ヒーター関係の修理

この冬はヒーター関係の交換修理を行いました。交換部品は、ヒーターブロア、ブロア制御用トランジスタ基盤、それとヒーターバルブの3点です。

ブロア故障の方は、それまでいいかげんなメンテで延命していたものの、掲示板での数名の方のトラブル報告を拝見し、「自分もそろそろか」と思い、部品調達中の出来事でした。ヒーターバルブ故障は元もと不調であったのをいじり壊してしまったので一式交換です。

どちらもE24,E28等にありがちなトラブルのようですが、正しいケアにより延命が可能だっり、もう少し合理的な修理も出来ると思われます。以下参考までに。



I. ヒーターブロア回りの修理
II. ヒーターバルブの交換

I. ヒーターブロア回りの修理

No.1 なぜ壊れたか?
--- トラブル発生の経緯 ---

入手当初
クーラーがOFFの時(つまりヒーターおよび送風使用時)、ダッシュボード奥から小さな鈴虫の鳴き声のようなキーキー、チーチーという音が時々発生。
コーナーリングなど車が傾いた時にはキュルキュルという大きめの音が発生。 不思議な事にこれらの音は普段は発生せず、時々思い出したように鳴り、いつのまにか止まるのを繰り返していた。

音の原因と対策
ヘラルド師匠に伺ったところ、 「ヒーターブロアの回転軸が摩耗しているか、またはサビ等で回りが悪くなったことにより発生している」 とのこと。軸受けに注油をすると良いと聞き、試しにバルクヘッドのすき間からCRCをテキトーに噴霧したところ見事音は止まったが、 「 CRCは油を洗い流してしまうので不可!油はエンジンオイルが良い」 とのこと。ブロアを脱着しての注油は面倒臭そうだったので、CRCの代わりにスブレーグリスを半年に1度程度噴霧してごまかしていた。
だましだましメンテしていた時のページは ここ

煙発生!
3度目の冬も過ぎ、4度目の冬のある雨の日に突然、室内の空気吹き出し口から白い煙がほんわり出てきて、さらにボンネットの端からも煙がたちこめてきた。あわててブロアー風量をゼロししてももう後の祭り、煙は止まったがもうヒーター側ブロアは回らない。 どうやらヒーターモーターまたはモーター制御用トランジスタが焼けてしまった模様。配線もしかしたら.....
結果
焼けていたのはトランジスタ基盤で配線はとりあえず無事なのを確認。モーターは固着しており、手で回しても惰性では回らない程だった。

ブロア軸受けの錆劣化-->キーキー音発生--> ブロアモータ固着ーー>抵抗増大でトランジスタ加熱-->焼き付き-->煙発生  と勝手に断定。

考察
当初からちゃんとブロアを外し、 正確なポイントに正しく注油しておけば、ブロアの固着とトランジスタの焼き付きを防止できたかもしれない。 断言出来ないが、注油で音が止まる程度なら年に1度正しく行えば十分そう。また、注油はブロアカバーを外した状態でなければ、よほど巧妙に行わないと軸受けまではちゃんと油が届かないと思われる
結論
●キーキー音が頻繁に鳴るようなら黄色信号。早期の注油が必要。
●放っておくと遅かれ早かれ故障する。故障時は焼き付きの為、煙発生や最悪の場合車両火災の危険性がある。
●正しく注油しておけば、ブロア自体はかなり長持ちし、故障の予防が可能。


No.2 ヒーターとクーラーの関係
E28はクーラーとヒーターがそれぞれブロアまで独立した系統であり、温度と風量調整ダイアルだけが共通している仕組みになっています。ヒーター用ブロアはワイパーモータの下にあり、エンジンルーム側からアクセスします。クーラー用ブロアは室内側の灰皿上方の黒いフィンの裏にあります。クーラーとヒーターの切替えはクーラースイッチのON/OFFで切替えます。よってクーラー使用中は室内側ブロアが稼働しヒーター側は停止しています。クーラーの状態では、原理的には完全な内気循環であり、この間は3つのスライダーレバーのうち有効なのは上段のデフロスター風量レバーだけで、中段の外気導入および下段の足もと風量調節は無効になります。

クーラーOFF時は、ヒーター側ブロアが回ります。ただの送風時でも室外のヒーターブロアが風を起こしています。よって中段レバーを一番左にしておいても、完全な内気循環ではなく、多少の外気が入ると思われます。

