混沌の廃墟にて -112-

転載

1990-04-07 (最終更新: 1996-10-31)

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いきなり随分暖かくなったり冷え込んだりで、どうも調子は悪いし、ファイル サーバーはいきなり落ちるし、ダウンロードしたテキストを入れておいたFDは トラック0が読めなくなってフォーマットすらできないし、財布は軽いし、どうも 最近面白くないことばかりで、こういう時にはファンタジーでも読んで現実逃避 に走りたくなる。が、最近本も高いので困った。

最近、キャンディを駅の売店で買うことが多いので気がついたのだが、ビタミ ンC入りとか、アセロラが入っているとか、はちみつレモンだとか、単なる味で はなく、付加価値を何かアピールしたものが多くなったような気がする。

正月に、京都駅で一万円札しかなかった時に、飴が欲しくなったのだが買えな かったことを思いだした。正月という不利な条件もあったが、一万円の現金を持 っているのに百円の飴が買えないという不条理。オレンジカードは、KIOSK でも 使えるようにしたらどうだろう。今年は、これが不幸の元で、ずっと不運なのか もしれないが、考え方によっては、これが厄払いになっているかもしれない。

で、今日は駅で、ご婦人が「一万円札でもいいですか」と尋ねて、飴を買おう とした。私はどれを買うか迷っていたので、様子を見ていたが、売店のお姉さん は実に無表情に、構わないと返事した。これで正月の事件を思いだしたわけだ。 今でも覚えている位だから、一万円持っていたのに飴一つが買えなかった事を、 一生忘れないのかもしれない。このようなトラウマは、なるべく避けたいのだが…。 私の人生がたかが飴一つで狂ってしまうとは、何事だろう。

さて、このご婦人だが、実は飴が欲しいのではなく、単に一万円札を両替した かったらしい。というのは、おつりだけ受け取って、飴をうっかり置いていって しまったから。両替を目的で飴を買える人もいれば、本当に飴が欲しいのに買え ない人もいるのだから、不運というのは、やはりあるようだ。

で、結局飴を置いていったことを教えなかった私も、相当悪いことをしたよう な気もする。精神的な傷口は広がる方が簡単で、なかなか閉じないものだ。


日米の貿易摩擦に関連する問題として、再び著作権論争が激しくなりそうな気 配になってきた。特に表面化しているのは、音楽関連の、著作隣接権に関する問 題、CPU などのチップ設計上の著作権問題などがあげられる。

一般論としても、今年は知的所有権に絡んだ戦いが、かなり激しくなるのでは ないかと思われる。

著作隣接件に関しては、昔ポールマッカートニーがアピールしたことがあった。 作曲者の権利は、その人の死後50年が有効期間である。しかし、演奏者の権利 は、演奏の時点から20年間が有効期間となっている。この差は、著作者の権利 である著作権と、演奏者の権利である著作隣接権との違いに基づく。ビートルズ の曲の多くは、演奏後20年以上経過してしまったので、演奏者の権利が消滅して いる。これが問題になるのは、日本以外では、著作隣接権の保護期間が、もっと 長い場合があるからである。(*1)


著作権と言えば、最近、「電子会議などの発言を他フォーラムに転載したいの だが」という相談を何度か受けたので、これについて述べる。

さて、フォーラムの中での発言に関してだが、go forum を実行すれば、すべて のフォーラムを含む木の、先頭の部分にジャンプできる。ここで、システムが毎 回、気がかりなメッセージを表示することはご存知だと思う。前半部分を引用す る。(*2)

フォーラムに登録されたメッセージ等を登録した人に無断で他の媒体に転載 することはできませんが、SYSOP はその編集及び管理作業の一環として登録 した人に事前通知をせずにフォーラム内でのメッセージの移動、編集、削除 等を行うことがあります。

(go forum で表示されるメッセージ、1990-03-28 現在)

