川村渇真の「知性の泉」

ネットワーク社会の特徴や問題点を最初に分析


ネットワーク社会には良い面と悪い面がある

 ネットワークの新しい機能を考えるとか、ネットワーク社会への対応方法を見極めるには、ネットワークが発達した社会の特徴や問題点を深く分析しなければならない。
 コンピュータとネットワークは、社会や家庭を大きく変える。パソコンを中心としたコンピュータの普及よって、かなりの変化が起こっている。しかし、ネットワークによる変化は、それよりも遙かに大きなものだ。社会の仕組みや仕事のやり方はもちろん、人間同士の付き合い方まで変えてしまう。思ってる以上の劇的な変化が起こるだろう。
 ネットワークによる変化は、人間の生活を充実させるものが数多く登場する。遠く離れた人同士で顔を見ながら話ができたり、得たい知識が自宅から簡単に入手可能となる。生活全体で無駄な移動が減るため、自由に使える時間が増す。また、店舗を持たずに商売することで、販売価格の低下が期待でき、新しい商売も始めやすい。新しいタイプの学校が登場し、一度も通学しないでの卒業が可能となるだろう。距離の制約から解放されるので、仕事を変えずに田舎へ移住することも容易だ。想像できないほどの、より多くの変化が起こるに違いない。
 ただし、ネットワーク社会は良い面ばかりではない。比較的広く認識されているのは、プライバシーや人権の侵害と、セキュリティーの2つだ。これらのトラブルは既に発生しているので、認識されて当然である。深く分析することで、それ以外にも様々な問題が予測できる。良い面よりも悪い面のほうが、個人や社会への影響が大きい。だからこそ重点を置いて分析し、事前に対策を打つことが大切だ。

未来予測は論理的な分析で確度を増す

 効果的な対策を用意するためには、未来の適切な予測が不可欠。ところが、ネットワーク関連に限らず、未来を適切に予測することは難しい。それだけに、いろいろな人が好き勝手な内容を発表している。どれを信じるかは、読む人の自由である。
 適切に判断するために1つだけ言えるのは、予測の裏付けとなる理由がマトモかどうかを見極めることだ。理由もなしに「〜になります」と言われても、説得力は低い。一般的には、幅広く視野を広げて、論理的に分析した予測ほど、的中する可能性が高い。逆に言うなら、背景となる理由を説明していない予測や、論理的でない発言の多い人による予測は、信用しないほうが無難だ。このことを頭に入れながら、いろいろな予測を読むと面白いだろう。以上のことから、このコーナーでは、予測の背景となる理由を加えるとともに、できるだけ論理的な説明を心掛ける。
 未来予測は難しいものの、論理的な分析力が高く、広い視野で考えられれば、かなりの確度で的中できると思う。そのために必要なのは、人間や組織の特性を分析する能力だ。これが備わっていて、コンピュータやネットワーク技術に詳しければ、的中の確度はかなり向上する。ただし、すべての面を予測できるわけではない。未来社会に大きな影響を与える教育体制などは、政治的な力で方向を左右される。政治的な判断は、論理的とはほど遠い基準で決められることが多いため、残念ながら推測が難しい。以上のことから、推測可能な部分だけを予測することしかできない。
 良い面も悪い面も含めて、ネットワークの特徴や問題点を理解することは、新しいネットワーク機能を求めるには不可欠である。より良い予測が可能になるほど、適切なネットワーク機能を提案できる。加えて、この種の情報は、今後どんな能力を身に付けるべきか、一般の人が判断するときにも役立つ。

(1997年12月25日)


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