川村渇真の「知性の泉」

議論を終えた後の作業


議論は、目的を達成するための作業の一部

 会議が終了しても、作業がすべて終わったわけではない。議論内容を整理して書類にまとめたり、議論で得られた結果を実施したり、それが成功したか確認する作業が残っている。
 非常に当たり前のことだが、たいていの議論は、議論だけが独立して存在するわけではない。何かの目的のために議論し、その目的を達成しないと本当の終わりにはならない。たとえば、問題の解決が目的なら、議論によって解決方法を決め、それを実施する必要がある。また、実施した解決方法が成功したかどうかを調べ、ダメな場合には再び議論して、新しい解決方法を求めるだろう。
 このような作業全体に責任を持つのは、目的に関する責任者だ。問題解決が目的であれば、解決の責任者が該当し、議論内容にも決定事項のフォローにも責任を持つ。議論で決定した内容を自分で実施する場合もあるだろうし、誰かにやらせる場合もある。
 そんな責任者が、議論を終えた後の全活動を管理する。含まれる代表的な作業は、以下のとおりだ。

議論を終えた後の一般的な作業
1. 議事録を作成して関係者に公開する
2. 担当者が決定内容を実行する
3. 別な担当者が実行結果を評価する
4. 必要に応じて、フォロー会議を開く

 議論を終えて最初にすることは、議事録の作成である。議事録として公開すれば、正式な議論結果として認めたことを意味する。そのため、できるだけ早急に作成して関係者に公開しなければならない。公開された議事録は、議論に参加した人にとっては、正式な結果を確認する役割がある。議論に参加しなかった関係者にとっては、議論の結果を知る機会になる。

予定外の問題が発生したらフォロー会議を開く

 議事録が公開されると、議論で決まった作業の実行が正式に始まる。決定事項の実施担当者は、決められた条件に従う形で作業を進める。実行結果の評価を担当する人は、評価の準備を始め、指定された方法や時期に評価を実施する。重要な事柄では、途中での評価も組み込まれるので、決められたとおりに評価を行う。
 問題となるのは、予定どおりに実施できないとか、実施した結果が期待したとおりでなかった場合だ。責任者がフォロー会議を開いて、テーマを再検討しなければならない。最初の会議で主な点は検討し終わっているので、参加者の日程だけを調整すればよい。参加メンバーだが、常に前回と同じとは限らない。発見された新しい問題に詳しい人を追加することもあるし、検討しなくて構わない部分の関係者は外れるからだ。ただし、問題の影響度が大きい場合は、より深い検討を加えるために、前回の参加者の全員に出てもらったほうがよい。
 まれにだが、議事録が公開された後で、問題点が発見されることもある。議論に参加しなかった人が見付けた場合だけでなく、参加した人が見付ける場合もあり得る。このような事態になったときも、責任者がフォロー会議を開かなければならない。
 問題点の指摘が可能な形で議事録を作ることも大切だ。検討の過程が明らかになるように、検討の流れに沿って記述する。きちんとした検討手法を採用しているなら、その流れに沿って書く。このように作成すると、参加しなかった人でも“レビュー可能な”議事録に仕上がる。

最初の議論が失敗したときには原因を調べる

 フォロー会議を開いた場合には、最初の議論で決めた内容が適切でなかったことになる。つまり、最初の議論が失敗したわけだ。その原因をきちんと調べて、今後に生かすことも大切である。
 この種の検討は、議論の目的が達成し終わってない段階では難しいので、本来の目的(問題解決など)の達成を最優先する。それが終わってから、失敗の原因の検討に入る。議事録をレビュー可能な形式で作ってあれば、どのような検討がされたのか調べられるだろう。
 失敗の原因の検討では、議論自体の方法が悪かったのか、対象テーマに関するものなのかを切り分けなければならない。議論のやり方が悪い場合には、検討手法の使い方が下手だとか、参加メンバーの選び方が失敗したとかが考えられる。今後の議論で同じ失敗を繰り返さないように、議論方法に関する対策を考えなければならない。もう1つの対象テーマに関する原因では、技術力が不足していたとか、予想外の難しい問題が発生したとかなどが考えられる。こちらの場合でも、議論とは別な対策を打つ。一般的に、議論の能力が高まれば、きちんとした議論が行わるようになり、議論のやり方が悪い失敗は減るはずだ。議論方法が悪かったために、検討結果の質が下がるのだけは、できる限り防ぎたい。
 以上が、議論を終えてから実施すべき主な内容である。きちんとして議論を実施するためには、質の高い議事録を作成して公表し、議論が失敗した際には原因を突き止め、参加者の議論能力を高めなければならない。その達成には、責任者の議論後の活動が大きく関係するので、議論自体だけでなく、その後の活動もきちんと行おう。

(1999年7月2日)


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