川村渇真の「知性の泉」

よく使われる用語の解説


本サイトの中でときどき使われる用語のうち、きちんとした理解が必要なものを選んで、その意味を簡単に解説します。各ページに書いてある内容を正確に理解するのに、ある程度は役立つはずです。


●非論理的をモットーとする人

 社会の進歩や適切な議論を邪魔する人物で、現代社会のおいては困った存在。普段の生活では一般の人と同じように見えるが、特別なテーマで議論を始めたときに特徴が現れ、該当者かどうか確認できる。以下のような特徴を持つので、これを基準に判断できる。

・共通した主な特徴
 ・論理的および科学的な思考が非常に苦手
 ・論理的に分析する人に対して、姑息な方法で攻撃したがる
 ・重箱の隅をつつくような、セコイ発言内容が多い
 ・ガラが悪く、とにかくデカイ声を出したがる
 ・対立意見の相手を脅すような発言を繰り返し、発言しにくい雰囲気を作る
 ・相手が話している途中でも構わず割り込み、きちんと話をさせない
 ・自分に都合の悪いことには答えず、その点をしつこく追求すると怒り出す
 ・対立相手の意見を歪曲して解釈し、悪い評価を下す
 ・きちんと議論しないばかりか、マトモな議論を邪魔したがる
  (きちんとした議論になると不利なのを知っているためだろう)
 ・きちんと調べた事実を無視し、自分の願望を事実のように取り扱う
 ・事実とは異なる内容で相手の悪口を言い、悪い印象を与えようとする
 ・願望を事実とした論文を作って公開し、他の仲間が証拠として引用する
  (科学的な論文に対抗するための姑息な常套手段)
 ・人種や性別で人間を差別し、言葉の端々に差別的な考えが露出する

・全員ではないが、日本で多く見られる特徴
 ・南京大虐殺はなかったと言い、突っ込まれると最後には謝罪する
 ・欠陥システムである和暦が大好き
 ・国民の幸福なんて重視していないのに、愛国心をやたらと主張する

以上のように、社会の進歩を邪魔する“現代社会の癌”に相当する人々である。住民の幸福や社会の改善などを実現したいなら、今後の社会では適切に対処することが求められる。ただし、相当にタチが悪いので、対処はかなり難しい。

●設計と呼べるレベル

 製品やルールなどを作るとき、きちんと設計できる手順を採用して、出来上がったものの質を確保すること。より正確には「適切に設計したと言えるだけのレベル」と表現する。製品の良い設計工程と同じように、求められている要件やその重要度を分析することから始め、考えられる数多くの実現方法を比較し、最良のものを選択するのが基本的な流れ。設計の過程が論理的かつ科学的なので、得られた内容には高い説得力があり、設計の途中の過程も自信を持って公表できる。
 これと反対に位置づけられるのは、何事も密室で作業し、自分たちの都合の良い内容に決める方法。途中の過程を公表できず、議論が盛り上がっても追求されても隠したがる。きちんと設計していないことを作成者も理解しており、公表すれば文句を言われると分かっているからだ。非論理的をモットーとする人の得意技であり、日本では役人や政治家がよく使う。

●レビュー可能な形式

 設計や提案の内容の書き方で、読む人がレビューしやすい形式を指す。単に結果だけを既述するのではなく、検討開始から結果を求めるまでの行程を、検討の経過に沿って書かなければならない。たとえば、問題への対処方法を提案するなら、問題点の整理、原因の検討、細かな解決方法の洗い出し、解決方法を組み合わせた解決案の提示、解決案の評価基準の説明、解決案の評価結果、最終的な解決案の説明という具合に、各行程の区切りを明確にして並べる。このような形式で書くと、細かな行程に分かれるので、検討した内容が適切かどうかを行程ごとに評価でき、ダメな点を発見しやすい。また、前後する行程との論理的な矛盾も見付けられる。
 検討方法で大切なのは、解決案の候補などを可能な限り多く集めて、その中から最良の案を選ぶ点だ。1つの解決案だけを取り上げ、そのまま結論に採用したのでは、最良の案を選んだのか分からない。複数の候補を選んだことが分かるように、候補の洗い出し、解決案の提示、評価方法、評価結果を別々の行程として含める。このような形式で書けば、解決方法が抜けていたり、解決方法の良い組み合わせが欠けていたり、評価方法が適切でなかったときに、悪い箇所が明らかになる。まさにレビュー可能になるわけだ。
 加えて、検討の基礎となる測定データも細かく提示させる。調査や測定の方法を細かく説明させるだけでなく、測定結果の生データも可能な限り付けなければならない。測定方法や細かなデータを見れれば、特定の人にとって都合の良い方法で測定していないか調べることができるからだ。
 以上の結果、取って付けたような理由で通すのが難しくなる。これが、レビュー可能な書き方の一般的な考え方だ。どんな書類であっても、この考え方を適用し、どのような行程を含めるべきか検討する。その検討結果を標準の書式とすれば、レビュー可能な書類の最低条件が整う。きちんと書かせるためには、行程ごとの細かな書き方や、必要な補足資料の種類と書き方などを規定しなければならない。規定しても書けない人がいるので、ある程度の教育も必要だろう。

