌の廃墟にて -176-

第1回フリーソフトウェア大賞速報 (1)

1992-06-21 (最終更新: 1996-10-03)

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さて、今日 6/20 はフリーソフトウェア大賞のパーティーの日だ。

頭がガンガンするが、理由は後で書く。とにかく当日早朝までのリアルタイム 会議にもめげず、なんとか朝起きることができた。今週は慢性的に寝不足なので ふらふらである。「調子どうですか」と言われたら、最近は「過労みたいです」 と答えることにしている。この後、「それは大変ですね」などと突っ込まれたら、 「いや生まれつきですから慣れてます」とかいう。

とりあえず何があろうが電子メールだけは読んでおきたいので、NIFTY-Serve に電話をかけるが、FPROGをついでに見ておく。入会希望者がいつもの3倍くら いいるのは、雑誌にフリーソフトウェア大賞に関する記事が書かれた影響か、そ れともビギナーズスクエアで回答したり、FC(*1) で書いたのを見てFPROGを見に来 たのか、よくわからない。とにかく、入会希望者が多いのは良い事だろうという 人に念のため書いておくと、これらの人の9割は、疾風のように現れて疾風のよ うに去って行くのである。(*2)

32日ステージのテーマは異論もなさそう、というか、反応が全くないので、と りあえず「蟲たち」で fix しておいて、次回テーマを決める手順の下準備をして おく。最近座長の姿を見ないが、以前からあまり姿の見えない人なのであまり気 にならない。ちょこちょこと作業するだけならいいが、FC にフォローを入れたり したので時間を食ってしまう。

選ぶほど服を持っていないので、一着だけしかないよそ行きの服を着る。雨が 降っているのが残念である。この間、MIMPI(*3) で自作の曲を聴いている。未発表の 曲である。発表前の曲というのは、何十回もくり返して聴いたり、寝ながら聴い て、違和感がなくなるまで細かい修正をするのだ。今手直ししている曲も、そろ そろ2、3か月微調整が続いているのだ。今日は MIMPI の作者も来るようなので、 これが楽しみである。


会場は新宿なので、小田急の下北沢から乗る。何だこれはという混雑ぶりだ。 丁度下校の時間帯と重なったらしい。混みすぎなのだが女子高生が多いので気に ならない。新宿に付いたのは 12:45 頃である。新宿は、ここから時間がかかるこ とを経験的に知っているので、会場まで歩け歩け歩け…やっとついた。

会場に付いたのは 12:55 頃である、広い会場なのだが、おぅ、これは…という 程人がいなかったので、本当にここかいなと思ったが、そこだった。人がいない というよりは、会場が広すぎたようだ。後で考えてみれば、確か無料で講演を聴 けたはずだから、暇な人は何の関係がなくても行けばよかったと思う。結構内容 は面白かったので…後で言ってもしょうがないのですが。

あまりに広いとどこに座っていいかわからないのでうろうろしていたら、I氏 に見つけられてしまった。招待状を見せて、ほれこれですよ、名前と住所が違っ ていると言ったら、私の責任じゃないよと言われたが、そりゃそうである。もっ とも、ちゃんと届いたら住所氏名なんて何でもいいのかもしれない。という感じ で、ここから講演の内容を速報で紹介しよう。


13:05 頃に講演が始まった。この時点で聴衆は約70名である。授賞作品をまず アナウンスの女性が発表したのだが、読みにくい文字が多くて若干苦労していた ようだ。

13:12、石田晴久氏がフリーソフトウェア大賞の挨拶の言葉を述べた後、講演者 を紹介する。何か非常に楽しそうな感じだった。私の方は、とにかく当日4時前 までリアルタイム会議(*4)していたのだから、 眠くてしょうがない。

13:17から、Mitchell Kapor 氏の講演。現在 Electronic Frontier Foundation という財団の会長だそうだ。実は EFF というのは初めて聞いた(不勉強ですみま せん)(*5)。 元ロータス社長である。現在は別の会社の社長ということである。