ヒーター側ブロアはクーラーOFF時には風量をゼロにしないかぎりは常に回っているわけです。また、E28の場合はエアフィルタが無く、外気を室内に導入するには、風はボンネット上の黒いスリットからバルクヘッドを通ってブロアへ直接導入されるので、ブロアは常に外気の湿気やホコリ、多少の雨水(や花びらや落葉等)にさらされているタフな環境下にあるわけです。


ごちゃごちゃ書きましたが、つまりヒーターブロアは錆びやすい所にあるようです。
また確率は低いでしょうが、室内側ブロアも仕組は同じなので同様のトラブル発生の可能性はありそうです。



No.3 ヒーターブロアと制御トランジスタ基盤の交換
準備するもの
・7mmラチェットレンチ(バルクヘッド脱着用)
・ニッパ(タイラップ切断用)
・タイラップ(5本程度)
・マイナスドライバ(トランジスタ脱着用:柄の短いもの)
・掃除用具一式
・新品ブロアモータ (P/N=64111354618)
・新品トランジスタ基盤(P/N=64111381784)
バルクヘッドについているハーネス固定用のタイラップを数ケ所切断し、6ケ所の7mmボルトを外せばバルクヘッドカバーが外れます。実は私のM535iはご覧のようにガソリンの冷却ラインが内側を通っていてこれが脱着の邪魔物であり、いいかげんな油差しの言い訳でもありました。
しかし、以前の クーラー修理でこのラインは殺してしまってあるので楽に外せました。

左の画像では、もうブロアのプラスチックカバーは外した状態です。

このあたりはご存じ オホーツクロードの「 ヒーターファンの修理 」に詳しく出ていますので参考方

bulkhead
ブロアには2コの黒いプラスチックカバーで覆われています。このカバーは単にはめこんであるだけなので、左右に軽くこじることでパコンと外れます。外れたら、そのまま取り出せます。 画像は片側だけ外したところです。

カバーを外した後は、モーターを中央1ケ所で固定しているバンドのフックを外し、2本のギボシコネクタを手で外せばモーターを取り出せます。

ブロアの羽は細いプラスチック製なので、あまり力をいれて持たないように。


外したブロアとカバー。
ブロアのモーター部はやや黒くすすけていました。シャフト軸は錆だらけです。が、試しに注油してみたらあっけなく回るようになりました。
しかし、なんと軸受けのベアリングごと共回りしてました。それでもとりあえず一時しのぎで装着してみたところ、風量が全開状態なら通常通り回りました。

風量全開位置でなら回るのでどうやら配線類は無事な模様。風量全開の場合、制御トランジスタをバイパスしてバッテリ直結状態で機能するので、私の場合、煙が出た張本人は制御用トランジスタでした。


ちなみに、ブロアへの注油ポイントは左右の軸受け部です。

ブロアを外したら、次はその奥にあるブロア制御用トランジスタ基盤を外します。左ブロアダクトの上方に付いています。
このトランジスタは、1986年後半以降製造の、風量調整が無段階の仕様の車 にのみ付いているようですが、もしかしたらここに付いていないタイプの物もあるかもしれません。

基盤はマイナスネジ2コで付いていますが、このネジを外す時は、ポロリと下のダクト内に落さないように注意してゆっくり外しましょう。落すと取り出すのはかなり困難です。ぞうきんか洗車スポンジ等をダクトに予め詰めておくと良いと思います。

手持ちのラチェットがうまく入らないので短いマイナスドライバでゆっくり回して最後は手でそっと回して抜きました。
 (ドライバも中に落さないようにしましょう。^^;)

あとは3本のギボシコネクタを外せば取り出せます。


外したブロア制御トランジスタ基盤と新品の比較。

ヒューズが飛ぶだけだったり、ブロアモーターだけが焼けてトランジスタの方は無事だったりする例もあるようですが、私の場合はご覧の通り。

全体がこんがり茶色に焼けています。燃えないでよかった ハフハフ ....




基盤の反対面。

トランジスタは2N3771とあります。このトランジスタだけ交換するという裏技もあるようですが、これだけ焼けていると基盤自体の再利用すら難しそうです。

ス、スプレーグリスのせいかも...


