川村渇真の「知性の泉」

論理的思考と他との関係から、現状の悪い点が見える


 論理的思考の中身を知るだけでは、その価値を正しく理解できない。可能性や影響度を知るためには、どのような範囲に対し、どのような形で利用できるのかを、明らかにする必要がある。このような考察は、中身と同じぐらい重要なことだ。また、利用の範囲や方法を考えるとき、今の世の中における悪い点や誤解内容を指摘することが、避けて通れない。その意味で、現状の悪い点を理解する方法にもなる。

紹介して価値のある対象だけを選択

 論理的思考の可能性や影響度を知るためには、どのような方法が良いのであろうか。いろいろと考えた結果、社会の重要な構成要素との関係を考えてみる方法が、最良ではないかと思った。別な良い方法があるかも知れないが、これが一番良いと感じた。
 関係を考える相手として、社会の重要な構成要素なら何でも良いとは限らない。関係として意味のある要素を選ぶ必要がある。また、関係を考えてみた結果、あまり意味のない内容なら、わざわざ紹介する利点はない。そのため、考えた結果に価値のある内容だけ、厳選することにした。

現状の悪い点や誤解内容が見えてくる

 社会の重要な構成要素を取り上げ、論理的思考との関係を実際に考察すると、非常に面白い結果を得た。世の中で正しいと思われている内容が、そうではないことが次々と明らかになるからだ。その中には、小さなことが多い。しかし、一部には、極めて重要な事柄も含まれていた。
 その代表格が哲学だ。多くの人は、哲学を高尚な内容だと信じているだろうし、歴史的に有名な哲学者が述べた内容は、今でも高い価値があると思っているだろう。ところが、深く考察してみると、「有名な哲学者のほとんどの考察結果は、理解が浅い」との結論を得た。
 この考察では最初、難しい内容の理解と、論理的思考との関係を考えた。理解したとは、どのような状態を指すのだろうかと。考察を終えて明らかになったのは、「教養などの難しい内容を理解したように語る人が、実は何も理解してなくて、理解したと勘違いしているだけ」という点だ。この考察結果も、非常に面白い。
 その他にも、今の世の中に関して、いろいろな点を明らかにできる。主な物を挙げると、次のとおりだ。

関係の考察から見えてくる、主な現状(悪い点のみ)
・過去からの惰性を続けて進歩しない分野
  ・例:本当に役立つ内容を含んでない教育内容
  ・例:悪い意思決定方法を採用し続ける行政
・悪い点が明らかでも、改善が進まない仕組みや意識
  ・例:仕組みが悪いために改善が進まない凝固状態
  ・例:欠点指摘者や改善者をセコイ行為で攻撃する人
  ・例:一般の人々は手も足も出ず、あきらめだけが残る
・現状での誤った解釈や思い込み
  ・例:高尚だと思っていた哲学が、実はそうでなかった
  ・例:教養の理解を語るが、単なる勘違いだった
・良い意見を見分けられず、議論もできない状況
  ・例:意見内容の作り方や整理方法が悪すぎ
  ・例:醜い言い合いばかりで、とても議論とは呼べない
  ・例:単なる勘違い意見を、高尚だと思って真似る人
・大事な要素を理解できていない状況
  ・例:学問に欠けている要素が何なのか知らない
  ・例:設計とは何かを理解できていない
  ・例:良い成果を得るための方法を知らない
ちなみに、こんな現状を生じさせた最大の原因は、
  個人や社会にとって大事な要素を、
      ・既存の学問が扱ってない点と、
      ・大学を含む学校が教えてない点

 これを見ると、今の世の中で、根本的な部分で様々な問題があることが理解できる。そして、根本的な部分で問題があるからこそ、行政や教育といった、社会の重要な機能に大きな影響を及ぼしている。

論理的思考の価値や期待効果も見えてくる

 さらに重要なのは、このような状態が、既に何十年も続いている点だ。そろそろ気付いてもよさそうなものだが、根本的な部分に原因があるとは考えないため、気付く人はほとんどいない。
 原因を知らなければ、的確な対策など打てない。どうしても、小手先で何とかするレベルの対策になる。もちろん、対策を考えている人々は、小手先の対策などとは思っていない。自分が考えられる範囲内で、良いと思う対策を考えているはずだ。しかし、根本的な原因に気付かないことで、実際には小手先の対策に等しくなっている。
 こんな状況を何とかできるのが、論理的思考方法である。ただし、これ自体が個別の問題の対策ではない。論理的思考方法を多くの人に習得させ、習得した人が優れた対策を求めることで、問題の解決につなげる。こうして間接的に成果を出すのが、論理的思考方法の特徴である。

 論理的思考と様々なものとの関係を考えることは、「論理的思考を習得した人々が、どのような点を改善できるのか」を明らかにするのに役立つ。それが明らかになれば、論理的思考方法の価値や期待される効果が理解できる。

(2002年12月27日)


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