ところで、この講演は同時通訳が付いていたのだが、実は通訳を聞いている と余計わからないような気がしたので、オフにして最後まで聞いてしまった。 ただし私はヒアリングが得意な訳ではない。だから、以下のレポートについ ては、語学力の欠如によるとんでもない誤解があるかもしれないので、それ を承知で読んでください(無茶苦茶やがな)。

EFF とは何かというと、要するにコンピュータネットワークに関する公共的な 活動を行っているらしい。話はまずテレコミュニケーションの可能性について、 というテーマで始まった。コミュニケーションは、オープンなものでなければな らない。誰もが意見を発表できる世界的なネットワークになるべきである。INTERNET を通じて世界的な接続は実現している。NIFTY-ServeやPC-VANともやがて接続 されるだろう。ただし、自由と引き換えに悪いこともある。例えば犯罪に対する 対策も必要になるだろう。

…今回、メモを見ながら書いているのですが、本当にこんなこと言ったかど うか、いまいち自信がない。

フリーソフトウェアについて。作者と作者の間で、お互いによい刺激となって いる。フリーソフトウェアは若い世代にコンピュータを理解させ、プログラミン グの技術を習得するのに大きな効果がある。

Mitchell Kapor 氏のお子さんが会場に見えていた。何歳か忘れてしまったが… まだほんの子供である。既にフリーソフトウェアを作っているそうだ。Mac 上でハイパーカードを使い、アドベンチャーゲームのようなものを作ったら しい。Mac は、これができるからすごい。pc98 で5才の子供が OPTASM を使 ってフリーソフトを作った、という話は聞いたことがないが、そういうのが あると、それはそれで面白いのだが。

Net としてのコミュニケーションがネットワークを成立させるのである。

net という言葉をよく使っていた。「網」というニュアンスのようである。 多数の参加者による網が、コミュニケーションの母体となるのである。私も よく「ネット」という言葉を使うが、決して「ネットワーク」を略したので はない。あくまでネットはネットなのだ。

科学者達は、研究用ネットワークを積極的に利用し、大きな成果をあげている。 face-to-face ではないコミュニケーションが、もはや当然の世界となっている。 このような新しいコミュニケーションのメディアは、既存のマスメディアのよう なメディアとは根本的に異なるのだ。それは、電子メールやコンピュータ会議が インタラクティブであるということだ。ネットワークに参加している多くの人が、 自らアクションを行おうとしている。このインタラクティブという性質に注目す べきである。

FPROGを見ている限りでは、ネットへの参加者がインタラクティブなアクシ ョンを行おうとしている、という世界は、遠い夢物語のような気がする。多 くの人は FPROG を単なるテレビを見るのと同じような使い方をしているので はないか。 (*6)

オンラインで政治的な意見の交換をすることもできる。誰でも意見を述べ、多 くの人がそれを読む。これは新しいスタイルの民主主義である。ネットのコミュ ニケーションを使って何ができるかは、今も未知数なのだ。

問題のある発言を行う人についての話題。

これですが、よく聞き取れなかったのですが、よくいらっしゃいます、困っ た人の話です。要するに。誰でも発言できるようになると、もちろん迷惑な 発言をする人も現れる。どうすればよいか。最悪の解決方法は、追い出すこ とである、といった内容だったと思う。なぜ最悪かというと、誰でも自由に 発言できるという大前提が失われてしまうからだ。

コンピュータの文化はごく最近のものである。パーソナルコンピュータの世界 はまだ15年程度の歴史しかない。しかし、なおこの文化は激変している。高速 ネットワークの可能性はまだ未知数である。ISDN を使って何ができるだろうか。

もうほとんど眠いんですが、必死でメモを取るのは、今年中に200回まで 発言すると言ったので(*7)、ネタ集めのチャン スを逃す訳にはいかないから、…という訳でもない。内容は結構面白いのだが、 なにしろあまり寝ていないので…。

