川村渇真の「知性の泉」

読んで良かった本や雑誌:ジャーナリズムや社会分析


●未来の衝撃

著者 :アルビン・トフラー
出版社:中央公論社(中公文庫)
評価 :絶品

書評:テクノロジーの進歩によって、世の中は大きく変化する。それが原因で、人間には大きな衝撃(未来の衝撃)が加わるという。変化の大きさは加速度的に増加するので、将来ほど衝撃が大きい。また、いろいろな分野で発生するので、幅広く影響が及ぶ。かなり以前に書かれたものだが、今でも古さを感じさせない。未来の衝撃は、現在でも随所に見受けられ、年配の人ほど受けている。テクノロジーの影響を考えるときには、絶対に読んでおくべき1冊だ。

●人間を幸福にしない日本というシステム

著者 :カレル・ヴァン・ウォルフレン
出版社:毎日新聞社
評価 :絶品

書評:日本の社会が持っている不思議な部分について、その仕組みや理由を解説した本。何か変だなと日頃から感じていた疑問が、ある程度見えてくる。かなり過激なタイトルだが、それに見合うだけの内容を含んでいる。これを読んだ知人は、「正直者を幸福にしない日本というシステム」とも言えるなと述べていたが、思わずうなずいてしまった。

●文明の逆説

副題 :危機の時代の人間研究
著者 :立花隆
出版社:講談社(講談社文庫)
評価 :優

書評:自然破壊や社会問題を総合的に捉えながら、地球という閉じられた世界を持つ宇宙船の危機を示し、人々に警告を与えるレポート。毎日の生活には直接関係ないが、多くの人に知ってほしい内容が含まれている。著者には、この種の本をもっと書いてもらいたい。

●日本人は美しいか

著者 :本多勝一
出版社:講談社(講談社文庫)
評価 :優

書評:著者の評論のうち、いろいろな差別や偏見に関する分析を集めたもの。日本は、先進国の中で、女性や外国人への差別が大きいと言われる。それはなぜなのか、いろいろな視点を与えてくれる。この著者の本を読んだことがない人なら、まず最初に読むべき1冊だろう。

●マスコミ報道の犯罪

著者 :浅野健一
出版社:講談社(講談社文庫)
評価 :優

書評:日本のマスメディアの問題点を取り上げ、なぜ悪いのかだけでなく、どのように改善すべきか述べたもの。日本の報道の質が、他の先進国に比べて相当に劣っていると知ることができ、新聞や雑誌の見方が変わるだろう。多くの情報がマスメディアを通じて入ってくるので、物事をより的確に理解したいなら絶対に読んでおくべき。

●公益法人

副題 :隠された官の聖域
著者 :北沢栄
出版社:岩波書店(岩波新書 No.726)
評価 :優

書評:KSD事件をきっかけに注目が集まっている公益法人に関し、具体的なデータを用いながら、その実態を見事に暴いている。当然ながら主役は官僚で、「中央官庁−特殊法人・許認可法人−公益法人−傘下の子会社・関連会社」という階層構造を利用し、いかに税金を食い物にしているかが分かる。また、健全な競争を邪魔することで、多くの企業や国民に余計なコストを払わせている。こんなセコイ行為が、多くの省庁で行われているなんて、本当に情けない。こんなことをし続けていて、官僚は何とも感じないのだろうか。非常に不思議だ。本書の最後では、現状を根治するための処方箋を提案しているが、おそらく官僚には通じないだろう。もう1つ気になるのが、こうした重要な内容を多くのマスメディアがほとんど取り上げてない点。日本ではマスメディアが正常に機能してないと言われるが、それを証明する1冊でもある。ともあれ、日本の官僚のセコイ実態を知れるので、国民全員にぜひとも読んでほしい。加えて、マスメディアの関係者は、著者を見習ってマトモな仕事をしてもらいたい。

●雑誌:週刊金曜日

出版社:金曜日
評価 :優

書評:ホンモノのジャーナリズムと言える数少ない雑誌の1つ。日本のジャーナリズムは地に落ちた状態と言われるが、その打開を目指して生まれた。その志を裏付けるような内容で、質の高い硬派の記事を産み出し続けている。本多勝一氏、筑紫哲也氏、佐高信氏などが編集委員として名を連ねるのも魅力の1つ。本誌を抜きにして、日本のジャーナリズムは語れなくなった。ただし、今後のジャーナリズムや市民運動にとって非常に重要なテクノロジーの活用に関して、極度に弱いのが気がかり。


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