「他の媒体」という表現は、具体的に何を指しているのだろうか? もう少し わかりやすい表現で書けないものだろうか。これでは、「意味がわからなかった から、他の BBS に無断で転載してみました」と言われても、ある程度やむを得な いのではないか。というような問題がありそうだが、その点は、今回はとりあえ ず無視する。

「できませんが」以降に着目する。「SYSOP は…を行うことがあります」と書 いてある。仮に、フォーラム内でのメッセージの移動等が、「ほかの媒体に転載 すること」に相当しないなら、このようなことを書く必要はない。では、わざわ ざ、このような注意書きを追加したのは、なぜか。しかも、これは前半の文章と、 「できませんが、SYSOP は…」というように接続している。

〜はできないが、SYSOP は…することがある、という表現は、SYSOP が、その できないことに対して、例外的に何か行うことを、あらかじめ宣言していると考 えるのが順当だと思う。

従って、「フォーラム内でのメッセージの移動・編集・削除」は「他の媒体に 転載すること」に相当すると考えるのが自然だろう。

 同一フォーラム内の移動が他の媒体への転載に該当するのならば、他フォーラ ムへのメッセージの移動なども同様であるはずだから、そのようなことは無断で は実行できない。最初に書いてある通り、「フォーラムに登録されたメッセージ 等を登録した人に無断で他の媒体に転載することはできません」という約束があ るからだ。

では、媒体とは何なのか? CompuServe が、それぞれのフォーラムを独立した BBS に見立てた運営をしているそうだし、NIFTY-Serve も、かなりこれに近い発 想が根底にあると思う。ならば、異なるフォーラムを異なるメディアと考えるこ とは理解しやすい。では、フォーラム内で、ある電子会議から他の電子会議への 移動はどうか。これも考え方はいろいろあると思うが、私はそれぞれの会議室を 雑誌に例えてみたい。ある雑誌に対して書いた原稿が、勝手に他の雑誌に掲載さ れては困るだろう。たとえ、それが同じ出版社の発行している雑誌であっても。

物理的に考えると、電子会議のある発言を他の会議室に移動ということは、ど こかにあるデータを、ある物理媒体から他の物理媒体にコピーする操作を伴って いるはずだから、この意味でも、発言の移動を「他の媒体への移動」と解釈する のは、自然だと思う。(*3)


従って、フォーラム内外は関係なく、まず大前提として、メッセージを無断で 移動することはできない、と考えてよいだろう。

しかし、これでは SYSOP がフォーラムの保守を行うことが非常に困難になる。 電子会議の発言をデータライブラリへ転載するのに、いちいち承諾を確認するの は大変どころではない。おそらく、事実上不可能である。そこで、例外的に、SYSOP はフォーラム管理という名目で、フォーラム内に限って無断で移動、編集、削除 を行うことがあると注記してあるのだ。(*4) これは、フォーラムの中という社会が、非常に親密かつ閉じた世界であるから許 されることだと思う。

では、いかなる場合にも、発言は原則的に転載してはいけないのだろうか? 発言者が許可すれば、全く構わないと思われる、ただし、慎重に判断すべき点も ある。

登録した人に無断で他の媒体に転載することはできません
 この文章だけから「登録した人の許可があれば、他の媒体に転載してもよい」 という結論を導くことはできない。しかし、著作権者が許可したのだから、転載 してもよいと考えても、特に不都合はないと思う。逆に、転載できないとなると、 著作者の「転載する権利」を侵害することになると考えれば、かえって問題かも しれない。


補足

(*1) 日本も海外に合わせるという方向で検討していたと思う。

(*2) この当時はそうなっていたが、現在は表示されない。

(*3) しかし、対象となるオブジェクトがそのままで、リンクの変更に過ぎないと考え てみた場合はどうか。

(*4) 1996年10月現在、これは会員規約になっている。


	COMPUTING AT CHAOS RUINS -112-
	1990-04-07, NIFTY-Serve FPROG mes(5)-254
	FPROG SYSOP / SDI00344   フィンローダ
	(C) Phinloda 1990, 1996