14:00 頃に質問があれば、と石田氏が促すが、誰も質問しない。石田氏が2件 質問した。

Q:ISDN がアメリカで広まっていないのは何故か。

A:理由の一つは、アメリカの電話会社が分割されている事情。NTT のように 単一で全国をカバーできないと、旨味がないらしい。もう一つは、ISDN よりも B-ISDN の開発を優先させようとしているのではないか、というのである。

Q:世界的なネットワークを用意して、どこにでもメールを出せるようにする と、便利な反面、有名な人は無茶苦茶たくさんメールを受け取ることにならない か。どう対処すればよいか。

A:

メモがないのですが…。確か、メールを出す側の意識も必要という回答があ った。例えば、大学なら大学単位で質問をまとめることにより、同じ質問の メールが多数出されることを防ぐことができる。

14:05 に、石田氏により David j Farber 氏の紹介があった。ペンシルバニア 大学教授。ネットワークの大家である。EFF の理事会役員。

相当眠い…。これで話が面白いから寝られない。私は眠い時には基本的に、 まず寝ることを前提に行動を考えることにしているので。

ネットワークの歴史についての解説。富士山を登っている絵を OHP で示しなが らである。絵といっても、ぐにゃぐにゃと下から上に道があって、途中に、

1965TIME SHARING
1970ARPANET
1982CSNET
1983-4INTERNATIONA
1987NFSNET-TI
1992(today)
1993GIGABITS
2001-MOBILITY
2020-GLOBAL COMPUTING

と書いてある。総じて、コミュニケーションがマシン対マシンから人対人に移 り変わっていくといえる。科学研究の場では、既にリアルタイムな論文発表の場 としてネットワークが使われている。このようなネットワーク上でのコミュニケー ションにおける管理の問題の話題。

アカデミックな場所ほど管理拒否主義者が多くて大変らしい。

これからのコミュニケーションについて。高速ネットワークが実現できれば、 ニーズは期待できるのではないか。バーチャルリアリティによるコミュニケーシ ョンはどうか。2001 年頃には、ネットワークはワイヤレス化するだろう。

結構面白かったのだが、なかなかまとめにくい内容だった。もう一度念を押 しておくが、私はヒアリングには自信がないと自信をもって言えるのであり、 上記の内容が本当に話されていたのかどうかは定かではない…。

また質問タイム。誰も質問しない。石田氏が質問する。

Q:電話料金の話が出ましたが(そんなの出たっけ)、日本では電話代がコミ ュニケーションのネックになっている。アメリカではどうか。

A: これもメモがない。確か、固定料金の話があったと思う。

Q:ネットワーク間で接続できていないサービスがあるようだが、なぜか。

A:

CompuServe は INTERNET 経由でメールが送れるが、他の商用ネットでは使え なかったりするのは何故か、という意味のようだ。法的には問題がないので は、という突っ込みである。日本では問題があるという話を聞いたが。で、 肝心の回答だが、よく理解できなかった。(^^;)

(つづく)


補足

(*1) FCはNIFTY-ServeのC言語フォーラム。

(*2) キルヒホッフの法則と読んでいる。ある時点でフォーラムに入会する会員の数と 自然退会する会員の数は等しい。

(*3) MIMPIは、MIDIの演奏ソフト。フリーソフトウェア。

(*4) リアルタイム会議は、NIFTY-Serveのchatサービスで、フォーラムの中にあるもの をいう。フォーラムと独立したサービスはCBと呼ばれている。

(*5) comp.org.eff.talkなどを読んでいれば様子は分かる。

(*6) 今(1996年)も、変わらず、といった所か。ごく一部の人のトークショーをその他 大勢が見ているという状況だ。

(*7) この年のうちに「混沌の廃墟にて」を200回まで発言する、と余計なことを宣言し てしまったのだ。


        COMPUTING AT CHAOS RUINS -176-
        1992-06-21, NIFTY-Serve FPROG mes(3)-271
        FPROG SYSOP / SDI00344   フィンローダ
        (C) Phinloda 1992, 1996