川村渇真の「知性の泉」

浮遊思考記録−2001年06月


●2001年06月21日

クジ引きの引き順を決める方法

 クジ引きの当たる確率は、先に引こうが後に引こうが同じはず。しかし、そう思ってない人も現実には多いらしく、引く順番を争ってしまう。すると、引く順番を決めなければならず、それも別なクジにすると、その順番で争いが生じる。たとえばアミダクジなら、自分の名前を先に書くか後に書くかでもめる、といった具合にだ。
 もめる理由は、何となく理解できる。クジの当たりの最良が1等で1本しかないとき、最初の方に誰かが引いてしまったら、それ以降にクジを引く人は1等を絶対に取れない。こういう状況が生じるため、1等が残っているうちに引きたいと誰もが思って当然だ。
 こうした“もめる理由”を、確率として考えてみよう。「1等が残っているうちに引きたいと思う」が出てきたので、1等が当たる確率ではなく、1等が残っている確率でだ。確率はクジの本数に関係するため、ここでは考えやすいようにクジが100本あると仮定する。1番目にクジを引く人は、1等が絶対に残っているので、1等が残っている確率は100%である。2番目に引く人は、1番目の人が1等を当てる確率である1%を差し引くので、1等が残っている確率は99%となる。同様に、3番目の人は98%で、4番目の人は97%とと順番に減っていく。そして100番目の人は、かわいそうに1%しかない。このように、引く順番が後になるほど、1等が残っている確率は減るのだ。
 クジ引きの順番でもめる理由は、1等が残っている確率を、何となくだが感じ取っているからだろう。たいていの人がクジを先に引きたいと思う点は、1等が残っている確率が先に引くほど高いことと、一致している。上記のように確率を計算しなくても、多くの人が何となく感じ取れることは、感覚的にでも頭脳が有効に働いている例であろう。
 1等が残っている確率を知った以上、「クジを引く順番に関係なく、当たる確率は同じなので、もめないでください」と言った説得が、正しいのか疑問に感じてくるに違いない。無理して説得するのではなく、もめる理由を消した形で、クジの引く順番を決めるのが賢い選択だ。つまり、引く順番に関係ない決定方法を採用して、クジ引きの順番を決める方式に変更する。
 順番決定にクジを用いるなら、誰かが引いた後で、そのクジを元に戻す。こうすれば、どの順番で引いても、条件が同じになる。ただし、複数の人が同じクジを引くという副作用が生じる。こんなときは、もう1度クジを引いてもらえばよく、お互いが違うクジを引くまで繰り返す。2番目以降に引いたクジは、最初に同じクジを引いた人の中で、順番を決める目的に使わないので、最初のクジで何番かに確定した人の順番はそのままだ。
 順番決定では、クジの代わりにサイコロが使える。1個だけだと結果が6段階しかないので、複数のサイコロを同時に振って、合計値を用いる。サイコロが2個なら11段階、3個なら16段階、4個なら21段階となり、人数に応じて使い分ける。合計値の同じ人が生じにくいように、サイコロの数は多めの方がよいだろう。クジの場合と同様に、1回目で合計値の同じ人が出たら、その中の順位を決めるために2回目のサイコロを振る。こうやって、すべての順番が決めるまで繰り返す。
 サイコロのような方法なら、誰から見ても条件が同じになるので、文句を言う人は出ないだろう。もし出たとしても、説得できるだけの方法になっている。これで納得しないなら論外で、クジ引きに参加させないほうがよい。
 ここまでの話を、もう少し上位から見てみよう。人々がクジ引きの順番にこだわるのは、1等が残っている確率という、それなりの理由で説明が付く。多くの人が感覚的に感じていることは、論理的に理由が説明できないか、幅広い視点で考えてみることが大切だ。もう1つ大事なのは、理由が分かったら、問題点を解消するような方法を検討してみる点。たいていのことは、原因さえ分かれば解決方法が見付かるので、原因を求める形で検討してみるとよい。


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