川村渇真の「知性の泉」

読んで良かった本や雑誌:その他


●宇宙からの帰還

著者 :立花隆
出版社:中央公論社(中公文庫)
評価 :優+

書評:米国の宇宙飛行士にインタビューして、宇宙飛行後の活動や心理的変化を掘り下げて分析している。宇宙から地球を眺めることで、地球が限られた小さな世界だと気付き、宇宙人へと進化する様子を描いている。宇宙に浮かぶ小さな天体としての地球を見ることで、地球人としての自覚が芽生えるということだろうか。本書は、立花隆氏の作品の中では最高のもの。

●決闘写真論

著者 :篠山紀信、中平卓馬
出版社:朝日新聞社(朝日文庫)
評価 :優+

書評:写真論をテーマにした対決で、篠山氏は写真だけで表現し、中平氏は文章だけで語っている。篠山氏の写真は有名人を撮影したものが有名だが、写真集「死の谷」に代表されるような不思議な世界を表したヌード写真、雑誌「平凡」の表紙でのロウ人形のようなアイドル写真、写真集「家」のようなモノの存在感を伝える写真など、異なる特徴を持つ作品を出し続けている。それらを含めた数多くの写真を見せることで、写真論を間接的に語る。対する中平氏のほうは、何人かの写真家の作品を深く分析することで、写真論を語っている。対象として取り上げた写真家は、篠山氏はもちろん、ユジェーヌ・アッジェ氏、ウォーカー・エバンス氏など、魅力的な作品を残した人が多い。真剣に読むほど頭脳を刺激してくれる中平氏の文章が、本書の最大の魅力だ。非常に癖の強い本だが、写真とは何かを追求したい人にとって、何らかのヒントを与えてくれる可能性が高い、非常に数少ない1冊である。もともとは、雑誌「アサヒカメラ」で1976年の1年間に連載されたもので、翌年に単行本になり、1995年に文庫本として復活した。学生時代にこの連載記事と出会って、強い衝撃を受けたのを今でも覚えている。自分にとっては、写真雑誌で読んだ過去の全記事の中でダントツの1位だ。この連載を読んでからは、コンテスト写真にまったく興味が持てなくなり、自分なりの写真論を追求するように変わった。


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