 レビュー可能な形式と正反対なのが、レビューが困難な形式。検討した過程にまったく触れておらず、結果だけを細かく書いてある。原因や効果も少しは書いてあるが、たいていは取って付けたような内容で、論理的かつ科学的な根拠が乏しい。それを知っているからこそ、検討過程を書かないのだろう。代表例は公共事業を説明した書類。レビュー困難な形式で書きたがるのは、最初に事業内容が決まって、後で理由を付けたことがバレないようにするためだと思われる。
 ひどい人になると、段ボール数箱分の資料を持ってきて、「これを全部読んでから反論してください」などと言う。第一、中心となる書類がきちんと書かれていないので、資料との関連を見付けるのすら大変な場合が多い。それに、きちんと書いてないことで、論理的かつ科学的に分析したかどうかも疑わしい。実は、大量の資料を持ってくるのは、反論させないための姑息な手段である。読むのが大変なため反論を始めるのに時間がかかるし、量の多さで反論する気持ちを低下させようとの意図がある。きわめて卑劣な手段で、レベルは相当に低い。このような方法は、非論理的をモットーとする人の得意技になっている。また、非常に残念なことだが、日本の官僚もよく使っているようだ。

 レベルを向上する一番良い方法は、どんな提案もレビュー可能な形式で書かせることだ。そのためには、書類の形式を細かく規定し、書き方を教育しなければならない。

●政治的

 非論理的な決断や行動をしたとき、不適切な判断だったと思わせないため、表面的に取り繕うための言葉。論理的や科学的な分析した結果が、自分たちにとって都合の良い内容とは異なるとき、このような表現で正当化しようとする。この言葉を含んだ説明や、何度も使いたがる人は、疑ってかかったほうがよい。

●旧態依然とした日本企業

 世の中の変化から取り残されている日本企業で、ヤル気があったり能力の高い人には嫌われがちだ。おもに以下のような特徴を持つ。

・環境保護などの世間の変化に疎い
・論理的で科学的な意思決定ができない
・社員の能力や仕事の成果を適切に評価できない
・出世や人事が好き嫌いで決まりやすい
・社内ルールや価値観の細部で、社員の人権を尊重しない傾向が見られる

 これらの特徴により、良いアイデアが採用されなかったり、学歴で出世が決まったり、セクハラを放置したり、不正を防止できなかったり、派閥の論理で物事が進んだりと、ダメな活動が数多く見受けられる。また、優秀な人材ほどあきれるので、外に逃げて行きやすい。今後の激しい競争に勝ち残れる可能性は低いし、成果をきちんと評価してくれないので、できるだけ避けたほうがよいだろう。日本全体として見れば少しずつ改善されているが、その速度はかなり遅い。程度に差はあるものの、該当する企業がいまだに多いのは残念なことだ。

能力才能

 能力とは、その時点で実際に役立てられる様々な力を指す。設計力、営業力、説得力などいろいろな分野があり、分野ごとに各人のレベルが異なる。ある分野で高い能力があっても、別な分野で高いとは限らない。能力は知識と異なり、実際に成果を出せる力を意味する。知識も能力に関係するが、多くの知識を持っていても能力が高いとは限らない。能力の高さには、知識よりも応用力のほうが大きく関係する。
 才能とは、もって生まれた力を指す。これも分野によってレベルが異なる。才能の高い分野で活動すると、他人よりも早く能力を高められるし、最終的な能力も高くなることが多い。ただし、努力も大きく関係するので、まったく努力しなければ能力は高まらない。平均的な才能でも真面目に努力すれば、仕事として十分にやっていけるレベルに達する。この点を忘れてはならない。一番困るのは、その分野の才能が極端に低い場合だ。どんなに努力しても平均的なレベルに達するのは難しいため、別な分野に挑戦すべきだろう。
 以上を総合すると、自分の才能のある分野を選ぶのがベストとなる。最初は嫌いであっても、簡単に成功することで面白くなり、途中で好きになる可能性が高い。才能のある分野が見付からないときは、好きな分野に進むのがベターとなる。好きな分野なので、より多く努力するからだ。その際に注意しなければならないのは、選んだ分野の才能が極端に低くないか見極める点。もしそうなら、努力が報われない可能性が高い。ある程度の段階であきらめ、別な分野を選んだほうがよい。


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