混沌の廃墟にて -7-

スランプ

1988-10-01 (最終更新: 1996-09-10)

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いつの間にか十月になってしまった。毎月、終わりに近くなるにつれて悲惨な 毎日になるのだが、先月は種々のどさくさにまぎれて終わったようである。

スランプというのは、「混沌の廃墟にて」の原稿をまたまた2回連続で没にし てしまったのである。最近文章がどうしてもまとまらない。それをスランプのせ いにしようという訳である。甘い甘い。プログラムが走らないのもスランプのせ いだろうか。いやいや、そんなはずがない。プログラムが思い通り走らないのは 平常であってスランプとは言えないって?

文章を書くアルゴリズムの概略は次のようになる。まず何を伝えたいか仕様を 作成する。SYSOPは作家でなければならない、というようなことはないから、フ ォーラムに発言がないからといって自力で穴を埋めるために作文する必要はない と思っている。そもそも、無駄なメッセージを掲示するのは FPRGのポリシーに反 する(*1)。 では、このシリーズが無駄なメッセージではないかと考えてみると…??

とりあえず、伝えたいことがはっきりした段階で構成を決めて作文を始める。 これは思い付きでも何でもいいからとにかく文章を作るということである。 大体まとまった所でバグ取りにかかる。まず変換ミスや表現のあきらかに間違っ ている箇所を訂正する。問題はこれからである。

公開の場に文章を書くのは、伝えたいと思っていることが大勢の読者に転送さ れてほしいという要求があるからだ。これはコミュニケーションの原則である。 そこで、「この表現で思った通りのことが伝わるかどうか」を検討する。つまり、 読む人がどのように受けとめるかを想像しながら推敲を行なう。ここまでは常識 というかセオリー通りで、まず問題ない。

問題は次である。ここまでのプロセスはパソコン通信で実際に発言を始めた時 からずっと頭に入れていたのである。ところが、少し前の話だが、私の発言に対 して次のようなコメントが付いた。それによると“私(フィンローダ)が他人の立 場に立って物を考えることができない人だとは知らなかった、これでようやく私 (フィンローダ)を理解することができた”と言うのである。公開の場で「他人の 立場で物を考えることができない人だ」と評されたのだから、かなり深刻になっ た。また、これに対するコメントは否定的にも肯定的でもなかったので、ひとま ずその発言は的を射ているだろうと考えた。

読む人がどう受け取るか考えて発言していたのに、「他人の立場で物を考える ことができない」という事実があるとすれば、理想と現実が完全に逆である。そ う言えばその直前にいくつかのフォーラムで発言したのだが、連続して全くコメ ントが付かないことがあった。これも私の書き方が不愉快だからと考えればつじ つまが合う。あるいは何が言いたいのか全く伝わらなかったとか。

そこで対策として、これまでのプロセスを見直して間違っている箇所を訂正す るか、または足りない部分を補うことが必要だと痛感した。例の電子会議では、 反省の意をかねてしばらく発言を自粛する(そう言えば、最近何かと自粛ブーム であるが…)ことにしたが、この時考えていた期間が 9/30 までである。約 40 日の自粛である。

それまでは作った文章の半分から2/3程度を公開していたのだが(*2)、9月は半 分以上を没にしたと思う。「これはこう書けばこう読んでもらえるだろうか」と いうあたりが捕えることができないのだ。私は北海道には行ったことがないが、 身構えながら発言するのはやっぱり臆病なのかもしれない。(*3)

反省と言っても以前と全く変わらなければ何も意味がない。考えているうちに、 一つ完全に足りなかったと思い当たったことがある。そこで「混沌の廃墟にて」 を不定期に連載するにあたって、これを活かそうとトライしてみることにしたの である。もちろん他のすべての発言にも経験は反映しなければならない。


気がついたことと言うのは、こうである。

「パソコン通信の発言者は聞き上手でなければならない」


補足

(*1) 当時は料金が1分10円だった。従って、1分使うことによって10円の価値が 得られるフォーラムにしよう、というのがポリシーだったのである。その後、1 分使うことによって20円の価値が得られるよう、と変更になった。

(*2) つまり、半分以上を没にしていることになるが、「廃墟にて」の原稿は結構 没になることが多い。

(*3) この文は「襟裳岬」という歌の歌詞に掛けている。「廃墟にて」の中には、 このようなバックグラウンドがないとよく分からない表現がしばしば現れる。


        COMPUTING AT CHAOS RUINS -7-
        1988-10-01, NIFTY-Serve FPROG mes(?)-257
        FPROG SYSOP / SDI00344   フィンローダ
        (C) Phinloda 1988, 1996