新旧ブロアモータ比較。

年式によってはブロアモータのサイズが異なり装着できない場合があるらしい?のですが、私の場合、サイズもメーカも同一でした。(BOSCH製)

装着する際、向きがどっちだか迷いましたが、逆向きに設置すると座りが悪くコネクタ位置も遠のくのですぐわかります。


カバーやバルクヘッド内部は結構汚れているのでクリーナ等で綺麗にします。

装着は取り外しの全て逆です。

カバー装着前に動作を確認。風量調整もバッチリでした。

バルクヘッドカバー装着後は切り取ったタイラップ位置に新しい物をしっかりと取り付けて終りです。


余談ですが、ブロア前にある2本の黒いコネクタがE28点火系の「尾てい骨」トリガーコンタクトのコネクタです。ここが緩かったり断線しているとエンジンがかかりません。




II. ヒーターバルブの交換

ヒーター温度調節の不調
入手当初より、ヒーターの効き始める時間が妙に長く、始動後1時間ぐらい立たないと暖かい風が出て来ないことや、一向に暖かくならない時もありました。逆に暑くなりすぎて温度を少し下げようと温度調整ダイアルを操作してもさっぱり反応せず、風量と外気導入でなんとか調節していたこともありました。時々夏場のクーラー使用時に妙に生暖かい風がどこからか出ることもありました。

BMWは寒い国の車なのでヒーターは良く効くと聞いていたのですが、どうも話が違います。

クーラーの温度調節はそこそこ動作するので、これは温度調整ダイアル側の不具合ではなく、ヒーターバルブの動作不良ではないかと思うようになりました。ヒーターバルブはエンジンを冷却した直後の熱いクーラントがヒーターコアへ流れ込む量を調整するバルブで、温度調整ダイアルに連動して開閉するしかけのようです。

ブロアを外したついでに物は試しと、ヒーターバルブヘッドを外して点検してみた直後はずいぶん具合が良かったのですが、どうやらその際バルブのシールを痛めたようで、バルブからクーラントが洩れるようになってしまい、結局新品のヒーターバルブに交換し事無きを得ました。

交換後は迅速かつ十分に安定してヒーターが効くようになり、噂通りの優秀なヒーターであることが分かり満足しています。

 

ヒーターバルブの交換

ヒーターバルブは、バルクヘッド右下に位置しています。取り外しは、まず、ヘッド部のコンセントを抜き、7mmのボルト2本を外しバルブ本体を自由にします。後はIN/OUT 2本のゴムホースのホースバンドをマイナスドライバで緩めれば外れます。

7mmボルトの外しは、M535iの場合は、ラチェットだと油圧ブレーキ用レギュレータ配管が邪魔なのでオープンエンドかメガネレンチが良いでしょう。

ホースを外す順番は、先に横のIN側を冷却水がこぼれないように外したらすぐ口を上にむけておき、次にバルブ本体を上方に3cm程度引き上げてからOUT側の真下のホースをそっと外せばクーラントはほとんどこぼれないで済みます。
heatervalve
新品のバルブには7mmボルト穴のゴムブッシュ及びブッシュ内の軸は付属していないので、古いバルブからこじって取り出し再利用します。

装着は外しの逆です。クーラントがもし多量に洩れた場合は、しっかりエア抜きをしてください。エア抜きはウオータポンプ上方のネジを外して行います。エア抜き後、エンジンが冷えたら規定量まで水道水をリザーブタンクへ足し込みます。
これで交換はおしまい。


ヒーターバルブの分解(参考)

2枚目の画像は古いヒーターバルブのヘッド部を外した時の画像です。 新品バルブの場合はヘッドを外す必要はありません。

ヘッド部は4つのマイナスネジを外せばとれますが、外すにはヒーターバルブ本体の7mmボルトを外して自由にしてからが良いと思います。



3枚目は外したバルブヘッドの画像。

外したヘッド部はクーラントの乾いた白いカスが付着し、あまり良い状態ではありませんでした。

ヘッド中心のバルブコアを手で動かして様子を見ます。この コア部分だけを取り出して交換することも可能のようです。


実はバルブコアだけならお安いので以前ついでに購入しておいたのですが、どこかに無くしてしまいました。。。何事も後回しは禁物のようです。

装着する際、バルブコアのゴム部がめくれないように、正しい位置&向きで装着し、ヘッドのマイナスネジをしっかり締めてください。そうでないと上下からちょろちょろ洩れ出します。


 
最後に
---ヒーターの効き具合---
私の場合、新品のヒーターバルブ装着後は、エンジンが完全に冷えていて外気温5度ぐらいの夜では、温度MAX、風量MAX、デフロストおよび外気導入ゼロ、足もと送風最大の状態で、エンジン始動後、前席2列は約5分でほぼ快適温度になります。15分以上経ち、水温計の針が定位置に近付くようになると少し暑いくらいです。その後は温度ダイアルの位置は2時の位置、風量中ぐらいで適温を保ち続けるようです。
(全て停車状態でテスト。走行するならもっと早期に温かくなります)


(Special thanks ヘラルドさん、TWT-BPさん)
2002.2.11

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