混沌の廃墟にて -51-

残高を照会してから預金を引き出す

1989-04-27 (最終更新: 1996-09-20)

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バグがデットロックしていた。説明すると、こうである。bug A は bug B を抑 制する性質を持っている。bug B は bug A を抑制する性質を持っている。すると、 bug A を修正すると bugB が表に出てくる。bug B を直すと、元に戻って bug A が 元気になる。要するに根本的によくないのだ。こういうのは、基本設計からやり 直すしかない。経験的に、力ずくで修正するよりは安上がりになるものだ。

で、とりあえず半日かけて設計を直したら、bug A も bug B も出るようになっ た。

 これはいかん、と思って手を入れると全く動かなくなった。これが今月初めて 泊まり込みになったいきさつである(もちろん納期内には両方バグを取りましたが …そうでなければ泊まり込んだ意味がない)。ちなみに、今月は今のところ全日出 社している。仕事のあることはよいことだ。


Hacker(*1)という雑誌(1989-05-02)をちらっと見ると、FM-TOWNS(*2)の批評が あったので、つい買ってしまった。FFMT のメンバーが見ると血圧が上がりそうな 内容である(私は「FMTOWNSの私的解剖」というのが一番気に入った)。

FM-TOWNS 評の数は多種の雑誌の件数を集めるとかなりなもので、VOPで私がう だうだ評しているようなマイナーなものも含めてしまうとさらに収拾がつかなく なるだろう。だが、あえて今一度問題提起しておきたいのは、世の中にはどうし て既存ソフトをFM-TOWNSの MS-DOS 互換モードで移植されることを期待している 人がこんなに多いのだろうか、ということである。386(TM) (*3)のネイティブモ ードで動くOSが折角あるのだから、わざわざ下位互換のスペックに合わせた仕様 のソフトを期待せずに、100% ハードウェアに依存してもよいから既存のソフト を越えたワープロなりデータベースなりを期待してしまうのは私だけなのだろうか。

また、CD-ROMの操作性について指摘しているのが私以外にもいたので、何とな く安心した。


さて、そろそろ連休である。恒例のオンライン「使用中止」劇(*4)は今年もや ってくるでしょうか。何となく世間がオンラインの破綻に慣れてしまって、そろ そろ全銀行が一斉にダウンしても驚かない環境になっているような気がする。速 めに先立つものを手元に置いておきたいものだが、しまった、先立つものがなけ れば話にならない。

CD-ROMの話の後にCDの話で混乱を招いて申し訳ないが、CDと言うのは操作性が 良さそうで、実はインターフェイスとしては非常によくない。

例えば、私がよくやってしまうパターンだが、まず給料日を待つ。次に、銀行 に行って何をするかというと、残高照会である。いくらも残っていないのだが、 カードで買い物をすることがあるとあちこちの銀行に雀の涙のような貯金を分散 させないと不安なのである。そこで、例えば給料日に給与振込の銀行から5万円 だけ残して引き出し、他の銀行に残りを移動させるようなことをする。

5万円というのは、あくまで例えばの話だから、あまりリアリティをもって受 け取らないように。

つまり、目的は5万円残して引き出したいのである。ところが、CDでこれを実行 するためには、まず残高照会をして、次にカードを入れる所から暗証番号の入力 からやり直して引き出しの操作をする。後ろで待っている人は睨むし、怖い。で 、どうすればよいのだと言われそうだが、こうすればよい。引き出しの時に、残 高照会をするか聞いてくるようなインターフェイスにすればよい(*5)。画面に残 高を表示するのが危険だと言うのなら(危険があるとも思えないのだが)、普通に 残高照会を行なうのと同じようにプリントしたものを出力してもよい。カードを 出し入れし、暗証番号を二度手間で入力する時間はかなりなものである。

こういう操作は私だけかと思ったこともあったが、結構残高照会をしてから続 けて引き出す人が多いことは経験上実証されている。CDの前に並んでいればすぐ わかる。

しかし、残高照会と引き出しを連続してできるようにして欲しい、と要望する 人は極めて少ない、というか実は私以外には知らない。理由を考えて、やはりCD とはこういうものだ、という先入観があって何があっても仕様変更などは思い付 かない人が多いのではないか。

でも、残高照会と引き出しを連続利用したいという本当の理由は、こうやって ヒューマンインターフェイスを向上させ、一件あたりの操作時間が短縮されると、 ぐんとホストマシンの負荷が高くなって「全銀ダウン」の確率もぐっと増えて、 RUINS のネタもぐっと増えるのでは、という極めて悪魔的な発想によるのだから 油断はできない。:-)


補足

(*1) 現在は廃刊。プロテクトされているFDのコピーの記事などがあって、割とマニア ックな層をターゲットとしていたようだ。

(*2) 今では分かりにくいと思うが、当時FM-TOWNSは、あたかも富士通の社運をかけたか のような宣伝をしていたのである。さて、どうなったか。

(*3) Intelが「386という名称を勝手に使うな」という訴訟を起こしていた頃だったか もしれない。それで(TM)と入れたのか?

(*4) この頃、連休直前にCD、ATMのアクセスが増大して利用できなくなる、という事件 があった。最近、珍しく同種の事件があったようである。

(*5) 最近は、CD、ATMにこの種のUIを持ったものも増えたようである。


        COMPUTING AT CHAOS RUINS -51-
        1989-04-27, NIFTY-Serve FPROG mes(?)-40
        FPROG SYSOP / SDI00344   フィンローダ
        (C) Phinloda 1989, 1996