川村渇真の「知性の泉」

読んで良かった本や雑誌:作文技術や思考技術


●考える技術・書く技術

副題 :説得力を高めるピラミッド原則
著者 :バーバラ・ミント
出版社:ダイヤモンド社
評価 :優+

書評:本書で紹介しているのは、伝えたい内容をきちんと整理し、全体の構造や流れを設計しながら書く技術。ある程度の長さの文章を書く際には、個々の文章よりも、全体の構成を整えることが重要である。そのための具体的な方法を提供する。また、内容を整理する段階で必要な考える技術も含まれ、考えるプロセスの重要さも示している。結果として、説得力のある論理的な文章に仕上げられる。分かりやすい文章を書きたいなら、絶対に読むべき本といえる。ただし、論理的なことが苦手な人には向かないかもしれない。

●論理思考と発想の技術

著者 :後正武
出版社:プレジデント社
評価 :優

書評:論理的に思考する方法の基礎を、できるだけ多くの人が理解できるようにと、具体的で丁寧に解説している。その分だけ基礎的な内容が多いものの、論理的な思考の実現にとって非常に大切なことなので、思考方法を学ぶ際に最初に読むべき本として適している。同じテーマを扱った他の本は、感覚的に書いてあって実際には役立たないものばかりなので、こういった本は貴重だ。また、マトモな思考方法を多くの人が習得していない点、それを学校で教えてない点を問題として指摘している。まったく同感である。はしがきの中で「そしてわかったことは、『論理の能力』というものは、(当たり前のことだが)訓練によっていかようにも発達するということであった。多量の情報や複雑な関係を数理的論理的に素早く正しく見出して処理し、思考の範囲を広げ、内部の整合性をしっかりとつくる能力は、ちょっと訓練するとしないとでは、格段の違いが生まれる。端的に言えば、論理を学ぶと『頭が良くなる』のである」や「論理的な思考・発想の技術は、長い目で見ると必ず『アタマをよくする』ために、そして『正しい判断』を行うために有用であると思う」と述べている。まさに、そのとおりだ。なお、本書では発想方法に関しても書いてあるが、こちらの方は平均的なレベルでしかない。また、解説している思考方法と道具は私のものとは異なるが、いろいろな方法を知って試し、自分に適した方法を選ぶと良いだろう。

●理科系の作文技術

著者 :木下是雄
出版社:中央公論社(中公新書)
評価 :良+

書評:論文から説明書まで、人に読んでもらう書類の作り方(主に書き方)を解説した本。書く前の準備作業から、分かりやすい文章の表現まで、幅広い範囲をカバーする。事実と意見の書き分けなど、文章を書くのに必要な事柄にも触れている。全体に説明が論理的なので、理解しやすいし応用しやすい。理科系の学生や若い研究者向けに書かれた本だが、文科系や年輩者も読む価値はある。

●説得できる、文章・表現200の鉄則

副題 :パソコン・横書き時代の文書テクニック
著者 :永山嘉昭、他
出版社:日経BP社
評価 :良+

書評:分かりやすい書類を作るための工夫を集め、活用しやすく分類した本。文章の構成、言葉や数値の使い方、書類のレイアウト、図の見せ方など、扱う範囲はかなり広い。ほとんどの項目が1ページで完結し、実例を挙げているので、必要な部分だけ読んで活用できる。すぐに役立つ工夫を数多く集めた点が、最大の魅力だ。

●図の体系

副題 :図的思考とその表現
著者 :出原栄一、吉田武夫、渥美浩章
出版社:日科技連
評価 :良

書評:世界中から様々な図を集め、体系的に整理したもの。狭い意味の図だけでなく、絵、表、グラフなども含めてある。いろいろな形式の図が1冊で見れるため、最適な図を考える際の貴重な資料として役立つ。少しでも分かりやすい説明を追求したいなら、そばに置いてときどき参照するとよい。この種の資料的な書籍が、他の分野でも増えてほしい。

●日本語の作文技術

著者 :本多勝一
出版社:朝日新聞社、朝日文庫
評価 :良

書評:分かりやすくて正確な文章の書き方を解説した、数少ないマトモな本。まとまった長い文章ではなく、1つ1つの文の書き方を中心に述べてある。句読点の使い方、修飾句の並べ方など、正確に書くコツを詳しく解説。非常に論理的な説明のため、書いてある内容をきちんと活用できる。ただし、文章全体の構成の決め方について、役立つ方法を提供していない点は非常に残念。多くの作文の本が役に立たないだけに、貴重な存在といえる。

●実戦・日本語の作文技術

著者 :本多勝一
出版社:朝日新聞社(朝日文庫)
評価 :良

書評:上記「日本語の作文技術」の続編。タイトルどおり、より実践(!)的な内容で、より多くの実例を紹介する。文章の直し方にも力を入れ、悪い例文をどのように直すかを示しながら、分かりやすい文章の作り方を伝えている。後半は、日本語と方言に対する著者の意見と、文部省の低レベルな教育内容への批判。この辺が著者らしい味付けだ。


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